東京ゲームショウ2025に先駆け、品川の日本マイクロソフト本社にて、プレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC用RPG「The Outer Worlds 2」の開発チームとの対面メディアブリーフィングおよび、グループインタビューが開催された。
「The Outer Worlds 2」はObsidian Entertainmentが10月30日に発売を予定しているスペースオペラRPG。プレーヤーは「地球議会」のエージェントとして、星系規模で起きている「時空の裂け目」の謎を解き明かすため、アルカディア星系での陰謀に挑む。この星系には3つの勢力が争っており、プレーヤーの決断が対立に影響を及ぼしていく。
本作を開発するObsidian Entertainmentは「Fallout: New Vegas」などを手掛けた会社。彼らが生み出す作品には、プレーヤーとマスターが会話で物語を生み出す「テーブルトークRPG」に近い体験を提供したい、という想いが根本にある。「The Outer Worlds 2」は前作以上にプレーヤーに選択の面白さ、キャラクタービルドの楽しさを提供するゲームとなるという。
「The Outer Worlds 2」は8月末にメディア向けプレビュープログラムを公開し、ゲームの序盤を公開した。今回はここからさらにゲーム内容に踏み込んだ説明と、開発者の思いを語るインタビューが行われた。作品の魅力を紹介し、発売への期待を高めていきたい。
【『The Outer Worlds 2』公式トレーラー】
プレーヤーの選択がキャラクターを形作り、より個性的なキャラクターに!
今回、「The Outer Worlds 2」の紹介を行ったのは、Obsidian Entertainmentで本作のExecutive Producerを務めるJustin Britch氏だ。Britch氏の説明でより具体的なゲーム内容が明らかになった。
「The Outer Worlds 2」の紹介を行ったExecutive ProducerのJustin Britch氏
「The Outer Worlds 2」は一人称視点のRPG。アルカディア星系という世界が舞台となる。これは前作のハルシオンとは異なる星系で、全く別な物語が展開する。このため前作の知識がなくても楽しめる。
本作の大きな特徴が「キャラクターカスタマイズ」の幅広さだ。どのような生まれで、どういった経緯で宇宙の探索者になったか? どのようなスキルを持ち、どのような装備をまとい、どう周りの人間と関わっていくか。プレーヤーには非常に多くの選択肢が与えられ、そのキャラクターならではのアプローチで物語を紡いでいく。前作よりゲームの規模は大きく拡大、たくさんの星を巡り、様々なコンテンツに触れていく。
「The Outer Worlds 2」は一人称視点のRPG。Obsidian Entertainmentならではの、プレーヤーの選択でダイナミックに世界が変化するストーリーに大きな魅力がある
現在、アルカディア星系は「時空の裂け目」が様々な場所で発生し、危機に瀕している。この時空の裂け目の原因が、星間航行になくてはならないワープドライブと密接な関係があるようなのだ。プレーヤーはこの時空の裂け目の謎に挑んでいく。そしてもう1つの問題が「派閥」だ。3つの派閥が宇宙の覇権を握ろうとそれぞれの思惑で活動している。プレーヤーはそれぞれの勢力と関係を持ち、あるいは協力し、あるいは敵対し、さらには全く関わらないという選択肢も選びながら物語を進めていく。プレーヤーの行動で3つの勢力のパワーバランスは大きく変化していくのだ。
「The Outer Worlds 2」では各勢力の表現に力を入れている。前作の“風刺”の精神を引き継ぎ、各派閥は皮肉も交えた独特のダークな世界観を持っている。全体主義の権威に盲従する姿勢や、科学を宗教としてあがめる極端さなど、勢力の思想や正義は偏っており、皮肉たっぷりに描かれる。プレーヤー自身も自らの正義を信じて疑わない「地球議会」という勢力に所属しているが、この星系では3つの派閥が対立しており、これらに干渉していくのだ。3つの勢力に関わりながらも、この宇宙の危機「時空の裂け目」の謎に立ち向かっていくこととなる。
ダークで風刺の効いた世界の描写に注目
