東亜プランが1985年10月に稼働(※販売はタイトー)したアーケードゲーム「タイガーヘリ」が、今月で稼働40周年を迎えた。

 本作は、8方向レバーとショット、ボンバー発射ボタンで自機のヘリコプターを操作し、敵を倒していく縦スクロールシューティングゲーム。敵弾に当たるとミスとなり、自機のストックがゼロになるとゲームオーバーになる。

 以下、筆者が駄菓子屋やゲームセンターで遊んでいた当時の記憶を頼りに、本作の面白さを改めて振り返ってみた。

ヘリコプターを操り、派手に炸裂するボンバーの衝撃

 本作が発売された直後は、筆者の生活圏にあった駄菓子屋やスーパーの一角にあったゲームコーナー、たまに遠征するゲームセンターのどこにもなかった。初めて本作に出会ったのは、1986年の春休み頃、駄菓子屋に置いてあったテーブル筐体で、面識のない上級生がプレイしているところであった。

 筆者の中では、シューティングゲームと言えば宇宙空間、あるいは近未来の世界が舞台となり、戦闘機やロケットなどの自機を操るイメージを何となく持っていた。だが、本作は自機がヘリコプターで、敵キャラは戦争のニュース映像や写真でよく見掛ける戦車ばかり。マップ上には軍艦や民家のような建物も描かれていたので「現在を舞台にしているのかな?」と思った。

 席が空いたところで早速遊んでみたところ、ヘリコプターを動かせるだけでも新鮮な体験で楽しいなと思ったのと同時に、移動スピードが「かなり遅いなあ……」との印象も率直に受けた。あくまで筆者独自の感覚ではあるが、これだけ移動スピードが遅い自機を操った記憶が過去になかったからだ。

 ショットの射程の短さにも最初は戸惑った。「エグゼドエグゼス」など、画面の端から端までショットが届かないシステムはすでに経験済みではあったが、ただでさえヘリコプターの移動スピードが遅い(と感じられた)のに、敵を倒すためには必然的に接近戦を強いられるとは、何て難しいゲームなのか。事実、初プレイではステージ1で、あっさりとゲームオーバーになったが、今までに遊んだシューティングゲームとはまた違ったスリル感が楽しめるゲームだな、と思ったこともおぼろげに記憶している。

本作に出現する敵キャラのほとんどが戦車ゆえ、空対地のバトルに終始する射程が短いため、写真の位置からではショットが敵に届かない。どんなに怖くても接近戦を仕掛ける必要に迫られる

 そして何より、本作で最も強烈なインパクトがあったのがボンバーであった。

 上級生が遊んでいるところを覗いていたら、広範囲に赤黒い弾幕らしきものが突然炸裂したときには「いったい何だこれは!?」とびっくりした。直後、インストカードに目を向けると、そこには「ボンバー」と書かれていたので、筆者は本作を通じて生まれて初めて「ボンバー」という単語、およびその攻撃方法を知ることとなった。

 本作のボンバーは、最大2個までストック可能で、炸裂すると敵にダメージを与えるだけでなく、敵弾も瞬時に消し去ってしまう。しかも、装着中のボンバーに敵弾がかすった際は、自動で炸裂してミスを防いでくれるスグレモノ。一瞬にしてド派手な爆発が広がり、敵の戦車や敵弾を一掃するその迫力には本当に驚かされた。

【迫力満点! ボンバーの炸裂】

「ヤバい!」と判断したら、すかさずボンバー投下!広範囲に炸裂し、多くの敵にまとめてダメージを与えると実に快感だヘタクソなりに楽しめた、手強い戦車軍団との激闘

 ヘリコプターの遅さと射程の短さに加え、マップ上には敵弾を遮る壁や障害物がまったくないのに、360度どの方向からでも敵の戦車が容赦なく弾を撃ってくることも、筆者が本作を難しいと思った大きな要因となった。

 敵の戦車は地上物扱いなので、ヘリコプターが重なってもミスにはならないが、敵は正面だけでなく、背後からもどんどん出現する。しかも、戦車はヘリコプターと重なった状態からでも容赦なく弾を撃つので、出現した瞬間に文字通り瞬殺されることもしばしば。ヘリコプターが破壊されたときに「今、どこから弾が飛んできたの?」と、一瞬キョトンとなったことも一度や二度ではとうてい済まなかった。

