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米Microsoft(マイクロソフト)は2025年10月16日、Xbox初の携帯機「ROG Xbox Ally」「ROG Xbox Ally X」を発売する。台湾のPC機器大手のASUSTeK Computer(ASUS)と共同開発。据え置き型のXbox Series X|SやPC、モバイル、クラウドゲーミングまで、どこでもXboxを体験できる「Xbox Play Anywhere」戦略の重要なピースとなる。TGSを機に来日したXbox部門のトップ(President of Xbox)、Sarah Bond(サラ・ボンド)氏に話を聞いた。

Xbox部門のトップ(President of Xbox)であるSarah Bond(サラ・ボンド)氏

Xbox部門のトップ(President of Xbox)であるSarah Bond(サラ・ボンド)氏

――2025年10月16日発売の「ROG Xbox Ally」(メーカー希望小売価格:8万9800円)、「ROG Xbox Ally X」(同13万9800円、いずれも税込み)は、Xboxの名称を冠する初の携帯機です。今回の携帯機で何を目指しているのでしょうか?

サラ・ボンド氏(以下、ボンド) マイクロソフトは、どこにいてもXboxのゲーム体験ができることを目指してきました。コンソール、PC、またクラウドと、どのような環境においてもXboxのエクスペリエンスを実現することに長年投資を続けています。

 持ち運べて、ご自身の手の中でXbox体験を楽しめる携帯機への進出は、据え置き機からの次のステップとして、とても自然な流れでした。ほかのエンターテインメントでもそうでしょうが、スマートフォンなどに親しんだ若い世代にとって、どこでもコンテンツを経験できることの意義は、より高まっています。

ASUSと共同開発、他ストアのゲームも単一ライブラリーで管理

――今回の携帯機で重視したことは何ですか?

ボンド ROG Xbox AllyとROG Xbox Ally Xでは、3つのポイントを重視して開発しました。

 1つ目はグリップです。ぜひ一度、ROG Xbox Allyを実際に手にしてみてください。Xboxのコントローラーに触れたことがある方は、グリップの形状やインパルストリガーなど、Xboxコントローラーの体験を思い出し、これまでと違和感なく操作していただけるのではないかと思います。

 2つ目は、Windowsチームとの協力です。本機の搭載OSはWindows 11です。キーボードやマウスがない携帯機でも快適に操作でき、ゲーム体験に没入できるようにWindowsチームが最適化してくれました。不要なモジュールを読み込まないといった工夫で、メモリーも2Gバイトほどの余裕を生み出せました。

 そして3つ目は、デバイスを起動して、Xboxの体験にすぐに入り込める点です。前回のコンソールでのプレーから、ROG Xbox Allyでゲームの続きをすぐプレーできるなど、デバイスを問わずにゲームを継続して遊ぶことができます。

――今回、ハードウエアを単独で開発するのではなく、台湾のASUSTeK Computer(ASUS)と共同開発したのはなぜでしょうか?

ボンド ASUSと話をした時に、彼らの理念や哲学に共感しました。プレーヤーを中心に置き、エクスペリエンスを中心に考えている点が共通していると感じたのです。

 彼らのこれまでの製品デザインや開発の経験、そして私たちのXboxやWindowsを組み合わせれば、ルックアンドフィールを含めた全体のゲーム体験を向上させることができ、短期間で製品をお届けできます。そのような観点からパートナーシップを選びました。

ROG Xbox Allyの持ち心地はXboxコントローラーそのもの。スペック以上に軽く感じられ、エルゴノミクス(人間工学)の観点から工夫を重ねて設計したことがうかがえる

ROG Xbox Allyの持ち心地はXboxコントローラーそのもの。スペック以上に軽く感じられ、エルゴノミクス(人間工学)の観点から工夫を重ねて設計したことがうかがえる

――ソフトウエア面で、特にゲームの管理面で驚いたことがあります。XboxストアやGame Passのゲームだけでなく、SteamやEpic Games Storeなど、他プラットフォームで購入したゲームもライブラリーで一覧表示されています。

ボンド ROG Xbox Allyが初となるのですが、Xboxのストアではなく、ほかのストアで買ったゲームでも、プレーヤーが所有しているゲームをすべて単一のライブラリーとして表示し、起動や管理などができるようになりました。

 プレーヤーの方々がゲームを始める際、実は多くの意思決定というか、気にしなければいけないことが多いのではないでしょうか。 どのストアで購入したのか、どのデバイスにそのゲームがあるのか、どのツールを立ち上げなければいけないか、などです。

 私たちは、よりシンプルでゲームを楽しむためにはどうすればよいのかを考え、投資しています。それが今回、単一のライブラリー機能という形で実現しました。

写真は上位機種の「ROG Xbox Ally X」。ゲームライブラリ画面には、XboxストアやGame Passのタイトルだけでなく、Steamなど他ストアで購入したゲームも表示され、起動などが可能

写真は上位機種の「ROG Xbox Ally X」。ゲームライブラリ画面には、XboxストアやGame Passのタイトルだけでなく、Steamなど他ストアで購入したゲームも表示され、起動などが可能

プレーヤーの利便性追求、Game Passは年間50億ドル事業に

――一方で他のプラットフォーマーと大きく異なるオープン戦略には、正直に言ってリスクも感じました。つまり、「ゲームを遊ぶのはROG Xbox Allyだけど、ゲームソフトはSteamで買う」となり、ビジネスチャンスを逸することにはなりませんか?