派閥の1つは「護国帝政府」。かつてはこの星系の覇権を握っていた勢力だが、今は押されている。全体主義的な思想を持つ勢力で、完全な社会を目指し、国民を圧迫し強硬な手段に出る国家だ。
2つめは「昇華律団」。かつては護国帝政府の一部であったが独立し、宗教のような性格を強めている。彼らが信じるのは「科学」。厳密な数学、未来予測によって様々な問題の解決を目指している。3つめが「クレアおばさん」。ユニークな名前だが、2つの企業が合体した「スーパー企業」と呼べる大きな勢力で、利益最優先の新興勢力だ。アルカディア星系はこの3つの勢力が覇権を握るため争っている。
そして「The Outer Worlds 2」が目指すのは、魅力的なストーリー体験だとBritch氏は語った。Obsidian Entertainmentのバックグラウンドは「テーブルトークRPG」にある。1人のゲームマスターと複数のプレーヤーが自由にアイデアを出し、即興と機転で物語を紡いでいくテーブルトークRPGならではの自由な物語体験を、コンピューターRPGで体験できることを目指して本作は作られているという。
自由なキャラクターカスタマイズ、それによって生まれる千差万別なプレイスタイル。交渉上手だったり、武器の達人だったり、隠密に長けていたり、能力が違えば物事のアプローチは変わる。勢力への関わり方、仲間への態度、様々な選択で全く別な物語体験ができる。選択によって物語は変化するし、装備ですら変化する。物語の展開を何度でも楽しめる作品になっているとのことだ。
さらに「フロー(flaw)システム」という要素がある。これは自分のプレイスタイルに対応した助言システムで、プレイスタイルに合わせゲーム側から提案がなされ、プレイスタイルを強化する働きがあるという。プレーヤーのスタイルをシステム側で判断し、よりはっきりとした個性が出るプレイスタイルを提示してくれるシステムだ。例えばしゃがんで歩くスニーキングスタイルを多くとるプレーヤーは、「膝がその形に慣れる様になる」という提案を受けることで、スニークが向上するが、しゃがみ動作をやめたときは膝が鳴って敵に察知されやすくなるなど、良いことだけでなく、不利なことも出てくるシステムだという。
プレイスタイルが決まるとアプローチも決まってくる。だからこそプレイスタイルを変えた複数プレイが楽しい。物語の選択も含め、数千通りの物語が展開するゲームだとBritch氏は語った。また、キャラクターの能力や派閥の関わりで前回とは全く違う道が見つかることもある。多彩なアプローチをたっぷり楽しんでほしいとBritch氏は語った。
ちなみにこれだけ異なる選択肢があれば、1回のプレイは短めなのか? ということを質問してみたが、探索に夢中になればかなりボリュームたっぷりなゲーム体験が楽しめるとのこと。他のRPGと比べても中規模以上のボリューム。開発者は60時間プレイしてもまだまだ宇宙を探索できたという。多数の選択肢があるからこそ、ボリュームもかなりのものになっているという。
メディアからはもう1つ、「時空の裂け目はどのようなものか?」という質問も上がった。こちらはぶっちゃけて言えば「触ると死んでしまう恐ろしいもの」というのが最初期の扱いだという。しかし物語が進むにつれ、この裂け目の意味や謎が明らかになってきて、パズル要素のような性質も見えてくる。時空の裂け目とは何なのか、ストーリーが進むことで大きな意味を持つようになるとのこと。
ボリュームがありながら、2周目以降、プレイスタイルやアプローチを変えることで変化していく物語3つの勢力の三つどもえの戦いは、プレーヤーによっていかに変わっていくのか?
今回はさらに、ブリーフィングの内容を受けた合同インタビューも行われた。フローシステムや、物語へのこだわりの一端が明らかになった。Game DirectorのBrandon Adler氏と、Design DirectorのMatt Singh氏が、メディアからの質問に答えた。
インタビューではGame DirectorのBrandon Adler氏(左)と、Design DirectorのMatt Singh氏が、メディアからの質問に答えた
――「The Outer Worlds 2」はメディア向けプレビュープログラムが実施されましたが、各メディアからはどのような感想が寄せられたでしょうか?
