太陽よりも質量が何倍も大きい恒星の最期に起こる、途方もない規模の大爆発──「超新星爆発」を、かなりかいつまんで説明すると、そうなるだろうか。

天文学に明るくなくとも、その名前を知っている人は多いだろう。しかし、それ自体を見た人はそこまで多くはないだろうし、ましてやいまにも爆発しそうな星を“間近”で眼前に見ることは、今世紀中には難しいだろう。

僕は先日、“間近”でそれを見た。ソーシャルVR・VRChatで、日本時間11月13日午前7時に、ある架空の星の超新星爆発を目撃した。

ワールド名は「BLUMEA․․․」。制作者はTontonDemonさん。1440万光年先にあるまばゆい星の最期を間近で見ることができるワールドだ。

そして、このワールドはカウントダウンがリアルタイムで進行する、面白い仕掛けが施されていた。4000時間程度VRChatをプレイしてきた僕も、あまり見たことのないとてもめずらしいワールドだった。

「BLUMEA․․․」ティザー映像まるでAAA級ゲームのようなイントロ

「BLUMEA․․․」の入口は、ゲームのタイトル画面のような、夜空の中にタイトルが浮かぶ空間からスタートする。言語選択の後、「始める」を選択すると、このワールドのシナリオを体験することができる。

スタート地点は、まるでゲームのタイトル画面に迷いんだかのよう/筆者撮影

その星は、あるとき夜空に現れ、天文学者も目を疑うほどの明るさを放ち始めた。「ブルメア」と名付けられた星は、その周囲に隕石を引き寄せ、巨大な天体群をつくり出した。

そして、ブルメアはこの日、最期を迎える。ワールドを訪れたプレイヤーは、地球から約1440光年先にある「ブルメア観測ステーション」を訪れ、その最期を見届ける──そんなストーリーが提示される。

イントロはナレーションつきでお届け/筆者撮影

上掲のスクリーンショットは、いずれもVRChatのカメラ機能を使い、ワールド内で撮影したものだ。AAA級ゲームのイントロのような映像は、VRモードでは自分の周囲に広がる“空間”として見せられている。

ベタな演出のはずなのに、僕は思わず息を呑んだ。傑作VRゲームとして名高い『Half-Life: Alyx』に触れたときのような衝撃が、たしかにあった。

ここは、地球から1440光年先の世界

イントロが終わると、格納庫のような場所に移動する。眼の前にあるパネルとタッチすると、足元がゆっくりとせり上がっていく。

ブルメア観測ステーション/筆者撮影

やがて、天井がゆっくりとスライドし、屋外の光景があらわになる。宇宙空間につくられた、無機質な鋼鉄の基地。そのすぐ前方にただよう無数の隕石の向こう側に、まばゆい光があった──ブルメアだ。

このタイトル演出が眼前に現れます/筆者撮影

壮大な音楽とともに「BLUMEA」「地球から約1440光年」とテキストが表示される演出はなかなかにゲーム的。けれども、不思議とテンションが上がる。

そしてイントロを見ていると、なぜか「ここまで来たか」と旅をしてきたかのような感覚に包まれる。“擬似的な冒険感”が心に宿っていたのは、没入感をともなうVRモードで体験していたからかもしれない。

リアルタイムで進む爆発までのカウントダウン

さて、僕がこのワールドを訪れたのは11月16日の夜。この時点では、ブルメアは神々しく輝くのみで、超新星爆発の兆候は見られなかった。

かわりに、観測ステーションの先端にカウントダウンボードが設置されていた。

11月16日夜に撮影した、爆発までのカウントダウン/筆者撮影

「BLUMEA․․․」の最大の特徴は、公開日の11月10日から、ブルメア爆発までのカウントダウンがずっと進行していた点にある。公開直後から体験できるのではなく、公開からしばらく経った日に初めて体験できる、かなりめずらしいワールドだったのだ。

そして、爆発が実際に起こる時刻は、日本時間の11月17日午前7時。夜ふかしの多い僕は普段眠っている時間だが、せっかくなのでリアルタイムでその時を見届けることにした。

asada_kadura

フリーライター・編集者。1991年生まれ、東京都出身。早稲田大学 文化構想学部卒。
VRとVTuberがきっかけで執筆活動を開始し、Webエンジニアを経て、2022年に独立。XR/VTuber/ソーシャルVR(メタバース)/AIを中心に取材・執筆活動を行っている。
プライベートではVRChatに入り浸る。プレイ時間は4000時間程度。

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