MSIの「GeForce RTX 5070 Ti 16G INSPIRE 3X OC」は、新ブランド「INSPIRE」に属するクリエイター向けのビデオカード。シンプルかつ洗練されたビジュアルと実用的な「コンパクトさ」というINSPIREシリーズの特徴的なカードデザインに、準ハイエンドGPUであるGeForce RTX 5070 Tiが組み込まれている。

 今回は、クリエイティブやAIで高いパフォーマンスが期待されるGeForce RTX 5070 Ti 16G INSPIRE 3X OCの実力をベンチマークテストでチェックするとともに、3連ファンクーラー搭載なのにコンパクトとはどういうことなのか、本機の特徴を紹介しよう。

ゲームパフォーマンスは最新ビデオカードらしい性能を発揮

 まずは、GeForce RTX 5070 Ti 16G INSPIRE 3X OCのゲームにおけるパフォーマンスを計測してみた。

ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク

  ゲーム系の定番ベンチマークソフト「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」を最高品質設定で実行した場合、フルHD/1080pおよびWQHD/1440pでは15,000を超えるスコアを記録して最高評価の「非常に快適」を獲得。4K/2,160pではスコア「14,520」を記録し、2番目の評価である「とても快適」を獲得した。

 クリエイター向けを標榜するINSPIREシリーズではあるが、それは装飾より実用性を重視したカードデザインに関するものであり、ゲームでのパフォーマンスは他のGeForce RTX 5070 Tiと遜色ない。

モンスターハンターワイルズ

 アップデートによりDLSS 4のマルチフレーム生成に対応したモンスターハンターワイルズでは、DLCの「高解像度テクスチャパック」を適用したうえで、グラフィックプリセットを「ウルトラ」に設定。WQHD/1440pでフレーム生成の設定を変更しながら平均フレームレートを計測した。

 フレーム生成無効時に70.8fpsを記録したGeForce RTX 5070 Ti 16G INSPIRE 3X OCは、フレーム生成2xで120.5fps、3xでは170.2fps、4xで215.5fpsを記録した。フレーム生成無効時でも平均60fpsを超えており、動作はかなり快適なものだった。

CGレンダリング/画像編集などのクリエイティブ用途でも高い性能を発揮

 ここからは、クリエイティブ系のベンチマークテストやアプリケーションで計測したパフォーマンスを紹介する。

Blender Benchmark

 3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト「Blender Benchmark」では、3つのシーンのレンダリング速度をGPUとCPUでそれぞれ計測した。

 GeForce RTX 5070 Ti 16G INSPIRE 3X OCは、8コア/16スレッドCPUであるRyzen 7 9800X3Dの20倍前後という圧倒的なレンダリング速度を記録。Blenderは特にGeForce RTXシリーズへの最適化が進んでいるソフトであり、その強みが見事に発揮された結果だ。

UL Procyon「Photo Editing Benchmark」

 AdobeのPhotoshopとLightroom Classicを使用して、写真編集におけるパフォーマンスを計測するUL Procyonの「Photo Editing Benchmark」を実行した結果が上のグラフ。

 このテストで総合スコアが10,000を超えるのはかなり優秀な結果と言える。CPUのマルチコア性能がそこまで高くないためバッチ処理のスコアは8,031にとどまっているが、特にレタッチで記録した13,558というスコアは抜群に素晴らしいものだ。

RAW現像│Adobe Camera RawAIノイズ除去│Adobe Camera Raw

 デジタルカメラで撮影したRAWデータの編集や現像を行うAdobe Camera Rawでは、100個のRAWファイルをJPEG形式に現像した場合と、20個のRAWファイルにAIノイズ除去を適用した場合の処理速度を計測した。

 RAW現像では、CPUのみで処理を行った場合の156.3fpmに対し、GeForce RTX 5070 Ti 16G INSPIRE 3X OCを用いた場合の処理速度は1.7倍以上も高速な271.9fpmに達した。画像処理でのパフォーマンスもかなり高いことがうかがえる。

 一方、GPU性能がストレートに処理速度へ反映されるAIノイズ除去では、1分間に17.4枚のRAWファイル(2,400万画素)にノイズ除去を適用可能な処理速度を記録した。この処理速度は相当に高速なものであり、AdobeのAIノイズ除去を利用するユーザーにとっては極めて魅力的なパフォーマンスだ。

