ユービーアイソフトはSteam用アクション型ローグライト「モービッド メタル(Morbid Metal)」を「東京ゲームショウ2025」(以下「TGS 2025」)に出展した。「モービッド メタル」は、操作キャラクターを切り替えながら荒廃した世界の中で戦うハイスピードアクションだ。
プレーヤーは、朽ち果てた旧文明が広がるポストアポカリプスの退廃的な世界を舞台に、高度なテクノロジーで構成されたマシンたちと戦いながら、ステージ最奥で待ち受けるボス敵の撃破を目指していくことになる。今回は「TGS 2025」に出展された、日本向けローカライズ済みの試遊ビルドの所感と共に、本作を手がけている開発スタジオ「Screen Juice」のプロデューサー、Felix Schade氏へのインタビューを合わせてお送りする。
【MORBID METAL Early Access Release Window Trailer】
シビアなHP管理による死闘の連鎖がプレーヤースキルを研ぎ澄ます!
まず、試遊した上での結論としては「サクサク爽快に進むのに手応えがある」といった一見相反するゲームプレイの感触だ。本作はローグライト要素をスパイスに加えたメレーアクション。キャラクター交代とコンボアクションをベースにしつつ、ドッジ&カウンターによる敵との激しい駆け引きが緊張感・死闘感を演出している。
3Dアクションとしてのキモは、ボスエリア到達までに連戦する過程において、HP管理に悩まされながら、キャラクターをビルドするか否かの取捨選択をしていく点。そして何度もやられながらプレイを繰り返すことで、結果的にプレイスキルが上達する相互関係の面白さが特徴となる。
「モービットメタル」は、一戦終える毎にパワーアップするローグライトの基本サイクルを踏襲している。しかし、プレイ中はHP回復の手段が限られていることから、道中で回復アイテムを探し出すか、ときおり発生する強化イベントの強化と引き換えに回復を選ぶしかない。
構造的には、バトル中の些細な被弾が積み重なると、ステージ後半にプレーヤーが苦しむゲームデザインである。何も考えず戦っているといつの間にかHPが半分を下回っている……なんてことが起こるため、道中は気は抜けない。ちなみに死亡すると、ステージは最初からやり直し。
本作においては、どんどん戦ってどんどん強化、というよりは、先の戦いを意識した立ち回りとビルド選択、その狙いを成就させるためのプレイスキルが特に物を言う。倒す敵の優先度、死角からの攻撃予測、適切なタイミングの回避行動、さらにはアビリティの使い方からパワーアップ選択の意思決定まで、総合的な対応力が求められる。
キャラクターの強みを伸ばすパワーアップも存在している
戦闘後、たまに発生するイベントでは異空間に行ける。戦闘で貯めたリソースと引き換えにパワーアップを選ぶか、回復するか…
幾度の戦いを経て敵のパターンを熟知し、攻防の起伏に合わせた立ち回り方を意識することで被弾を減らす。そうして極力HP回復に費やさないでいた残存リソースをパワーアップに注いだり、被弾しない前提の攻めたビルドを組んでみたりと攻略の糸口を探るのだ。
思い返してみると試遊中は常にプレイングを内省していたし、プレイと狙いがばっちり合致したときにこそ、念願のボス敵に相まみえることができていたと思える。立ち回りの試行錯誤で体力を温存することが試遊ビルドを遊んだ上での発見となった。
体力管理が結構シビア
強力だがリスキーな取引
そんな「モービッド メタル」だが、コアとなるアクション操作についてはストレスフリーで直感的に動ける手触りの良さがある。3D空間を自由自在に跳び回り、走り抜け、敵を次々と屠っていけるテンポ感は軽快で楽しい。3Dアクションと言えども使うボタン数が別段多いということもなく、初回のちょっとしたチュートリアルだけで、戦いに繰り出す操作テクを習得できる明快さだ。
ゲーム中は通常攻撃のほか、スキル2種と特殊スキル(必殺技のようなもの)を絡めた合計4種の攻撃方法が基本ダメージソースとなる。通常攻撃以外はクールタイムの概念があるため、単純に手数が足りなければキャラクターを切り替えるのがてっとり早い気もする。
TGSの試遊ビルドでは初期キャラクターで扱いやすい「フラックス」と、攻撃の初動が遅いものの広範囲・高火力を両立した「エック」の2名がプレイアブルキャラクターとして使用できる。フラックスは全体的にクセのない使用感が大きな強みで、厄介な敵を早々に片付けやすい。攻撃がコンボの合間に差し込みやすくもあり、エックで敵を打ち上げた後、フラックスで追撃するといったことも容易だ。
「フラックス」
攻撃が素早い上にコンボを繋ぎやすい
一方でエックは先述した通り攻撃がやや重く、使いこなすには慣れが必要そうな印象を受けた。ただ、ザコ敵を複数を巻き込める広範囲の攻撃と、敵のシールドを破壊しやすいパワフルな一撃は、状況次第で十分頼れる強みとなる。製品版ではここで紹介したフラックスとエックの他にもう1名のキャラクターが加わる予定で、3名のキャラクターを瞬時に切り替えながらバトルが楽しめるようだ。
「モービッド メタル」はゲームの難易度としては歯応えたっぷりだが、決して“死にゲー”に類されるようなものだとは思わない。自分の技量をパワーアップによって補ってみたり、あえて得意なキャラクターだけで戦い、戦闘時のミスを減らしてみたりと、状況が有利に運ぶよう、ある程度のコントロールで乗り越えられる感触がある。
今回の試遊では十分な試遊時間を用意して貰えていたが、実際の試遊時間内にボス敵まで辿り着けるかはかなり怪しい気がしている。とはいえ、短い時間ゲームプレイ時間であっても、スピード感溢れるバトルの醍醐味はコントローラー越しに体感してもらえると思う。
「エック」
敵が持っている盾を容易く破壊できる
日本のアクションゲームからも着想を得たアクション型ローグライト!
