PC用ゲームパッドへの注目度が高まっている。家庭用ゲーム機とのマルチプラットフォーム化が進み、PCもゲームプラットフォームの1つとして認知が進む中で、ゲームパッドの利用率が上がっていくのは必然と言える。

 また最近は、デバイスの技術性能や機能で差をつける製品が多く登場している。見た目はどれも同じような製品に見えて、中身や使用感は大きく異なるというものも多い。その分、価格もピンキリで、どれを選べばいいのか難しい。特に純正品に位置付けられる製品が今年に入って値上がりしたことで、手が出にくくなったことも大きな影響を与えている。

 トレンドとしては、アナログスティックが常時入力状態になってしまうドリフト現象が起きにくいとされる、ホールエフェクトセンサーの採用がある。センサーに物理的接点がないため消耗しにくいというもので、平たく言えば耐久性が高い。ただし品質はセンサーだけでは決まらないので、非搭載の製品が劣るとも限らない。

 もう1つのトレンドは背面ボタンだ。以前から高級機種の一部には搭載されていたが、最近は安価な製品でも搭載しているものが増えた。中指や薬指など、従来使わなかった指でボタンを操作するもので、ボタンの機能を任意に割り当てられるのが特徴だ。複数ボタンの同時押しを割り当てられるものもあり、操作が忙しいアクションゲームなどで利便性が高い。

 今回は、Windows PC向けのゲームパッドの中から、機能や価格で違いが見える10製品をチョイスした。プレイするゲームのジャンルや、使用頻度、求める性能は人によって違うので、各々の環境で最適な製品探しのお役に立てれば幸いだ。

 なお各製品の価格は、7月31日時点でのAmazonの価格を記載している。

マイクロソフト「Xbox ワイヤレス コントローラー + USB-C ケーブル」マイクロソフト「Xbox ワイヤレス コントローラー + USB-C ケーブル」

 Xbox Series X|S用コントローラーと同じもので、いわゆる純正品のポジションにある製品。名前にワイヤレスとあるが、本製品のみで使用する場合は、付属のUSB Type-Cケーブルで有線接続すれば、バッテリは不要だ。単3形電池2本、または別売の専用充電池を使用すれば、Bluetooth接続もできる。

 以前は迷ったらこれを買っておけと言えるコストパフォーマンス良好な製品だったが、今年になってから価格変更があり、実売価格で3,000円近くも高くなってしまった。純正品を信頼して買うか、別の他社製品を選ぶか、とても悩ましい状況になっている。

Turtle Beach「Rematch Core」Turtle Beach「Rematch Core」Turtle Beach「Rematch Core」インターフェイス有線(USB)ケーブル長2.5mバッテリ-本体サイズ160×120×65mm重量280g価格3,880円

 XboxとWindowsの公式ライセンス商品。Xbox純正に近いデザインで、ヘッドセット端子も用意されている。接続は有線のみとなるが、実売4,000円弱と安価で、高価な純正品を避けたい方には選びやすい。迷彩柄を基調とした5種類のカラーバリエーションも用意されている。

エレコム「GP30XV」エレコム「GP30XV」エレコム「GP30XV」インターフェイス有線(USB)ケーブル長1.8mバッテリ-本体サイズ161×99×65mm重量245g価格2,718円

 FPSゲームパッドを標榜し、LT/RTにマイクロスイッチによるデジタル入力を採用しているのが特徴。アナログスティックの配置が平行なストレートと互い違いになるクロスの2種類、およびバイブレーション機能の有無で、計4つのバリエーションモデルを展開している。家電量販店などで広く売られており、入手性が良い。

GRAPHT「GRAPHT Omni」GRAPHT「GRAPHT Omni」GRAPHT「GRAPHT Omni」インターフェイス有線(USB)、無線(専用ドングル)ケーブル長1mバッテリ600mAh内蔵リチウムイオン電池本体サイズ156×104×60mm重量190g価格4,950円

