カプコンが1985年9月に発売したアーケードゲーム「魔界村」が、今月で稼働40周年を迎えた。

 本作は、主人公の騎士アーサーを4方向レバーとジャンプ、攻撃ボタンで操作して敵を倒していくアクションゲーム。制限時間内に、各ステージの最終地点にいるボスキャラを倒し、鍵を奪い取って出口に進むとクリア(※最終ステージはボスを倒すだけでクリアできる)となり、次のステージに進む。敵や敵弾に触れると鎧が脱げてパンツ一丁の状態になり、パンツ一丁の姿で再度ダメージを受けるか、または画面外に落下するとミスとなる。1周全7ステージで、7ステージクリア後は2周目に突入する。

 以下、筆者がゲーセンで遊んでいた当時の記憶をたどりつつ、本作の特徴や面白さを改めて振り返ってみた。

あまりの不気味さとカッコよさに驚愕。ステージ1から強敵と罠のオンパレードで悶絶

 筆者が「魔界村」の存在を初めて知ったのは、今となってはどの媒体だったのか、はっきり覚えていないがゲーム雑誌に掲載された新作アーケードゲームの紹介記事だった。

 まず驚かされたのが、キャラクターも背景も、まるでホラー映画を見ているかのようなグロテスク、かつ美しいビジュアルだったことだ。記事中にはステージ1のゾンビが出没する墓場の写真だけでなく、ラスボスの大魔王(※ラスボスと知ったのは、それからずっと後のことだったが)との対決シーンも掲載され、その大柄かつ不気味な姿には度肝を抜かれた。

 実物を初めて見たのは、確か1985年の冬休み期間中で、たまたま出掛けたデパートのゲームコーナーだった。ある程度の攻略パターンを確立していた見知らぬ上手なお兄ちゃんが、おそらくステージ3でタワーモンスターやウッディピッグ、レッドアリーマーなどの敵と戦っているところに偶然遭遇した。

 主人公のヒゲのオジサンが、敵にやられると鎧がいっぺんに脱げてパンツ一丁になり、さらに攻撃されるとガイコツになる演出はおかしくもあり、なおかつ恐怖感もあった。そのお兄ちゃんは、やがてボスのドラゴンの居場所にたどり着く。空中を飛び回るその巨大さとともに、ツノを生やしてキバをむき出しにした、いかにも強そうな風貌も特大のインパクトがあった。

地面から次々と這い出し襲い掛かってくるゾンビ。ゲーム開始直後から不気味さも迫力も際立っていた一度ダメージを受けると鎧が脱げ、もう一度ダメージを受けると白骨化してミスになる演出も斬新だった

 いざ自分で遊んでみたら、ステージ1の開始直後からとにかく難しいのなんの……。最初に出現するゾンビたちをさばくだけでも大変なのに、たまに墓石の上から飛んでくるカラスや、口から弾を吐き出すグリーンモンスターが同時に出現するとさらに難しくなり、なかなか先に進めない。まるで本物のギターやベースを演奏しているかのような各BGMの音色も、スリル感をさらに引き立てるメロディもすごい迫力で、敵が出現したり、攻撃を仕掛けてきたときに流れるSE(効果音)の不気味さも衝撃だった。

 唯一の武器である槍を連射していたら、墓石から突然マジシャンが出現して呪文を放ち、呪文を浴びたアーサーがカエルの姿に変えられたときも本当にびっくりした。しかも、カエルに変身中は槍を投げられないため、またまたあっという間に敵の餌食となってしまった。

 やっとゾンビ地帯を抜けたと思いきや、今度は大柄で羽を生やしたレッドアリーマーが、優々と腰を下ろしてこちらを待ち構えている。早速槍を投げると、まるでこちらの動きを察知しているかのように易々とかわし、その後も空中飛行と体当たり、さらには口から弾を吐き出し、ダメージを与えるどころか近付くことすらままならない。初めのうちは、このレッドアリーマー戦で何度もアーサーを白骨化させられた。

