千葉・幕張メッセにて9月25日~28日にかけて開催の「東京ゲームショウ2025」。KEMCOブースに出展されていた「Depth Loop」のプレイレポートとインタビューをお届けする。
「レイジングループ」を製作したKEMCOが送る新作人狼アドベンチャー「Depth Loop」。本作は人狼TLPT作品の「DEPTH」を題材にしたもので、オラクルナイツよりライセンス許諾を取得し、イシイジロウ氏が開発に参加している。記事の前半で試遊レポートを、後半でインタビューをお届けしていく。
AIを相手に本格的な人狼ゲームが楽しめる!
パンデミックで滅びゆく人類の最後の希望である深海特殊施設“マグ・メル”を舞台に、紛れた人狼によって天才科学者たちがお互いを疑い合う人狼ゲームを強いられることになる「Depth Loop」。
ゲームには世界各国の12人の天才研究者とプレイヤー、人狼、人魚、司令官が登場。プレイヤーは、司令官からの命令でマグ・メルに送られ、その謎を追求すべく施設内で繰り広げられる研究者たちとの人狼ゲームをプレイすることになる。
人狼ゲームの勝敗により、ストーリーを進めることができ、登場人物たちの過去やマグ・メルの謎を解き明かすことができる。TGSの試遊版では人狼ゲーム部分をプレイすることができた。
ゲームはオーソドックスな人狼ゲームとなっており、プレイヤーはそのなかでキャラクターの発言に同意したり否定しながら議論に参加していく。
キャラクター一覧画面ではCO(※人狼用語でカミングアウトの略語)された役職や投票履歴が参照でき、自身で気になることをメモをすることもできる。誰がどのような行動をおこなっているかじっくり考えることができ、しっかり情報を整理できる。
後半に行くほど議論は白熱していき、人狼側は人狼が勝つように場を支配していくため、傍観しているだけでは負けてしまう。しっかり意見を主張して議論を正しい方向に持っていくのが重要となる。
ただし、意味もなく何度も特定のキャラクターを怪しいと主張していたりすると全員から怪しまれてしまう。チームを勝利に導くためにはロジカルな行動が重要だ。
ゲーム自体は開発中のものであったが、AIを相手に会話や行動がまったく破綻していない本格的な人狼ゲームが楽しめた。本作はストーリー部分もしっかり用意されているそうなので発売を楽しみに待ちたい。
イシイジロウ氏インタビュー!
――「Depth Loop」の企画はいつから動いていたのでしょうか? イシイさんは2023年に「ゾンビ・オブ・ザ・ドット」を発表していましたが、その後すぐに次の企画として動き出したのでしょうか?
イシイ:「ゾンビ・オブ・ザ・ドット」のあとですね。KEMCOさんから「レイジングループ」に続く人狼ゲームをテーマにしたゲームを考えられないかという提案を受けました。僕自身も人狼ゲームを10数年やり続けており、ゲームに落とし込むのはそんなに簡単ではないことは分かっていたのですが、いちど実験してみようかということで実現した企画です。
――人狼ゲームが題材というのはKEMCOさん側からの提案だったんですね。
イシイ:「さぁ、次は何をしましょうか」というブレストのなかで生まれたものですね。ただ、人狼ゲームがテーマだったら、お互いにハードルが上がりますよというお話はしました。KEMCOさんは「レイジングループ」という過去の成功作があるし、僕もアルティメット人狼プレイヤーとしてのこだわりもあります。それでもお互いに覚悟が決まっているならやりましょうということになりました。
――ハードルは高いと。
イシイ:キャラクターをAIで動かして舞台や放送レベルの人狼ゲームを成立させることができるのかが今回の最初のハードルでした。それができなかったら商品化はできないよねという議論からはじまりました。
――AIと戦う人狼ゲームなんですね。
イシイ:AIと言っても生成AIではなく、コンピューター思考型の人狼ゲームになります。13年続いている人狼TLPTの舞台のプレイヤーと同じレベルでちゃんと機能できるかという問いかけから生まれたゲームです。
――AIを相手にする人狼ゲームですと、他社さんですが、「グノーシア」のようなゲームが思い浮かびました。
