スクウェア・エニックスより2008年9月11日に発売されたXbox 360用RPG「インフィニット アンディスカバリー」(以下「インアン」)が、本日発売から17周年を迎えた。
古来より人々は月の力の恩恵を受け繁栄したきた。しかしある時、闇公子レオニード率いる封印軍によって月は鎖によって大地に縛り付けられてしまう。鎖のある地域はどんどんと荒廃していく。そこに現れたのが、月を縛る鎖を断ち切れる唯一の英雄・シグムント率いる解放軍。そしてシグムントと間違われて封印軍に捕らえられた、シグムントにうりふたつの少年カペルの牢屋から物語が動き始める。
本作は、2006年の「Xbox 360 Briefing」で発表され、当初はマイクロソフトの発売と紹介されたが、翌年の「Xbox 360 Briefing」でマイクロソフトとスクウェア・エニックスの共同プロジェクトとなり、発売がスクウェア・エニックスに変更となったことが発表された。
開発は「ヴァルキリープロファイル」シリーズや「スターオーシャン」シリーズでおなじみのトライエースが担当。ディレクターに小川浩氏、R&Dリードプログラマーに五反田義治氏、ミュージックコンポーザーに桜庭統氏、キャラクターデザインに梶本幸宏氏、プロデューサーに小島創氏などを迎えている。
なお本作はXbox 360専売となっており、ある種この作品のためにXbox 360を買い(もちろん他のゲームもたくさん買っているのだが)、かつこの作品を改めて遊びなおすためにXbox Series Sを買ったと言っても過言ではない「インアン」愛が非常に深い筆者が、「インアン」の魅力を改めて振り返る。
ちなみに本稿ではあまりネタバレに触れていないので、Xbox Series X|Sを持っている人は、ぜひこれからでも遊んでみてほしい。
短いながらも泣けるシーンあり、重厚な物語が繰り広げられる
本作のストーリーは、生まれた日の月の満ち欠けによって「月印(ルナグラム)」という自身が持つ力が変わる不思議な世界が舞台となっている。
満月の時に生まれた者こそ最も力が高く、逆に新月の日に生まれてしまった者は何の力も持たず「新月の民」と呼ばれ、迫害を受けているのだ。
またこの世界には月印の力を完全に使いこなすことができる「ハイネイル」と呼ばれる人々がおり、普通の人々はハイネイルと対置する場合「コモネイル」と呼ばれる。
そんな世界で、ある日、空に浮かぶ月を鎖で大地に繋ぎ止めるという事件が起こった。「闇公子」を頂点に抱く封印軍(シール)は、鎖のある地を征服。人々が住めないようにしてしまう。この鎖はハイネイル・コモネイル問わず誰がどんなことをしても切ることができなかったのだが、ある日シグムントが鎖を断ち切ることに成功する。このことによって英雄シグムントが誕生し、シグムントはわずか数人から成る解放軍を率いて、世界各地の鎖を切る旅を始めるのだった。
オープニングムービーでは、英雄シグムントが闇公子レオニードと対決するものの、シグムントは敗れてしまうところが描かれている。
 オープニングムービー
オープニングムービー
そして物語は、封印軍の地下牢へ解放軍の戦士であるアーヤが潜入するところから始まる。シグムントが投獄されたという話を元に、アーヤはシグムントを救出しようと単身で牢へと向かったのである。しかしそこにいたのはシグムントではなく、彼にそっくりな容姿のカペルという名の旅芸人であった。
