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マザーボードやビデオカードなど、特定のメーカーやブランドを好むファンは少なくない。かつて使用した経験から好印象を抱いていたり、独自の機能に惹かれたりと、その理由はさまざまだ。今回紹介するセブンアールジャパンのゲーミングPC「ZEFT Z55YC」は、そんな信望厚いGIGABYTEの製品をクローズアップしたモデルである。
では、ZEFT Z55YCはどのような特徴を持ったPCなのか。日本ギガバイトのProduct Marketing Leaderである渡辺 隆之氏(以下、渡辺氏)とProduct Marketing Managerの岡田 宇弘氏(以下、岡田氏)、セブンアールジャパンの中嶋 孝昌氏(以下、中嶋氏)、真重 翔氏(以下、真重氏)、中條 拓海氏(以下、中條氏)に話をうかがった。
GIGABYTEのマザーとグラボを主軸にコスパも重視
──今日はよろしくお願いします。まずは、ZEFT Z55YCのコンセプトを教えてください。
中嶋氏:ZEFT Z55YCはマザーボードにGIGABYTEさんの「B850 AORUS ELITE WIFI7」を利用することを前提に全体の構成を考えました。Ryzen 9000シリーズ用のマザーボードですと、最上位にAMD X870チップセットを搭載したモデルがあるのですが、今回のB850 AORUS ELITE WIFI7は上位モデルに負けず劣らず機能性に優れたモデルなんです。
──本日ご用意していただいた機材では、ビデオカードもGIGABYTEさんのモデルを採用していますよね。
中嶋氏:はい。GeForce RTX 5080を搭載した「GeForce RTX 5080 WINDFORCE OC SFF 16G」(型番:GV-N5080WF3OC-16GD)を選択しています。もちろん、そのほかのPCパーツに関してもコストパフォーマンスを追求しつつ、安定性が優れたものを組み合わせました。
真重氏:ZEFT Z55YCについては、GIGABYTEさんのマザーボードとビデオカードを主軸にして、黒色とグレーを基調に全体の色の統一感も大切にしました。
──PCケースのこだわりはありますか?
真重氏:PCケースは拡張性が高く、ハイエンドな構成にも対応できるAntecさんのP20Cのブラックモデルを採用しました。PCケースに付属する3基の120mmファンとサイドフローのCPUクーラーで、シンプルですが前面から背面へ抜けるエアフローで高い冷却効果が得られるモデルとなっています。
AORUS ELITEは万人にオススメできるマザーボード
──B850 AORUS ELITE WIFI7は、どういった位置付けのモデルですか?
渡辺氏:弊社はかつて、GIGABYTEという社名だけでマザーボードを展開していたのですが、数年前に「AORUS」というサブブランドを導入しました。AORUSはゲーミング向けのプレミアムブランドという位置付けでして、その中でも入門モデルに当たるものが、今回採用いただいた「ELITE」になります。
──AORUSの中にもさまざまなシリーズがありますよね。
渡辺氏:はい。AORUSには上位に「MASTER」、「EXTREME」、「PRO」といったシリーズもあります。AORUSはプレミアムブランドですので、どのシリーズもハイスペックではあるのですが、その中でも万人にオススメできるモデルはELITEやその上位のPROになります。MASTERやEXTREMEは専門家というかエンスージアスト向けになりますので、日常的な使用やゲームで遊ぶといった用途であれば、ELITEで十分だと思います。
──ちなみに、AORUSだとどんなシリーズがありますか?
渡辺氏:AORUS以外では、コストパフォーマンスに優れた「ULTRA DURABLE」、いわゆるUDシリーズというのがあります。製品名に「DS3H」とか「D2H」が付くモデルですね、その上位として準ゲーミングブランドになる「EAGLE」シリーズがあります。
AORUSは電源回路のフェーズ数が多め
コネクターやWi-Fiアンテナの色までこだわる
──ほかのシリーズにはない、AORUSシリーズならではの特徴はありますか?
渡辺氏:世代によって変わってしまうところがあるのですが、AORUSシリーズのホワイトモデルは、完全な白色で統一されています。あと、AORUSシリーズは電源回路のフェーズ数が多い点も特徴ですね。B850 AORUS ELITE WIFI7ですと、14+2+2フェーズ構成で安定動作に努めています。上位のMASTERとELITEでは、Dual MOSFETの構成が多少違う場合もあるのですが、フェーズ数などは統一していまして、ヒートシンクの構成やUSBポートの数で差別化を図っています。
──この場にあるX870M AORUS ELITE WIFI7 ICEもたしかに真っ白ですね。
中嶋氏:今のところ、AMD X870チップセットを搭載したMicro-ATXモデルってこのマザーボードぐらいしか見つかりませんでした。弊社はMicro-ATXモデルも多いので、小型のPCケースと合わせて高性能なモデルをお客様にご提案できるのかなと思っています。見た目が真っ白で統一できる点もメリットです。
渡辺氏:他社さんの製品ですと、基板は白くてもマザーボード上の各種コネクターが黒色だったりするわけですが、弊社のICEモデルはコネクターも白色で統一しています。また、付属するWi-Fi/Bluetoothアンテナも白色なので、真っ白なPCが欲しいというユーザーさんに喜ばれる仕様ではないでしょうか?
