2023年、ゲーミングデバイス界隈に衝撃を与えた「ZENAIM KEYBOARD」。愛知県の自動車部品メーカー・東海理化が一から作り上げた純国産ゲーミングキーボードで、ロープロファイルと磁気検知式を組み合わせた業界初のキースイッチ、48,180円という価格設定、発売後の不具合対応など、ゲーマーの間で良くも悪くも大きな話題となった。
【画像】2023年5月に発売された「ZENAIM KEYBOARD」。業界初のロープロファイル磁気検知式ゲーミングキーボードとして、ゲーマーの間で大きな話題となった
あれから2年が経った2025年、遂に後継モデルの「ZENAIM KEYBOARD2」が登場する。本製品は、初代モデルから様々な改良を施し、80%サイズの「TKL(テンキーレス)」のほか、FPSゲーマー待望の60%サイズ「mini」を新たにラインナップ。価格も3万円台に落とし込むなど、ユーザーからのフィードバックにあらゆる面で応えた「ZENAIM KEYBOARD」の完成形なのだ。
今回、東海理化より発売前に試用する機会を頂いたので、本稿では「ZENAIM KEYBOARD2 mini」のレビューをお届け。ロープロファイルの磁気検知式スイッチを搭載した60%サイズの純国産ゲーミングキーボードという唯一無二のデバイスの実力を検証していこう。
■ 苦難のローンチを経験した「ZENAIM KEYBOARD」。めげずに後継モデルを開発
まずは「ZENAIM KEYBOARD」について軽くおさらいしよう。同製品は、東海理化によるゲーミングギアブランド「ZENAIM」の第1弾プロダクトとして2023年5月に発売。自動車部品に使われている磁気センシング技術を応用した、自社開発のキースイッチ「ZENAIM KEY SWITCH」を搭載し、業界初のロープロファイル磁気検知式ゲーミングキーボードとして登場した。
発表当時、税込48,180円という価格設定は、大手ゲーミングデバイスメーカーのハイエンドキーボードよりも高価で、ゲーマーの間でも論争となったが、初回ロットはなんと4分で完売。自称キーボードマニアである筆者は、純国産ゲーミングキーボードにロマンを感じて購入を決意し、公式サイトでの争奪戦に参加した末、運よく初回販売分を手に入れることができた。
だが、初回ロットは、スペースキーなどで使用されているスタビライザーに不具合があり、製品回収が行なわれたほか、セカンドロット以降の販売も停止された。また、2023年8月に登場した改善版では、キーキャップの塗装ムラが発覚し、再び製品回収と販売停止に至るなど「ZENAIM KEYBOARD」は苦難のローンチを経験した。
筆者は1人のユーザーとして、「ZENAIM KEYBOARD」で2度の製品回収を経験したが、「ZENAIM」に悪いイメージはなく、むしろ好感を抱いている。もちろん、不具合があった製品を一度ならず二度も出荷してしまった事実は消えないが、最初の時点で「必ず改善されたものを準備することをお約束致します」と発表し、きちんとそれを成し遂げた。また、ユーザーへのサポート体制もよく、改良ポイントを公式サイトなどで公開するなど、日本企業らしさを感じる場面が多々あったためだ。
そして、後継モデル「ZENAIM KEYBOARD2」では、初代「ZENAIM KEYBOARD」ユーザーからのフィードバックに徹底的に応え、様々な面でブラッシュアップが行なわれている。まず60%サイズの「mini」が9月25日に先行発売され、80%サイズの「TKL」が10月14日に発売される。
■ めっちゃコンパクト! 「ZENAIM KEYBOARD2 mini」の外観&レイアウトをチェック
ここからは「ZENAIM KEYBOARD2 mini」を詳しく見ていこう。外観は、初代「ZENAIM KEYBOARD」をギュッと凝縮したようなミニマムなデザインで、ゲーミング感は少なく、筆者としては非常に好みだ。左右の余白も縮小されており、片手で余裕で持てるほど非常にコンパクトなサイズ感となっている。全高は24.5mmで、ロープロファイルらしくパームレスト要らずだ。
なお、2024年9月の発表当時は「ZENAIM KEYBOARD 60」という製品名になっていたが、様々な改良が施されたこともあり、新たに「ZENAIM KEYBOARD2」のminiサイズとして展開されることとなった。
上側面にはUSB Type-C端子が“左側”に設置されている。これはユーザーからのフィードバックを受けたもので、初代「ZENAIM KEYBOARD」ではUSB Type-C端子が右側に搭載されていたのだが、ゲーム中はキーボードを右斜め下に傾けるFPSゲーマーが多く、USBケーブルが不恰好に見えてしまったり、マウス操作の邪魔になることもあった。これを受けて「ZENAIM KEYBOARD2 mini」では左側に変更されたことで、USBケーブルがマウス操作の邪魔にならず、見た目もよりスマートになった。
底面は「ZENAIM」ロゴのほか、6カ所に滑り止めのラバーが貼り付けられている。これも初代「ZENAIM KEYBOARD」からアップデートされており、ラバーが剥がれにくい構造となったほか、素材もシリコン系に変更され、よりグリップ力が高くなった。そのため、製品自体は506gと軽量であるにもかかわらず、指で押した程度ではびくともしない。ゲーム中に不意に動くようなことはほとんどないだろう。
