
セガを、そして日本のゲーム業界を代表するIPの1つが「ソニック」だ。「ソニック」は、2Dの横スクロールアクションから始まったシリーズで、その後3Dアクションや、2Dと3Dがクロスする2.5Dアクションも登場したほか、多くの派生ゲームも生まれた。その中の1つが「ソニックレーシング」シリーズだ。
「ソニックレーシング」シリーズは、「ソニック」シリーズのキャラクターたちが登場するレースゲームシリーズ。その最新作が、9月25日に発売されるプレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PC(Steam、Epic Games Store)用「ソニックレーシング クロスワールド」だ。この“クロスワールド”というタイトルが本作を端的に表しており、レース中にコースが変化するという大きな特徴を持っている。レースゲームの常識を打ち破るこのシステムは本作ならではのダイナミックなレース体験をプレーヤーに提供してくれる。
それではアクションレースゲームとしての本作の魅力はどこにあるのか。筆者が感じたキーフレーズは「脳汁全開の爽快感」、「プレーヤーを飽きさせない変化」、「スタイルがガラリと変わるカスタマイズ」にある。本稿ではこのキーフレーズに沿いながら本作をレビューしていこう。
【『ソニックレーシング クロスワールド』レースモード紹介 トレーラー】
楽曲とハンドルアシストが生み出す“脳汁全開”の快感
本作がプレーヤーに提供してくれる爽快感。それはスピーディーなレース展開や、ステージの各所で見られる背景のダイナミックな演出からもたらされるのはもちろんだが、筆者が最も強く感じた魅力は楽曲にある。
レース自体がスピーディーな展開でそれだけでも面白いのだが、特に最終ラップで変化する楽曲にはテンションが上がった。シンプルな話をすれば、速いテンポの楽曲や、高音域のシンセサイザーの音色や、ボーカルの声はシンプルにテンションを上げてくれる。この楽曲を1ラップ目から使えばプレーヤーのテンションを高め続けられるかもしれない。だが、本作はそうはしない。
1ラップ目はスタート、他のキャラクターと抜きつ抜かれつのヒートアップを繰り広げ徐々に気持ちが盛り上がっていく。そして2ラップ目のクロスワールド、ガラリとコースが変わる。1ラップ目とは全く異なるコースやステージの仕掛けに対し全身で驚きを感じる。視線は画面に吸い込まれ、体温は上がり、コントローラーは手汗でじっとりと湿る。
そして、この激戦の1位を決める最終ラップ、ここで楽曲が変わる。そこまでのステップがあるからこそ、最終ラップで脳汁全開のエクスタシーをプレーヤーに提供してくれるのだ。
【『ソニックレーシング クロスワールド』Sonic Racing – Cross the Worlds – (Opening ver.)】
プレーヤーに気持ちよさを提供するという意味ではハンドルアシストにも触れておきたい。本作ではコンピューターにハンドルアシストをさせる機能があり、プレーヤーのハンドル操作をサポートしてくれるのだが、このデキが良い。
ハンドルアシストは特にコーナリング時に強い効果を発揮してくれる。本作ではドリフトをするとチャージが溜まり、ドリフト終了時にそのチャージを消費してダッシュができる。そのため、ドリフトを使ってカーブするのが基本なのだが、ドリフトをするとコーナリングがよりシビアになり、油断すると壁に激突してしまうことも少なくない。だが、このハンドルアシストが壁にぶつからないよう微調整してくれるのだ。これによりコーナーも気持ち良く曲がれる。
あえてラフなプレイをしたり、コースをはみ出すような操作をしてみたが、派手に壁に激突しにくくなるような補正がかかっていた。自然なプレイであればそこまでアシストされず、派手なコースアウトの時は強くアシストされる。コースアウトを防ぐほどのアシストは実際の操作との差異に違和感を覚えるが、コーナリングのアシストレベルではそれほど気にならない。アシストを意識させることなく、スムーズにコーナーを攻略できる。 これも本作の爽快感をより増してくれる要素だ。
特に初心者の時はコーナーを攻略するのも難しいため、まだ慣れていない段階からコーナーを気持ち良く曲がれるのは大きなメリットだ。なお、このアシスト機能はオンオフの切り替えが簡単にできる。ある程度慣れてきたらそれをオフにするのが王道の遊び方になるだろう。

気持ち良くコーナーを曲がれたときの気持ちよさは格別だ。アシスト機能の存在でその気持ちよさを増してくれる変化し続けるコースと白熱のライバルバトル
本作はとにかく変化が多く、プレーヤーを飽きさせない。BGM面は先ほど触れたため、ここではビジュアル面について述べると、どのコースも派手な背景が目に残る。光の演出が派手なレース場や港をベースにしたコース。現実世界とは大きく異なるのはもちろん、過去の「ソニック」シリーズに登場したステージをベースにしたコースもある。
個人的に思い入れがある「ソニックアドベンチャー2」の「ラジカルハイウェイ」をベースにしたコースは特に嬉しかった。もちろん、「ソニック」シリーズのファンには思い思いのお気に入りステージがあると思うが、それらも本作に盛り込まれていることだろう。

