1999年にスクウェアからプレイステーションでリリースされた名作RPG「サガ フロンティア2」のHDリマスター版がプレイステーション 5/プレイステーション 4/Nintendo Switch/PC(Steam)/Android/iOSで3月28日に発売された。価格は5,610円(税込)。

 「サガ フロンティア2」は、発売から26年が経った今でも人気が高く、ファンからはリマスター化が熱望されていたタイトルの1つであった。今回のリマスター版では原作のゲーム性をベースに、グラフィックスの高解像度化はもちろん、より快適なゲームプレイが楽しめるよう様々な調整が入っている。

 「サガ フロンティア2 リマスター」をいち早くプレイすることができたので、本稿では、これまでの「サガ」シリーズとは少し毛色の違った本作独自のゲーム性、進化したポイントや追加要素などを合わせて紹介していこう。

 なお、重大なネタバレは含まないが、一部のシーンや展開について言及するので、気になる方は注意してほしい。

【『サガ フロンティア2 リマスター』プロモーショントレーラー】

グラフィックス&遊びやすさの向上をはじめ、ファンも唸る新要素が追加

 HDリマスターというとグラフィックスを高解像度化し、ゲームの内容自体はほぼ当時のままというものも少なくないが、過去に配信された「サガフロンティア リマスター」では新主人公のヒューズが追加されたりと、スクウェア・エニックスのリマスターは力の入れ具合が違う。今回の「サガ フロンティア2 リマスター」も例に漏れず、かなりの調整や追加要素が盛り込まれている。

 オリジナル版からの特徴でもある水彩画調の温かみのある背景やドット絵はより鮮明に表現されており、まるで絵本の世界を冒険しているかのようである。

上がオリジナル版で下がリマスター版。解像度が上がっているのは一目瞭然で、ボヤっとしていた背景がクッキリと描かれている。画面もただ横に引き伸ばしただけではなく、空間の広がりを感じられるよう手が加えられている

 本作は2人の主人公の長き歴史が複雑に絡み合っているため、オリジナル版をプレイしていたときは各エピソードがどのくらいの時間軸の物語なのかが正直迷子になりがちだった。

 しかしリマスター版では、エピソード選択画面で年表の様に年代と地域が表示されるようになっている。これにより“ギュスターヴがやんちゃなワルガキをしていた頃に、ウィルは両親の死の謎を追っていた”といったように2つの時系列が整理しやすくなっているので、ストーリーがスッと頭に入り易くなっている。

上がオリジナル版で下がリマスター版。リマスター版では細かい年代の表記が加わりで時系列が理解しやすくなった。キャラクターのアイコンも表示されるようになり、どちらのエピソードかが直感的にわかる仕様に

 年表の他にも遊びやすさを追求した調整は数多くあり、まずUI周りは必要な情報が非常に見やすく整理されている。

 筆者的に地味ながら便利だと感じたポイントは、町やダンジョンで次のエリアに進めるポイントにアイコンが表示されるようになっている点だ。次のエリアに進めそうだけど、いざ進んでみたら行き止まりという場面が多かったので遊びやすさが格段に上がっている。

上がリマスター版で下がオリジナル版。オリジナル版では進む道がわかりづらく結構迷子になったが、リマスター版では先に進める道がアイコンで表示されるという親切な設計になっている

 スクウェア・エニックスのリマスター作品では定番の倍速機能はもちろん実装。移動速度とバトル速度を2倍や3倍に変更することも可能となっている。

 町やダンジョンはそれほど広くはないので移動速度は通常でもあまり気にならないが、本作は戦闘のテンポが少しゆったりしていることもあり3倍速でサクサク敵を蹴散らせるのは爽快の一言だ。

移動速度倍速は、もはや制御不能レベルの速さになる戦闘速度を上げると、まるで別ゲーのような快適な戦闘が楽しめる

 「サガ」シリーズはキャラクターにレベルの概念がなく、戦闘を重ねてステータスがアップするという仕様。

 お気に入りのキャラクターを心ゆくまで成長させるのも醍醐味なのだが、本作はエピソードによってパーティキャラクターの入れ替わりが激しいため、育成が無駄になってしまうキャラクターも多かった。

レベルではなくステータスが上がるというシリーズ伝統のシステム中にはパーティメンバーから永久的に離脱してしまうキャラクターも

 しかし、新たに「成長能力継承」システムが実装され、別のシナリオで育てたキャラクターのステータスを好きなキャラクターに引き継ぐことができるようになっている。

 1度引き継いでも継承したステータスは装備に様に自由に付け外しが可能なので、難しいことを考えずに気軽に継承することができる。登場する回数が少ないキャラクターの成長も活きるというこの新システムの追加は革命的な進化といえる。

「成長能力継承」はメニューからいつでも継承可能。育てたキャラクターのステータスが上乗せされるので、前線に出るキャラクターにはとりあえず継承しておきたい

 また、オリジナル版ではポケットステーションで遊べたミニゲーム「GO!GO!ディガー」がゲーム内に実装されている。

 当時はポケットステーションがかなりの品薄でなかなか手に入らず、筆者と同様にポケットステーションを持っておらずミニゲームが遊べなかったユーザーも少なくないかと思う。

 ポケットステーションで遊ぶのと全く同じゲーム体験とはいえないが、当時の雰囲気を再現したドット絵を見たときはエモーショナルな気持ちにさせてくれた。

懐かしのポケットステーションのゲームも収録してくれているというファンサービスも

 最後に、本作の目玉といえる新要素に新シナリオや操作キャラクターの追加。ゲームクリア後に解放されるコンテンツとして、完全新規シナリオの解放や強敵ボスの出現。クリア時のデータを次の周回に引き継げる「NEW GAME+」など、リマスターの域に留まらない“まさに完全版”といっても過言ではない内容となっている。

 プレイステーションでリリースされてから26年も経っていることもありストーリーの細かな部分は結構忘れており、新鮮な気持ちでプレイすることができた。ギュスターヴとウィルが織り成す物語は先の気になる展開の連続で、プレーヤーを惹き込むパワーを改めて感じた。

 当時プレイしていた人はもちろん、これまでプレイする機会がなかった人にもぜひプレイしてもらいたい作品だ。

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