ボンド 最終的には、やはりプレーヤーの声を聞くことが重要だと思います。彼らが何を求めていて、何に価値を置いているのか。その価値ある経験を提供できれば、私たちにとって最も大きなビジネスチャンスになると考え、そこにフォーカスして投資を続けてきました。

 その成果の一端が表れているのが、(ゲームのサブスクリプションサービスである)Game Passだと思います。Game Pass事業の年間売上高は、直近で50億ドル(約7500億円)以上に成長しています。さらに、クリエイターへの報酬支払いにおいても、過去最高になっています。

 私たちは、プレーヤーやクリエイターの方々に対して、様々な選択肢を提供したいと思っています。サブスクリプションに関してもそうですし、ストアに関してもそうです。

 最初にGame Passを始めた時に、多くの方々から(収益性やクリエイターのメリットなどについて)疑問視され、質問されたりしました。しかし、プレーヤーの観点から考え、よい体験を提供していくことが大事です。

マイクロソフトの「Game Pass」は、月額制で多数のゲームを遊べるサブスクリプションサービス。「年間50憶ドルの事業に成長した」とボンド氏は語る

マイクロソフトの「Game Pass」は、月額制で数多くのゲームを遊べるサブスクリプションサービス。「年間50憶ドルの事業に成長した」とボンド氏は語る

――そうすれば結果が付いてくるということですね。ソフト面で質問をもう一つ。ROG Xbox AllyのWindowsの最適化に関してです。PCのWindowsチームをどう説得し、協力を取り付けたのでしょうか?

ボンド 私の魅力が伝わったからでしょうか(笑)。というのは冗談ですが、PCのWindowsは、既にトリプルAのゲームタイトルで最も使われているプラットフォームです。

 彼らのWindowsと私たちXboxの専門知識を組み合わせれば、Windowsでのゲーム体験をより良いものにできると思います。

 先日、PC版のXbox アプリでも、単一ライブラリーの機能を使えるようになりました。

 そして、これは第一歩であるということを強調したいと思います。コンソール、携帯機、PCと、どこでも最高のXbox体験を楽しんでいただけるように、将来のロードマップには様々な計画が盛り込まれています。コミュニティーのフィードバックに耳を傾け、常に改良を続けていきたいと思います。

――マイクロソフトは近年、「Xbox Play Anywhere」という戦略を積極的に進めてきました。対応タイトルは追加費用なしでXboxのコンソールやPCでプレーできるようになっています。さらにゲームのサブスクリプションサービスであるGame Passも提供しています。クリエイターやパブリッシャーにとっては選択肢が広がる一方、すべてに対応するのは大変という課題もあります。どのようにクリエイターやパブリッシャーを支援していきますか?

ボンド 私たちも、クリエイターやパブリッシャーの方々の声に耳を傾ける時間はかなり取っています。今回のTGS2025でも多くのパートナーの方々とお会いするつもりです。

 クリエイターの方々が制作したゲームが様々なデバイスで動作し、多くのプレーヤーに届けることができるように支援していくことは重要です。

 最近ではアジアのパートナーが制作するゲームの数が、今までにないほど多くなっています。私たちのクリエイター向けのプログラムには、アジアのタイトルだけでも300タイトル、500人以上のクリエイター方々が積極的に参加してくださっています。

 今後もデベロッパーがXbox、PCをはじめとした各プラットフォームでの開発を支援すべく、開発ツールの改善などの投資を続けていきます。

『Minecraft』映画がヒット、『Fallout』『Call of Duty』の映像化も続々

――最後に少し角度の異なる質問をさせてください。近年、ゲームビジネスの裾野が大きく広がっています。ゲームのIP(知的財産)が映画やドラマ、グッズ、イベントなどで広く活用されるようになりました。マイクロソフトはどのように取り組んでいますか?

ボンド 『Minecraft』を映画化し、今年公開した『マインクラフト/ザ・ムービー』は、全世界の興行収入が年間トップ3に入っています。

 今後も続々とゲームを映像化した作品が登場します。ロールプレイングゲームの「Fallout(フォールアウト)」を映像化したドラマ「フォールアウト」のファーストシーズンは2024年にAmazon Prime Videoで配信が始まり、たちまち人気コンテンツの一つになりました。25年12月、そのセカンドシーズンが配信される予定です。

 さらに先日(9月2日)、FPSの「Call of Duty(コール オブ デューティ)」シリーズを開発・販売するActivisionが、米映画・メディア大手のParamount Skydance(パラマウント・スカイダンス)と『コール オブ デューティ』の実写映画化契約を結びました。

 あらゆる世代の人々が、様々なデバイスでコンテンツを楽しみ、世代を超えた長寿IPになっていく。「どこでもXboxを体験できる」という方針も、そういった流れの中にあると思っています。

(文/永井 学、写真/永井 学、中村 宏)

NGM

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