イシイ:「グノーシア」との比較はなかなかしづらいのですが、本作は初心者用の人狼ではなく、舞台や放送レベルの高度な人狼AIのゲームができるのかというところでした。これができるのであれば僕自身も人狼のアドベンチャーゲームを作ってみたいと思いました。
――試遊させていただきましたが、3ターン目にしてあっけなく吊られてしまいました。これはガチの人狼ゲーム好きが楽しめるゲームだなと思いました(笑)。
イシイ:ははは(笑)。それは投票が遅かったんじゃないですかね。人狼は仲間を殺されたくないから投票が遅いんですよ。だから投票が遅いと人狼ではないかと疑われてしまうんです。
KEMCOスタッフ:発言しすぎている場合も狙われやすくなりますね。
――なるほど。本当にリアルな人狼が楽しめるんですね。
KEMCOスタッフ:何回かプレイしていくことで立ち回りが分かってくると思います。
イシイ:キャラクター一覧の画面で、あらゆる情報をきちんと検証できるようになっています。誰が誰に投票したか、誰がなぜ襲撃されたのか、それらをちゃんと分析していけば全体像が見えてくるはずです。人狼は人狼を助けようとしますし、人間は人狼が分からないため探るような動きをします。そこを分析すれば真実にたどり着くような、高度にロジカルな人狼が楽しめるようにしています。
――キャラクターの感情のようなものはありますか? キャラクターの関係性は人狼ゲームごとに毎回リセットされると考えていいのでしょうか?
イシイ:人狼ゲームとしての役職ロジック的にはそうですが、キャラクターの関係性はしっかりあります。強い関係性のあるキャラ同士が“あなたが人狼であることを信じたくない”みたいな感情は、今回の体験版には入っていませんが、本編には入っています。
――キャラクターの心情的なものも関係してくると。
イシイ:そうです。AとBとCが同じ人狼である確率で並んだときに、そのなかで関係性のあるキャラクターには投票したくないという感情ですね。ただ、ロジカルにその人が人狼であると判断した場合には、たとえ深い関係性があったとしても、その人に投票するシビアさも持ち合わせています。
――単純な思考では無いと。何回プレイしても楽しめそうなゲームですね。
イシイ:そうですね。ゲームとして何回も楽しめるようにしたいと思っています。また、今回は12人の人狼TLPTからキャラクターを選んだのですが、漏れた素敵なキャラクターもたくさんいるので、そういったキャラクターや巷の人気人狼プレイヤーといった方々をダウンロードコンテンツで発表できるようなものに育てていきたいと考えています。
――本作は人狼TLPTの人気シリーズである「DEPTH」を題材にしていますが、この「DEPTH」の世界観や魅力を教えてください。
イシイ:一番のポイントは人狼が悪ではないというところです。人類がパンデミックで滅亡しかけているなかで、そのためのワクチンを作るために人狼や人魚を捕まえてきて動物実験をしている研究施設があるんです。そのなかであまりの非人間的な人狼の扱いを見かねて狂陣が人狼を逃がすんです。そして人狼が人間に復讐をする……というところから物語はスタートしているので、人狼はぜんぜん悪ではなく、被害者なんです。
――それは斬新ですね。
イシイ:その切り口がすごくおもしろいと思いました。初演のときは人間側に悪人が多く、人狼たちを殺して切り刻んで当然と考えているキャラクターばかりがいました。そんなマッドサイエンティストだらけのなかに人狼が紛れ込んでいるという設定にすごくドキドキしましたね。この世界観をなんとかゲームに落とし込みたいなと考えました。
――なるほど。
イシイ:また、もう1点ポイントがあるのですが、それは今回の人狼たちには名前があるということです。つまり、人狼には知性があり、人格があり、家族も過去もあります。ただの人狼というカードではないんです。自分が人狼になったら、殺される人狼がどんな気持ちで人間から逃げ延びようとしているか分かるんです。そういう世界観なので、今までの人狼ゲームとは全然違うアプローチの作品になっています。
――人狼TLPTは毎回アドリブの舞台が展開していますが、今回のゲームは人気だった公演と同じシナリオになるのか、ゲームだけのシナリオになるのか、いかがでしょうか?
