
栄枯盛衰のゲーム市場においても長くプレイヤーに支持され続けている『共闘ことばRPG コトダマン』と『逆転オセロニア』。いずれもオリジナルIPとして立ち上がり、継続的なアップデートとコミュニティ運営を通して「長く遊ばれるタイトル」を実現してきた。
そこで今回、gamebizでは両タイトルの”顔”を務めるキーマンに登場いただき、長期運営におけるゲーム設計、プレイヤーとの共創、これからも愛されるタイトルであるために大切にしている哲学を掘り下げて話してもらった。
本稿は前編として、これまでの振り返りと長く遊ばれた理由について語ってもらった。
『コトダマン』×『オセロニア』の長期運営タイトル対談
まさかのプレイヤーが対談相手のディレクターとして登場?!

株式会社MIXI
『共闘ことばRPG コトダマン』 チーフディレクター
望月 貴矢 氏
6年前より『コトダマン』運営チームに参画。新機能開発の責任者を経て、現在はチーフディレクターとして指揮を執る。

株式会社ディー・エヌ・エー
『逆転オセロニア』 プロデューサー
香城 卓 氏(けいじぇい)
2011年2月入社。ユーザーコミュニティを中心にした運営方針で知られ、2026年2月の10周年を控える。
望月:まさかこんな日が来るとは…。僕はもともと『オセロニア』のヘビーユーザーで、イベントなどでも香城さんのことはずっと見てきました。
※望月氏は『オセロニア』の公式大会の上位に入った実績も。
香城:もちろん、こっちも知ってるよ!(笑)まさかこんな形で再会するとはね。(笑)
望月:まさかゲームの運営側として、『オセロニア』の香城Pと対談ができるとは思っていませんでした。
ーーー:望月さんとしては遊んでいるタイトルのプロデューサーとして見てきた香城さんとのゲーム運営側としての対談、香城さんとしてはユーザーとして見ていた望月さんがゲーム運営側の対談相手として登場するという、お互いにとって印象的な対談になりそうですね。(笑)

望月:『オセロニア』のイベントにもたくさん参加させてもらいました。最初のイベントは、確か渋谷で行われたものだったと思います。
もう生活の一部のように色々なイベントに参加するような状態になっていて、完全に“日常化”していた感覚があります。
香城: もちろんそんな「もっちー」のことは認識していて、その「もっちー」とまさかこんな形で再会することになるとは思っていませんでした(笑)。同じ業界で、しかもそのゲームの“顔”として表に立つ立場として改めて対談する、というのはなかなかないことだと思います。
望月:『オセロニア』は僕に限らず、ユーザーの方を解像度高く認識されてますよね。『コトダマン』もそうですが『オセロニア』も、スピリットが近いところにあるというか。
そして……そんな風に解像度高く認識していただいたユーザーの一人でもあるので、少し緊張していますが、よろしくお願いします(笑)。
新規・既存のユーザー、双方の視点を欠かさない
だからこそ生まれる価値の共有とコミュニケーション
――:改めてよろしくお願いします。『オセロニア』は10周年を迎え、『コトダマン』も8周年を控えており、それぞれが長期運営タイトルとして歩んできた、という共通点もあります。栄枯盛衰の激しいゲーム業界、サービス開始からほどなく終了をしてしまうタイトルもある中でその年数を運営しているというのは、ものすごい事だなとメディア側から見ても思います。それぞれのタイトルでこれまでの長期運営振り返りながら、何を意識してきたのか、どんなことがあったのかをお聞かせいただけますか?
望月:私が『コトダマン』チームに入ったのは2周年のタイミングでした。引き継ぎ直後で、体制や方針を整えることに必死な状態だったと思います。その時点ではまずはチームとしてうまく回る状態を作ること、目の前のユーザーにしっかりとコンテンツを届けることに注力していました。今その時の足元を固め、その時にいるユーザーの皆さまにしっかりと楽しんでいただけなければ、その先はありませんからね。
ただ、4周年、5周年あたりからはより強く長期運営を目指す意思を持ちはじめました。「10周年を目指そう」という話が具体的に出始めたのも、その頃ですね。同じMIXIで運営している大先輩「モンスターストライク(モンスト)」の背中を見て、我々もより長くユーザーの皆さまに価値を届けていきたい……!と触発されたところもあります。
その過程で、タイトルがもともと持っていた思想や、立ち上げ当初の意図を改めて見直すこともありました。
大事にしてきたものが、なぜ愛していただいているのかを理解して、今いるユーザーの皆さまを大切にする。同時に、ユーザーや時代の変化に合わせて、これから『コトダマン』に触れるお客様にも楽しんで頂けるよう開発・運営を行うその姿勢が、結果的に長期運営につながっているのではないか、と思います。
良い部分は残しつつ、新たに必要なものは再定義していく。その積み重ねが、今の『コトダマン』につながっていると思います。

