2026年3月20日と21日の2日間,インディーゲーム祭典「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2026」(以下,TIGS2026)が,東京・高円寺の科学体験施設「IMAGINUS」(イマジナス)で開催された。かつての学び舎に並んだ数多のディスプレイは,まるで平行宇宙のように,インディーゲームの“多様な可能性”を示していた──。

工具貸し出しコーナーの近くに飾られていた,「ほりほりドリル」(Steamストアページ)の等身大パネル。見せ方がうまい


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2026年3月20日と21日の2日間,インディーゲームの祭典「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2026」が,東京・高円寺にある「杉並サイエンスラボ IMAGINUS」で開催された。今回は前編として,TIGS AWARD 2026 大賞を受賞した「CYCLIA JOURNEY」などを紹介していく。
[2026/03/27 18:43]
レポートの前編では,アワード受賞作を中心に比較的「整った」タイトルを中心にとりあげた。しかし,100を超える出展作品の中には,独特の手触りやシステムでプレイヤーの感覚をハックしたり,より個人的な思いをぶつけたりするような作品も多くあった。
後編では,そんなほかとは一線を画す雰囲気があったゲームや,シンプルに筆者が気になった作品をお届けしよう。

XR(VR/AR/MR)関係のアプリやシステム,ゲームの開発を手掛けるフレームシンセシスのブースには,同社と接点のある,個人開発者・白樺バイオーム氏(@sirakababiome)のスマートデバイス用ゲーム「ANIMAGICAL」(アニマギカル)も展示されていた。なかなかに「侠気」を感じさせるブースだった


犬を探すウォーキングシム「Finding Polka」(外部サイト)のブースには,シャレた缶詰も
過去記事でも紹介した,個人開発者・ヨシオ氏の新作「脱毛サロンシミュレーター」(Sreamストアページ)。非常に人気で,試遊台が空かずプレイできなかったので,チラシをお見せしておこう
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![愛犬リリーとの夢は続く。個人制作ゲーム「リリーinドリームワールド」は作者自身の“物語”が色濃く表れたバトルアクションだ[TGS2025]](https://www.wacoca.com/games/wp-content/uploads/2026/04/1775095955_672_010.jpg)
ここ数年,猫視点の探索アドベンチャーが注目を集めることがあるが,それなら犬視点のゲームも面白い切り口があればアリなのでは? そんな犬好きな筆者が東京ゲームショウ2025の会場で見つけたのが,iGi×創風ブースにて出展されていた「リリー in ドリームワールド」だ。
[2025/09/28 18:30]
めくるりウィッチ
出展者:SleepingMuseum

後編のトップバッターは,ブースの前を通りかかった瞬間「おや?」と足を止めてしまった一本。ダークな絵本のような“一度迷い込んだら帰れない”雰囲気と,チャーミングな主人公が印象に残った「めくるりウィッチ」だ。

やることは至ってシンプルで,「ダイヤル錠」のようにステージをぐるぐる回転させ,魔女の子の「目」を回してやるだけ。

目が回るのは,プレイヤーのほうかもしれない
ステージを揃えてうまく道を作り,さらに森の住人たちの困りごと(?)を解決していくと,物語がアンロックされて先に進めるようになる。なんとなくパズルっぽくも見えるかもしれないが,実際は変わった手触りのアドベンチャーに近い。

この「ぐるぐる」かつ,魔女の子が「ぴょんぴょん」ステップする感じは,動かしているだけでもなかなか心地いい。ロジックや連想が,ピタッとハマる直前の「こうかな?」というワクワクが続くというか……。筆者が見ていたかぎりだが,ブースの前から人が途絶えなかったのも納得だ。

ステップを踏んで戦うボス戦がスタート!
開発は,「テラセネ」「まつろぱれっと」などを手掛けた桐 武史氏で,聞けば子どものころ,ダイヤル錠をガチャガチャいじるのが大好きだったそうだ。
グラフィックスはまだ一部仮のようにも見えるが,今からウィッシュリストに入れておき,森に迷い込む準備をしてみてはいかがだろう。

クワイエット急行909号室
出展者:STUDIO 909

1週間で大陸を横断する,豪華クルーズトレイン「クワイエット急行909号室」。そんな,いかにも“何か”が起きそうな,いや起こらなかったらウソだろうという場所が本作の舞台だ。
これだけでも気になるが,制作が「ナツノカナタ」などで知られる,Kazuhide Oka氏(@nKTqcTFkvMEjKcX)たちが立ち上げたスタジオとなれば,チェックせざるをえない!

