子どもの非認知能力を伸ばすのに、重要な「放課後時間」。でも、子どもから「外で遊ぶのは嫌だ。ゲームをしているのが一番いい」と言われたら……? 現代の子育てで必ずぶつかるのが、子どもとスマホやゲームの問題。単純に禁止するだけでOKといかないのが、難しいところ。むしろ、親が頑なにスマホやゲームに触れる機会を奪ってしまうのは、子どもの成長を考えると逆効果になりかねません。民間学童保育・保育園を広く展開する島根太郎さん自身も、子どものゲーム漬けに悩んだそう。そんな島根さんが、ゲーム機を隠すのをやめて、代わりにしたこととは?
子どもたちの「余白の時間」を守る
私たちの学童保育の行事カレンダーには、意図的に何も予定を入れていない日があります。保護者説明会で「この日は何のプログラムもないんですか?」と質問を受けることがありますが、何もないわけではありません。あえての「余白」の時間です。
今、多くの子どもたちの放課後は、習い事などで余白なく予定で埋められています。
我が子を思う保護者の方々の願いはよくわかります。自分が子どもの頃やってよかったこと、やりたくても家庭の事情でやらせてもらえなかったこと。いずれにしても、わが子には、より豊かな機会を用意してあげたい。
でも、週5日の放課後時間のすべてを塾や習い事で埋めてしまうと、大切なものが失われていきます。
例えば、友達関係。学校で「放課後に一緒に遊ぼう」と誘われても、習い事があるからと断るしかない。何度か断っているうちに、友達も「しょうがない」と誘うのをやめてしまう。そうして子ども同士のつながりが薄れていく。これは子どもたちの成長にとって、けっして良いことではありません。子どもたちには、放課後を自分で設計する力が備わっています。でも、親が良かれと思ってすべてを決めてしまうと、その力を発揮する機会すら失われてしまうのです。
もちろん、段階はあっていいと思います。小学校に上がったばかりの頃は、親が選択肢を示してあげる必要があります。でも、2年生、3年生と学年が上がっていくにつれて、子どもの意見をより反映させていきましょう。そして最終的には、子ども自身が放課後時間の主体者になっていく。そんな展開が理想的です。
中学受験についても同じことがいえます。私たちの会社の中学受験経験者に聞いてみると、小学生の頃に中学受験した人の多くは「親が決めた」と答えます。でも、高学年になれば自分の意思で「受験してみたい」と思う子も出てきます。上の兄姉の様子を見て「私も頑張ってみよう」と思うこともあれば、同級生が受験すると聞き、興味を持つ場合もあるでしょう。
大切なのは、親が導く意識よりも子どもの気持ちに寄り添う姿勢です。
習い事についても、子どもが本気でやりたいと思うものに絞ってみてはどうでしょうか。たしかに、多くの時間を勉強に割いていけば、学校や塾でのテストの点数が上がったり、志望校への合格期待値が上昇したりといった目に見える結果が出てくることでしょう。でも、繰り返しお伝えしているように、社会に出てから必要になる力は、もっと別のところにあるのです。
友達と遊ぶ中での工夫や発見。ちょっとした失敗や、それを乗り越える経験。一見、何もしていないように見える時間の中で、子どもたちは確実に成長していくのです。高学年になると、自分で目標を立て、計画を作ることもできるようになってきます。受験であれ、スポーツであれ、子どもが「これをやりたい」と思ったことに対して、どう時間を使っていくか。実際、スケジューリングを任せてみたら、遊びに誘われて計画が狂うこともあるでしょう。でも、それも含めて主体的な学びです。社会に出れば必ず求められる時間管理の練習にもなります。
私はすべての習い事を否定するわけではありません。ただ、放課後時間の設計図を描くとき、ぜひ「余白」を残してほしい。子どもたちが自由に過ごせる時間、友達と遊べる時間を大切にしてほしい。その時間はけっして無駄ではなく、むしろかけがえのない成長の機会なのです。
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「ゲームをしているのが一番いい」と言われたら?