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 サイコムの「G-Master Spear Mini B850A」は、置き場所に困らないミニタワー型ゲーミングPCでありながら、自分好みの構成にカスタマイズできる。CPUクーラーは標準の空冷モデルだけでなく水冷モデルまで選択できるなど、幅広いBTOオプションが魅力の逸品だ。

 前回は外眼や内部を中心に紹介したが、今回は性能面にフォーカスする。なお、試用機の構成は標準とは異なる。具体的には、メモリーが32GB(16GB×2)、ビデオカードがASRock「Radeon RX 9060 Challenger 8G」(8GB GDDR6)に変更。

 また、電源ユニットはSilverStoneの「SST-DA750R-GMA」(750W、80 PLUS GOLD)、PCケースはサイドパネルが強化ガラスの「A3-mATX Black TG」になっており、ARGB発光システム(LEDストリップ1本)を追加している。

 ゲーミング性能に大きく影響する変更は、ビデオカードにRadeon RX 9060搭載モデルを採用していること。同GPUは「Radeon RX 9600 XT」の下位にあたるモデルで、コスパを重視している。ちなみに、単体販売はしておらず、採用メーカーもまだ少ない。

 ターゲットはフルHD・高画質設定におけるゲーミングだが、タイトルによってはWQHDでも快適に遊べるかもしれない。実際、どのくらいの性能なのか。定番のベンチマークソフトを使ってチェックしていこう。

自動チューニングで手軽に性能は上げられるが……

 G-Master Spear Mini B850Aの試用機のCPUは、標準構成と同じ「Ryzen 7 9700X」。Zen 5アーキテクチャーを採用した8コア/16スレッドのCPUで、TDPは65Wと前世代の「Ryzen 7 7700X」(105W)から大幅に引き下げられている。それでいながら、最大性能は前世代を上回っており、電力効率を大きく改善したモデルとして注目を集めた。

 まずは定番の「CINEBENCH 2024」を使って調べてみよう。このベンチマークソフトは、CGレンダリング速度からCPU性能を測ってくれるというもの。結果は「pts」という単位のスコアーで表示され、この値が高ければ高いほど高性能となる。

 テストは全コア/スレッドを使用する「Multi Core」と、1つだけ使用する「Single Core」の2つ。動画エンコードなどのパワフルな作業なら前者、ゲームや一般的な軽い用途なら後者の値が重要になる。

 なお、CGレンダリングはマルチスレッド処理に向いた用途となるため、コア/スレッド数が多いほどリニアにスコアが上がる傾向がある。また、それに伴い負荷も上昇し、発熱も大きくなるため、ストレステストとして使われることも多い。

 ということで、CINEBENCH 2024の結果がこちらだ。

 スコアーはMulti Coreが1142pts、Single Coreが133pts。Multi Coreの値こそ競合のインテル製CPUに及ばないものの、Single Coreは比肩する。ゲーミング用途なら十分だろう。

 また、10分ちょっとのMulti Coreテスト中、最大温度は68.8度までしか上昇せず、平均温度は62.5度と低めだった点も◎。Noctua製CPUクーラーの「NH-U12S redux」はよく冷えるモデルだが、CPU自体の電力効率も大きく寄与していると思う。

 これだけ余裕があるのなら、オーバークロック(以下、OC)設定でもう少し性能が上げられるのではないか、と考える人もいるだろう。そこで、「AMD Software:Adrenalin Edition」のCPU自動チューニング機能を使い、OC設定を有効化してCINEBENCH 2024を試してみた。

 結果はMulti Coreが1222pts、Single Coreが133pts。わずかだがMulti Core性能が向上しており、OC設定の効果はたしかにあった。ただし、CPU温度は最大86.2度まで上昇し、ファンの動作音もかなり大きくなってしまった。

 手動で設定を詰めていけば、CPU温度を下げつつ同等の性能を引き出すことは可能だろう。しかし、そこまで頑張ったところで、性能向上は10%にも満たない。趣味として遊びで行なうならいいが、実用性という観点から見れば割が合わないだろう。

