“タルコフ”Steamへ!今さら聞けない『Escape from Tarkov』の魅力と、ジャンルへの影響力をまとめて紹介

“タルコフ”Steamへ!今さら聞けない『Escape from Tarkov』の魅力と、ジャンルへの影響力をまとめて紹介

ロシアの開発スタジオBattlestate Gamesが手掛ける大人気エクストラクションシューター『Escape from Tarkov』のSteamストアページが、近日中に公開されることが発表されました。長年、その動向が注目されてきたSteam版の登場が、ついに現実のものとなります。

本稿では、この発表を機に、『Escape from Tarkov』がどのようなゲームなのか、なぜ今までSteamで販売されてこなかったのか、そして本作がゲーム業界に与えた大きな影響について、改めて解説します。

『Escape from Tarkov』とは何か?――“死”と隣合わせのリアルを追求したエクストラクションシューターの金字塔
『Escape from Tarkov』(以下、タルコフ)は、紛争地域と化したロシアの架空の都市「タルコフ」から脱出することを目指す、オンライン専用のファーストパーソン・シューティングゲームです。本作が他の多くのシューターと一線を画すのは、その徹底したリアル志向と、それによって生まれる極度の緊張感にあります。

プレイヤーはレイド(戦闘)ごとに自身の装備を持ち込み、マップ内でアイテムを漁り(Loot)、敵対する他のプレイヤーやNPCと戦いながら、指定された脱出ポイントを目指します。無事に脱出できれば持ち込んだ装備と新たに入手した戦利品は自分のものになりますが、道中で死亡すれば、保険をかけていない限り持ち込んだ装備のすべてを失います。この「ハイリスク・ハイリターン」なゲーム性は、現在「エクストラクションシューター」と呼ばれるジャンルの礎を築きました。

そのリアルさは戦闘システムにも色濃く反映されています。キャラクターにはスタミナの概念があるだけでなく、頭部、胸部、腹部、両腕、両脚といった部位ごとに個別のHPが設定されています。いずれかの部位のHPがゼロになるとその部位は「破壊」状態となり、機能不全に陥ります。例えば、脚部が破壊されると移動速度が大幅に低下し、腕部が破壊されると手ブレがひどくなります。

さらに、銃弾を受けることで「骨折」や「出血」といった状態異常も発生し、その治療にはそれぞれ専用の医療品が必要です。

銃器のカスタマイズ性は他の追随を許さず、1000種類以上のパーツを組み合わせて自分だけの一丁を作り上げることが可能。ストックやサイトはもちろん、バレルやダストカバー、果てはチャージングハンドルに至るまで、現実の銃器さながらの改造が楽しめます。

また、アーマーと弾薬の関係も非常に重要で、弾薬ごとに設定された「貫通力」が、敵のアーマーを貫けるかどうかを決定します。高価で強力な弾薬を用意しなければ、重装備の敵には手も足も出ません。

このように、タルコフで生き残るためには、射撃の腕前だけでなく、マップの知識、アイテムの価値、装備の特性といった膨大な知識と、状況に応じた的確な判断力が求められます。公式が「勝者は銃を上手く撃てる人ではなく、タルコフの世界で生き抜き、その複雑さを理解し、戦略的に優れている人だ」と語る通り、本作は単なるシューティングゲームを超えた、究極のサバイバルシミュレーターなのです。

なぜ今までSteamで販売されなかったのか? 長年の噂と待望の実現
これほどの影響力を持つタイトルでありながら、タルコフが長年Steamでの販売はありませんでした。本作は公式サイトでのみ購入可能で、独自のランチャーを通じて提供されてきました。

Steam版リリースの計画自体は、過去に何度も示唆されていました。2016年の海外メディアによるインタビューや、開発者によるQ&A企画などで「Steamでも提供予定」と明言され、ファンの期待を高めてきました。しかし、具体的な時期は常に「未定」のままでした。

インタビュー内では、ゲームが正式リリースされた後にSteamでもリリースされると語られてきました。先日、ついに本作の正式リリースが発表されたことを受け、今回のSteamストアページ公開に至ったものとみられます。長年にわたるコミュニティの悲願が、ついに実現した形です。

『タルコフ』に影響を与えた/受けたゲームたち
『タルコフ』が確立した「エクストラクション」というジャンルは、今や一大ムーブメントとなり、多くのフォロワー作品を生み出しています。その系譜を辿ると、タルコフ自身が影響を受けた作品の存在も見えてきます。

S.T.A.L.K.E.R. シリーズ
タルコフの持つ過酷な世界観や、マス目式のインベントリ管理、アイテムを求めて危険地帯を探索するゲームプレイの根底には、チェルノブイリ原発事故後の汚染地域を舞台にしたサバイバルホラーFPS『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズからの強い影響が見られます。荒廃した東欧の空気感と、常に死と隣合わせの緊張感は、両作品に共通する大きな魅力。

Dark and Darker
タルコフのゲームシステムを、ハイファンタジーの世界観に落とし込んだ作品。プレイヤーは剣士や魔法使いとなり、モンスターが蔓延るダンジョンの深部から宝物を持ち帰ることを目指します。ファンタジーとエクストラクションの融合という斬新なアイデアで、一躍人気タイトルとなりました。

Gray Zone Warfare
タルコフのリアル志向をさらに推し進め、42km2という広大なオープンワールドを舞台にした作品。現実の弾道計算や、負傷がパフォーマンスに直接影響するリアルな人体システムが特徴で、より戦術的なチームプレイが求められます。

Arena Breakout: Infinite
もともとモバイル向けに開発されたタイトルがPC市場に参入した例。タルコフのリアルさと緊張感を保ちつつ、よりハイペースで洗練された戦闘と、900種類以上のパーツによる武器カスタマイズを特徴としています。

『Escape from Tarkov』のSteamページはまもなく公開予定。Steamでのリリースは、この偉大なジャンルの始祖に、より多くのプレイヤーが触れる絶好の機会となるのではないでしょうか。

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