客室や食堂車を歩き回り,ほかの乗客ととりとめもない会話をして,流れる景色をぼんやりと眺める。そんな静かな時間が流れる,一見ゆっくりした“車窓の旅”的なゲームといった感じだが,じつはその裏側には濃密な謎解きが潜んでいる。

謎解きのカギとなるのは,「存在しないはずの909号室」だ。旅の終わりから始発へと戻るループ構造の中,プレイを進めていくと,乗客たちの悩みや車内の景色が少しずつ変わっていく。
また客車,食堂車,貨物車両など,車両の編成を組み替えることで新たな「通路」が開けることもあるらしい。

なお本作は,経済産業省が主導する次世代クリエイター支援プログラム「創風」に採択された作品でもある。公(おおやけ)からもお墨付きの作品というわけで,今さら筆者が付け足すまでもないかもしれないが,完成が楽しみなタイトルだ。

ポップの絵は,背景美術を手掛けるミヤハラコウヘイ氏(@miyaharakohei)が描いたもの。かわいい


BANDIT KNIGHT(バンディットナイト)
出展者:Game Float

過去のコンテストで賞を獲得した作品が,発売近くになってどのように進化したかを見に行くことも,インディーイベントの楽しみのひとつ。
第2回 GYAAR Studio インディーゲームコンテストでプラチナ賞に輝いた本作も,いよいよ正式リリースに向けての最終仕上げの段階に入ったようだ。

遊び方は極めて明快。プレイヤーは盗賊ギルド「キバドリ」の一員となり,町中から金目のものを盗んで,盗んで,盗んで,盗んで……ただそれだけだ!

ビキニアーマーだと?
3Dの2.5次元ドットで描かれた世界を,これまたドットで描かれたキャラクターが軽快に駆け回る。悪人(たまに善人?)からお宝を頂戴し,懐をジャリンジャリンいわせるのがとにかく気持ちいい。

久々に触れてみると,「予告状」システムによって作戦を立てて盗めるようになっていたり,スキルツリーによる強化も可能になっていたりと,なにやら隔世の感があった。


盗んだお宝で腕を磨き,さらにデカいヤマを踏む……。スノーボール的に発展していく「悪いことしてるのに爽快」なサイクルが楽しいタイトルだ。

Steamストアページでは,現在もプレイテストの参加者を募集中だ。本作の完成度アップに貢献したい「義賊」な諸兄は,ぜひリクエストしてほしい。

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![盗んで強くなる! 盗賊が主人公のドタバタアクションゲーム「BANDIT KNIGHT」プレイレポート[TGS2024]](https://www.wacoca.com/games/wp-content/uploads/2026/04/1775095991_459_011.jpg)
東京ゲームショウ2024のPhoenixx/GYAAR Studioブースに,Game Floatが開発する「BANDIT KNIGHT」がプレイアブル出展されていた。「盗むことが強さにつながる」という,ユニークなアクションゲームとなっている本作のプレイレポートをお届けしよう。
[2024/10/04 13:32]
Staffer Retro: 超能力推理クエスト
出展者:Team Tetrapod

TIGS2026のアワードで,「脳汁スパーク部門」にノミネートされていた本作。韓国のTeam Tetrapodが手掛ける,超能力推理アドベンチャー「Staffer」シリーズ最新作だ。

超能力を使って過去の事件を追体験し,証拠を組み合わせて真実に迫る……という内容だが,プレイヤーが推理し,謎解きをしないと先には進めない。
「脳汁スパーク部門」にノミネートされただけあり,なんでもかんでも超能力で解決してしまうといったわけではないようで……。脳で考える必要もありました。

キャラクターの表情や仕草は,とにかく“ぬっるぬる”に動く。そのリッチな仕上がりは,なかなかに見応えアリ。

なお推理システムも総当りではなく,証拠を選んで,適切な場所に穴埋めしていくような仕組み。謎の全容をつかんでいればそう難しくはないが,適当に遊んでいると詰まるかも。外はヌルヌル,中はガチ。ヌルッ,ガチッ! な味わい,いや歯ごたえを楽しめた。

解けてよかった……
出展と同時にSwitch版の開発決定がアナウンスされ,CAMPFIREでのクラウドファンディングも予定されるなど,日本展開への意気込みを感じた本作。気になる人は,公開中の無料デモ(Act 1)を遊んで,スパーク具合を確かめてみてはいかがだろう。

クラウドファンディングの支援者には,こんなグッズも贈られる予定

HIPS N NOSES
出展者:PepperStones.Inc

韓国インディーゲーム界からの刺客をもう1作品。ブースの佇まいに惹かれ,思わずプレイしてみたのがこの「HIPS N NOSES」だ。

展示に使用されていたPCは,4GamerではおなじみのGALLERIA
本作の舞台は,誰もが眠れなくなってしまった世界だ。プレイヤーは,唯一“夢”を見ることができる主人公のメラとなり,カフェを経営し,人々に飲み物を提供していく。ここまでは,よくあるチルくてコージーな経営シムなのだが……。


飲み物は,まるで野球のノックのようにトレイで打ってお客に提供! 寝れない以上に,なんだか様子がおかしい(笑)。
さらにメラがベッドに入ると,ゲームの様相は一変する。「夢の世界」へとダイブし,四方八方から襲い来るモンスターをなぎ倒しつつ,飲み物の材料となる「記憶の花」を集めるヴァンサバ系ローグライトアクションになってしまった。
強化を選んで,どんどんインフレしていく敵に対抗


ご覧のとおり,キャッチーなキャラデザインと,ゲーム中のなんちゃらトゥーン風の3Dモデルの対比もいい感じで,「刺さる人にはトコトン刺さる」ような気がする。リリースは,2026年の後半を予定しているとのこと。

