近年、Steamでは「作業用ゲーム」「作業管理アプリ」が流行っています。そのなかでも、日本の開発スタジオ・ネストピが開発した『Chill with You : Lo-Fi Story』が15万ダウンロードを突破し、ゲーマーたちの注目を集めております。

今回は、このジャンルの魅力を解説するとともに『Chill with You : Lo-Fi Story』が人気を博している理由にも迫ります。この原稿も、サトネちゃんと一緒にがっつり集中して書けました!

「作業用ゲーム」「作業管理アプリ」ってどんなもの?

ゲームを起動しながらも、集中して遊ぶのではなく、まったりとしたBGMを聴きながら学業や仕事などといった他の作業に没頭するための支援ツールのことを指します。「集中ツール」「作業用アプリ」などさまざまな呼び名がありますが、おおむね同じジャンルのことを指します。

大元のアイデアはYouTubeのチャンネル「Lofi Girl」。部屋のなかで女の子がずっと勉強している画面に、チルいLo-fi楽曲を365日24時間流し続けるというライブ配信が人気で、多くのフォロワーはこのアングルと音楽のセンスを受け継ぎ、Steamでゲーム化しているわけです。

ほとんどのタイトルはTo-Doリストやメモ、ポモドーロタイマーといった基本的な機能を備えており、ゲーム画面はサブモニターなどに映しつつ、自分の作業を進めていく形です。「なんとなく用事を先送りにしがちだったり、すぐに他のことに気が散ってしまったりするけど、ゲームのおかげで集中できた!」とレビューしている声もあり、一定のやる気を出してくれるジャンルなんです。

特に、この近くで誰かが作業していてくれる感覚は、安心感とともに見張りの役割もあり、「嫌にならない催促」として機能しているように感じます。今回紹介する『Chill with You : Lo-Fi Story』は特にその効果が高いタイトルではないかと思いました。

『Chill with You : Lo-Fi Story』Steamページはコチラ!『Chill with You : Lo-Fi Story』はどこが良いのか? 作業通話を通して語られる等身大のストーリー

本作も多くの作業用ゲームと同じく、Lo-fiなサウンドが流れるなか、女子大生のサトネちゃんと一緒にまったり作業するのが目的のゲームです。

もっとも大きな特徴は、本作には縦軸となる「ストーリー」が存在すること!

ポモドーロタイマーをセットし作業をすれば、作業時間に応じて経験値が溜まり、レベルアップ。上昇するごとに彼女と会話できるのです(タイマー1秒セットを連打しても経験値は全然溜まりませんので、ズルはNG)。

彼女が語る内容は、就職してほしい親と進学したい自分とのあいだの軋轢や、執筆中の小説について、鳥の鳴き声がどう聞こえるかといった他愛もないことまでさまざまです。ひとつひとつはそこまで長くなく、聞き流してもいいくらいの内容なので、作業の手を止めるほどではありません。しかしながら、会話を進めていくうちに「あれ? もしかして……?」と思わせるようなフックもあり、物語としての読みごたえもあります。

このフックが強烈に機能しており「どうせポモドーロタイマーをセットしたんだから何かするか……」と、プレイヤーが現実に抱えている作業をこなすやる気が起きてきます。実際に作業通話をしている感覚に似せていながら、リアルの人間とやりとりをするわずらわしさはなく、作業や仕事が捗っちゃうわけです。

また、サトネちゃんは女子大生ではありますが、本作に恋愛要素はなく、プレイヤーのジェンダーやセクシュアリティを問わず楽しむことができます。もちろん、ドキドキしながら遊ぶのもOKです。

モーションも非常に凝っており、多様に用意されています。タイマーの開始や終了時の意気込み、集中時のペンの動かし方、コーヒーを飲む仕草から窓を開けて換気をする動作まで、実在感にはかなりこだわっています。

特に、作業中につついたときに返ってくる「集中してないんじゃない?」「私も頑張るから君も頑張ろ?」といった戒めが聴きたくて、何度も邪魔してしまいました。もちろん、休憩中に話しかけたときのパターンも豊富に用意されています。

作業管理ゲームに多くの要素があるのは本末転倒のように思えますが、この“会話を楽しむこと”という報酬が用意されていることで「こっちも作業頑張らないと……」と思えるサイクルができているのは、かなり優秀なアイデアと言えるでしょう。完成されたひとつのゲーミフィケーションとして、多くのプレイヤーに体験してほしいものになっていました。実際、このアプリを起動しながらだと、後回しにしていた作業に手をつけることができたので、その手の悩みを抱えている人にはマジでオススメです。

また、一般的なADVやノベルゲームでは会話イベントをプレイヤーが遊ぶ分だけ用意する必要がありますが、本作は必要最低限のイベント数でプレイヤーにサトネちゃんと長く時間を共有した感覚を与えています。根っこは同じアイデアですが、いくつもの効果を生み出している作品だと感じました。

進捗に困っているあなたも、一風変わったADVを遊んでみたいと思っているあなたも、ぜひとも本作を手に取ってみてください。サウンドも素晴らしいですよ!

ちなみに現在、Steamアワード「ゆったり座ってリラックス」部門の最終候補にも残っています。

その記念として、全10曲の毎日楽曲追加企画が進行中。パズルマニアが選ぶゲームアワード「Thinky Awards」にノミネートされている『Öoo』などとのバンドルも販売されています。

『Chill with You : Lo-Fi Story』は、PC(Steam)向けに配信中です。

『Chill with You : Lo-Fi Story』購入はコチラ!

Write A Comment