「そこに山があるからさ」――伝説的な登山家ジョージ・マロリーが「なぜ山(エベレスト)に挑むのか?」と問われた際に残したあまりにも有名な言葉です。
山には人々を惹きつける不思議な魅力があります。ゲームなら『PEAK』、『Celeste』、小説なら「神々の山嶺」、漫画なら「岳-みんなの山-」など挙げればキリがないほどに山、登山をテーマとしたエンタメ作品がこの世にはあります。
山に登る人々は、なにを思って山頂を目指すのか……。それを知れる作品こそが、まだ誰も踏破できていない伝説の山“マウント・カミ”の制覇を目指して食料、水、ピトンなどの資源をやり繰りしながらロッククライミングを行うリアルで過酷な登山を体験できるサバイバルアドベンチャー『Cairn』です。

本作は体験版時点で高い評価を受けており、Steamでは「圧倒的に好評」を獲得している注目の作品。本記事ではレビューをお届けします。
※パブリッシャーよりSteamキーの提供を受けています。
岩肌を見てルートを探すリアルな登山体験
本作のゲーム性はいたってシンプル。とにかく山を登ることです。
プレイヤーは、さまざまな山を踏破した凄腕のプロクライマー・アーヴァとして、単独でのマウント・カミ登頂を目指していきます。
本作はコントローラーでのプレイが推奨されており、筆者はSteamDeckでプレイ。右手、左手、右足、左足のどれかが自動で選ばれて、それをスティックで動かし、Xボタン(PS5等なら四角ボタン)で岩肌を掴む。掴んだら別の手足へという風にロッククライミングをしていくのが本作の基本操作です。
それだけ聞けばただロッククライミングをして山を登るだけの簡単なゲームに聞こえますが、遠足のような軽い登山ではありません。
登る際には、岩肌を見て掴めそうな出っ張りや足場になりそうな箇所を探してルートを計画することが重要で、無計画に登り始めると後々自分を苦しめることになります。序盤は特にこのゲームの勝手が分からず、とりあえず登ってみるかと始めて「あれこれ以上進むの無理じゃね?」と何度、後戻りをして無駄に物資を消費したか……。


少し遊んである程度、本作の基礎を覚えて「ルート見えるようになってきたし余裕だろう」と油断してはいけません。山の上に行けば行くほど過酷になるのが山です。アーヴァも人間ですから、食料と水がないと生きられないし、無理な姿勢で登ろうとしたら手足が震えて滑落するし、厳しい寒さや強風、雨で岩肌が滑りやすくなるなどの自然の脅威も襲い掛かってきます。
乗り越えるためには、ルートを計画するのと同じく前準備が必要です。本作ではテントを張れる場所がいくつかあります。テント内では、料理や睡眠、指のテーピング、壊れたピトンの修理、バックパックの整理などを行うことができ、これらをしっかりと活用するのが重要になってきます。

岩壁を登っている際は、ピトンを使わないと水筒のもの以外を口に入れられないのですが、水筒にテントで作ったスープを入れることができ、これがあれば寒さ、空腹、のどの渇きすべてを癒すことが可能です。また、雨は時間経過で止むのでテントで寝て晴れるのを待つという感じでさまざまな事柄に対応していきましょう。
ただ、山の中にコンビニのような便利なショップなんてものはないので、食料、水といった生命に関わる物資、テーピング、ピトン、チョークなど山を踏破するために必要な道具などは限られています。アイテムの使いどころを見極めて、山の湧水を飲み、川で魚を捕まえ、山菜を取り、死んだクライマーのバックパックから荷物を漁る。そういったサバイバル要素も本作の魅力です。

カミに挑んだ人々の痕跡と登山家の苦悩や心情を描くストーリー
アーヴァが山を登る中で、さまざまなものに心を惑わされます。恋人(?)のナオミから「あなたはなぜそこまでして山を登るの?」と問いかけられたり、ビジネスパートナーのクリスから死ぬかもしれない山の中で仕事の連絡をされたり。ただ、山を登ることだけを考えたいのに、下界のしがらみが足枷となってきます。


また、年若き青年マルコとの出会いもアーヴァの心境に変化をもたらします。ひとり静かに登りたいアーヴァとおしゃべりでアーヴァに憧れて付いてくるマルコ。カミを登っていく要所要所で話すことになるのですが、マルコは山頂を目指す気がなく、楽しむために登山をしていると語ります。本気で登頂を目指すアーヴァとは異なるスタイルの彼とは衝突することも……。

そのほかにもかつてカミに挑んだ登山家たちの残した手紙や、カミに住んでいた文明の名残りなどが各地に残されています。アーヴァがそれらを見て、なにを思うのか。なぜ彼女は山を登るのか。山頂にたどり着いた先になにを思うか……。
登山に興味のない人から見たら山登りなんてつらいことをなぜわざわざやろうとするのか分かりませんよね?だからこそ登山家の心境をよく表したストーリーが展開されるのは非常に面白いポイントです。
プレイして気になったポイント
ゲームの大半を占める山登りパートですが、三人称視点でアーヴァの背中を見る状態で壁を登っていきます。その際にアーヴァが邪魔で、しっかりと壁の突起を掴めているのか分からないということが頻発しました。そのほか大きなバグ等に遭遇することもなくクリアまでいけたので、メインのゲーム性は概ね良好です。
ストーリーに関しては、若干の説明不足が気になりました。ナオミは会話で「なんとなく恋人っぽいなー」くらいは掴めますが、実際にどういった立場なのかは分かりません。物語的にアーヴァの心を乱す役目だからそこの詳しい説明はいらないという判断なのかもしれません。
また、作中でアーヴァが悪夢を見るシーンがありますが、三半規管が弱い人には辛い演出が多用されており、気分が悪くなりました。エンディングでも同様に過剰な演出があり、強い光の連続でせっかくのエンディングが……と、やや没入感を削がれます。筆者のように三半規管が弱い方は、プレイの際注意したほうが良いかもしれません。
総評
気になる点をいくつか書きましたが、アップデートによる改善で問題なくなるレベルのものなので、今後に期待です。
それ以外では、両手両足を操り、一手一手慎重に山を登っていく体験、食料や水、道具を管理しながら登山計画を練る感覚、登山家の心境という普通に生きていたらあまり知ることができないことを知れる知的好奇心が満たされるストーリーなど全体的に非常に魅力的なゲームです。
岩壁を登り切って、振り返ったときに絶景が現れた瞬間の感動などほかのゲームでは、なかなか味わえない体験なので、すこし歯応えのあるハードなゲームが好きな方には、かなりオススメしたい作品です。
Game*Spark レビュー 『Cairn』 PC(Steam)/PS5 2026年1月29日 登山の過酷さを体験できるサバイバルアドベンチャー GOOD 一手一手が重要になる山登り登山家の苦悩を描くストーリー美しい風景の数々 BAD 説明不足な箇所がやや多く感じるストーリー一部の過剰な演出キャラクターが邪魔で視認性が悪い
