「インディーゲームからIPを発掘しよう」。昨今のゲーム業界におけるムーブメントの1つだ。そして、この象徴とも呼べるのが『天穂のサクナヒメ』である。2024年に放送のTVアニメを経て、IPと農業の魅力をより多くの人に伝えるべく、このたび、スマートフォンおよびPC対応の新作ゲーム『天穂のサクナヒメ~ヒヌカ巡霊譚~』がリリースされる。このたび作品の一部を先行してプレイする機会に恵まれたため、現時点で判明している作品の内容を紹介していきたいと思う。
『天穂のサクナヒメ~ヒヌカ巡霊譚~』は『天穂のサクナヒメ』の世界観を踏襲し、続編という立ち位置にある育成シミュレーション・探索アクションゲームだ。対応プラットフォームはスマートフォン/PC(Steam)。リリース予定日は2月5日となっている(※Steam版のリリース時期は後日発表)。本作は基本プレイ無料の運営型を採用しており、パブリッシャーは東宝で、開発はさまざまな運営型ゲームを手掛けてきたG2 Studiosが担当する。
アクションゲームに馴染めなかった人へ

まず、本作に関して言及しておきたいのは『天穂のサクナヒメ』の体験を単純にスケールダウンしたゲームではない、ということだ。開発者いわく、本作品は『天穂のサクナヒメ』のアクションゲーム部分が困難に感じられるユーザー層に向けて、アプローチすることを作品コンセプトの1つに掲げている。これは、原作が持っているアクションゲーム部分とシミュレーションゲーム部分のサイクルが崩れてしまったことを指すものではない。サイクル自体は形を少し変えつつも実装されており、アクションゲームの操作難易度は大幅に低下しているが、シミュレーション要素のやりこみ具合はほぼ据え置きと言って良いだろう。
[AD]

また、コンテンツ内容に関して、農業に関する国内の団体が協力及び監修に参加しているゲームでもある。『天穂のサクナヒメ~ヒヌカ巡霊譚~』は原作がもつ魅力をスマートフォンというプラットフォームにローカライズした作品、と形容できる内容に仕上がっている。
では、具体的な内容に触れていこう。本作の基本的なゲームフローは、スマートフォンに対応している一般的な育成ゲームと大きくは変わらない。入手したキャラクターに対して、普段のプレイを通じて収集した特定のアイテムを消費することで「段位」を上げる。するとステータスのみならず、攻略を楽しくするさまざまな能力が解禁されていく。本作はリリース時点で4段階の上限が用意されているが、上限解放用のアイテムに食材が用いられていたり、上限解放という行為そのものに対して、料理を作るというフレーバーが設けられているのが原作を思い出して楽しい。

キャラクターを育成したら、クエスト……2Dアクションに挑戦する。敵を倒しながらダンジョン中のチェックポイントを回っていくという形式だ。1プレイも短く、通常ステージであれば5分少々、ボスステージは10分少々程度で済む。アクション自体は比較的シンプルにまとまっており、移動や攻撃に対応するボタンをタップしたり、スワイプするだけでいい。自動で戦闘してくれる機能もある。そして、設定された目標をすべて達成すれば次回の挑戦時にプレイをスキップ可能だ。周回ステージ向けの仕組みである。先述した「アクションが苦手」な人向けのコンセプトに則った仕様といったところだ。とはいえ、クエストはゲームが進行するたびに難易度を上げていく。単にキャラクターの「段位」を上げているだけで攻略可能なほど、本作は甘くない。
クエストを攻略するにあたって先ず重要なことはパーティ構成である。本作には八百万の神をモチーフにした、新キャラクターが数多く登場し、各キャラクターごとに戦闘用のロールが設定されている。攻撃役、回復やサポート役、攻撃を引き受けるタンク役といった具合だ。いわゆる属性の相性も設定されている。パーティは最大4人で構成され、登場する敵に合わせてバランスよく設定したい。また、キャラクターのステータスを伸ばすにあたって装備品が2種類ある。1つが「心想神画」で、主にガチャで入手することになる。バリエーション豊かな新規描き下ろしイラストが美しい。そして、もう1つがプレイヤーが自ら手塩にかけて作った「米」だ。
手軽になっても米は力だ

