リストラに繋がる可能性もある?
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米ゲーム大手のEA(Electronic Arts)は、画像生成AI「Stable Diffusion」で知られるStability AIとの戦略的パートナーシップを発表した。両社はゲーム開発者向けに革新的なAIモデルやツール、ワークフローを共同開発し、品質を保ちながら開発スピードを大幅に高めることを目指しているという。
まず両社が取り組むのは、「スマートな絵筆」と称されるAIツールの開発である。これはテクスチャやゲーム内アセットの自動生成に重点を置くもので、物理ベースレンダリング(PBR)素材や、環境に応じて正確な色彩と光の再現性を保つ2Dテクスチャの生成を可能にすることを狙っている。
さらに、「複数のプロンプトで3D環境を事前に可視化し、アーティストがAIを通じて創造的にコンテンツを指揮できるようにする」仕組みも構築中だという。つまり、テキストやキーワードの指示だけでAIが3D環境の構造や雰囲気を一気に生成し、アーティストはその全体像を見ながら手動で調整や追加指示を行うことができる。これにより、複雑な3Dシーンの設計工程を大幅に効率化できる見込みだ。
Stability AIは「Stable Diffusion」のほか、3Dモデル生成ツール「Stable 3D」なども複数展開しており、今回の提携は自然な流れといえる。EAはAIをあくまで “支援ツール” と位置づけており、クリエイターの創造力や夢を補完する存在にとどまると強調している。最終的な目的は、人間のスタッフがより革新的な作品を生み出せる環境を整えることにあるという。
近年、AIはゲーム業界の幹部らが大きな関心を寄せている。『グランド・セフト・オート(GTA)』シリーズで知られるTake-Two Interactiveの社長は、「生成AIは雇用を減らすのではなく増やす」と発言している。技術の進歩が生産性を高め、結果としてGDPと雇用を押し上げるという考え方だ。
また『PUBG』のパブリッシャーであるKRAFTONも、「AIファースト企業」への転換を宣言し、AI関連事業に1000億ウォン以上を投資する計画を明らかにしている。さらにマイクロソフトなど、AI産業に直接的な利害を持つ企業もゲーム開発向けAIツールやプロトタイピングモデルの構築を進めている。
しかし、EAの真の狙いは、より現実的なものかもしれない。同社は最近、投資ファンドによる買収を受けており、その結果として数十億ドル規模の負債を抱える見通しだ。AIによる開発コスト削減が、果たして人員削減につながるのか。今後の動向に注目が集まりそうだ。