
君とキャラクタービルドとハックアンドスラッシュを思う存分楽しむRPG。伝統的ローグライク『Tales of Maj’Eyal』【げむすぱローグライク/ローグライト部】
自動生成やパーマデス(一度死ぬとすべてを失う)など、さまざまな要素が絡み合い、何度遊んでも楽しむことのできるゲームジャンル「ローグライク/ローグライト」。今回の「げむすぱローグライク/ローグライト部」第40回では、Netcore Gamesが開発・販売を手がける伝統的ローグライク『Tales of Maj’Eyal』をご紹介します。
『Tales of Maj’Eyal』とは
まずは本作のタイトルの読み方を説明しておきましょう。『テイルズオブマイ’イヤル』です。「テイルズオブ読めない」ではありません。現在一般的にプレイされているのは『Tales of Maj’Eyal』のバージョン4であり、略して『ToME4』とも呼ばれます(以下、本ゲームのタイトルは『ToME4』表記)。
「4」ということはそれ以前のバージョンも?気になった方もいるかと思いますが、はい、その通りです。本シリーズは元々は伝統的ローグライク『Angband』(本連載第10回で取り上げた『変愚蛮怒』のベースです)から派生した、指輪物語の舞台を利用したテキストベースの伝統的ローグライクであり、タイトルも『Tales of Middle Earth』(直訳:中つ国の物語)というものでした。
このテキストベースのローグライクであった時代の『ToME2』は、現在もY.Oz Vox氏のサイトからダウンロードが可能です。
その後、テキストベースからグラフィックベースで動作するようゲームエンジンを改良し、ゲームシステムも全般的に遊びやすく改良したのが現状の『ToME4』です。本作の本体は公式サイトから無料でダウンロードできますが、『ToME4』には有志の寄付を受け付ける仕組みやDLC、そして有料のSteam版が展開されるなど実質商業化を果たしています。その際に「指輪物語」の権利が関わる部分をそのまま残しておくことはできなかったのでしょう、タイトルやさまざまな固有名詞の変更が行われ、オリジナル作品となりました。
満腹度がない伝統的ローグライク!?遊びやすさとハックアンドスラッシュに特化したこのマイ’イヤルへようこそ
まずはキャラクターメイクから紹介していきましょう。本作ではニューゲームを開始するとキャラクターの名前・性別・難易度・種族・職業を決められます。ここまでは多くの伝統的ローグライクゲームと共通しますが、本作では主人公キャラクターの外見も設定できます。「@」ではないのです。なお、Steam版では自作画像も特定フォルダー以下に配置することで使うことができます。
……というわけで、ここはスパくんにご登場願いましょう。64×64と64×128のスパくんを用意しましたが……64×128のスパくん、でかい!
64×128のスパくんはデカすぎんだろ……というわけで、今回は64×64スパくんの盗賊で冒険に挑みます。なお初期状態では多くの職業が未解禁ですが、ゲームを進めて特定のイベントを進行すると選べる職業が増えていきます。
冒険が始まると、いきなりスキルポイント割り振りを求められるので驚くかもしれませんが、これが『ToME4』の開幕です。本作はスキル制を採用しており、習得するスキルを主体に冒険を進めていきます。初めてのうちはわからないことだらけだと思うので、とりあえず「遠距離攻撃ができる」「基本能力を伸ばすパッシブ」「ピンチを回避できる移動技」などを主体に習得していくと良いと思います。
初期スキルを振ったら、冒険の始まりです。多くの職業は、ここ「トロル沼」から冒険を始めることになります。
トロル沼には多くのモンスターが生息していますが、初期状態のキャラクターでも問題なく倒せるモンスターがほとんどです。移動したい位置を左クリックし、敵に近付いて左クリックで通常攻撃で敵を倒すことができます。なお本作の特徴として、「Z」キーを押すことでモンスターに見つかるまで未探索領域を自動的に探索できるという機能があります。この機能によってプレイヤーはほとんど移動ルートを気にすることなく、モンスターを見かけたら戦闘に集中することができます。また、本作には満腹度の概念もないので、思う存分探索に集中できます。
但し、敵ランクが「ボス」や「レア」、「ユニーク」の敵は危険です。彼らは特殊なスキルや状態異常を駆使して攻撃してくることがほとんどで、こちらも所持しているハーブや、覚えたスキルなどを駆使して戦う必要があります。画面下部のアイコン一覧から、ハーブやスキルを使うことができます。なお本作ではほとんどのアイテム・スキルがクールダウン制となっており、消費アイテムはほとんど存在しません。MPやスタミナといったキャラクターごとに個別のリソースを消費することはありますが、基本的にスキルを惜しまずに使っていくことが勝利への道です。