 そんなわけで、この後のテストは電力効率のいい標準設定で実施している。

3Dグラフィックス性能を「3DMark」でチェック

 続いて、ゲームで重要となる3Dグラフィックス性能を「3DMark」でチェックしてみよう。多くのテストがあるが、まずは「Speed Way」の結果から。このテストではDirectX 12 Ultimateを使用し、リアルタイムのグローバルイルミネーションや、レイトレーシングといった重たい処理が行われるので、最新ゲームを高画質で遊びたい人の指標になるだろう。

 結果は2612スコアー。構成が異なるのであくまで参考までという話だが、過去のRadeon RX 9060 XT搭載ゲーミングPCのデータ(2843スコアー)よりもやや下だった。CU数(演算ユニット数)はRadeon RX 9060が28基で、Radeon RX 9060 XTは32基。この差を考慮すれば、順当な性能といえるだろう。

 これ以外のテスト結果は以下にまとめてたので、自分のPCとの比較などで役立ててほしい。

FF14ならWQHDゲーミングも射程圏内

 より実際のゲームに近いベンチマークソフトとして、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」(以下、FF14ベンチマーク)を試してみよう。ゲームで使われる実際のマップとキャラクターを表示し、どのくらいの速度で描画できるのかを測り、スコアーで評価してくれるソフトだ。

 解像度はフルHD(1920×1080ドット)に設定し、プリセットは「最高品質」とした。なお、画面表示はフルスクリーンモード、グラフィックスアップスケールタイプは「AMD FSR」だが、3Dグラフィックス解像度スケールはデフォルトの「100」のまま(すなわち、アップスケールしない設定)で検証している。

 結果はスコアーが18496で、評価は「非常に快適」。レポート出力機能で詳細を見ても、最低フレームレートが74fpsと高く、文字通り非常に快適にプレイできるようだ。

 フルHDでここまで性能が出せるなら、WQHD(2560×1440ドット)も射程圏内。ということで、画質設定は「最高品質」のまま解像度をWQHDに変更してリトライ。

 スコアーは11574で、評価は「とても快適」に下がった。最低フレームレートは50fpsまで落ちたので、シーンによっては若干カクつく可能性もあるだろう。しかし、MMORPGは30fpsを超えていれば遊べるため、WQHDゲーミングは現実的といってよさそうだ。

 なお、4K(3840×2160ドット)まで解像度を上げてしまうと、スコアーは5449まで激減。フレームレートは最低24fps、平均38fpsと低く、全体的にカクつきが目立つようになった。

 AMD FSRの3Dグラフィックス解像度スケールを「80」にするとスコアーは10000を超えるので、どうしても4Kでプレイしたい人はアップスケーリングしよう。ただし、細部のディテールが若干ぼやっとすることもあるので、それを嫌なら素直にWQHDで遊ぼう。

「モンスターハンターワイルズ」は画質設定次第か

 続いては、やや動作が重ためとなる「モンスターハンターワイルズ」のベンチマークを試してみよう。Radeon RX 9000シリーズの上位モデルでは好成績を出すタイトルだけに、Radeon RX 9060のスコアーも気になるところだ。

 ただし、Radeon RX 9060のVRAM容量は8GB。そのため、グラフィックプリセットで「ウルトラ」を選んでしまうと、不具合が生じる可能性があるという警告画面が出てしまう。

 とはいえ、ベンチマークテストそのものは完走した。しかも、スコアーは2万超え。フレーム生成ありの設定とはいえ、フルHDで平均120fpsを超えるという好成績だ。

 ただし、問題もある。どうやらVRAMが不足するためか、画面が大きく切り替わる場面で大幅にフレームレートが落ちてしまうのだ。それなりの頻度で80fpsを切るし、シーンによっては40fpsを切ることもあった。平均すればフレームレートは高いとはいえ、さすがにこれで「快適」だというのは微妙だろう。

 また、ベンチマーク中の画面を見ていると、明らかにテクスチャーの表示が間に合っていないシーンに何度も出くわした。やはりVRAMが足りずにその都度読み込みが行なわれ、そこがボトルネックになっているようだ。