 何度かチャレンジしているうちに、レッドアリーマーをまぐれで倒すことができたが、今度は制限時間に追われるハメに。本作では、残り時間が少なくなるとカウントダウンが始まるが、そのジングルのせいで緊張感が嫌でも高まる。そして、哀れ筆者はカウントダウンに焦るあまり、水上を動く小さな足場への着地に失敗して即死したときには、この上ない絶望感を覚えたことも、今なお忘れられない思い出だ。

【ステージ1前半のハイライト】

墓石から出現するマジシャンの呪文を浴びると、哀れアーサーはカエルの姿に変えられてしまうレッドアリーマーの神出鬼没な動きと、その強さも衝撃だった敵を倒すだけでなく、ジャンプで狭い、または動く足場を飛び移るテクニックも本作では求められる

 ステージ1の後半に出現するフライングナイトとウッディピッグも、今まで見たことがない不気味なビジュアルと行動パターンにも驚きの連続だった。どちらの敵に対しても、槍で応戦しても逃げ回っても体当たりを食ってしまい、攻略パターンがまるで編み出せない。

 ボスの一角獣(サイクロプス)は、最初はその巨大さと機敏な動きに圧倒されたが、無我夢中で戦っている間に倒せたと記憶している。一角獣を退治した直後、上空から舞い降りた鍵をすかさず拾って扉を開き、ステージ1を初めてクリアしたときはハンパなく嬉しかった。

【ステージ1後半のハイライト】

フライングナイトは、前方からの攻撃は盾で跳ね返すので背後から武器を当てないと倒せない空中に突然現れるウッディピッグは、正面と下に向けて槍を放つのが実に嫌らしい最終地点にはボス敵、巨体の一角獣が出現する武器のチョイスにもひと苦労。他人のプレイを盗みまくった思い出も

 本作には、初期装備の槍のほかにも短剣、たいまつ、斧、十字架の全5種類の武器が登場する。たまに出現する壺を持った敵を倒すと、壺の中からランダムでいずれかの武器(または得点アイテム)が出現することは、初見でもすぐにわかった。ところが、敵の行動パターンを覚えるだけでも大変なのに、これらの武器を使いこなすのも実に難しかった。

 たいまつは、着地点で数秒間燃え続け、触れた敵をまとめて倒せるメリットがある反面、画面内に2連射しかできず(※槍は3連射できる)、炎が出ている間は新たなたいまつが一切撃てない。斧は敵を貫通する特徴があるものの、たいまつと同様に撃てるのは2発までで、放物線を描いて飛んでいくため至近距離の敵を倒しにくい。これらの武器をうっかり間違えて取るたびに、筆者はゲームオーバーになったのと変わらないほどの絶望感を受けた。

 十字架は、敵弾を消すことが可能で、後にラスボスの大魔王と戦うためには必須の武器であることがわかったが、射程が極端に短く、最初は使いこなすのがすごく難しかったことも筆者は強く印象に残っている。

 唯一、短剣だけは最初からとても使いやすいと実感できた。短剣は、槍と同じく真っすぐ飛ぶので狙いを定めやすく、なおかつ連射スピードが槍よりも速かったからだ。なので、以後プレイするたびにステージ1の序盤で、壺を持つゾンビが短剣をドロップするまでひたすら倒しまくるようになった。

 今でも忘れられないのが、レバーを左右いずれか一方に小刻みに入力しながらボタンを押すと、武器の連射スピードがさらに増すテクニックの存在だ。特にステージ2の中盤、耐久力の高い大男たちが待ち受ける屋敷の中では必須の技で、短剣を装備しているときは絶大な効果を発揮する。

 筆者は、このテクニックを誰からも教わらなかったが、見知らぬ人が遊んでいるところを見て盗み取っていた。当時の筆者のゲーム仲間も、特に話し合ったわけでもないのに、誰もが自然と習得していたことでも本作は思い出深い。

