ターゲットをゲーマーから開発者に変更した「Ryzen 9 9950X3D2 Dual Edition」。筆者は幸運なことに、レビューサンプルに触れる機会に恵まれた。本稿はその後編。ゲームでの性能を検証する。
Ryzen 9 9950X3D2のゲーム性能を見る
2026年4月22日より順次販売が解禁となる、新たなRyzen 9000シリーズの最上位モデルが「Ryzen 9 9950X3D2 Dual Edition」(以降Dual Editionは省略)だ。国内価格は約18万円、関係者筋の情報ではショップへの入荷量もごく少量とのことなので、かなりの争奪戦になることが予想される。
Ryzen 9 9950X3D2はこれまで1基しか3D V-Cacheを搭載しなかったRyzen X3Dシリーズに、初めて3D V-Cacheを2基搭載。Ryzen 9では2基搭載されているCCD(Core Complex Die)のどちらを使っても3D V-Cacheが効くというコンセプトのCPUだ。だがAMDはかねてより「3D V-Cacheを2基搭載してもコストが上昇するだけで、ゲームの性能向上には寄与しない」ことを繰り返し説いてきた。これは本当なのだろうか?
レビュー前編でも解説した通り、Ryzen 9 9950X3D2はこれまでのゲーマー&クリエイターの集合ではなく、クリエイター&開発者の集合に向けた製品である。コア数はRyzen 9 9950X3Dと同じ16コア32スレッドだが、L3キャッシュが9950X3Dより64MB多く(3D V-Cache1基分)、さらにTDPも170Wから200Wへ増えた。
実際さまざまなベンチマークで性能を計測してみると「CINEBENCH 2026」や「HandBrake」といったCPUパワーで押すタイプの処理においては、Ryzen 9 9950X3D2は9950X3Dを上回る性能を見せたが、劇的というほどの差ではなかった。だが機械学習やシミュレーション(Scikit-learnやOpenFOAM)分野では、デュアル3D V-Cacheの威力を確認できた。
だが最強のRyzen X3Dシリーズを待っていた我々にとって、ゲームの性能比較をしなければ話にならない。すでにAMDから報道関係者向け資料において「Ryzen 9 9950X3Dとゲーム性能は同じ」と釘を刺されている(下図)のだが、本稿ではこれを検証することにしたい。3D V-CacheはもともとEPYC向けの技術だとか、製品ターゲットが開発者向けとかいう話はどうでもいい。Ryzenユーザーにとって、3D V-Cacheはゲームのための装備なのだ。
検証環境は?
今回の検証環境は前編とまったく変わっていない。比較対象としてRyzen 7 9850X3DにRyzen 9 9950X3D、さらにインテル自らが同社史上最強のゲーミングCPUであると豪語するCore Ultra 7 270K Plusを加えた。Core Ultra 7 270K PlusはサポートするメモリークロックがDDR5-7200までと非常に高く、これがCore Ultra 200S Plusシリーズの性能を大きく引き上げている。勝つのは3D V-Cacheか、それとも高クロックメモリーなのかに注目したい。
GPUはRadeon RX 9070 XTを準備し、Adrenalin 26.3.1を導入。メモリーは同一モジュールを使用しているが、クロックはそれぞれのCPUの定格最大としている。Resizable BARやSecure Boot、メモリー整合性やカーネルモードハードウェア強制スタック保護、HDR等は一通り有効化、ディスプレーのリフレッシュレートは144Hzに設定した。
検証環境(AMD)
CPU
AMD「Ryzen 9 9950X3D2」 (16コア/32スレッド、最大5.6GHz)
AMD「Ryzen 9 9950X3D」 (16コア/32スレッド、最大5.7GHz)
AMD「Ryzen 7 9850X3D」 (8コア/16スレッド、最大5.6GHz)
CPUクーラー
EKWB「EK-Nucleus AIO CR360 Lux D-RGB」
(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザーボード
ASRock「X870E Taichi」(AMD X870E、BIOS 4.10)
メモリー
G.Skill「F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK」 (16GB×2、DDR5-5600)
ビデオカード
ASRock「Radeon RX 9070 XT 16GB OC」(RX 9070 XT、16GB GDDR6)
ストレージ
Micron「CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe Gen 5)
Silicon Power「SP04KGBP44US7505」(4TB M.2 SSD、PCIe Gen 4)
電源ユニット
ASRock「TC-1300T」(1300W、80 PLUS TITANIUM)
OS
Microsoft「Windows 11 Pro」(25H2)
検証環境(インテル)
CPU
インテル「Core Ultra 7 270K Plus」 (P8+E16/ 24スレッド、最大5.6GHz)
CPUクーラー
EKWB「EK-Nucleus AIO CR360 Lux D-RGB」
(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザーボード
ASRock「Z890 Taichi」(インテル Z890、BIOS 3.24)
メモリー
G.Skill「F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK」 (16GB×2、DDR5-7200)
ビデオカード
ASRock「Radeon RX 9070 XT 16GB OC」(RX 9070 XT、16GB GDDR6)
ストレージ
Micron「CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe Gen 5)
Silicon Power「SP04KGBP44US7505」(4TB M.2 SSD、PCIe Gen 4)
電源ユニット
ASRock「TC-1300T」(1300W、80 PLUS TITANIUM)
OS
Microsoft「Windows 11 Pro」(25H2)
ゲームにおいて3D V-Cacheは1基では不足か?