香城:『オセロニア』の10年間を振り返ると、まず感じるのは「あっという間だった」ということと、「それでも長かった」という両方の感覚です。
10年続けられた理由を一言で表すのは難しいですが、最も大きいのは「オセロニアンコミュニティをどう育てるか」「ユーザーと一緒にどう運営していくか」という考え方を、最初からずっと大切にしてきたことだと思います。※オセロニアン:『逆転オセロニア』ユーザーの愛称
ただ、そんな中、一番つらかったのはコロナ禍でした。2020年から2022年末にかけて、リアルイベントが一切できず、「もう二度とみんなで会えないかもしれない」と思った時期もあります。
それでも、「また必ず会える日が来る」と信じて、できることを続けてきました。結果的に、2023年以降は10周年が現実的に見えてきて、そこからは「どうぶちかますか」を考えるフェーズに入れたといったところですね。
望月:すごくわかります。自分自身も、やはり「リアルなつながり」はとても重要だと改めて感じました。MIXIという会社自体が、もともとコミュニケーションを大切にしている文化を持っています。
自分がディレクターに就任してすぐあと、2周年くらいのタイミングで、ちょうどコロナ禍に差し掛かった時期です。そのような状況の中で、いかにユーザーの皆さまとコミュニケーションを皆さまとっていくか、というのは一つの命題でもありました。結果として、コトダマーの皆さまのおかげもあり、コミュニティはコロナ禍明けまで盛り上がりを続けることが出来ましたね。※コトダマー:『コトダマン』ユーザーの愛称
コロナ禍が落ち着いた後からは、リアルイベントを積極的に行うようになりました。『コトダマン』がMIXIに移管される前にも数回は行っていましたが、その後はさらに回数を重ねることになります。
その中で、ユーザーとのつながりや、ユーザー同士のリアルな関係性が生まれていく様子を見て、「ここは一つの転機だった」と今では思っています。
香城: 10年続いてきた今だからこそ言えるのですが、もちろん当初からタイトルが「うまくいく」と楽観的に思っていたわけではありません。むしろ、数字が伸びるたびに「なぜ伸びているのか」「なぜうまくいっているのか」を、後から考えていたような感覚でした。
その中で、後年になって「これはコミュニティの力だったのではないか」と気づいた、という流れでしたね。
個人的に非常に大きかったのは、2017年夏に行った全国大会です。全国6都市で代表を選出し、YouTubeライブでも配信する形で全国大会を実施しました。
この大会が、「オセロニアらしさ」を決定づけたと感じています。当時は無名に近い存在だったユーザーが全国優勝まで勝ち進みました。
印象的だったのは、その過程です。『オセロニア』を通じて知り合いができ、仲間が増え、応援され、寄せ書きの入ったTシャツを着て全国大会に臨む。その流れの中で優勝を勝ち取った姿は、「このゲームの大会の価値」を象徴していました。
『オセロニア』の大会は、賞金を競うeスポーツ的な大会というよりも、オセロニアを通じて仲間が生まれ、関係性が広がっていく“コミュニティの大会”なのだと、強く実感しました。
それ以降、ファンミーティングや大会、YouTube配信など、すべての施策が「人と人のつながりを可視化する」方向へと明確に寄っていきました。

その意味で、2017年の大会は、『オセロニア』のスタイルが言語化・明文化された瞬間だったと思います。
望月:長期運営という観点で言えば、「どんな人がこのゲームを遊んでいるのか」が他のユーザーからも見えることは重要ですよね。ユーザー同士が互いを認識し、雰囲気や感情を共有することで、コミュニティが形作られていくのかなと。
香城:そう。オフラインイベントで集まり、試合後に打ち上げに行く。その様子が可視化されることで、「自分もその輪に入りたい」と思う人が集まってくる。これはゲームに限らず、場の空気が人を呼ぶという点で「コミュニティ」と呼ばれるもの広くに共通しているのかなと。
望月:個人的な実体験としても、ゲームを長く続ける最大の理由のひとつは「人とのつながり」だと感じています。MIXIもコミュニケーションを大切にする文化があり、ゲームを通して提供している価値の一つだと思っていますね。
「定番アプリでありながら、最新のアプリであること」が紡ぎ続ける
「人と人とのつながり」
―――:そうした中でさらにお聞きしたいのですが、長期運営を続けていく中で、改めて見えてきたことや、「続いている理由」「ユーザーに長く遊ばれている理由」について、運営側として感じている点はありますか。
望月:一つは、先ほども少し触れましたが、やはり時代やユーザーの変化に合わせて、アップデートを続けている点だと思います。既に遊んでくれているユーザーが愛してくれているものを大事にしながら、必要があれば柔軟に変えていく。その姿勢の結果として遊び続けて頂けているのかなと。
『コトダマン』は文字の組み合わせでことばを作って闘うゲームなので、日本語を知っている人なら誰しも楽しめるのですが、ことばを作るのにもコツみたいなものがあって、それを掴むとさらに飛躍的に面白くなるんです。
そこで、1年半ほど前に「ましろツアー」というアップデートを入れました。報酬面の調整もありますが、それ以上に、「遊んでいく中で自然と“ことばづくり”のコツが身につく」ような設計を意識しました。
『コトダマン』の入り口から進んだ先にある更なる面白さや、自在にことばを作れるようになり、その「沼」に没入していく感覚を体験してもらう。そこを強く意識したアップデートだったと思います。