短剣は槍よりも連射しやすいメリットがあるレバーを小刻みに入れながらボタンを連打すると、高速で連射が可能に。大男戦では欠かせないテクニックだ

 敵が持っているものとは別に、特定の地点を通過すると出現する、隠された壺の存在にも筆者は驚かされた。

 隠された壺の中身は、取ると1万点の高得点ボーナスが入る、カプコン作品ではおなじみの弥七(※風車型のアイテム)か、またはアーサーがパンツ一丁のときに限り出現する鎧のいずれかである。一見すると何もない場所なのに、画面上部から突然壺が現われ、地面に落下するとアイテムに変わる一連の演出も、本作の不気味さ、あるいは不思議さをさらに引き立てていたように思えてならない。

 正直に話すと、筆者が自力で発見した壺の数はズバリ、ゼロであった。よって壺の出現地点も、すべて他人が遊んでいるところを目で盗んで記憶していった。特に、鎧が補充できる壺の位置は、絶対に忘れまいと必死になって覚えたものだ。

パンツ一丁のときに出現させると鎧が補充できる壺の存在は実にありがたいこちらは1万点ボーナスがもらえる弥七

 筆者は本作をなかなか上達しなかったが、やがて地元の駄菓子屋でも遊べるようになると、何人かの友人が1周、2周クリアに成功した。

 いつのことだったか、正確な日時は思い出せないが、友人に最初から1周クリアするまでの一部始終をすべて見せてもらったことがある。その友人、あるいは友人の友人たちによって編み出された、ステージ3と6の後半からひんぱんに出現するレッドアリーマーを瞬殺するパターン、あるいはドラゴンとサタン(※ステージ5と6のボス)の倒し方は、とても参考になった。どこのステージなのかは忘れてしまったが、前述の隠れた壺の存在もいくつか教わったと記憶している。

 しかし、筆者はなかなかコツがつかめないうちに、やがて駄菓子屋から本作は撤去されてしまった。結局、自力で1周クリアできるようになったのは、それから数年後のことだったが、当時の友人に見せてもらった攻略パターンがベースになっていたことに変わりはなく、今でも本当に感謝している。

 ラスボスの大魔王の弱点は頭ではなく、腹部に描かれた目の位置であることも、すでに見知らぬお兄ちゃんや友人がプレイしているのを見てわかっていた。ところが、いざ自分で戦いを挑んでみたら、腹部に当たるタイミングでジャンプしながら十字架を放つのが、簡単そうに見えて実に難しい。大魔王が炎を吐き出すタイミングがまったく読めないこともあり、最後の最後まで嫌らしいなと思ったことも今でもよく覚えている。

レッドアリーマーがたくさん出現するステージ3には長らく苦しめられたステージ3、4のボスはドラゴン。長い体をくねらせて空を飛ぶ強敵だったステージ5、6のボス、サタンも巨体でありながら空中を素早く動き回るラスボスの大魔王、弱点の腹に向けて十字架を当てるのは、簡単そうに見えて意外に難しい

 本作はNintendo Switch、プレイステーション 4、Xbox One、PC(Steam)で配信中の「カプコンアーケードスタジアム」の1タイトルとして配信されているので、今でも手軽に遊べるのが嬉しい。さらに2021年には、完全新作となる「帰ってきた魔界村」が発売されるなど、40年の歴史を経て今なお多くのプレイヤーを楽しませ、良い意味で苦しめている本シリーズの息の長さは特筆に値する。

 加えて「カプコンアーケードスタジアム」版では、武器の連射ボタンのほか、何回失敗してもやり直せる「巻き戻し」、ゲームの途中でもプレイデータをセーブできる便利機能が搭載され、さらに課金アイテムの「無敵」を購入すれば、アーサーを無敵状態でプレイすることも可能だ。かつて、あまりの難しさに絶望した人は、これらの機能を利用しつつ、ぜひリベンジを果たしていただきたい。

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