Adler氏:かなり好意的でした。ただ、プレビュープログラムはコンテンツとしてかなり限定されたものであり、本当のゲームはこれから、というものなのでこちらに触れてもらうのが楽しみです。やはり本編に触れていただかなくてはゲームの奥深さは感じてもらえません。
プレビュープログラムは意図的に本編の持つ要素を断片的に盛り込みました。バランスとして「The Outer Worlds 2」はどんなゲームか、というものを感じてもらえたとは思いますが、本編はもっともっと深いぞ、ということを強調したいです。
Singh氏:「プレーヤーの選択が結果に繋がっていく」という体験をしてもらえたと思っています。展開が大きく変わる要素などを盛り込みました。他にも銃での駆け引きなど、ゲームの要素の一端をしっかり感じさせるプログラムになっていました。また、プレーヤーが所属する地球議会や、全体主義的な護国帝政府に対して、風刺的なユーモアを効かせて表現していることも感じてもらえたと思っています。本編に触れていただければ、ここから大きく広がる世界を感じてもらえます。
――前作の要素をきちんと受け継いだ「The Outer Worlds 2」という印象を持ちました。一方で、前作から変わったところはどこでしょう?
Adler氏:「The Outer Worlds 2」を開発するにあたり私たちは、「前作では何がうまくいったか?」、「望んだようにはならなかったのはどこか?」を洗い出しました。プレーヤーからは「もっと反応がわかりやすく」、「選択肢が生み出すインパクトをもっと強くしてほしい」といった要望が多かった。このため、選択肢をより多く広げました。「The Outer Worlds 2」では派閥や、NPCの反応、世界そのものを変える選択肢など、ストーリーをより大きく変える要素が入っています。
また、前作ではやらなかったことを今作ではあえてやっています。プレーヤーの選択で、全く触れられなくなる要素があります。3つの派閥の中から1つを選ぶことで、敵対した派閥のストーリーの選択ができなくなります。全く関係を絶ってしまうような反応になり、敵対側と関係性を深める選択ができなくなります。自分の選択による世界の反応が大きく変わる要素を盛り込んでいます。
各星の描写や、勢力の違いも見所
Singh氏:クエストでは仲間のリアクションにも注目してほしいです。プレーヤーの行動に対し「自分はそう思わない」と判断し、時には敵対関係までエスカレートする可能性もあります。仲間自身の価値観があり、プレーヤーの行動で様々な反応が得られます。
「派閥の多様化」も新しい要素です。前作では2つの企業の思惑があり、対立がありましたが、今回は3つの勢力の三つどもえの対立になっています。全体主義的な「護国帝政府」。科学を宗教的に扱う「昇華律団」。前作の2つの企業が融合した巨大企業「クレアおばさん」。これらの対立がプレーヤーに様々な選択を迫っていきます。よりしっかり風刺の効いた勢力の表現にも注目してほしいです。現実的なバラエティを持った世界になっていると思います。
もう1つ、前作をプレイしなくても楽しめる「The Outer Worlds 2」ですが、前作をプレイすることでより深く楽しめる要素ももちろんありますので、ファンの方は楽しみにしてください。
――3つの勢力は魅力的である一方で、「所属したくはないなあ」とも感じさせる絶妙な描き方ですが、3つの勢力を設定した意図を聞かせてください。
Adler氏:勢力を風刺的なユーモアで表現するというのは、前作を生み出す前から目指していました。「The Outer Worlds 2」では各勢力を同じようなトーンで表現するのはやめたいと思い、三つどもえの戦いを設定しました。世界をどのように統治するつもりか? この世界の位置づけは? といったことをしっかり詰め、スタイルを設定しました。
3つの勢力が織りなす三角形を考え、権威主義、絶対主義の「護国帝政府」。宗教的な科学者集団「昇華律団」。前作で対立していた企業が1つになった「クレアおばさん」を設定しました。プレーヤーは各勢力の視点で世界が全く異なって見えるように設定しています。1つの問題に対して、3つの視点の見方がある。問題に対するアプローチも異なります。
プレーヤーは各勢力の反応を見て選択していくこととなります。それ以外にもあえて無視するとか、勢力の思惑を邪魔しよう、といった反応もできます。思い切って3つの勢力の思惑を無視し、自分の考えで突き進む、ということもできます。たくさんの選択肢を設けました。1つの事柄にとどまらず、宇宙全体に対して異なる視点を提供したかった、というのが三つどもえの意図です。
Singh氏:Obsidian Entertainment はプレーヤーの思うままにゲームを遊んでほしい。テーブルトークRPGでプレーヤーの思いつきに呼応して、ゲームマスターが物語を生み出していくような体験をしてもらいたいと思うんです。ユーザー自身がストーリーを作っていく、そのための仕掛けを仕込んでいます。ユーザー自身が物語を作っていく、それが私たちの理想です。
――プレゼンで触れた、フローシステムの詳細を教えてください。ゲームの難易度が変わったり、プレーヤーがパワーアップするような要素なんでしょうか?