香城:まず座学をするのではなく、遊びながら体得。それこそ、時代やユーザーの変化に合わせたアップデートだね。
望月:『コトダマン』は「ことばをつくる」ゲームですが、基本的に4文字以上のことばを作るゲームなんです。4文字を安定して作るためには、「特定の母音を軸にするといい」といったコツがあります。
実は、そのコツは昔からユーザーさん同士で共有されていました。「これがいいよ」と教え合っていたんですね。それを見て、「これはゲーム内で自然と身に着けられるようにしたほうがいいな」と思い、正式にゲーム内に組み込んだんです。
こういったアップデートも遊んでもらえている理由の一つになっていると思います。
ーーー:『コトダマン』は新規ユーザーだけでなく、既存ユーザーに対しても、積極的にUI改善や機能改修を進めている印象があります。
望月:そうですね。新規ユーザーの目線で整えることも大事ですし、同時に、長く遊んでくださっている方が「これからも遊びやすい」と感じられるようにすることも重要だと思っています。
サービスが長く続くと、どうしても画面内の要素が増えていきます。そして「このボタン、いつからあるんだっけ?」とか、「ここ、触ったことないな」とかも出てきます(笑)。
そうなると、「この操作、一括でできたらいい」や「ひとつの画面にもっとシンプルにまとまっていたら分かりやすい」といったニーズも出てきます。そのあたりは、新規・既存の両方の視点に立って、機能改善を進めるよう意識しています。既存のユーザーからすると、変化はストレスになりやすいのですが、なぜそのニーズが発生したのか、徹底的にユーザーの目線をもって改修を行うようにすることで、新規の方にも、既存の方にもやりこんでいただいている方にも遊んでいただきやすくする。どちらの目線でも「新しく、遊びやすい」コトダマンであるようにします。
一方で、ユーザーコミュニティやSNSの活用については、「古き良きを大事にしている」かもしれません。
『コトダマン』には、昔から「運営会議」という文化があります。ユーザーさんと一緒に何かを作っていく、という「共創」の考え方ですね。一方的に情報を発信するのではなく、双方向のコミュニケーションを大事にしています。
「コトダマン運営会議」と称して、イベントの中心になるような強力なキャラクターをユーザーの皆さまと一緒に作ったりするんです。キャラクターの設定、デザインや一部性能の方向性など、多岐にわたる項目を一緒に決めていきます。
事前に「こうなるかな?」と思っていたものとは良い意味で違うものが出来上がることもあり、運営チームとしてもユーザーの皆さまと何かを作り上げる事が出来てとても嬉しく思ってるんです。

▲『コトダマン』運営会議の一例。イラストの方向性もユーザーの投票で決まる。
ーーー:その姿勢は、『オセロニア』とも共通している部分があるように感じます。
望月:そうですね。『コトダマン』が目指してきたものと、『オセロニア』の思想には共通点が多いと思います。ゲーム体験と共に「人とのつながり」を大事にする。そのバランス感覚は似ているかもしれません。
香城:はい、根底のスピリットがめちゃくちゃ同じだと感じます。
AI時代になっても、「人と人とのつながり」だけは生成できません。実際に会ったことがある、同じ場、同じ感情を共有した――そういうリアルな体験が価値になる。
デジタルの世界は、これからフェイクとの戦いにもなっていくと思います。だからこそ、ユーザー同士のつながり、リアルな場でのアウトプットや体験が、ゲームの価値を高めていく。
これって『コトダマン』にも『オセロニア』にも共通しているスピリットであり、長く続いている理由の一つだと思います。
後編は2月6日に掲載予定。
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