ゲーミング性能の検証を始める前に、ゲームのパフォーマンス計測におけるレギュレーションを確認しておこう。まずはGPU側がCPUの足を引っ張らないようにするため、画質は低設定で検証する。テスト条件は以下の通りだ。
●解像度はフルHD(1920×1080ドット)に統一
●ゲームの画質は低設定(またはそれに準ずるもの)
●FSRが利用できる場合はFSRクオリティを利用(グラフではFSR Qと表記)
●FSRはドライバーの設定でFSR 4にオーバーライド
●フレーム生成はオフ
●レイトレーシング(RT)やパストレーシング(PT)は使用しない
●Intel APO/ Intel BOTは対応ゲームにおいてすべて有効(Core Ultra 7 270K Plusのみ)
また、フレームレートの計測は例外なく「CapFrameX」を使用し、フレームレートの計算はmsBetweenDisplayChange基準としている。
「ARC Raiders」
Core Ultra 7 270K Plusが完全に3D V-Cache搭載Ryzenに置き去りにされているのが分かるが、Ryzenの中ではどのCPUも決定的な差は出ていない。強いて言えば非対称な3D V-Cacheを持つRyzen 9 9950X3Dの最低フレームレートが低いと言えなくもないが、他のCPUとの差が小さすぎる。Ryzen 9 9950X3D2のメリットはまったく感じられない。
「Battlefield 6」
物理シミュレーションのおかげでCPU負荷が高いことが分かっているBattlefield 6だが、Core Ultra 7 270K PlusとRyzen 7 9850X3Dがほぼ同着である点に注目。しかしトップはRyzen 7 9850X3D、そのすぐ後ろにRyzen 9 9950X3D2と続いている。
非対称な3D V-Cacheを持つRyzen 9 9950X3Dよりも9950X3D2のフレームレートが伸びている理由について、TDPの高さなのかデュアル3D V-Cacheが効いたのか判断に苦しむところだ。ただシングル3D V-Cache&8コアのRyzen 7 9850X3Dが最速であることを考えると、デュアル3D V-Cacheの恩恵ではないかと考えて良さそうだ。
「BIOHAZARD requiem」
ここでも3D V-Cache搭載Ryzenの差が感じにくい結果となった。ただRyzen 9 9950X3D2のフレームレートが若干高く出ているが、デュアル3D V-Cacheの効果というよりはTDP引き上げによる影響ではないかと考えられる。
「F1 25」
F1 25はわりとCPUの力量差が出やすいゲームだが、今回の結果は(良い方に)予想外であった。最速はRyzen 9 9950X3D2であるが、9950X3Dとの差はごくわずか。つまり3D V-Cache構成の違いよりもTDPの差の寄与率の方が高いのではと推察できる。
「Marvel Rivals」
再びRyzen 7 9850X3Dが最速のパターン。Marvel RivalsではCore Ultra 7 270K Plusが平均フレームレートでは良いポジションにいるが、最低フレームレートの落ち込み方が3D V-Cache搭載Ryzenよりも大きい点に注目したい。
「Marvel’s Spider-Man 2」
こちらもまたCPU負荷が高めのゲームであるが、ここでもRyzen勢はコア数や3D V-Cache構成の差が小さい。それどころかRyzen 7 9850X3Dが僅差でRyzen 9 9950X3D2を抑え込んでいる。CPU負荷の高さとコア数、L3キャッシュの搭載量はあまり関係ないようだ。
「Overwatch」
ここでも同じ傾向。強いて言えばRyzen 9 9950X3D2および9950X3Dの最低フレームレートがやや高いといったところだが、平均フレームレートは互角。これはOverwatchの仕様上フレームレートが600fps以上出せないため、平均フレームレートに差が出なくなったものと思われる。
差が出ないなら最高画質設定でもう一度!