 アナログスティックにホールエフェクトセンサーを採用。有線・無線両対応で、ポーリングレートは1,000Hzと高速。ジャイロを内蔵しており、PCのほかSwitchにも対応する。重量は190gと軽量。かなりハイスペックな製品ながら、価格は5,000円未満に抑えられている。ブラックとホワイトの2色展開。

MSI「FORCE GC300 WIRELESS」MSI「FORCE GC300 WIRELESS」MSI「FORCE GC300 WIRELESS」インターフェイス有線(USB)、無線(専用ドングル)、Bluetoothケーブル長2mバッテリ600mAh内蔵リチウムイオン電池本体サイズ148×111×68mm重量230g価格6,473円

 PCパーツメーカーとして知られるMSIのゲームパッド。有線・無線・Bluetoothと3通りの接続方法に対応する。ヘッドセット端子はミュートボタンも用意。背面ボタンを2つ搭載。L/Rトリガーは押し込みの深さを2段階に調整できる。ブラックとホワイトの2色展開。

HyperX「Clutch Tanto Mini」HyperX「Clutch Tanto Mini」HyperX「Clutch Tanto Mini」インターフェイス有線(USB)ケーブル長2.95mバッテリ-本体サイズ130×93×46mm重量165g価格5,900円

 Xboxライセンス商品で、ヘッドセット端子や共有ボタンまで備えた最新型ながら、コンパクトなサイズにまとめられた製品。重量は165gで、世界最軽量のXbox公認有線コントローラを謳う。

HORI「ファイティングコマンダー OCTA Pro」HORI「ファイティングコマンダー OCTA Pro」

 前面に6ボタンを配置した人気商品「ファイティングコマンダー OCTA」の上位機種。PlayStation 5用だが、XInput対応でPCでも使える。また有線・無線の両対応となった。左アナログスティックは8角ガイド形状、右アナログスティックはスライドスティックを採用。方向キーは3つの形状から選んで換装できる。さらに背面ボタンを2つ搭載、185gの軽量さなど、各所にこだわりのある製品となっている。

Turtle Beach「Stealth Pivot」Turtle Beach「Stealth Pivot」Turtle Beach「Stealth Pivot」インターフェイス有線(USB)、無線(専用ドングル)、Bluetoothケーブル長2.5mバッテリ内蔵リチウムイオン電池本体サイズ未掲載重量未掲載価格1万9,800円

 左右のボタンとスティック部が回転して裏返り、配置をダイナミックに変更できるギミックを搭載。一般的なXInputの配置から、アナログスティックを廃した6+2ボタンと方向キーという独自配列にスイッチできる。小型ディスプレイを内蔵した未来的な外見も特徴的だ。なお格闘ゲーム向けゲームパッドで知名度が高い「Victrix Pro BFG」を発売したVictrixは、Turtle Beach傘下にある。

Razer「WOLVERINE V3 PRO」Razer「WOLVERINE V3 PRO」インターフェイス有線(USB)、無線(専用ドングル)ケーブル長3mバッテリ内蔵リチウムイオン電池本体サイズ156.7×105.7×65mm重量304g価格3万4,980円

 PC向けゲームパッドでは常に最高峰の製品を提供するRazerの最新型。Xbox公式ライセンス商品でありつつ、ホールエフェクトセンサー搭載アナログスティックは、長さの異なる2種類のキャップから選択可能。背面4つ、トリガー横に2つの計6つのカスタム可能な追加ボタンを搭載する。方向キーはマイクロスイッチを採用。ブラックとホワイトの2色展開。

PowerA「バトルドラゴン・ワイヤレスコントローラー」PowerA「バトルドラゴン・ワイヤレスコントローラー」

 アナログスティックとL/Rトリガーにホールエフェクトセンサーを採用。LRトリガーは3段階に深度調整が可能で4つの背面ボタンを搭載。有線・無線接続に対応。アナログスティックを高くできるキャップが付属する。トレンドを押さえた設計ながら、実売5,000円弱と安価。