ここらは、Felix Schade氏へのインタビューをお送りする。
「Screen Juice」プロデューサーのFelix Schade氏
――本日はよろしくお願いします。まず、本作の開発にあたって、キャラクターのアクションや挙動を設計する際、参考にした作品やジャンルなどありますか?
Felix氏:「メタルギア ライジング リベンジェンス」や「デビルメイクライ」シリーズ、「ニーア オートマタ」などです。こうした日本のアクションゲーム好きで、開発にあたっては多くの作品たちからインスピレーションを得ています。
――キャラクターデザインや武器、作中に登場する廃墟などに“東洋”のエッセンスを感じました。アジア圏のプレーヤーに注目してほしいところはありますか?
Felix氏:そうですね。先ほどにも挙げた、日本のゲーム作品を含むさまざまエンターテインメントに触れてきたので、そうしたところで日本やアジア圏から受けた影響は特に大きいかもしれません。中でもキャラクターの衣装デザインや武器などにはアジアの要素を感じられるでしょうし、ぜひ注目して見てほしいです。
――バトルシステムにおいて、プレーヤーの成長を促すために工夫された要素はなんですか?
Felix氏:本作はローグライト要素を取り入れたアクションゲームであり、難易度としても手応えのあるものになっています。ローグライトゲームとして、プレーヤーが困難に打ち勝つときもあれば、逆に負けてしまうときもあります。
プレイ中に獲得できるパワーアップ効果の組み合わせ、つまりアップグレードのシナジーなどはもちろん大切ですが、本作ではキャラクターを恒久的に成長させる仕組みも用意しています。ステージ攻略におけるアップグレードと、永続的な成長要素の2つの軸は、ゲームを進めていく上でコアなシステムだと考えています。
――ローグライト要素に対するこだわりなどについてお聞かせください
Felix氏:キャラクターのアップグレードを中心としたビルドのカスタマイズ要素です。試行錯誤を重ねる楽しみがあるかと思います。また、本作ではゲームを進めていくと、プレイアブルキャラクターも増えていくので、そうしたキャラクターのアンロック要素も魅力になるかと思います。
――世界観としては“シミュレーションされた世界”とのことですが、そこにポストアポカリプスの退廃的な世界を組み合わせた、美術表現の意図についてお聞かせください
Felix氏:「モービットメタル」の世界は、人類に待ち受ける“近い将来”を仮想的にシミュレートしています。窮地に立たされた人類はそうした絶望的な結果を知って、救いを求めているという状況です。
美術表現としては人間たちが今まさに避難している最中といった、危機感を煽るようなものを演出しました。アジアをモチーフとする荒廃した建物が作中には数多く登場していますが、あくまでそれらはゲームの世界をデザイン的に演出するモチーフに過ぎません。
――小規模スタジオとしてこのプロジェクトを進める上で、もっとも挑戦的だった点はなんでしょうか?
Felix氏:今現在はゲーム開発も順調に進んでいるのですが、当時はとにかくゲームの要素一つひとつを磨き上げていくフェーズに終わりが見えませんでした(笑)。それが凄く大変だったのを覚えています。プロジェクトを進めていくために経験不足だったこともありますし、小規模だからこそ手探り的な部分もありました。開発していく中で、区切りを見つけるところは特に挑戦的だったと言えます。
ゲームの要素を磨き上げていくことには終わりがありません。確かにそれ自体は大変なことですが、クリエイティブでもあり、楽しい部分でもあります。ですが、開発が進みプロジェクトの参加メンバーが増えていくにつれて、次第に区切りを付けられるようになりました。また、テストユーザーから頂いたユーザーフィードバックも開発する上では参考になります。好評なものはそのまま残すことで、これも一つの区切りとするようにしています。
――今後ゲームをどのように発展させ、完成へと導いていきますか?
Felix氏:これまでの8年間にわたるゲーム開発でさまざまヒントやコツを掴んできました。ノウハウも成熟してきているので、あとはいかにしてゲームを遊ぶプレーヤーたちに、より楽しんでいただけるかを模索しつつ、開発を進めていきます。
――このインタビュー収録はビジネスデイに実施していますが、ビジネスデイの時点でインタビューを始める前は「モービットメタル」のブースが盛況でした。最後に現地でゲームをプレイしてくれた方、ゲームを待ちわびているユーザーにメッセージをお願いします。
Felix氏:まずはこれまでゲームをプレイしてくれた方々に感謝を伝えたいです。ありがとうございます。そして、現地で多くのユーザーたちにこのゲームを遊んでもらえることがとても嬉しいです。
世界中のゲームファンや、名だたる大手のゲーム企業、またインディーチームの数々が一緒になって作り上げる「東京ゲームショウ」という場の一員になれたことを嬉しく思います。私たちとしても「モービットメタル」が初めてTGSに出展する作品になるので、感慨深い気持ちでいっぱいです。
「モービットメタル」は、アクションゲームが好きな方やローグライトファンの方々にたくさん楽しんでいただけるゲームになるよう鋭意開発を進めています。近日中にはアーリーアクセスも始まりますのでぜひ、プレイしていただけたらと思います。
――本日はありがとうございました!