コントロール・ルーム

コントロール・ルームは約35.8畳の広さで、7.1.4chのGENELECスピーカー・システム(一部はスクリーン裏に配置)と150インチのスクリーンをセッティングしている。コンソールはAVID S4で24フェーダーの構成。S4の中央部には特注のアナログ・フェーダー×4本も備わっている。ラックにはEMPIRICAL LABS Distressor EL-8X×2とFOCUSRITEISA 428 MKII、AMS NEVE 1073DPX×2を収納。レコーディング・ブース内はガラス越しに見えるようになっており、演者と直接目を合わせられる環境も重視したそうだ

ゲームという枠を越える 
大規模なポスト・プロダクション

現代のゲーム・サウンドはどのような場所で生み出されているのだろうか。日本には、世界に誇るゲーム・メーカーのスタジオが多数存在する。ここで紹介するのは、『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』(以下DEATH STRANDING 2)のサウンド制作を支えたKOJIMA PRODUCTIONS。革新的なゲーム・サウンドを生み出す最新鋭のスタジオ現場をレポートしよう。

Text:Yusuke Imai Photo:Tetsuya Yamakawa

世界のスタジオと並ぶ音響環境

 オフィス・フロアの移転に伴い、新たなスタジオを造ることになったのが2021年。サウンド・デザイナーの中山啓之は、「コントロール・ルームと最大4人が入れるレコーディング・ブース、加えてフォーリーもできるような空間を……と無茶な妄想から始まりました」と、当時のスタジオ計画書を見せてくれた。 

 「この計画書を書いていたときはただの妄想だったので、まさかそれが実現するとは思ってもいませんでした。マシン・ルームやエディット・ルーム、待機ロビー、大きなスクリーンとプロジェクターなど、ぜいたくな空間に仕上がったと思いますね。このスタジオにはゲーム以外にも国内外の映画関係者の方々も多く訪れます。そのため、ポスプロ作業に特化するだけでなく、試写室のような環境になるようにも意識していました」 

 150インチにおよぶ特大スクリーンはその表れだろう。そこへ投影される映像と共に、没入感あるサウンドを届けるのがGENELECのスピーカー・システムだ。エンジニアの永井将矢が構成について説明する。 

 「7.1.4chで、フロントとサイドとリアは8361A、トップは8351Bです。サブウーファーは7370Aで、スクリーンの後ろに4台を積んでいます。2台にするか4台にするかは悩んだのですが、THXの認証を取る目算があったので、パワー面を考えて4台を採用しました」 

GENELECのスピーカー

GENELECのスピーカーは、フロント/サイド/リアが8361A、トップ(写真)は8351 B。サブウーファーはスクリーンの後ろにあり、4台の7370Aが採用された

 話題に上がったように、KOJIMA PRODUCTIONSのスタジオはTHX pm3認証というものを取得している。THXとは音響技術の品質管理規格であり、ルーカスフィルムのスカイウォーカー・サウンド、ピーター・ジャクソン監督(『ロード・オブ・ザ・リング』3部作など)のパーク・ロード・ポスト、ハリウッドの20世紀フォックスなどもTHXの認証を受けているスタジオとして知られる。世界レベルのミキシングを実現できる環境であることを示していると言えるだろう。中山はこう解説する。 

 「THXの認証は厳密な計測を経て条件をクリアしないと受けられず、その計測は毎年行われます。スタジオの健康診断のようなもので、THXの認証が得られているというのは“常に安定したモニタリングができる環境になっている”という保証でもあるんです」

アナログ・フェーダーで演技を録る

 コンソールはAVID S4が導入されている。「安定して運用できる環境のために選択しました」と永井は言う。

 「オフィス・ビルの中にあるスタジオということもあり、天井高や床、ダクトなど、スタジオ設計においては制約が多い環境です。その中で使う機材としては…

続きはこちらから ※会員限定

会員プランのご登録はこちら

 この機会に会員登録をして、KOJIMA PRODUCTIONSの記事をフルでお楽しみください。会員になると、他にも限定コンテンツや特典が利用可能です。詳細は下記をクリックしてご確認ください。

 

Write A Comment