Adler氏:フロー(flaw)システムは実は前作から入っているんですが、十分プッシュできなかったのです。プレーヤーのアクションに反応性を高くしていきたいと考えたシステムで、プレーヤーの行動を常にトラッキングし、アクションを提案するシステムです。
例えば、弾が空になる前にリロードする癖があるプレーヤーに対して「マガジンサイズを大きくしますか?」といった提案をします。この提案を受け入れると、逆にリロードをし忘れると次弾装填にペナルティが発生するなど、利点だけでなくリスクがあるのです。プレーヤーのプレイスタイルをより強調するシステムです。フローシステムはプレーヤーの行動を注視し、そこから提案するシステムなのです。
Singh氏:flaw(欠点)という名前の通り、前作ではプレーヤーの苦手なことに対してパワーアップさせるシステムでした。どちらかといえばネガティブな意味があったんです。「The Outer Worlds 2」では苦手なことも、それを逆にプレイスタイルに組み込めるような提案をするシステムになりました。常にリロードする人は、よりリロードが有用なようにマガジンを大きくする一方で、オートリロードになった場合にペナルティを発生させ、リロードを頻繁にするプレイスタイルへと誘導するようなシステムです。
プレイスタイルを特化させる「フローシステム」はどのようなものになるのだろうか?
――3つの勢力の中で、とびきりブラックなユーモアを感じさせるエピソードがあれば、教えていただけますか。
Adler氏:面白く、ブラックな要素としては「ラジオ」があります。各勢力はそれぞれのラジオ局があり、各勢力の視点で物事を語ります。ラジオ局はストーリーをさらに膨らませ、それぞれの価値観や物の見方を教えてくれます。彼らの政治的な思想や、思惑も感じられます。
例えばガス漏れが発生したとき、プレーヤーはガス漏れを直すこともできるし、それを悪用し勢力に大きなダメージを与えることもできる。プレーヤーの行動に利益を得た勢力はプレーヤーを英雄のように持ち上げますが、敵対した勢力は悪魔のように罵ります。プレーヤーの行動にラジオがどんな反応をするかも楽しんでください。ラジオですので、音楽も流れます。
――ファンへのメッセージをお願いします。
Adler氏:日本のプレーヤーはRPGが大好きだ、ということをよく聞きますし、私も特にターンベースの日本のRPGが好きです。西洋のRPGである「The Outer Worlds 2」が日本の方々にも楽しんでいただければ幸いです。プレーヤーの行動に対する世界の反応、プレーヤーの選択が世界を変える感触、プレーヤーの選択が個性的なキャラクターを生み出していく要素など、楽しんでいただけると思います。より深く遊んでいただければと思います。
Singh氏:プレイステーション 5、Xbox Series X|S、PC、バトルネット、ゲームパスと「The Outer Worlds 2」は様々な環境で遊んでいただけます。テキストは日本語も選択でき、快適にプレイできます。新しい広大な世界、多彩な選択肢……。ぜひ遊んでください。
――ありがとうございました。
プレーヤーの思いついたとびきりのアイデアにゲームマスターが応え、予想もしなかった物語が生まれる。テーブルトークRPGをプレイした人にはそういった経験がある人は多いだろう。開発スタッフは「The Outer Worlds 2」でその興奮を実現しようとチャレンジしている。
プレーヤーの何の気なしにとったスキルが、ピンチの時にうまくはまり、気がつくとその道のエキスパートになり、その技術が宇宙を救う、といったことも「The Outer Worlds 2」ならばあり得るかもしれない。そして2度目のプレイでは全く違うスキルとアプローチで、全く違う展開が待っている。これはとてもワクワクさせられる要素だ。「The Outer Worlds 2」ではどんな体験ができるのか、今回話を聞くことで発売がとても楽しみになった。
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