4月24日に公開される映画「ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー」。日本公開を前に、任天堂代表取締役フェローであり本作のプロデューサーである宮本茂さんの合同インタビューが実施されました。

◾️日本公開に向けての心境は?

宮本 状況が似てるのはそうですよね。実は、評論家の人たちの1作目の評価については、「それもあるな」と思っていたんです。けれど今度は違うだろうと思ったら……前回より厳しかったので、不思議だなって(笑)。映画業界をもっと盛り上げようと思って、ほかのジャンルから入ってきて頑張っているのに、映画業界を盛り上げる人たちが消極的というのは、とても不思議だなってのがありますよね。

宮本 「日本語版プレミアム試写会」の壇上でも少しお話ししましたが、海外では3週間先行して公開されて、すでに数字が出ています。

普通は英語版をローカライズしていくんです。今回も7、80か国くらい、すべてがローカライズになります。ですが、日本語版はちょっと特殊な作り方をしていて、1作目のときは脚本がゼロのときから日本語で書いて英語版と同時進行をしました。今回は英語で脚本ができたものを日本語で書き直しているんです。つまりローカライズしているのではなく、日本語版を作っているんですね。

それが3週間遅れで世に出ていくわけなので、日本語版で数字に追い打ちをかけられなかったら、日本担当の僕としてはクリス(メレダンドリ氏)さんに申しわけないというプレッシャーがすごくあります。

けれども、すでに観ていただいたお客さんの反応を見ていると、マリオが好きな人には受け入れてもらっています。本当にマリオが大好きな人たちが作っている映画なので、日本でもちゃんと受け入れられるようになっています。もうひとつは前作を観ていない人でも、マリオを知らない人でも、前回よりかなり映画として楽しんでもらえるものができていると思うので、ここは東宝さんに期待しているところです(笑)。

◾️群像劇のような物語の制作過程は?

宮本 スタッフクレジットを見ると、僕の知らないサブの方々まで脚本をやっている方は多数いるのですけど、基本的にはメインのマシュー(フォーゲル氏)さんという脚本家がアメリカにいて、1作目の制作からおそらく6年以上はいろいろなやりとりをしてきたんです。
今回も同じくマシューさんがリードで入って、いくつかのあらすじを出してくれました。

1作目のときは僕は、ゲームの映画化って何がおもしろいんだろう、ゲームをそのまま映画にしたっておもしろくないと思っていたんです。ゲームは、遊んでいるプレイヤーがおもしろいと感じることで結果おもしろいゲームだと思ってもらえるわけで、映画で語ってもおもしろくはない、というところからスタートしました。
ところが、何度もあらすじをやり直し、いろいろな試みをしていったら、意外とゲームと同じ流れになった…というのが1作目なんです。

なので1作目は、マリオの世界の紹介が大筋にありました。このキャラクターはこういう人ですとか、キノコ王国がどこにあるのか、というふうに。

今回はそういった自己紹介が済んでいるので、初めて観る人についても“楽しかったらそれでいい”と開き直って、キャラクターをもっと描いていくことにしたんです。

ゲームでは主役はプレイヤーの遊びなのであまりキャラクターを描けないんですけど、映画はいろいろと語れるため、キャラクターを描こうという大まかな方針は決まっていました。

具体的に何をやろうかというところで、1作目にはピーチが自分の出生に興味をもつシーンがあるので、そこをコアに作ろうとマシューさんのほうから提案がありました。

また、1作目でクッパは小さくなっているので、このミニサイズのクッパは出てこないと期待外れだろうとか。ヨッシーもちらっと見せたのだから出さないとダメだよねとか。そういった縛りもあったんで、それらが全部うまくまとまるような脚本として固めていきました。これが意外と楽しい作業で(笑)。

1作目で振ったこととか、それぞれのキャラクターの役割を任天堂らしく作り込んでいくという作業がいっぱいあって、すごく作っていておもしろかったです。

宮本 ピーチだったら、私は何者かしらと疑問を抱いているところに、マリオがどんなふうに気遣ったらほどよい恋愛観ができるのかなとか。
ひとつひとつのセリフの密度で目的が決まっていきますよね。

宮本 僕は、“「スーパーマリオ」の物語はクッパという悪役をマリオが倒す話ではない”、ということをずっと言っているんです。“スーパーマリオ劇団”というものがあり、そこに悪役をやる役としてクッパがいるけど、劇によっては友達になる可能性もあるんです、と。
だからクッパは完全な憎いヴィランではなく、マリオの仲間のなかでヴィラン役をする役者としてほしい、ただの悪役にしたがらないというのがあって。
そこに“小さくなったクッパ”というのがちょうどよくハマって、マリオの敵という顔以外にも、いろんなクッパが見られるものに仕上がっています。