ここまでの検証において、Ryzen 9 9950X3D2がハッキリと9950X3Dを優越するケースは非常に少ないといえる。だがOverwatchの結果のように、低画質設定+RX 9070 XTの組み合わせではフレームレートがソフトウェア的な上限に到達してしまい、差が出なくなってしまったケースもあった。
では、画質を上げてみたら? ということで、ここからはここまで試したゲームを最高画質設定にて再度検証することにする。ただ画質を上げるとGPU側が律速になるため、CPUの差が見えにくくなるという側面も出てくる。果たして今回の検証ではどうなのだろうか?
また、検証にあたり、次のような条件を加えている。
●解像度はフルHD(1920×1080ドット)
●ゲームの画質は最高設定(またはそれに準ずるもの)
●FSRが利用できる場合はFSRクオリティを利用(グラフではFSR Qと表記)
●FSRはドライバーの設定でFSR 4にオーバーライド
●フレーム生成はオフ
●レイトレーシング(RT)は使用するがパストレーシング(PT)は使用しない
●Intel APO/ Intel BOTは対応ゲームにおいてすべて有効(Core Ultra 7 270K Plusのみ)
「ARC Raiders」
画質を最高側に寄せると、低設定では不振だったCore Ultra 7 270K Plusが息を吹き返してくる。平均フレームレートトップはRyzen 9 9950X3D2だが、他のCPUとの差は手動計測故の誤差のようなものだ。ただCore Ultra 7 270K Plusのみ、わずかだが最低フレームレートの落ち込み方が大きいようにも見えるが、これも誤差レベルの差である。
「Battlefield 6」
低設定の時もCore Ultra 7 270K Plusが健闘していたBattlefield 6だが、最高(オーバーキル)設定ではRyzen 9 9950X3D2と並んでいる。2CCD構成のRyzen 9 9950X3D2および9950X3Dはレイテンシーの問題が絡むせいか、1CCD構成のRyzen 7 9850X3Dよりも最低フレームレートが大きく下がっている点に注目したい。
「BIOHAZARD requiem」
BIOHAZARD requiemはPTに対応しているが、現状のビルドではRadeonではRT止まりゆえにこのような設定となった。ここまでCore Ultra 7 270K PlusがRyzen勢と互角に近い戦いを展開してきたが、ここでは最低フレームレートの落ち込み方が大きく、3D V-Cacheを搭載したRyzenの強さが再確認できる。
しかし3種類のRyzenでの比較になると、差が出ているとは言い難い。GPU側が律速になってしまうため差が出ない、というセオリー通りの展開になったようだ。
「F1 25」
F1 25の場合最も重い設定は「超最大」であるが、これはPT設定を含む関係でRadeonでは強烈に重い。そこでRTどまりの「超高」設定を採用した。画質低設定時はRyzen 9 9950X3D2がRyzen 7 9850X3Dに対し優位性を見せていたが、画質を上げてもその傾向は変わらない。ただ性能差がぐっと圧縮されたことで、Ryzen 9 9950X3D2のアドバンテージは紙のように薄くなってしまった。
「Marvel Rivals」
Ryzen勢は平均140fpsあたりで頭打ちになったが、Ryzen 7 9850X3Dの最低フレームレートがやや高いといった感じだろうか。BIOHAZARD requiem〜F1 25に至るまでRyzen勢に大差をつけられていたCore Ultra 7 270K Plusは、ここではライバルに迫るフレームレートを発揮できている。
「Marvel’s Spider-Man 2」
Marvel’s Spider-Man 2はレイトレーシングを「アルティメット」設定にするとレイを追跡する処理が非常に重くなる。CPU負荷も増大するのだが、ここでのトップは意外にもCore Ultra 7 270K Plus。Ryzen勢ではRyzen 7 9850X3Dがトップであり、Ryzen 9 9950X3D2は9950X3Dとほぼ並んでいる。どうやらこの条件では3D V-Cacheのリッチさやコア数よりも、レイテンシー等別の問題が性能に影響するようだ。
「Overwatch」