──ほかになにか特別な機能はありますか?
渡辺氏:弊社はAIにかなり力を入れていまして、例えば「D5 Bionic Corsa」という独自AI技術には、「AI SNATCH」と呼ばれる機能があります。これは本社のデータベースを参照し、オーバークロックを行った際でも、BIOSが正常に起動します。とくに、弊社はBIOSが正常に起動することを重視していまして、互換性の向上などにAIが活用されているというわけです。自作PCに詳しい人なら、メモリーの設定などで試行錯誤を繰り返した経験があると思いますが、このAI SNATCHでそういった作業が必要なくなります。
中嶋氏:BTO PCでオーバークロックを試す人はそんなに多くないでしょうし、なにより弊社の補償範囲外の動作になってしまいますが、そういった機能を有している高機能なモデルということで、お客様には安心してお使いいただけるのではないかと考えています。高性能で動作できるだけの余裕を持ったマザーボードということですね。
Wi-Fiアンテナがワンタッチ接続でお手軽
──最新世代ならではの機能はありますか?
渡辺氏:弊社のAORUSシリーズで、同クラスのモデルで比較しますと、CPUの自動オーバークロック機能である「X3D ターボ・モード」が前世代はBIOSでしか利用できなかったものが、最新世代ではWindows上から変更できるようになりました。あとは、メモリーが動作できる最大クロックも上昇しています。それと、Wi-Fiアンテナがワンタッチ接続できるようになり、BIOSもわかりやすく改善しています。
──もりだくさんですね。
渡辺氏:さらに、BIOSアップデートを行う際、これまではBIOSファイルを手動で選ぶ必要がありましたが、最新世代ではUSBメモリー内をオートスキャンして、最適なBIOSファイルが表示されるようになっています。そして、マザーボードの設計にもAIを活用しています。マザーボード上の配線をどこに通すとか、どこにスルーホールを配置するとかを、従来は技術者の経験と計算で行っていたのですが、今世代の製品ではAIを使った補助ツールで設計しています。
中嶋氏:弊社でもWi-Fi搭載モデルは多数取り扱っておりますが、アンテナはお客様ご自身で取り付けることになります。一般的には、アンテナケーブルをマザーボードの端子にネジどめするように接続するのですが、このB850 AORUS ELITE WIFI7はワンタッチなのですごく簡単です。お客様の手をわずらわせる機会が減ることは、BTO PCメーカーとしては非常にありがたいです。
ヒートシンクにも並々ならぬこだわり
──B850 AORUS ELITE WIFI7を見ると、PCIe x16スロットの側に実装されている大きなヒートシンクが目にとまります。
渡辺氏:これは「M.2 Thermal Guard Ext.」と呼ばれるM.2スロット用のヒートシンクなのですが、下位のモデルと比べて放熱表面積が4倍になっています。
岡田氏:これは下位モデルにはない、AORUSシリーズの特徴の1つでもあるのですが、弊社はヒートシンクを複数に分割するより、1つの大きなサイズにするのが好みでして、見た目にもインパクトがかなり大きくなっています。ヒートシンクの直下には、3つのM.2スロットがありますので、ユーザーさんにはM.2 SSDの発熱を心配することなくお使いいただけると思います。
──VRMのヒートシンクについてはいかがですか?
渡辺氏:電源回路のVRMについても場所によって放熱に偏りが起きないよう、バランスを取った設計になっています。
──具体的にはどうやってバランスを取ったのですか?
岡田氏:まずヒートシンクを大きくして表面積を増やし、溝をどのようにエアーが抜けるかまで計算しました。それに加えて、ヒートパイプによる熱平衡も重視しましたね。
渡辺氏:弊社の研究開発部門によると、VRMのヒートシンクとI/Oパネルの間に熱溜まりが発生しやすいとのことでした。そこで、B850 AORUS ELITE WIFI7では、I/Oパネルにも通気孔を設けています。弊社の調べでは、これにより最大で7%ほど温度の低減が実現しました。
Ryzen 7 9800X3Dへの変更や背面ファンの増加も可能
──ゲーミング用途を意識すると、CPUは「Ryzen 7 9800X3D」などの3D V-Cache搭載モデルが人気だと思うのですが、なぜZEFT Z55YCでは標準構成のCPUが「Ryzen 7 9700X」なんですか?