本作では米をキャラクターのステータスを上げる装備品として扱う。そして、どのステータスをどれくらい上がるのかは、米の品質や種類によって決まる。原作と同じく、物語の進行には良い米の生産が不可欠というわけだ。では、どのように高い品質の米を生産していくのか。原作では種もみの選別から始まり、田起こしから田植えと過程が推移していく。草むしりや水の調整といった稲の生育管理をして、熟したら収穫、という内容だった。
『天穂のサクナヒメ~ヒヌカ巡霊譚~』では、この過程をアクションから数値管理へ置き換えた内容に変更している。まず米を育てるにあたって、所持しているキャラクターから育成者を決める。本作ではキャラクターのステータスに関して、戦闘用とは別に米の育成用ステータスも設定されている。米に備わった6つのパラメーターのうち、どれを伸びやすくするのか、というステータスだ。6つのパラメーターは、キャラクターの生命力、攻撃力、防御力という3つの能力に対応する。なかには攻撃力と防御力を同時に伸ばす(しかし、伸びは単体のステータスに対応したものの方が良い)ものがあるので、構築したいキャラクタービルドに合わせて適宜調整することが望ましい。また、米と一緒に生産されるぬかの内容にも関わってくる。

生産者を選んだら、次に種もみと田んぼの管理方法を選ぶ。種もみには品種とレベルが存在し、同じ品種を作り続けるほどレベルが上昇。米の品質が上がりやすくなる。田んぼの管理方法には1年間を通してすべて自動進行にするものと、冬⇢春⇢夏⇢秋ごとに作業設定を行う方法がある。冬は肥料を撒き、種もみの選別を行い、春は農薬を巻いて病気を予防する、夏は水量を管理する、秋は収穫といった内容を、米作りの進行度合いに応じてゲームを起動し、設定する必要がある(季節はリアルタイムで進行し、自動進行ではない限り、勝手に季節が進むことはない。1度の米作りに約6時間必要となる。課金アイテムなどで自動進行扱いにしつつ、スキップ可能だ)。
開発者いわく、自動進行で米作りをすると、満遍なくすべてのパラメーターが伸びる傾向にあり、特化させたパラメーターを狙って作るためには季節ごとに逐一の丁寧な管理が必要になるという(たとえば、回復役に攻撃力を意識した米を作って装備させても無駄である。耐久ステータスに特化させた米を装備させたい)。とはいえ、これでは時間を割けるプレイヤーほどゲーム攻略に有利になりかねない。本作では自動進行を利用しても、優先して伸ばしたいパラメーターや、肥料、農薬に関する大まかな設定は可能なため、安心してほしい。

基本的に「どの項目の設定がどのパラメーターに影響するのか」はマスクステータスになっているため、試行錯誤が肝要である。積極的にコミュニティ内で情報交換を行ってほしいと、開発者は説明した。また、米を生産するとぬかが同時に入手できる。ぬかには生産者が持つ戦闘を有利にするアビリティが備わっており、手持ちのキャラクターに使用することで、アビリティをランダムでいくつか継承させることができる。すなわち、米を作る際は米のパラメーターのみならず、ぬかのことも考慮して生産者を選択する必要があるということだ。糠のために米を作り続けると米が余ってしまうが、サービス開始後には米とアイテムを交換するイベントを開催するとのことである。

ちなみに、本作に登場する米の品種は実在のものを採用している。特定の条件を満たすと、配合を通じて家系図が発展し、あらたな品種がゲーム中で生産可能になっていく。同時に、品種に対応した稲の精霊がアンロックされる。稲の精霊もまた、戦闘に使用可能なアビリティを持ったキャラクターという扱いである。国産の動物をモチーフに描かれた愛らしい姿が特徴だ。このほかにも、クエスト攻略および米の生産に支援効果をもたらす「拠点格」といった概念が存在する。これは田んぼが設置されている主人公たちの拠点に、建造物を立てていくことで上昇していく。
総じて、『天穂のサクナヒメ~ヒヌカ巡霊譚~』は拠点で米とぬかを生産し、装備したり、継承するアビリティを厳選することでキャラクターのステータスを上昇させ、クエストを攻略していくというゲームになっている。各クエストには攻略可能な戦力の指標が数値化されているため、自分があとどれくらい米の生産をやり込めば良いのかが分かりやすい。一見すると、長時間の拘束を要求する難しいゲームに思えるが、充実した自動設定、簡単なアクション要素のおかげで、自分のペースを損なうことなくプレイ可能な作品になっていることが分かる。アニメを楽しんだが原作が合わなかったというユーザー向けに、サクナヒメや米作りの魅力を伝える作品として、しっかりと成立している。
気になる課金要素やサービス開始後の予定

