Gamerで執筆しているライターに、年末年始に合わせて自由に書いてもらおうという企画。本記事では咲文でんこがお届けします。
2022年末に登場したChatGPT(GPT-3.5)は、私たちの生活に大きなインパクトをもたらした。登場初期こそポンコツと言われることもあったが、モデルの進化により、今では日常的なタスクから仕事まで多くの用途に使えるようになった。なんらかの生成AIを活用している読者も多いのではないだろうか。
AIキャラクターとの対話を楽しみ、AIと結婚する人も現れるなど、生成AIは確実に私たちの生活の一部となりつつある。そして、この技術革新の波は、私たちが日々楽しんでいるビデオゲームの世界にも押し寄せているのだ。
大手ゲーム会社が活用を公表、開発現場で進む生成AI革命
ゲーム業界における生成AI活用は、想像以上に急速に進んでいる。2025年に開催されたゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2025」では、AI関係のセッションも目立ち、国内大手各社が続々と活用事例を公表した。もはや生成AIは、ゲーム開発において無視できない存在となっている。
例えばカプコンは、ゲーム内のポスターやステッカー制作のアイデア出しに「Gemini」や画像生成AI「Imagen 2」を活用している。一つのゲームで数千から数万程度のオブジェクトを作成する必要があり、採用されないアイディアも含めると数十万にも上る。こうした膨大な作業を効率化するために、AIを使っているのだという。
Cygamesは社内用AIチャット「Taurus」を内製しており、「AIテクノロジー」という組織を立ち上げて画像・動画生成AIの研究も進めているし、スクウェア・エニックスは「AI&エンジン開発ディビジョン」を発足させている。
そのほか、KONAMIや、セガも、使い方に差はあれど、生成AIを活用していることを明らかにしている。

ゲーム開発者向けカンファレンスの「CEDEC2025」でも、生成AIをテーマにしたセッションが複数行われた
AIが生み出す新しいゲーム体験
生成AIの活用はゲームの開発現場だけに留まらない。ゲームシステムに生成AIが組み込まれ、新感覚のプレイヤー体験を提供する事例も登場している。
例えば、コロプラが手掛ける「神魔狩りのツクヨミ」では、ゲームプレイ中にどんな選択をしたかが神魔の生成に影響する仕組みが実装されている。神魔の生成にもAIが使われており、プレイヤーの行動に応じて動的にコンテンツが生成される体験をプレイヤーに提供している。本作に携わっている金子一馬氏はこう語っていた。「AIが生成するものは学習用に用意した私のデータに基づくもので、新しく私が描くものとは違うので、特に恐れるものではないと感じています」。これはクリエイターとAIの共存の可能性を示唆している発言だ。
コロプラが手がける「神魔狩りのツクヨミ」では生成AIを使ったゲームシステムが盛り込まれており、新感覚のゲーム体験をプレイヤーに提供してくれる
また、リートンテクノロジーズジャパンが開発する「キャラぷ」は、生成AIを使った自由度の高いシミュレーションゲーム体験を実現している。これは従来のデジタルゲームでは難しかったアプローチであり、AIによってプレイヤーの選択肢が大幅に広がる。
「キャラぷ」では生成AIを使ったシミュレーションゲーム体験ができる
また、SpiralAIが提供する「HAPPY RAT」では、EQ(感情知能)にウェイトを置いたAIキャラクターとの会話が楽しめる。単なる情報検索ツールや仕事に使うAIではなく、感情的なやり取りができるキャラクターとして設計されており、AI活用の新たな方向性を示している。
「HAPPY RAT」は、よりEQにウェイトを置いたAIキャラクターとの会話ができる
避けて通れない倫理的・法的な課題
こうした活用事例がある一方で、生成AIには無視できない課題も存在する。大きな問題の1つが、倫理的・法的な問題だ。
生成AIは多くのデータを学習し、それを基にテキストや画像などを生成している。この記事を書いている筆者自身も、何らかの形でAIの学習データとして使われているであろう1人だ。Web上には筆者が執筆した多くの記事が公開されているため、ChatGPTを代表とするLLM(大規模言語モデル)が学習していることは間違いないだろう。筆者個人としては気にしていないが、気にしている人が多いのも間違いない。良くも悪くも、私たちは生成AIに何らかの影響を受けているのだ。
学習自体は著作権的に問題ないとされているが、精神的に納得できない人がいるのもわかる。さらに最近では、X(旧Twitter)でほかのユーザーがアップロードした画像を画像生成AIで加工できる機能も登場した。Xの規約上は問題ないかもしれないが、感覚として受け入れ難いのも容易に想像できる。
そんな中、経済産業省は「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」を公表し、知的財産権等の権利・利益の保護に十分に配慮した生成AIの適切な利活用の方向性を示している。現在は、法的・倫理的な課題に向き合いながら、適切な活用を模索している段階だと言えるだろう。
経済産業省は「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」を公表し、知的財産権等の権利・利益の保護に十分に配慮した生成AIの適切な利活用の方向性を示している
AIとの関係は始まったばかり
ゲームと生成AI、そして広義のAIは、相性の良い組み合わせだと筆者は考える。確かに、AIはいくつかの問題を抱えている。学習データの問題、著作権の問題、倫理的な問題など、解決すべき課題は山積みだ。それでも、AIは私たちの生活に入ってくるだろうし、ゲーム開発、そしてゲームプレイにも少なからず影響を与えるだろう。
ゲーム開発者の負担を軽減し、より創造的な作業に時間を割けるようになること。そして、プレイヤー1人1人に合わせたパーソナライズされた体験を提供できるようになること。従来は不可能だった自由度の高いゲームプレイが実現すること。こうした可能性の数々は、ゲーム業界がさらに明るくなると筆者は考えているのだ。
生成AIとゲームの関係は、まだ始まったばかり。筆者は1人のゲームファンとして、今後生成AIがどんな新しいゲーム体験を提供してくれるのか、その未来を楽しみにしている。
得意分野はビデオゲーム全般だが、メタバースやAI関連の記事も積極的に執筆中。ライター業以外にもVTuberとしての活動や、メタバース内ではラジオパーソナリティや、DJとしての顔もあり、肩書きが混雑してきたのが最近の悩み。
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