「ソニックアドベンチャー2」の「ラジカルハイウェイ」をベースにしたコースが筆者のお気に入りだ。思い入れが強い作品のコースが出るのは嬉しい
さらに、大きなキーになるのが「クロスワールド」だ。2ラップ目、それまで走っていたコースと全く異なるコースへとドライバー達は誘われる。そして、その2ラップ目が終わると、元のコースに戻ってくるのだ。多くのレースゲームは同じコースを2ラップ、3ラップと周回するが、そういったレースゲームの常識を破ってくれるのが本作なのだ。
そして、これは単に常識破りと言うだけではなく、戦術面でも影響を与える。1位のドライバーはクロスワールドの際、ランダムなコースか、ゲームから提示された特定のコースかを選べる。1位のレーサーはこれを選択できるのがメリットだ。具体的に言うと、得意なコースが提示されればそちらを、不得意なコースであればランダムを選ぶという選択肢がある。
だが、クロスワールドは15個あるので、好みのワールドを選ぶのは難しい。せっかく1位を走っているアドバンテージとして、得意なコースを選びやすいような仕組みがあっても良いと感じた。走りながら選択するというシステム上、難しいのもわかるが、そこは惜しいポイントだ。
また、飽きさせないという意味では、陸を走る通常フェーズに加え、変形して空を飛んだり、水上を滑走したり。本作ならではのユニークな要素とまでは言えないが、このシステムもプレーヤーを飽きさせない要素の1つである。

2ラップ目はクロスワールドとなり別の世界に飛び込む。この要素がプレーヤーを飽きさせない
さらに、本作にはライバルという存在も登場する。多くのレースゲームの場合、1人用のプレイでは自分vsモブレーサーという構図になるが、本作では自分vsライバルレーサーvsモブレーサーという構図になる。モブレーサーとの争いだけではマンネリするし、特別な気持ちにはならない。
だが、ライバルレーサーが登場することでレースに対する感情が大きく変わる。まずライバルレーサーの腕はかなりのものがある。プレーヤーのスキルにあわせて強さが調整され、白熱するバトルが繰り広げられる。ただ1体の特別なレーサーが登場するだけで白熱度合いがこれほど変わるとは思っていなかった。このライバルとの戦いも本作を飽きさせない要素だ。

ライバルレーサーとの競い合いがまた面白い。なお、強さは相応のもので、気を抜くとあっさりと抜かされてしまう戦略性を深める「ガジェット」システムの奥深さ
最後に、本作のカスタマイズ要素にも触れておきたい。
本作の最も大きなカスタマイズ要素が「ガジェットのカスタム」だ。この機能は最大で6個あるスロットに、プレートをはめてカスタマイズをする。プレートの効果には、砂や氷のコースでも滑らなくなり「グリップ力強化」、アイテムのストック数が増える「アイテムストックプラス」、他のマシンとぶつかったときにダッシュする「ぶつかりダッシュ」といったプレートがある。
プレートによりどれだけのスロットを占有するかが異なるため、1つのスロットしか使わないプレートを複数個組み合わせるプレイスタイルもあれば、大きな効果を持ったプレートを厳選するのも1つのスタイルだ。もちろん、その2つのスタイルをミックスするのも良いだろう。
筆者はリングの所持上限が上がる「リング上限130」を基軸にした構成を試行錯誤している。このプレートをメインに使っている理由としては、本作ではリングを持っていると最高速度が上がるのだが、ほかのドライバーの妨害を受けるとリングを落としてしまう。その落とす量がかなり多く、特に団子状態で混戦しているときなどは妨害の応酬になり、大半のリングを失ってしまった経験があるからだ。

ガジェットのカスタムはかなりの幅が出る。プレイスタイルで変わるため、ベストな組み合わせというのは存在しないだろう
本作では、コース上に配置されているリングも多く走っているうちに回収できるのだが、そもそも持てる上限を上げた方が最終的にスムーズに走れると筆者は判断した。
それ以外は試行錯誤中で、まだ個人的にベストと言える構成は見つかっていない。もちろん、ベスト構成というのはプレーヤーによって異なるし、唯一無二の正解などは存在しないだろう。上を目指すならコースごとに変える必要もありそうだ。トライアンドエラーを繰り返すのも、また本作ならではの楽しみと言えるだろう。

カスタマイズ要素は他にもあり、レースカーのカスタマイズ要素も豊富だあらゆるクロスから生まれるのは新しいゲーム体験
本作はアクションレースゲームとしての王道の要素と、あらゆるものがクロスするという独自のシステムも盛り込んでいる挑戦作だ。そして、その挑戦は上手くハマっており、プレーヤーに爽快かつ快感溢れるレース体験を提供している。さらに高いカスタマイズ性や、クロスワールドの要素はプレーヤー同士の対戦にも大きく影響することだろう。
オンライン要素は異なるフォーム間でのプレイが可能で、最大12人で対戦できる「ワールドマッチ」や、チームで特殊ルールに挑む「フェスタ」や、ゴールタイムを競う「タイムトライアル」など、様々なモードが用意されている。
また今回は触れていないが、もちろんマシンのカスタマイズもできるし、ソニックIPの数多くのキャラクターが登場するのはファンには嬉しい要素だ。また、今後のアップデートやダウンロードコンテンツで、「龍が如く」シリーズのキャラクター「春日一番」や、マインクラフトからは「スティーブ」が参戦することも明らかになっている。
そのため、本作は単なる「ソニックIPのキャラクターが登場するアクションレースゲーム」という枠組みを超えている。アクションレースゲームとしての新たな挑戦と、その挑戦から生まれる刺激的な体験をプレーヤーに提供してくれる革新的な1作なのだ。

別のIPから参戦するキャラクターもいる。これもまた“クロスワールド”だ
(C)SEGA / (C) Crypton Future Media, INC. www.piapro.net piapro / TM & (C) Mojang AB. / (C)ATLUS. (C)SEGA. /
(C) 2025 Viacom International Inc. All Rights Reserved. Nickelodeon, SpongeBob SquarePants and all related titles, logos and characters are trademarks of Viacom International Inc. SpongeBob SquarePants created by Stephen Hillenburg.
PAC-MANTM& (C)Bandai Namco Entertainment Inc.