ヨッシーは、1作目のときも「マリオ」をやる上ではどうしても出したかったんですけど、出番がなくて。ジャングル王国へ行く旅の途中にヨッシーアイランドを通るんで、そこに何匹か出てきたりはするんですけど…。それだけではなくどうしても出番を入れたかったので、最後に卵で出したんです。
そうなると、前作を観た人は、ニューヨークに残ったヨッシーはあの後どうなるのか、って期待しますよね。じゃあ、ニューヨークで事件に巻き込まれるヨッシーを題材に1本作ろうか、みたいな話をしたりとか(笑)。

そういうのを、マシューさんに戻して、練っていくんです。

ブロックごとに少しずつ作りながら隙間を埋めていく、その間のセリフを直していく、みたいなことがわりと自由にできるので、とても楽しく仕事ができました。

◾️映画から生まれた設定は今後どうなる?

宮本 僕らのキャラクターは次にどんなゲームを作るかわからないため、変にキャラクターの設定がいっぱいあるとそれが縛りになってしまいます。
ゲーム性に縛られるのはいいけど、ストーリーを作ったことに縛られたくないというのが、長年「映画をやらない」という理由でした。

だから、今回の映画をやるまでは出自なんかは決めていなかったんですけど、ここへ来て映画をやることで、キャラクターをいろいろと膨らませていくのがおもしろくなってきました。ですので、映画で作った設定も今後のゲームではできるだけ沿っていきたいと思います。

フォックスやピクミン登場への思いは?

宮本 今までゲームというジャンルの中では、違うIPのキャラクターは混ぜないということをけっこう厳しく決めて運営してきたんです。

それは「ミッキーマウスは世界に1人しかいない」ということにウォルト・ディズニーさんもこだわりながらも、同時に2つのアトラクションがあったら2人いないとしょうがない、って仕方なく「同じ場所には登場しない」みたいなことを決めていったと思うんですよね。そうしたように、任天堂でもいろいろなゲームのキャラクターを混在させてきませんでした。

僕は、任天堂は“任天堂劇団”だと思っていまして。任天堂劇団にはいろいろなタレントがいて、ゲームの仕組みを考えて、そのゲームの仕組みに一番合ったキャラクターを使ってきたんですね。だから任天堂のゲーム制作って、『マリオ』になるのか『ゼルダ』になるのかまったく別のものになるのかわからないまま、まずは仕組みを考えるんです。「これは『ゼルダ』にしたほうがいい」とか「新しいキャラクターを作ったほうがいい」とか、そういう作り方をしてきました。

例外として『スマブラ』に任天堂のキャラクターが入り混じって登場するのは、仕方ないのでいろいろ考えた結果、人形という設定にしているんです。任天堂のキャラクターがいっぱい入っているおもちゃ箱。おもちゃ箱だから『スマブラ』だけは混在OKって言ってきたんですね。

けれども、ここにきてもうひとつ、ピクミンというのは例外で、どのキャラクターと混在しても良いことに決めました。
まず掟破りのキャラクターをひとつ作ったので、これから映画に発展していくなら任天堂劇団のタレントからも誰がどんなふうに出たらいいか、共演もあるということを少し緩めてもいいのかなと思っています。

ただ、なんでもありということではなくて、今回はギャラクシーなので「宇宙で優秀なパイロットといえばフォックスだ」と、イルミネーションのほうから提案がありました。

もしライセンスアウトでの制作だったら言われた時点で「NO」って答えると思いますけど、一緒に作っているので「ありかもわからんな」と思ったんです。そこからは、あるとしたらどんな出方が嬉しいのか、ということを積極的に考えていきました。なので『スターフォックス』のキャラがなんでもかんでも出てくるのではなくて、ちゃんと出演してるのはフォックスだけですね。

推しは、堂々と出ているピクミンです(笑)。
ピクミンはいつも端っこに置いていたんですけど、今回は真ん中に出てくるっていう。これからピクミンは世界中のあちこちにいるぞー戦略で動いていきますので、よろしくお願いします(笑)。


2026.04.18

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(この記事は後日画像を追加予定です)

フォックスがマリオと共…

今作のテーマが「ギャラクシー」になったのは?