AI系の処理も最新のGeForceらしい快適なパフォーマンス

 パフォーマンステストの最後に、UL ProcyonのAI系ベンチマークテストの中から、画像生成とテキスト生成のパフォーマンスを計測した結果を紹介する。

UL Procyon「AI Image Generation Benchmark」

 Stable Diffusion 1.5で画像生成を行う「AI Image Generation Benchmark」にて、512px四方の画像をFP16またはINT8で生成した場合と、1,024px四方の画像をFP16で生成した場合で、画像1枚当たりの生成時間を計測した。

 GeForce RTX 5070 Ti 16G INSPIRE 3X OCは、512px四方の画像生成をFP16で約1.555秒、INT8では約0.702秒で完了し、1,024px四方の画像についても約11.306秒で生成することができた。生成速度自体が優れていることはもちろん、16GBの大容量VRAMを備えていることで1,024px四方の画像も不具合なく高速に生成できている点は魅力的だ。

UL Procyon「AI Text Generation Benchmark」

 テキスト生成AIのパフォーマンスをスコア化する「AI Text Generation Benchmark」では、4つの言語モデルのスコアを計測した。

 いずれも4,000~5,000前後のスコアを記録しており、テキスト生成AIでも優れたパフォーマンスを発揮していると言える結果だ。また、LLAMA 2などは大容量のVRAMがなければ著しく低いスコアになりがちだが、今回はいずれの言語モデルでもVRAM不足に陥ることなくテストを完走できている。

一貫性の高いパフォーマンスを実現するトリプルファンGPUクーラー動作クロック/動作温度ともに安定した挙動

 GeForce RTX 5070 Ti 16G INSPIRE 3X OCが搭載するGPUクーラーの冷却性能を調査するべく、3DMarkのストレステスト「Steel Nomad Stress Test」を20ループ実行し、テスト中のモニタリングデータをHWiNFO64で計測した。

3DMark 「Steel Nomad Stress Test」 実行中のモニタリングデータ

 ストレステスト中のGPU温度は平均67.5℃(最大76.9℃)、VRAM温度は平均66.3℃(最大74.0℃)を記録。セミファンレス動作による停止していたファンが動作し始めた直後に最高温度を記録したが、以降は回転を始めたファンの送風により60℃台中盤を終始維持している。

 動作クロックはGPUが平均2,753MHz(最大2,775MHz)、VRAMは平均最大ともに1,750MHzで、かなり一貫性の高い動作を維持していたことがわかる。GPU消費電力は平均291.6W(最大301.1W)であり、リミットの範囲内で最大限の電力を消費するGeForce RTX 5070 Tiの発熱をGPUクーラーは見事にさばききっている。

 GPUクーラーが備える3基の冷却ファンは2系統で制御されているが、その動作はほぼシンクロしている。テスト開始直後はファン停止状態で70℃を超える温度に上昇したGPUとVRAMを冷却するために2,700rpm強まで回転数が上昇しているが、その後は徐々に低下して2,000rpm前後で落ち着いた。

 2,700rpm強で動作中はそこそこの風切り音が生じるが、2,000rpm動作時のファンノイズはかなり小さいものだった。GeForce RTX 5070 Ti 16G INSPIRE 3X OCのGPUクーラーは300W級の発熱を静かに処理できる優れた冷却性能を備えていると言える。

実用性を追求した完成度の高い準ハイエンドビデオカードクリエイターはもちろん、ゲーマーにもおすすめ

 MSIのGeForce RTX 5070 Ti 16G INSPIRE 3X OCは、見事なまでに実用性に特化したビデオカードであり、クリエイティブからゲームまであらゆる用途でGeForce RTX 5070 Tiが持つGPU性能をしっかり発揮できる一枚だ。

 NVIDIAのSFF-Ready Enthusiast GeForce Cardsに準拠していることで、高性能な小型PCの構築に最適であることはもちろんだが、純粋にPCパーツとして洗練されているため、見た目の派手さより実用性を重視したいのであれば間違いのない選択肢となるだろう。

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