プレイヤーが操作するエミー号と、それを追尾する誘導ミサイル、回収すべき十字フラッグが描かれたパッケージイラストが使用されています。ゲーム中に風景は登場しませんが、田園地帯での出来事のようです。
当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、エニックスが開催した第3回ゲームホビープログラムコンテストの優秀作品で、1984年12月上旬に発売となった固定画面パズルゲームの『頭脳4989』を取り上げました。
固定画面で、動かすオブジェクトが少なくて済むタイプのパズルゲームはマシンパワーをそれほど必要としないために、パソコンゲーム黎明期から数多く登場していました。とはいえ、突拍子もないルールを設定してしまうと良いパズルでもプレイヤーに理解されないこともあって、ほとんど広まることなく終わってしまうことも。
そんな中で成功したタイトルには『倉庫番』や『モールモール』などがありますが、今回取り上げたエニックスの『頭脳4989』は、第3回ゲームホビープログラムコンテストにて優秀作品となり、“超思考型新頭脳挑戦ゲーム”と銘打ってユーザーの前に登場した非常に歯ごたえのあるパズルゲームでした。その宣伝文句は「君の任務は、エミー号を操り、全ての旗を取って矢印“→”から脱出することだ。奇想天外なトリックの連続! 解明すべき数々のテクニック! 50画面に仕掛けられた300数種の罠に君の頭脳はパニック状態」です。



広告が初掲載されたのは1984年12月に発売された各パソコン雑誌で、中央の“’85年を担う大型新人(ゲーム)デビュー!!”の右上に書かれた「サンタクロース推薦」の文字が良い味を醸し出しています。翌号には「発売早々、爆発的反響!! 何面が解けた! フェイント飛行のテクニックを解明した! などの称賛の電話が殺到」と書かれていて、反響の大きさを物語っていました。他のソフトには見られない、おもしろ度や難易度、熱中度、話題度、アイデア度を星で表した表が掲載されていたのも珍しい部分です。
本作のパッケージ裏には審査時の盛り上がりも書かれていて「誘導ミサイルの特性を極限までえがき、パズルゲームに導入。緻密な構成の迷空路とあいまって、秀作に仕立てあげられている。敵の追撃を切り抜ける武器はプレイヤーの頭脳だけというホンモノ志向のパズルゲームに審査会場は絶賛の嵐。審査会場の興奮そのままを、今、あなたのディスプレイに贈る」と記載されてあって、純粋に考え抜くことでクリアできるという本作の姿勢が大きく評価されたようでした。
ちなみに作者の名前ですが、パッケージや広告、コンテスト発表ページには“大橋一雄”さんと書かれているのですがマニュアルには“大橋雄一”さんとあり、どちらが正しいのか調べたもののハッキリした答えは見つかりませんでした。とはいえ、表に出てくる名前が間違えているということは考えづらいので、“大橋一雄”さんが正しいかと思います。そんな作者のコメントもパッケージやマニュアルに掲載されていて「昭和32年生まれ大阪在住。パソコン歴3年。構想2年の期間中、ただひたすらプレイヤーの裏をかくことばかり考えてきました。パズルゲーム界に新風を吹き込めれば幸いです」と記されていました。
タイトル画面では自機や敵、取るべき十字フラッグの解説とともにルールが書かれていました。これを読めば、マニュアルが無くてもプレイは問題ありません。
本作は、プレイヤーがエミー号をテンキーの2468で上下左右に操作し、追尾してくるミサイルに当たらないよう十字フラッグをすべて回収し出口の矢印にたどり着くのが目的となります。各ステージごとに、スタート地点からエミー号を移動させて、最初に表示された数値だけ空間が空くと誘導ミサイルが同じくスタート地点に現れ、以降はエミー号が移動するごとに誘導ミサイルも同じ軌跡で追いかけてくることになるのでした。
その誘導ミサイルですが、1マス移動するごとに背後にバッドスモークと呼ばれる煙を出します。エミー号がその上を通過すると、誘導ミサイルは2空間接近してくるという特性がありました。また、ステージ内にはエミー号と誘導ミサイルのほか十字フラッグが複数あります。十字フラッグを回収すると、誘導ミサイルは2空間停止に。この2つの性質を上手に利用して十字フラッグをすべて回収し、出口から脱出しなければなりません。
ルールだけ見れば意外と簡単に思えるのですが、初めて1ステージをプレイしたときには十字フラッグを回収できるものの途中で追いつかれたり、うまくいったと思ったら出口直前で誘導ミサイルに接触するなど、これまでの固定画面パズルゲームの中でも非常に手強い難易度となっていました。


1ステージの、スタートと中盤、終盤の状態です。こうなると出口直前で追いつかれてしまうため、失敗となります。これがどうしても解けず、バグだと思い続けたほど(笑)。
作者のコメントにもあるように、プレイヤーは“裏の裏”をかいていかないとクリアすることができず、そのためには寄り道や余分に思える移動などを駆使する必要があります。今回、どうしても1ステージすらクリアできなかったので答えを調べたのですが、その通りに進めて出口から脱出できたときの、その手順に思わず「考えた人天才!」と声を上げてしまったほど驚かされました。
パズルゲームが得意な人であれば1ステージ目くらいは労せずクリアできるのかもしれませんが、筆者には難しく……通常であれば、パズルゲームを回答を見てクリアしてしまうと虚しさが残るものなのですが、本作の場合はそれよりも思考の素晴らしさと気持ちよさで満たされてしまったほどでした。
コツとしては、とにかく一筆書きで出口に向かうのではなく、道中に無駄と思える移動をいかにうまく行うか、かと思います。この記事でも、いくつかのステージを掲載しておきましたので、自信のある人は脳内でクリアを目指してチャレンジしてみてください。


本作は、ゲーム開始時に好きなステージを選んでプレイすることができます。前半ステージと中盤、後半から3つのステージを選んでみましたので、脳内チャレンジでクリアを目指してみてください。1枚目は誘導ミサイルがエミー号から何マス離れた時に現れるかを表していて、2枚目がスタート地点からそのマス目分移動して誘導ミサイルが登場した時点での写真です。
『頭脳4989』には、この時期のパズルゲームにはお馴染みのコンストラクション機能も収録されていて、プレイヤーが自由にステージを作成することができました。また、完成したステージはカセットテープに保存することもできるのですが、本作ほどの思考型ゲームでバランスの取れたステージを作るのは非常に苦労すると思われるので、このモードを堪能できた人は少なかったかもしれません。
現在では、フリマサイトなどでもあまり見かけることはありませんが、パズルゲームの腕に自信のある人は何かの機会にぜひプレイしてみてください。

コンストラクション機能を使えば、各プレイヤーが考えたステージで遊ぶことができます。クリアできないときには、コンストラクションで難解な面を考えると気晴らしになるかもしれません?ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち 連載一覧

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