PowerA バトルドラゴン・ワイヤレスコントローラーをテスト

 今回紹介した中で筆者が最も注目したのが、PowerAのバトルドラゴン・ワイヤレスコントローラーだ。こちらを購入して試してみることにした。

前面のデザイン。XInputとしては標準的な形状

 本体サイズは「Xbox ワイヤレス コントローラー」とほぼ同じで、ボディ形状もそっくり。持った時の感覚もほとんど違いがない。重量は実測で221g(ケーブル含まず)。Xbox ワイヤレス コントローラーは実測で242g(ケーブル、バッテリ含まず)なので、約20gほど軽い。実際に持った時にもわずかに軽いのが分かる。

 最大の特徴であるホールエフェクトセンサーのアナログスティックも、手ごたえはXbox ワイヤレス コントローラーと変わりない。ドリフトしにくいのは耐久性の話になるので現時点では判断できないが、操作感は上々だ。

 L/Rのトリガーもホールエフェクトを採用。トリガーの深さを変えるロックは3段階に調整でき、深い方の2段階はアナログだが、最も浅い設定ではオン/オフ以外の入力にならず、デジタル入力として扱われるようだ。デジタル入力でこと足りるゲームでは、押し込み動作が不要になるので、反応は速くなり、押し込みが短い分だけ疲れにくくなる。

背面。L/Rトリガーの深さを3段階に調節するスイッチがある

 そのほかのボタンはスタンダードな作りで、十字ボタンも普通のボタン式。感触も安っぽい感じではなく、浅めのストロークでしっかりしたクリック感がある。総じて触った感じはXbox ワイヤレス コントローラーととても似ているが、十字ボタンはストロークが深く、いかにも一般的なラバー式という感触なので、好みは分かれるだろう。

 大きな違いは背面ボタン。左右2つ、計4つの背面ボタンがある。グリップを握ると中指と薬指がそれぞれ当たる位置にあり、とても押しやすい位置に配置されている。ボタンの機能はPC用アプリ「PowerA PC HQ」で設定でき、何も設定しなければ背面ボタンは機能しない。

専用ソフト「PowerA PC HQ」で背面ボタンの機能変更など、さまざまな設定ができる

 接続モードは有線と、USBレシーバによるワイヤレス接続、およびBluetooth。このうちBluetoothはXInputのゲームパッドとして認識してくれず、上手くゲームで使用できなかった。有線接続とUSBレシーバによるワイヤレス接続は、どちらもXInputで問題なく使用できる。DirectInputに切り替えも可能だ。なお3タイプの接続の切り替えは、背面にあるスイッチで行なう。USBアダプタを本体に収納する機能は持っていない。

無線接続用のUSBドングル。少々大きめで収納場所がない

 バッテリ残量はBluetooth接続した時に確認できるほか、バッテリ残量が少ない状態でホームボタンを長押しすると、USB端子の隣にあるLEDが赤く点滅する。バッテリ残量が十分ある時には光らない。曖昧な通知なのだが、バッテリ持続時間は20時間としており、赤い点滅が出てからも数時間はプレイできたので、実使用時に困ることはそうそうない。

 ボタン配置はXbox ワイヤレス コントローラーに酷似しているが、共有ボタンがある位置のボタンはTurboボタンで、連射機能の設定に使う。共有ボタンが必要ならXbox公認製品を選ぶのがいいが、不要であればPC用ゲームコントローラとしては不自由はない。

 ホールエフェクト採用、3段階のトリガーロック、4つの背面ボタンなど、昨今のゲームパッドの流行をきっちり取り込んでいる。それでいてXbox ワイヤレス コントローラーとほぼ同一のデザインで扱いやすい。そして価格は5千円弱と安い。

 唯一気になる点は、筐体前面にうっすらとドラゴンが描かれていること。アジア向けの特別仕様らしいが、好みが分かれるところだ。ゲームをプレイし始めれば、手元のデザインは気にならないのだが。いずれにせよ、極めてコストパフォーマンスに優れる製品であることは間違いなく、使用感もとても満足している。

 そして本製品で見逃せないのが、2年保証が付いていること。新しいゲームパッドを購入して、すぐ壊れたらどうしようという不安は常にある。この価格なら2年も持てば十分とも思えるが、より安心感を持って選べるのがありがたい。

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