千葉・幕張メッセで9月25日(木)~28日(日)まで開催されている「東京ゲームショウ2025」。

年々インディーゲームの出展者が増えていき、勢いが止まらないこの業界。より多くの人々に伝えるためのマーケティングやローカライズにも注目が集まっています。

今回は、そんなインディーゲームを多くのプレイヤーに届ける為に2018年にスウェーデンで生まれたゲーム翻訳/マーケティング会社「Neon Noroshi」の代表・Miyaさんにお話をうかがいました。

過去にもNeon Noroshiの話題は、KAI-YOUで取り上げたことも。ここでは英語圏のインディーゲームが日本で売れない理由として「販売元や開発者がXを運用していないのではないか」という仮説から、SNS運用の重要さについて考察されてました。

SNSでの発信のコツから、日本と海外で全く異なるというプレスリリース戦略、そして多くの開発者が見落としがちなSteamストアページの最適化まで、インディーゲームを世界に届けるためのノウハウをお届けします。

「Neon Noroshi」代表・Miyaさん

「すごい」「綺麗」は使わない SNSでゲームの魅力を伝える工夫

──Neon Noroshiは、欧米圏のゲームを日本に広げるためにXの運用を積極的に行い、実際にウィッシュリスト増加の効果があったと過去のブログで読みました(外部リンク)。今でもその運用を続けられているのでしょうか?

Miya はい。今でも英語圏のインディーゲームを日本に紹介する投稿を続けています。Neon Noroshi公式Xのフォロワーも1.7万人を超え、以前よりも多くの人に広がっている実感があります。

Xだけではなくて、中華圏ではBilibiliやレッドノートを使うなど、国によって主要なSNSが異なるので、プラットフォームを変えながら運用しています。

人気になるタイトルも国ごとに全然違うので、SNSでの紹介の仕方もそれぞれ工夫している形です。

『Planet of Lana II』/Neon Noroshiブース

──ゲームの情報を発信する上で、何か意識していることはありますか?

Miya 読み手がゲームをすぐに理解できるような情報提供を心がけています。

例えば、「すごい」「綺麗」といった形容詞は、人によって受け取り方が変わってくるので、なるべく使いません。

その代わりに、具体的で、誰でも簡単に想像できるような言葉で説明するようにしています。あとは、静止画だけでなく、より魅力が伝わりやすいのでSteamに上がっているトレーラーをより短く編集した動画を投稿することも意識しています。

──最近、Neon Noroshiで取り扱った手ごたえのあったタイトルはありますか?『電車アタック』の投稿が注目されていたのは見かけましたが。

Miya 最近だと『Roadside Research』というゲームが大きな話題になりました。

これは4人のエイリアンが地球を観察するために人間に偽装してガソリンスタンドを運営する、という内容です(外部リンク)。

緑色のエイリアンが人間のお面をつけていて、誰が見てもバレそうなツッコミどころがあるのが面白いんです。4人で協力プレイができるので、協力プレイを好むインフルエンサーの方々にもウケが良かった印象です!

言語だけではなくテンプレートも全く異なるプレスリリース戦略

──Neon Noroshiでは、日本のデベロッパーが苦手としがちな海外へのプレスリリース展開もサポートされているそうですね。

Miya そうなんです。日本のデベロッパーやクリエイターさんはご自身でXを運用できてフォロワーも多いですが、海外へのプレスリリースとなるとご自身で行うのは難しいですよね。

現地の言葉に翻訳して書く必要があるのはもちろんですが、そもそも日本と海外ではプレスリリースのテンプレートが全く違うんです。

──テンプレートが違う、というと?

Miya 日本のプレスリリースのテンプレートは、例えば有名な「PR TIMES」にあるようなものは少し形式が固く、情報が分散しているものが多い印象です。

欧米では、まず「このゲームが何なのか」を最初に明確に伝える書き方が基本です。また、メディアとの関係性の築き方も国によって異なります。

『ダンジョンクロウラー幸運ウサギと魔法の爪』のUFOキャッチャー

Miya 日本や中国のメディアリレーションは、かなり“ウェット”な感じです。「ぜひ書いてください、お願いします」と丁寧に関係をつくっていくスタイルですよね。

一方で欧米ではもっとドライです。知り合いのジャーナリストに記事掲載をお願いする以外は、メール配信ツールを使って、一度に3000〜4000件のメディアに情報を送ります。その後、個別にフォローアップの連絡を入れる、という流れが一般的なんです。

見落としがちなSteamストアページの最適化

──メディアやSNSを用いる以外で、国外ユーザーにアプローチするために重要な施策はありますか?

Miya Steamのストアページからの流入は非常に大きいので、ページの最適化(オプティマイゼーション)に関するコンサルティングも行っています。

例えば、ゲームのタグが間違って設定されていたり、類似ゲームとして適切でないタイトルが表示されていたりするケースも多いんです。

こうした細かい部分を修正するだけで、プレイヤー流入の機会が大きく変わってきます。

『PowerWash Simulator 2』/Neon Noroshiブース

──ゲームを宣伝するための、インフルエンサーへのアプローチについてはいかがでしょう?

Miya インフルエンサー施策も、本当に労力がかかります(笑)。まず、担当するゲームと似たジャンルのゲームをプレイしている人を探し出すことからはじめて、リストアップした方々に個別にメールを送ってプレイをお願いするという──そういう地道な作業の繰り返しですよ。

ですが、これもゲームを知ってもらうためには欠かせない重要な取り組みですね。

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タナカハルカ

武蔵野美術大学中退後、フリーのゲームライターとして執筆業を開始し、自身でもインディーゲームを開発。アイドルグループの運営スタッフやオーガナイザーとしても活動。2025年8月からKAI-YOUで編集/ライターとして従事。得意ジャンルは地下アイドル、インディーゲーム、モダンカートゥーンなど。著書に『海外ゲーム音楽ガイドブック ビデオゲームからたどる古今東西の音楽』(DU BOOKS)、『楽曲派アイドル・ガイドブック ももクロ以降のアイドルソング再考』(双葉社)がある。

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