夜の名前
出展者:ヨアケラボ

舞台となるのは,2000年代のゲームセンター。どこまでも明るく,音楽と操作音がガチャガチャと鳴っていて,若者たちの育ち始めた自意識が交錯していた空間──。

ヨアケラボの市村 圭氏(@kei_conv)と矢澤豆太郎氏(@yzw_mmtr)が贈る「夜の名前」は,音楽ゲーム文化を背景に据えた“女女感情”ノベルゲームだ。……あまり馴染みがない言葉なので補足すると,女性同士の友人以上・恋愛未満な関係性が描かれる内容となっている。

特筆しておきたいのは,そのしっかりした2000年代らしさ。特に当時中高生だった人は,タイムトリップしたような気持ちになれるかと思う。さらに,作中に登場する音ゲーの曲は,かの.THi(竹安 弘氏)による書き下ろしという豪華ぶり。

「pop’n music」ぽい作中のゲーム
会場でプレイできた試遊版は,高校3年生のキリエと,ゲーセン友達のチエが交流するというもの。2人の関係性だけでなく,コミュニケーションノートの文面から垣間見える別の顔(少し背伸びした理想の自分?)が,じわりとエモい。

本編では10年ぶりに再会したふたりが,とある出来事の真相を探るという。彼女たちのホームに訪れた凄腕プレイヤーは,なぜ突如姿を消したのか。そして目の前にいる友人は,10年間何を隠し続けてきたのか。

セピア色の画面がノスタルジックな本作。2000年代だけでなく,かつて100円玉を筐体に積み上げていたすべての“少年少女たち”に,届いてほしいと感じた。

配布されていたプリクラ風のカード。特殊なコーティングで表面がキラキラしていた
ぐるぐるパンパン
出展者:チームゲハナシ

ゲームの面白さは,なにも画面の中だけで完結するわけではない。TIGS2026の会場で,もっとも異彩を放っていたと言っても過言ではない自作筐体。それが,チームゲハナシのシロ氏(@petit_zome)が展示していた「ぐるぐるパンパン」だ。

操作は直感的で,かつフィジカルなものだ。まずは筐体の右上に「星が描かれたコイン」を投入。アーケードゲーム,いやそれよりも以前の,機械式回路を使ったエレメカっぽい匂いがする。

このコインが筐体内を折り返しながら進み,下部にたどり着くと,画面に映るUFOが攻撃を開始する。このUFO,もしかしてコインを狙っているのか?


そこからはDJのように,両手でターンテーブルを「ぐるぐる」回してトロッコを動かし,攻撃をかわしながら星くずを集めていく。そしてコインにエネルギーが溜まった(?)ところで,シロ氏は筆者に手拍子するよう促した。
「パンパンパンパン……」

!?
するとコインは,機関車型のギミックによって筐体内をどんどん登り,最後には……空へと還っていった。なんだかよくわからないまま,しかし筆者は確かに“感動”していた。

コインとは,空に還すべき「星の子」だったのかもしれない
本作は,NHKの番組「神ゲー創造主エボリューション」でも取り上げられ,その独創性が高く評価された作品だ。
ハード,ソフト,そして楽しい楽曲まで,そのほとんどを作者がひとりで手掛けているというから驚き。まさに「作りたいから作った」という,インディー魂の真髄のような作品だった。
なお「ぐるぐるパンパン」のイベント出展は,今回のTIGS2026が最後で,終了後は解体するとのことだった。筆者にとっては一期一会のゲームだったが,今後,何か機会があるたびに,このとき生まれた祝祭空間(大げさ)のことを語り継ぐような気がする。
思えばデジタルゲームの黎明期,そこにはまだ「標準的なコントローラ」などは存在しなかった。
専用のレバー,ボタン,あるいはダイヤル……。作品のコンセプトと操作系が分かちがたく結びついていた,あのダイレクトな「手触り」を,令和のインディー・クリエイターたちは独自の解釈で再構築し始めている(かもしれない)。


渡りに船というか,「タイムクライシス」や「ガンバレット」などを液晶モニタで遊べるAI搭載ガンコン「G’AIM’E」も展示されていた
「ぐるぐるパンパン」で味わった祝祭感は,その大きなうねりの一端だろう。汎用デバイスが普及する以前や,80〜90年代の体感ゲームへの回帰,あるいはその先にあるVR,AR,XR,そしてサイバネティクス的な身体感覚の拡張──。
それは温故知新なのか,突然変異的な先祖返りなのか。確かなことは言えないが,そこにはまだ見ぬゲーム体験が生まれてくるはず。

アナログな遊びとエレクトロニクスが融合した,おもちゃの代表格「BEYBLADE X(ベイブレードエックス)」を紹介する一角も
というわけで,今年のTIGSレポートはまだまだ続いてしまう。
次回「変わったコントローラのゲーム編」では,ワンデバイス・ワンゲームというアーケードゲームのかつての姿を思い出させる,「特化した作品」をお届けしたい。
次回も画面をフリック,あるいはマウスをドラッグしつつ,お付き合いいただけると幸いだ。

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