とりあえず仕方なくカペルと共に地下牢を脱出するアーヤ。脱出の最中、敵に追い詰められ、ふたりは窮地に陥るが、本物のシグムントがアーヤを助けに参上した。
シグムントとカペルはこうして出会うが、ふたりは共に17歳。しかし双子だった記憶もないし、生き別れの兄弟だというわけでもないらしい。
不思議なこのふたりの出会いから、物語が大きく動き出すのだった。
 英雄シグムントとカペル
英雄シグムントとカペル
……と、オープニングから非常に壮大な物語が始まるのが、「インアン」である。
特に地下牢からの脱出は容赦なく、しょっぱなから非常に難しい。筆者は初回プレイ時、ここだけで5回ほどやり直すこととなった(ちなみにXbox Series Sでプレイしなおした時もやっぱり1回ではクリアできなかった)。
「あれあれ、これって高難易度系のゲームですか?」と思ってしまいそうなところだが、むしろこの序盤だけが異様に難しいので、そこはどうか安心してほしい。
本作では主人公のカペルを操作していくこととなるのだが、カペルは天涯孤独の身で笛吹きの旅芸人。容姿こそ英雄シグムントとそっくりだが、面倒なことは大嫌いで、かなり無責任かつ情けない性格。これまで剣を握った事はない筈だが、卓越した剣術の腕前を持つ。
一方のシグムントは冷静沈着で、超越的なカリスマで人々を引きつけて、解放軍をまとめあげている。ぶっきらぼうで素っ気ない態度をとることが多いが、冷たいというよりは感情に欠けているといったほうが正しい。大地に打ち込まれた鎖の楔を断ち切る特別な力を有し、この力に人々は期待を寄せており、シグムントが鎖を切るために訪れた土地の人からは大きな歓声で迎え入れられる。
 英雄シグムント
英雄シグムント
カペル、シグムント、アーヤの他には、シグムントの幼馴染で解放軍の参謀的なユージン、シグムントの強さにほれ込んだ力自慢のバルバガン、シグムントに心酔しておりシグムントにそっくりなだけのカペルを軽蔑しているエドアルドなど、中核となる登場人物は然して多いほうではない。その分これらのキャラクターはしっかり描けているストーリーだ。ただ全体を通しての解放軍に同行するキャラクターはかなり多く、これらのサブキャラクター的な存在は、少々描写が足りない部分もあった。
……ちなみに、アーヤが飼っている熊のグスタフは当時「イグナイト・ファング」でそれなりに話題になったのだが、覚えている人はもう少ないかもしれない。
全体的にストーリーはコンパクトで、恐らく30時間もあればストーリーだけは終わらせることができる。ただ、そのなかに物語はみっちりと詰め込まれており、泣いたり驚いたり笑ったりと、様々なシーンを楽しめる。
筆者が一番好きなシーンは、カペルがとある町でごはんをごちそうになるシーンで「ごっはん、ごっはん」と踊るシーンである。
 ごっはん、ごっはん
ごっはん、ごっはん
また、ルカとロカという双子の子供を解放軍に一緒に連れていってほしい、と言った母親に対して、「正気ですか、お母さん!?」というシーンも、やけに現実的な反応で笑ってしまった。
 ……お母さん、正気ですか!?
……お母さん、正気ですか!?