強敵を倒せばその分見返りも大きく、さまざまな強力な効果を持つ「ユニークアイテム」や、特殊効果が多数付与されたレアアイテムも手に入ることがあります。こうしたゲーム性は『ディアブロ』系統のゲームや、伝統的ローグライクの中でも本連載でも過去に取り上げた『変愚蛮怒』『Tangledeep』に通じる「ハック&スラッシュ」のゲーム性が強いといえます。
トロル沼の最奥にはダンジョンボス「石トロルのビル」が待ち受けます。突撃で一気にプレイヤーキャラクターとの距離を詰め、高い攻撃力でこちらを殴り飛ばしてくる強敵です。しかし、トロル沼を隅々まで回っていた近接・中距離系職業のキャラクターならスキルを駆使して倒すことができるでしょう(遠距離術師系職業は他のダンジョンを回って強化してからの方がいいかも)。なお、このボスを倒すと拾ったアイテムをエリア移動時に自動売却できる四次元ポケット「エネルギー変換装置」が手に入り、以降同じセーブデータで作成するキャラクターはこの四次元ポケットを持った状態からゲームを始められるので、最初はこのボスを倒すことを目標とするとよいでしょう。
トロル沼を出ると、ワールドマップが広がっています。近くのダースの村で補給をするもよし、目の前のモルゴスの棲家なるダンジョンに挑むもよしです。なおダースの村の北にはクエストを依頼してくる人がいますが、挑むのはLv10付近になってからがよいでしょう(ただし、Lv13までには必ずクリアしておくこと)。
ダンジョン内ではさまざまな予想外なイベントが発生することもあります。その中でも通称「エスコートイベント」と呼ばれる、旅人をマップ上の特定位置まで誘導するイベントは超重要です。このイベントを成功させると、大幅な能力値アップや貴重なスキルの習得ができる可能性があります。もし失敗しても特にデメリットはないので、積極的にチャレンジしましょう。
クリスタルで埋め尽くされた領域、酸素を補充しないと死に至る水中遺跡、ワームが掘った後を追って先に進んでいく砂虫の巣窟など、本作には特徴豊かなダンジョンが多数登場します。砂虫の巣窟は移動を間違えると*かべのなかにいる*が発生するので(さすがに即死はしないが大ダメージを受ける)、可能ならテレポート手段をもって挑むのが無難です。
本作の敵は先に進めば進むほど手ごわくなり、囲まれて為すすべなく、あるいは1つの判断ミスで敵に倒されてしまうこともあるでしょう。しかし、本作では一定回数は生き返ることができる残機制を採用しています。死んだ地点に即座に戻るか、あるいはダンジョンの外で復活するかを選ぶことができるので、囲まれてどうしようもない状態でやられた……という場合も安心です。もちろん「そんな救済措置は邪道!」と思うハードコアなローグライク愛好者向けに、ゲーム開始時のオプションでこの残機を無効にすることもできます。
満腹度の撤廃、「Z」キーによる自動探索など、遊びやすく配慮された点は光る本作ですが、キャラクターのビルド幅が多彩に渡ることや、戦闘難易度の高さも相まって、慣れないとなかなか先に進めないゲームであることは否めません。幸い、本作には日本語攻略wikiがあり、そこで序盤のゲームの進め方や基本的なビルドガイドが載っているので参照するとよいでしょう。
今回この記事で紹介した部分はゲームのほんの序の口であり、本作のクリアまでにはおよそ20〜30時間を要します。しかしながら本作には無数のキャラクタービルド、無数の攻略法が存在し、アイテムドロップが生み出すハック&スラッシュの楽しさも相まって、のめり込むとまさに「沼」なタイトルです。
近代のハック&スラッシュスタイル重視の伝統的ローグライクの中では、本作『ToME4』こそがもっとも遊びやすさと深みを両立しているタイトルではないかと筆者は思います。というか、筆者がこの連載を始めた理由の半分くらいが「いつか本作を紹介したい」という思惑からでした。
最後に……本作のSteam版、1782個もの実績があります。そのうち、プレイ時間70時間以上(クリアは「格闘士」にて1度達成)の筆者が解禁した実績はわずか52個です。というか本作の実績、達成自体が困難な実績が無数に含まれています。実績コンプを目指される方は、一生をこのゲームに捧げる覚悟が必要でしょう。
また、本作はDLCがいくつか配信されていますが、制作者曰く「Pay to Die」とのことなので、本作に十分に慣れるまではDLC未導入をお勧めします。
『Tales of Maj’Eyal』は、PC(公式サイト/Steam)にて配信中です。日本語にも対応しています。