イシイ:ゲームだけのシナリオになります。舞台はアドリブですので、それと同じものをゲームのシナリオにコピーすることはできません。ただ、13年間で」850公演以上あった人狼TLPTのキャラクターをお借りしていますので、シナリオライターが「DEPTH」の公演で映像が残っているものはすべて観たうえでそこで起こったシチュエーションやキャラクターの情報をゲームに入れ込んでいます。そのため公演であったいろいろなシチュエーションをゲームで再現できると思います。
――プレイヤーはエデンというキャラクターでしたが、彼が主人公になるのでしょうか?
イシイ:今回の体験版用に作った特別なキャラクターになります。実際には名前を付けることができ、自分の名前で遊ぶことができます。
――ゲームとしては周回して何度も遊べるような作品でしたが、エンディングなどは存在するのでしょうか。
イシイ:はい、もちろんです。ループすることによって真相が明らかになっていきます。これは僕自身の言葉ではなく「グノーシア」のクリエイター川勝さんが最初に使われた言葉で、ローグライトアドベンチャーというものがあります。すごく素敵なジャンル名だと思ったのですが、後に続くタイトルが無かったので自分でも作りたいなと思いました。人狼ゲームのようなランダム性を持ったゲームシステムと物語を組み合わせることにより、ループ構造を持ちながら、ゲームシステムを解くことによってエンディングを迎えられるようになる予定です。
――今回は「DEPTH」でしたが、人狼TLPTのほかの演目のゲーム化は視野にいれていますか?
イシイ:人狼ゲーム部分のゲームシステムの完成度が高く、そして多くの皆さんが遊んでくれるようになれば可能かなと思っています。まずはこのAIの人狼ゲーム部分をずっと遊んでいられるようなレベルまで高められるかどうかになってくるのかなと。ただ、今回の「Depth Loop」は人狼に名前と人格があるのがポイントで、その部分を作りたかったからこの演目を選んだという部分もあります。ほかの演目をゲーム化するのであればまた違ったアプローチになるのかなと思います。新撰組人狼やスチームパンク世界観の「STEAM」など魅力的な世界観の作品が沢山あるので、ほかの演目のゲーム化も目指していきたいです。
――「DEPTH」だからこそゲームにしたかったと。
イシイ:そうです。正義と正義がぶつかり合う、ゲームに正解が無い内容です。どちらが勝っても正解が無いものに対してどうやって答えを探していくのかに注目してください。
――最後に発売を楽しみにしているユーザーにひとことお願いします。
イシイ:本作は人狼ゲームとしても、アドベンチャーゲームとしても、挑戦に溢れ、まったく新しい読後感のゲームを目指しています。ぜひ注目してくださるとうれしいです。
人狼TLPT 13周年記念公演「#54:STEAM 機巧人形と月の記憶」
2025年9月25日(木)〜10月5日(日)
劇場:新宿村LIVE
10/28までアーカイブ配信も!
https://oracleknights.co.jp/jinrou-tlpt/perform.php?054
1981年生まれ。東京都出身。2000年よりゲーム雑誌のアルバイトを経て、フリーライターとしての活動を開始する。アドベンチャーゲームやロールプレイングゲームなどのジャンルを好み、オールタイムベストは「東京魔人學園剣風帖」。ほかに思い入れのあるゲームは「かまいたちの夜」「月姫」「CROSS†CHANNEL」「ひぐらしのなく頃に」「ダンガンロンパ」「カオスチャイルド」「ライフ イズ ストレンジ」「レイジングループ」など。
X(旧Twitter):https://twitter.com/kawapi
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※画面は開発中のものです。
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