 そこで、グラフィックプリセットのウルトラをベースに、テクスチャ品質を「高」へ変更。すると表示は大きく改善され、先ほどまであった急なフレームレートの落ち込みや、テクスチャー表示の遅れなどもなくなった。スコアーもフレームレートも伸びており、これなら文句なしに快適だ。

 ここまで性能が出るなら、さらに画質を高くしたくなる。そこで、アップスケーリングモードを「クオリティ」ではなく、「AMD Native AA」に変更。これは低解像度の描画を超解像技術で高解像度化するのではなく、最初から本来の解像度で描画する設定だ。これにより、細部のディテールアップが期待できる。

 結果は見ての通りで、平均フレームレートは122.89fpsに向上。見ている限りは60fps以上を維持できており、テクスチャーの描画遅れも、フレームレートの落ち込みも確認できなかった。画質優先でプレイしたければ、この設定がよさそうだ。

「黒神話:悟空」のフルレイトレーシングはOFFで

 最後に試したタイトルは、美麗なグラフィックが魅力のアクションRPG「黒神話:悟空」のベンチマークツール(以下、黒神話ベンチマーク)だ。高画質で遊びたいゲームだが動作は当然重たくなる。かといって、フレームレートを求めれば画質が落ちてしまうため、そのバランスが難しい。

 というわけで、解像度はフルHD、フレームレートは95パーセンタイルで60fps以上を必須条件とした。そのうえで、余裕をもってプラス10~20fpsくらい上が狙えるあたりの設定を探ってみた。

 いくつか試していく中で、超解像技術を使った時の画質の劣化に気づいた。WQHDや4Kであればそこまで気にならないのだが、フルHDだとどうしても細部の粗が目についてしまう。そのため、「スーパー解像度」の「サンプリング解像度」もなるべく高くする方向で調整。以下のような設定にした。

 ポイントは画質レベルを「最高」にしつつ、サンプリング解像度を「80」にしていること。解像度は若干犠牲になるものの、それを画質で補おうという狙いだ。その設定のベンチマーク結果がこちら。

 95パーセンタイルで66fpsと、狙い通り60fps以上をクリアー。ただし、平均フレームレートは74fpsとあまり余裕は少なく、実際のゲームでは60fpsを切るシーンがあるかもしれない。そこで、もう少しフレームレートを上げるため、画質レベルを「超高」に下げてみた。

 結果は95パーセンタイルで76fps、平均で84fpsとまずまず。このくらいの性能がであれば、画面のカクつきを気にすることなく遊べるだろう。

 なお、サンプリング解像度が「80」でも粗が気になる場合は、この設定のままサンプリング解像度を「100」にしてしまおう。95パーセンタイルが65fps、平均が71fpsにまで下がってしまうが、ゲームがプレイしづらくなってしまうほどではない。

 もちろん、画質を下げればもう少しフレームレートを上げられるが、せっかく美しいグラフィックが楽しめるタイトルだ。できれば、なるべく高画質でプレイしたいところ。

 ちなみに、フルレイトレーシングをONにしてみたところ、フルレイトレーシングレベル「超高」ではフレームレートが約6割減、「低」でも約4割減となってしまった。Radeon RX 9060ではフルレイトレーシングはOFFにしたほうが無難だ。

まとめ:Radeon RX 9060ならフルHDで高画質プレイ!
    コスパとサイズにこだわる人にオススメしたい

 G-Master Spear Mini B850Aの標準構成価格は30万2010円だが、Radeon RX 9060搭載ビデオカードに変更することで26万5540円と大幅に安くなる。ゲーミング性能はフルHDなら高画質設定でプレイできるだけの実力があり、ゲームによってはWQHDゲーミングも視野に入るほどだった。

 これだけの実力があるなら、コスパ重視のゲーミングPCとして、いい選択肢となってくれるだろう。小型ながらもカスタマイズ性も高く、幅広い要望に応えてくれる点も好印象だ。省スペースでゲーミングPCを運用したい人はもちろん、そのうえで性能に妥協したくない人にもオススメできる1台だ。

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