だが、気になるのは課金要素である。昨今はガチャがゲーム攻略に大きく影響を及ぼさないことをアピールポイントにしている作品が続々と話題になっているが、本作も擬似的にそれを実現している。本作はキャラクターを、一人当たりゲーム内トークン5000個=約5000円相当で販売している。毎月5900個のトークンが5000円で販売される予定のほか、いわゆる月額課金、一月あたり500円のプランなら1600個、2000円のプランなら3500個ほど入手可能。トークンには有償と無償の区別が存在するので注意してほしい。
キャラクターの購入時にトークンの有償、無償の区別は介在しないため、500円のプランと2000円のプランを同時加入することにより、一月に1柱のペースでキャラクターを獲得することができる。この定額課金はトークンのみならず、稲作や拠点増強の時短アイテムも合わせて入手可能。継続するほど、プレイヤーに恩恵のあるポイントが溜まっていく。
もちろんガチャも存在しており、ガチャからはキャラクターのレアリティUP素材(俗に言う凸素材)と、武器に相当する「心想神画」が同じガチャから排出される。10連は一回3000円換算分のトークンを使用。天井もある。基本的には排出された凸素材が無駄にならないよう、キャラクターを購入してからガチャを回すことになるだろう。
ちなみに、購入で入手できるキャラクターのレアリティはデフォルトで★3となっており、凸を重ねて最大★5まで上げることができる。最大までレアリティを上げると、固有武器と呼ばれるステータス強化要素が解禁される。また、この特殊な販売形態を成立させるにあたって、本作ではゲーム内広告を採用。毎日1回、広告を観ることで米作りを自動設定扱いにした上でスキップしたり、ゲーム内トークンを獲得することができる。広告の内容は可能な限り本作の関連商品や農業、食にまつわるものを採用したいとのこと。あくまで「サクナヒメ」というIPを盛り上げる一環として、広告を活用するようだ。
最後に、サービス開始後に予定しているゲーム内イベントについて触れたい。『天穂のサクナヒメ~ヒヌカ巡霊譚~』は主に4種類のイベントを、サイクルを回すように順次展開していく予定だという。1つ目は塔イベント。原作における、やり込みダンジョン「天返宮」をイメージしたものになっている。自慢のパーティで強敵を倒すエンドコンテンツに相当するイベントのようだ。2つ目はストーリーイベント。キャラクターに焦点を当てた物語を楽しめるイベントだ。3つ目はレイドバトルイベント。文字通り、他プレイヤーと敵を倒すイベントである。4つ目は納品イベント。普段の米作りで余った米をアイテムと交換するイベントのようだ。
このほか、PvPコンテンツや、マルチプレイイベントなども構想中とのこと。メインストーリー自体はライトユーザーでもテンポよくプレイ可能な難易度に設定する予定であるため、そのぶん空いた時間で、ユーザーにイベントをじっくり楽しめるよう計画しているようだった。

インディーゲームからIPを発掘しよう、という昨今のムーブメントの象徴とも呼べる勢いを見せている『天穂のサクナヒメ』。2024年に放送のTVアニメを経て、IPの魅力をより多くの人に伝えるべく、満を持して登場した『天穂のサクナヒメ~ヒヌカ巡霊譚~』が今後どういった盛り上がりを見せていくのか。楽しみに見守っていきたいところである。
『天穂のサクナヒメ~ヒヌカ巡霊譚~』はスマートフォン(iOS/Android)にて、2月5日にリリース予定だ。※Steam版の配信時期は後日発表