キーキャップは、初代「ZENAIM KEYBOARD」に引き続きABS製で、しっとりとした独特な触り心地のものが使われている。ぱっと見変化はないようだが、塗装保護層がアップグレードされ、耐久性を向上させている。今回2週間ほど試用していて、キーキャップの塗装が剥がれるようなことはなかった。
一方で印字自体は塗装のため、使用環境や頻度によっては摩耗が起きるとしている。筆者はこの独特な触り心地のキーキャップも好きなのだが、やはり印字が剥げないダブルショットまたは昇華印刷のPBT製キーキャップも、バリエーションとして用意してほしいと感じている。
また、初代モデルに引き続き、キースイッチのホットスワップに対応している。2025年9月時点で「ZENAIM KEY SWITCH」の個別販売は実施されておらず、他社のキースイッチとの互換性もないため、現状ホットスワップを活かすことはできないのだが、将来的に押下圧の違う「ZENAIM KEY SWITCH」の登場にも期待したい。
今回はFPSゲーマーの間で人気の高い「US配列」をお借りしたが、別途「JIS配列」のモデルも用意されている。キーレイアウトは、ちょうどフルサイズキーボードから文字エリアだけを抜き出した配置となっており、カーソルキーやファンクションキーは搭載されていない。だが、特殊レイアウトというわけでもないので、普段からUS配列を使用しているゲーマーは違和感なく使用できるだろう。
■ 打鍵音がより静かに! 「ZENAIM KEYBOARD2 mini」の使用感をチェック
続いて、実際に「ZENAIM KEYBOARD2 mini」を2週間ほど使用した感想をお届けしていく。まず一番の変化点として、打鍵音が圧倒的に静かになった。これは初代ユーザーであれば、すぐに気付くレベルの大きな違いだ。
初代「ZENAIM KEYBOARD」も比較的静かではあったのだが、筆者はタイピング中に筐体内で発生する「パイーン」という小さな反響音が気になっており、「これがなければ最高なのにな……」と思っていた。これは他のユーザーからも挙がっていたようで、ZENAIM開発チームは改良を施した。
具体的には「ZENAIM KEYBOARD2」では、新たにイノアックコーポレーション製の高機能フォーム「カームフレックス」を天板とPCB基板の間に導入。これによって反響音がなくなり、打鍵音も「カタカタ」とした安定感のある音に変わった。筆者はこの反響音が初代モデルで感じていた最大の不満点だったため、これが解消されたのは非常に嬉しい。
次に、これは60%サイズのゲーミングキーボード全体に言えることなのだが、圧倒的にコンパクトなため、マウスの操作エリアを広く取ることができる。これに加えて「ZENAIM KEYBOARD2 mini」はロープロファイルの磁気検知式スイッチを採用。この条件に該当するのは、他社ではnuphy「Air60 HE」とMelGeek「MADE68 Air(こちらは65%サイズ)」くらいだ。
非常にニッチなジャンルではあるのだが「そうそうこれを待ってたんだよ!」と感じているFPSゲーマーも多いはず。そして何より「ZENAIM KEYBOARD2 mini」は“Made in Japan”という安心感があり、もし何か不具合が起きても日本語でサポートを受けられるというメリットがある。
もちろん、ゲーミングキーボードとしての使い心地は抜群。スイッチ自体は初代モデルと同じ「ZENAIM KEY SWITCH」を採用しているので、まっすぐストンと落ちる打鍵感となっているほか、しっとりとした質感のキーキャップはグリップ力がある。長時間のゲームプレイも安定して楽しめるキーボードだ。
また、コンパクトになったが機能は削られておらず、0.05mm単位でアクチュエーションポイントを調整できるほか、ラピッドトリガー機能「MOTION HACK」やSOCD機能に対応。さらに、磁気検知式スイッチは温度によってマグネットの磁気の強さが変化するため、周囲の温度に応じて補正する「温度補正機能」が搭載されている。プロシーンでも正確な操作が可能な、ハイエンドに相応しいゲーミングキーボードなのだ。
■ 初代モデルを糧に進化した「ZENAIM KEYBOARD2」。TKLのレビューもお楽しみに
ここまで「ZENAIM KEYBOARD2 mini」のレビューをお届けしてきた。初代「ZENAIM KEYBOARD」は出だしこそ躓いてしまったが、改善版のリリース以降はユーザーからの反応もよかった。「ZENAIM KEYBOARD2」では初代モデルを糧として、ユーザーからのフィードバックを多く取り入れ、着実に進化させてきた印象だ。
特にFPSゲーマーにとっては、待望の60%サイズの登場ということもあり、購入を検討している方もいることだろう。「ZENAIM KEYBOARD2 mini」は数少ない“ロープロファイル磁気検知式純国産ゲーミングキーボード”として、その期待に応えてくれる仕上がりとなっている。
一方で「やっぱり60%サイズはキーが少なすぎる……。ゲームも仕事も一つのキーボードでこなしたい!」という方には、10月14日に販売される「ZENAIM KEYBOARD2 TKL」もある。実は今回「ZENAIM KEYBOARD2 TKL」もお借りしているので、こちらのレビューも楽しみにしていてほしい。
(C) ZENAIM
GAME Watch,畠中健太
