Gamerで執筆しているライターに、年末年始に合わせて自由に書いてもらおうという企画。本記事では田中一広がお届けします。

2025年はホラーの年だったと言ってもいいのではないだろうか。ゲームのみならず、書籍、映画などさまざまなメディアが連携するかたちでホラーシーンを盛り上げた。ゲーム業界では、とりわけインディー系ホラーがホットだったように思う。

インディーゲームを中心にホラージャンルが盛り上がった!2025年のホラーゲームシーン【年末年始企画】の画像

まず、2月発売の「都市伝説解体センター」がヒット。ゲームがヒットしただけでなく、サウンドトラックや、同作のイラストを使用した文庫本がヒットするなど、「インディーゲームとしてヒットした」という枠に留まらないレベルで話題となっている。また、8月にはインディーゲーム「8番出口」の劇場版が公開され、話題を呼んだ。

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「8番出口」は劇場版のノベライズも刊行されており、こちらも売れ行き好評で重版がかかっている。さらに8月は、「零」シリーズのスタッフが「青鬼」シリーズをベースに制作した「禁足地 青鬼の窟」もリリース、シリーズに新たな風が吹き込まれた。

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そして10月には、ホラー小説「近畿地方のある場所について」の作者である背筋氏がシナリオを手掛けた「まだ猫は逃げますか?」がリリース。「近畿地方のある場所について」は劇場版が8月に公開されヒットしており、それを受けての「まだ猫は逃げますか?」という流れは、勢いを感じさせる。

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インディーゲームから、ゲーム全般へ視野を広げると、9月リリースの「SILENT HILL f」が現在進行形で話題。ゲーム本編のクオリティの高さもさることながら、主人公・深水雛子を演じた女優の加藤小夏さんがYoutubeで開始した実況プレイがブレイク。同作の他キャラクターを演じた飯島優花さんや、大崎捺希さんも実況プレイを次々スタートし、いずれも注目を集めている。

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こうした出来事を並べて、ただ単純に、「2025年はホラーコンテンツのヒット作が多かった」とまとめることもできるだろう。ただ、筆者個人としてはそれ以上に思う点がある。それは、想像以上に、ホラーが一般層へ普及していること。

一般的なアトラクションとして普及が進んでいるホラーコンテンツ

筆者のような昭和生まれのホラーファンは、ホラーが「ごく一部のマニアのもの」だった時代を知っている。ホラーはグロテスクな表現も多いし、流血や人の死など、不快や不安をあおる要素も多い。このため、ごく一部のマニアのコンテンツとなってしまうのも、ある程度しょうがないといえる。でもだからこそ、これだけ次から次にホラーコンテンツがヒットし、ネットや書店にホラー系のコンテンツが多数並ぶという2025年の状況に「すげえ!」と驚いてしまうのだ。

ただ筆者は、この状況は「ホラーが一般層に受け入れられた」のではなく、「ホラーが、一般層に受け入れられるような形に変化した」のだと考えている。興味深い事例として挙げたいのが、2019年公開の映画「犬鳴村」だ。映画「犬鳴村」は、ホラー映画ファンからの評価はあまり高くない。しかし、興行収入14億円というホラージャンルでは異例と言えるレベルの大ヒットを記録している。

恐らくこの理由は、映画「犬鳴村」が、遊園地のお化け屋敷的な、アトラクション的ホラーコンテンツとして作られているからだろう。ホラーファンは「これまでに見たことがないレベルの圧倒的怖さ」を求めることが多い。一方、そこまで圧倒的に怖いと、一般層が楽しむアトラクションとして成立しなくなってしまう。実際映画「犬鳴村」は、本編にコミカルな演出を追加した「恐怖回避ばーじょん」を公開している。「ホラーファンに向けて圧倒的怖さを提供する」ことよりも、「一般層に対し、友だちと一緒にアトラクション的に体験する楽しさを提供する」ことを重視したからだろう。

こうした映画「犬鳴村」の事例は、Youtubeでのホラーゲーム実況プレイにも通ずるところがある。ホラーゲームは自分でプレイしなければならない分、他のホラーコンテンツより怖くてなかなか手が出ない…という人は、意外と多い。また、ホラー好きであっても、アクションの難易度についていけないからという理由でホラーゲームがプレイできないという人も、実は結構な数存在している。ただ、こうした「怖さ」や「難易度」といった点は、「配信者のプレイを通して体験する」というかたちであればクリア可能だ。自分以外の配信者によるプレイを観るというかたちになったとき、どんなに怖い恐怖体験も、友だちとコメントしながら楽しめる「アトラクション的コンテンツ」へと変わるのだ。

つまり、映画「犬鳴村」や、ホラーゲームの実況配信といった土壌がこれまで積み重なった結果、2025年に「ホラーコンテンツのヒット」というかたちで花開いたのではないだろうか?

2026年以降はさらに多様なホラーが待っている…!?

ガチな恐怖を求めるホラーファンは、「アトラクション的なホラーなんてつまらない」と思うかもしれない。ただ、どんなに怖い恐怖演出も、繰り返し体験することで「慣れ」てしまう。そしてクリエイター側も、「新鮮かつガチで怖い恐怖演出」など、そうそう作れない。だからこそホラーコンテンツは、「リング」のようなモダンホラー、2ちゃんねるの「洒落怖」のようなネットロア系ホラー、「近畿地方のある場所について」のようなモキュメンタリ―系ホラーと、時代ごとに異なるテイストのものがヒットしてきているのだ。しかし、「アトラクション化したホラー」は、ある意味「怖さ」に縛られずホラーコンテンツを作りだせる。ということは、2026年以降、さらに多様なホラーを生み出してくれる…のかもしれない。昭和生まれのホラーファンとしては、そんな、「この先も新たなテイストのホラーが見れるのか」という期待を、未来に抱いている。

ホラーに特化してゲームを作るインディゲーム作家。インディゲームデベロッパー株式会社ワーを一人でやってます。クリエイターとしてゲームライターとして講師として、そしてもちろんいちゲーマーとしてゲームとともに生きています。

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