 それだけ難しい本作だったが、たとえまぐれであっても鈍足のヘリコプターを必死に操り、戦車の大群が一斉に放った弾を紙一重でかわせたときはとても嬉しかった。

敵の戦車は、背後からも容赦なく襲い掛かって来る前方に気を取られ、背後から現れた敵を見落せば即命取りに至近距離からでも戦車は問答無用で弾を撃つ。こうなると、もうひとたまりもない……

 ボンバーは、ボタンを押してから炸裂するまでの間に若干のタイムラグが発生する。このため「やられる!」と慌ててボタンを押した場合は、ボンバーが炸裂するよりも先にヘリコプターが破壊され、「チクショウ、遅かったか……」とがっかりすることもしばしば。使って快感、かつ貴重なボンバーを無駄遣い、あるいはストックを使い切らないうちにミスしたときは本当に悔しい思いをしたものだ。

ボンバーを発射した直後、炸裂前にやられてしまうと実に悔しい

 マップ上の特定の地点にはボーナスブロックが出現する。白色のブロックを撃つと、画面上部からリトルヘリが出現し、ヘリコプターが触れると合体して、以後ヘリコプターとリトルヘリが同時に正面にショットを放つ。赤色のブロックを撃つと、合体後に右または左に向けてショットを放つリトルヘリが、水色のブロックを撃つとボンバーの補充アイテムが出現し、黄色のブロックは合計10個撃つと1UPの効果が得られる。

 リトルヘリは同時に2機まで合体が可能で、合体に成功すると攻撃力が大幅にアップする。しかも、リトルヘリと合体中は甲高いメロディのBGMに切り替わり、遊んでいて大いにテンションが上がるので嬉しさがさらに増す。ただし、リトルヘリの射程もヘリコプターと同じで短く、敵弾に触れると一撃で破壊されてしまう。せっかく合体したのに、敵の攻撃が激しい場面ではあっという間に削ぎ落されてしまうことも、今振り返ると本作を難しいと思った一因となったように思う。

 なお本作のBGMは、合体後の曲だけでなく全般的に気に入ったので、筆者は後にサイトロンから発売されたゲームミュージックアルバム「究極TIGER -G.S.M. TAITO 2-」を購入し、最初のトラックに収録された本作のBGMを何度も聴きまくった。ちなみに、今でもお仕事中のBGMとしてたまに聴いている。

 本作では、ステージクリア時にボンバーおよびリトルヘリの残数が多いほど、クリアボーナス得点が高くなるのも面白いなと筆者は思った。

 そう思ったのは確かだが、再三書いたとおり本作はヘリコプター本体を敵の攻撃から守り抜くだけでも、当時の筆者の腕ではかなり難しかった。本作は、前述の黄色のブロックとは別に、一定のスコアに達するとエクステンド(1UP)となるので、ボーナス得点は喉から手が出るほど欲しいのだが、狙う余裕は正直まったくなかった……。

ボンバーやリトルヘリを残したままステージクリアするとボーナス得点がもらえる

 本作は、2021年にエムツーから発売されたNintendo Switch/PS4用ソフト「究極タイガーヘリ」、および8月にシティコネクションから発売されたばかりのPS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch/PS4用ソフト「東亜プラン アーケードコレクション VOL 1」にも収録されているので、今でも手軽に遊べる。

 「究極タイガーヘリ」版では、任意の場所でプレイデータをセーブ・ロードが可能で、危険な場面や隠れキャラの出現位置を事前に知らせるなど数々の便利機能が付いていて、難易度をぐっと落としたスーパーイージーモードも遊べる。加えて、1986年にポニーから発売されたファミコン版、およびNES(海外版のファミコン)版「タイガーヘリ」も収録されている(※DL版は追加DLCとして配信中)ので、これらのタイトルと比較しながら遊ぶのも一興だろう。

 また「東亜プラン アーケードコレクション VOL 1」版では、アーケード版と同様に各種設定が変更できるディップスイッチをはじめ、当たり判定の縮小化など、本作オリジナルのアシスト機能を搭載。巻き戻しやスロー・倍速機能も用意されている。

 本作をまだ遊んだことがない人も、ヘリコプターの自機を操り、ショットとボンバーを駆使して戦車と撃ち合う本作ならではの妙味を、これらの作品を利用してぜひ体験していただきたい。

さまざまなサポート機能を搭載している「究極タイガーヘリ」「究極タイガーヘリ」では、ファミコン版(写真上)とNES版も楽しめる

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