画質低設定時は600fpsキャップに阻まれてしまいCPUの差が非常に分かりにくくなっていたが、画質を最高設定にまで引き上げても平均フレームレートに大きな差はでなかった。しかし最低フレームレートの落ち込み方を見るとRyzen 9 9950X3D2や9950X3Dの方が落ち込みにくくなっていることが分かる。Overwatchはコア数が多い方が有利という点は筆者の経験で分かっていたことだが、今回の検証で改めてその説を補強できた。
Ryzen 7 9850X3D、ゲーミング最強CPUの座を防衛する
筆者はX3Dシリーズが出てくると多数のゲームでパフォーマンス比較することが多かったが、Ryzen 9 9950X3D2ばかりは例外である。時間的制約が厳しかったせいもあるが、AMDがデュアル3D V-Cache搭載モデルを出さなかった説明の正しさを数サンプルで実感できてしまったから、という理由の方が大きい。
そもそもAMDはゲーマーにRyzen 9 9950X3D2をアピールしていないのだから、ゲームにおいてRyzen 7 9850X3Dを上回ることができなくても別に問題はない。だがRyzen 9 9950X3D2をゲーミングCPUの希望と捉えていた人には残念な話だ。F1 25やOverwatchといった例外はあるものの、多くの状況においてRyzen 7 9850X3Dは安定して強い。Core Ultra 7 270K Plusはやや残念な結果になることも多かったが、これはゲーム次第といったところ。
ゲームの性能においてRyzen 9 9950X3D2がRyzen 7 9850X3Dに完敗した理由をいくつか考えてみよう。まずRyzen 9 9950X3D2が持つ2基のCCDそれぞれに3D V-Cacheがあっても、あるコアからアクセスできる3D V-Cacheは自分のCCDの下にある3D V-Cacheのみで、隣のCCD側の3D V-Cacheにはリーチできない、というRyzen特有の問題がある。アクセスしようとしても盛大なレイテンシーが挟まるため現実的ではない(コア間レイテンシーに関しては前編記事を参照)。
そもそもPCゲーム自体の処理は8コアで十分なことが多い。次の図は前編でも紹介した「PRAGMATA」での動作状況だが、負荷が集中しているのはコア番号1〜8まで。つまり8コアあれば足りるわけだ。コア9〜16はゲームのためというよりも、バックグラウンドで動作するサービスやツール(「OBS Studio」や「Discord」など)のためのものといえる。
今回の検証でAMDがRyzen 9 9950X3D2をゲーマーにアピールしなかった判断は正しかったし、これまでAMDがしてきた説明(3D V-Cacheを2基載せてもゲームで効果がない)は、決して出し惜しみしているわけではなく真実だったのだ、と理解できたことだろう。
ではなぜわざわざRyzenという形でデュアル3D V-Cache構成のモデルを出したのだろうか? 前編の検証で判明した通り、シミュレーションや数値計算系の処理において、Ryzen 9 9950X3D2は異様に強いシチュエーションが存在する。それならSocket AM5版EPYCとして売った方がよかったのでは?
しかしそういった処理を真面目に取り組むような人はメモリー帯域の太いEPYCを選択するだろう。Socket SP3のEPYC 7373Xは16コア+3D V-Cache構成であり、かつL3キャッシュ容量は768MBとRyzen以上に大きい。
さらにEPYC 7373Xは8chメモリーであり、メモリー帯域を太く(DDR4-3200×8で204.8GB/sec。RyzenだとDDR5-5600×2で89.6GB/sec)できる。PCI Express 5.0が使えることがRyzen 9 9950X3D2のメリットだが、数値計算やシミュレーション用途の場合はL3キャッシュ容量やメモリー帯域、メモリー搭載最大容量の方が重要だ。
つまりRyzen 9 9950X3D2はEPYCとして出すには少々押し出しが弱い製品であり、さりとてホビースト向けに推せるほどコストを下げられない。セミプロあるいはプロシューマーにアピールせざるを得ないのであると筆者は考えている。
とはいえ、Zen 5世代Ryzenの最終進化系がRyzen 9 9950X3D2であることには変わらない。そこは評価してもいいだろう。
文● KTU (加藤勝明) 編集●北村/ASCII

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