17年前の作品ということもあり全体的にキャラクターのモデルが表情こそあまり豊かではないが、基本的に当時平行して「スターオーシャン4」を開発していたトライエースのアニメ調の3DCGよりはリアル調に近い3DCGになっており、この点も筆者の好きな部分のひとつである。
 パーソナルスキルもあり、好みの食べ物などもわかるのだが……たまたま残っていたスクショの内容は、プレイしたことがあってわかるひとだけわかってほしいシームレスなバトルやアイテムクリエイションといったトライエースらしい要素もよかった
パーソナルスキルもあり、好みの食べ物などもわかるのだが……たまたま残っていたスクショの内容は、プレイしたことがあってわかるひとだけわかってほしいシームレスなバトルやアイテムクリエイションといったトライエースらしい要素もよかった
本作のバトルはシームレスになっており、戦闘は切り替えなしで進む。カペルが抜刀することで戦闘モードに移行し、リアルタイムでバトルが進行する。プレイヤーは主人公のカペルを操作し、他の仲間キャラクターはAIで行動する。
バトルはさすがトライエースのアクションといった感じで、今プレイするとやはりUIなどで多少粗削りな部分はあるが、全体的には爽快なバトルになっており、アクションがさくさくと動くといった感じで、今プレイしても非常に楽しめる。
唯一の難点はガードがないため、そこそこ被弾することになるのが大前提な点か。特に終盤はかなりバトルも厳しくなっていくため、それなりに死ぬ(筆者が下手くそなせいもあるかもしれないが……)。
ただ、プレイヤーを楽しませるスピード感は本当に素晴らしいので、トライエースのバトルが好きという人や爽快感のあるアクションバトルを楽しみつつストーリーもしっかりと感じたい、という人にはぴったりの作品である。
他にも大人数になる解放軍をいくつかのチームに分けて攻略していくマップなどもあり、ギミックを活かして進んだりと、様々な仕掛けもあった。
また、アイテムクリエイションやプレイベートアクションなど、トライエースおなじみの要素も。
アイテムクリエイションは「スターオーシャン」シリーズにあるのと似たようなシステムで、装備に効果を付与するエンチャントクリエイションもある。
プライベートアクションも「スターオーシャン」シリーズと同様のシステムで、町中に散らばった仲間に話しかけることでイベントが発生する。
こういった要素を細かく拾っていったり、クリア後のおまけ要素となる「セラフィックゲート」などを進めると、なんだかんだと合計で100時間弱は遊べる内容だ。
筆者は今でも「インアン」が良かったことを伝えたい
筆者がゴリゴリのトライエースゲーム推しなこともあるが、「インアン」は後半になればなるほど「月印(ルナグラム)」が深く関係したストーリー展開になっていく。このルナグラムによって物語がどう進んでいくのか、これはぜひ実際に遊んでみてほしい。
今でもXbox Series X|Sでプレイすることが可能なので、もうこれのために筆者のようにXbox Series Sを買ってほしい……!
 我が家がXbox Series Sを買ったのは2年ほど前なのだが、Xbox 360時代の名作をやるために買ったと言っても過言ではない。本当に買ってよかったです
我が家がXbox Series Sを買ったのは2年ほど前なのだが、Xbox 360時代の名作をやるために買ったと言っても過言ではない。本当に買ってよかったです
カペルを始めとしたキャラクターの成長物語も素晴らしいし、カペルとアーヤは王道のボーイミーツガールだが、アーヤはちょっと勝気なヒロインでしっかりとカペルを支えるところが素晴らしいし、カペルとエドアルドの関係も徐々に友愛へと変わっていく描き方が素晴らしいし、何よりシグムントという英雄が描いたシナリオの素晴らしさといったら、本作を遊んだプレーヤーに強烈な印象を残すことだろう。
 カペルを敵視していたエドアルドがとある出来事をきっかけに打ち解けてくる展開は、最高オブ最高
カペルを敵視していたエドアルドがとある出来事をきっかけに打ち解けてくる展開は、最高オブ最高
すごい余談で申し訳ないが、「スターオーシャン:アナムネシス」(※現在はサービス終了)で「インアン」コラボをしてくれた時は、シグムントのためにここでは言えない額を課金してしまった。
本作は、前述の通りスクエニ、トライエース、マイクロソフトという三社が絡んだゲームのためコラボは絶望的かと思っていたのだが、これを成し遂げてくれた「スターオーシャン:アナムネシス」には今でも深く感謝をしている。
 「スターオーシャンアナムネシス」のシグムント
「スターオーシャンアナムネシス」のシグムント なんとキャラクターデザインを務めた梶本幸宏氏が新たにイラストを描き起こしてくれたのもありがたい
なんとキャラクターデザインを務めた梶本幸宏氏が新たにイラストを描き起こしてくれたのもありがたい
「アナムネシス」でしか知らなかったなぁ、という人にもぜひXbox Series S(X)を推して、かつ本作を推したい。絶対、絶対、後悔しないから!
(C)2008 SQUARE ENIX CO.,LTD. / Microsoft Corporation. All Rights Reserved. / Developed by tri-Ace Inc.
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