宮本 「2作目はギャラクシーよね」という話は、1作目を作っているときからなんとなくあったんです。『スーパーマリオギャラクシー』ベースでやるというところまでは決まっていませんでしたが…。

1作目で、ピーチが空を見て、ギャラクシーのことをちらっと言うシーンがあるんですよね。なので、次はギャラクシーに行くのかなあという予感はあったんですけど、脚本の方からはっきりとタイトルを「ギャラクシー」にしたらどうかという話が出てきて、「そうか」と思ったんです。

キノコ王国が舞台の『スーパーマリオ』のゲームは、『マリオ2』『マリオ3』と続きますけど、映画の軸をどこへ展開したらいいのかはっきり決まっていないなかでそれを言われて、「そうか、ステージなのか」って。

というのも、マリオたちはニューヨークからキノコ王国というステージに行きました。そこにドンキーコングのジャングルも取り込んで、スーパーマリオ劇団としては結構いい舞台ができた。
これをさらに広げるには、『オデッセイ』のように横に広がるんじゃなくて、縦に広がる「ギャラクシー」というのがすごく腑に落ちて。それでギャラクシーでまとめていくことになったんです。

だから、ピーチのお話を広げていくにあたってはギャラクシーであろうという流れと、さまざまな「マリオ」シリーズの要素については、前作(『スーパーマリオブラザーズ』)の後のゲームの世界を取り入れたものであり任天堂劇団オールキャストとして楽しんでもらえばいい、という順番でできていきました。

◾️小ネタはどのように詰め込んでいきましたか?

宮本 これは、ひとえにイルミネーションの力ですね。イルミネーションの人たち、監督を含め、僕らよりも『スーパーマリオ』のことをよく知っている人たちなんです。

もうひとつは、部分的な小さなユニットで作るんですね。例えば3分が30個集まると90分になるみたいに。で、僕の作り方ともすごく似ているんですが、無駄なものは作らないんですけど、ほとんど捨てないんですよね。
なので、そのユニットの差し替えがすごく、並び替えがあったりして、本当に密度高く作り込むというのがイルミネーションのテクニックです。

もうひとつ、たとえば親が映画館に子供を連れていった責任として座っているとか、親が感動する話だけど子供が館内を走り回っているとか。そういうものじゃないアニメを作りたいと思ってきたので、そういう意味では息をつかせる暇もなくバーッと90分で終わると決めて作っているのが良かったと思います。

完成したものを観たときの感想は?

宮本 セミナーなどでゲームデザインの話をしたりするときは、「ゲームを作るのが一番難しいのは、作っていると客観性がなくなること」と言ってるんです。
初めて遊んだ人が、3年間そのゲームの世界にどっぷり入った人と同じ感覚で遊ぶわけないので、そこを気をつけて作りましょうとゲームを作っている人には言っているんですけど、映画に対しては僕はまだ素人なので、観れば観るほど入り込んでしまって、客観性をどうやって保つのかなということをすごく意識しました。

ただ、ゲームと同じでほぼ完成するな、これで十分なネタが揃ったなという時期があって。それが大体7割ぐらい進んだところなんです。そこはけっこうゲーム作りに近いなと思っていて、クリスさんも同じような感じで、これでいけると思うタイミングが同じ頃にありましたね。

宮本 いっぱいありますよね。

ゲームは、期待通りのリアクションじゃないけど、とんでもない方向にいくとついていけなくなってしまうところがありますよね。映画は裏切ることができるので、それも映画の一番楽しいところだと思うんですけど、あとはセリフである程度心情が語れることですね。

ピーチが「マリオー」って言って、マリオがわーっと走っていって「握手!」っていうシーンがあるんですが、ああいうことって、ゲームでは絶対できないんですよ。
「握手」って言った後、その気まずさを表すのに、「いや、ちょっと遠慮したかな」って言う。
ああいうところはゲームではやらないので、脚本を練っていると、絵を見ながらベストなセリフを作るっていうのはすごく楽しくできました。

それから、制作中って、大きなスクリーンで、 Dolbyのサウンドも全部入った状態で見ることはなかなかないんですね。どちらかというと、テレビ画面で見てるし、透かしが入っていたり、完全な状態で見られないんです。
だから手前味噌ですが、最終試写のときに結構感動しました。

意外なことに、40年間作ってきたものの思い出みたいなのがありまして、目頭が熱くはならないんですけど、キャラが出てきたりするたびに、ちょっと嬉しいなと思うこともすごくありました。

だから任天堂のゲームを遊んできてくれた人は、そういう思い出があるので、絶対楽しんでもらえると思います。

『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』は2026年4月24日(金)に全国公開です。

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<関連リンク>
▶︎ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー

<映画情報>

■ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー
公開日:2026年4月24日(金)全国公開
声の出演:クリス・プラット、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・デイ、ジャック・ブラック、キーガン=マイケル・キー、ブリ―・ラーソン、ケヴィン・マイケル・リチャードソン 、ベニー・サフディ
宮野真守(マリオ)、志田有彩(ピーチ姫)、畠中 祐(ルイージ)、三宅健太(クッパ)、関 智一(キノピオ)、坂本真綾(ロゼッタ)、山下大輝(クッパJr.)
配給:東宝東和
監督:アーロン・ホーヴァス、マイケル・ジェレニック
脚本: マシュー・フォーゲル
製作:クリス・メレダンドリ(イルミネーション)、 宮本茂(任天堂)

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