中嶋氏:たしかに弊社でもRyzen 7 9800X3D搭載モデルの人気は高いのですが、価格も高くなってしまいます。ZEFT Z55YCはコストパフォーマンスに配慮し、価格を抑えられるRyzen 7 9700Xを選択しました。もちろん、BTOメニューではRyzen 7 9800X3Dのご用意がありますので、より高いゲーミング性能を欲しい方は、そちらに変更していただければと思います。
──ZEFT Z55YCを実際に動かしてみていかがでしたか?
中條氏:推奨環境が「GeForce RTX 2080」の「Deadzone: Rogue」というFPSゲームを4K解像度で遊んでみたところ、最高設定でも平均フレームレートが70fps出ており、かなりプレイしやすい印象です。そのときのCPU温度も70度ぐらいに収まっていました。CPUクーラーのファンは80%ぐらいの回転数だったのですが、ヘッドフォンをして遊んでいればまったく気にならないレベルでした。
──ゲームを楽しむぶんには空冷タイプのCPUクーラーで十分そうですね。
中條氏:ほかにも「Apex Legends」などもプレイしてみたのですが、CPU温度は70度付近までしか上がりませんでした。とはいえ、ZEFT Z55YCはPCケースファンはフロントの3基だけなので、ゲームといっしょに「OBS Studio」を使用したり、YouTubeを同時に視聴したりする場合は、さらに背面ファンなどを増設したほうが熱対策にはいいのかもしれません。
今後はGIGABYTE採用モデルが増える?
──御社のPCにおいて、GIGABYTEのマザーボードを採用しているモデルは珍しいように思います。
中嶋氏:現行チップセット搭載モデルの採用は初ですね。弊社は創業時からGIGABYTE製品を採用しており、今まで多くの製品を取り扱ってきたのですが、しばらく時間が空いてしまいました。しかし、今回がきっかけで日本ギガバイトさんといろいろ話せたところもあります。今後もなにかいっしょにできればと思います。
──マザーボードとビデオカード以外もGIGABYTE製品で揃える構想はありませんでしたか?
中嶋氏:正直不勉強でお恥ずかしいのですが、僕の中ではGIGABYTEさんの製品は、マザーボードとビデオカード以外ではディスプレーのイメージしかありませんでした。今回、日本ギガバイトさんにうかがってみたところ、PCケースや電源ユニット、CPUクーラーもあるとのことなので、お客様の要望があるようでしたら、GIGABYTEさんの製品で統一したモデルもおもしろいのかなと考えています。
──最後に、GIGABYTEについてどういったイメージを持っていたかお聞かせください。
中嶋氏:GIGABYTEさんのようにこういったハードにこだわっているメーカーが個人的に大好きです。いろんな機能がソフトウェアで実現しますよという時代ですが、ハードがとがっているほうが直感的にお客様の琴線に触れるのではないでしょうか。
真重氏:最近はPCに関係なく、AI関連の話題を聞かない日はないぐらいですが、GIGABYTEさんのマザーボードにハードウェアレベルでAIがらみの機能が実装されている点は、かなり興味を惹かれました。
中條氏:僕は自宅でずっとGIGABYTEさんのマザーボードを使用しています。僕がPC自作をはじめた当初は、USBが多いマザーボードというとGIGABYTEさんのモデルぐらいしか選択肢がありませんでした。当時、僕は大量にキーボードとマウスを買っていまして、それらを全部接続できるマザーボードが欲しかったのです。で、実際に使ってみると機能も耐久性も大満足の出来でしたので、それ以来ずっとGIGABYTEさんのマザーボードを選んでいます。
──本日はありがとうございました。
PC自作に詳しい人からすると、GIGABYTEは昔からあるなじみ深いメーカーの1社だろう。かなりハードウェアに特化した設計思想に好感を覚える人も多いのではないだろうか。そんなGIGABYTEのマザーボードを主軸に製品開発したというZEFT Z55YCは、コスパや使いやすさに配慮したモデルだ。
とはいえ、GeForce RTX 5080搭載ビデオカードを採用している都合上、標準構成でも税込みで43万8690円と決して安価な部類ではない。しかしながら、セブンアールジャパンはとにかくセールが多いメーカーだ。実際、原稿執筆時は6万8000円引き(税別)になっていた。気になる方はお得なタイミングを逃さず購入してほしい。
ワンタッチのWi-Fi 7アンテナに巨大ヒートシンク、GIGABYTEのこだわりマザーとRTX 5080搭載グラボを採用したゲーミングPC