「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」
コナミデジタルエンタテインメントのプレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC用タクティカル・エスピオナージ・アクション「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER(メタルギア ソリッド デルタ: スネークイーター)」の発売日である8月28日が目前に迫っている。
本作は、2004年にプレイステーション2で発売された「METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER」をリメイクした作品だ。シリーズの中でも最高傑作と評される本作の核となる部分はそのまま受け継ぎつつ、グラフィックスや操作性を現代向けに進化させている。
今回は本作の先行プレイする機会を得ることができた。既に本誌では、体験会のレポート等で進化点などはお伝えしてきたが、フルレビューとしてより深掘りした内容や、本作が掲げる「忠実な原作再現」が筆者の目にどう映ったといった内容をお届けしたい。
なお、本誌では7月に実施されたメディア向け体験会の模様も掲載されている。開発陣によるQ&Aやインタビューの内容もまとめているので、あわせて参考にしてほしい。
【METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER – Gameplay Trailer (CERO) | KONAMI】
「メタルギア」サーガの起源となる物語が展開
すでに20年以上前の作品ということもあり、原作「MGS3」を知らない人も少なくないだろう。そこでまずは、本作のストーリーや概要を簡単に紹介しておきたい。なお、「MGSΔ」は原作からストーリーや各種設定等の変更は一切ない。そのため、シリーズ未プレイの人でも、起点となる物語を安心して楽しむことができるはずだ。
物語の舞台は冷戦下のソ連。アメリカCIAの特殊部隊「FOX」に所属する工作員「ネイキッド・スネーク(スネーク)」の活躍が描かれる。
ナンバリングの通り、本作は初代「MGS」と「MGS2」に継ぐシリーズ3作品目となるタイトルだが時系列順では最も古く、シリーズの原点にあたる「始まりの物語」が展開される。実際、ネイキッド・スネークは他の作品で「ビッグボス」と呼ばれる重要人物であり、オセロットなどのキャラクターも度々登場する。
後に「ビッグボス」と呼ばれる「ネイキッド・スネーク」
シリーズを通して重要な人物となる「オセロット」
ストーリーは、「バーチャスミッション」と「スネークイーター作戦」という2つの章に分かれており、前者がチュートリアルも含むプロローグ的な内容で、後者にて本作の主要な物語が展開される。
「バーチャスミッション」では、スネークが兵器開発者であるソコロフの亡命を助けるためにソ連へと向かうが、師である「ザ・ボス」の裏切りにより失敗し、スネークも重傷を負う。「スネークイーター作戦」では、ソコロフの奪還に加え、核搭載戦車シャゴホッドの破壊、そしてソ連の情報機関GRUの「ヴォルギン大佐」と、ザ・ボスの抹殺を命じられたスネークが再びソ連に潜入する。
スネークの師匠「ザ・ボス」
ストーリーでは、価値観や正義が絶えず変動する「時代」をテーマに、スネークの活躍や、極限のサバイバル環境におかれた彼の心理状況と、他キャラクターとの関わりといった描写。冷戦当時を背景とした複雑な政治状況、「シャゴホッド」に代表されるようなSF的な表現、そして随所で挟まれるユーモアが描かれ、現代でも一切色褪せることがない、多層的な物語の魅力を生み出している。
冷戦という史実を舞台に「シャゴホッド」のようなSF兵器が登場。こうしたリアルとフィクションが混ざりあう世界観もシリーズの魅力だ「NEW STYLE」操作は現代的で快適
新たに追加された操作方法「NEW STYLE(ニュースタイル)」も、本作の体験をよりよいものにしている要素だ。この操作方法は、3人称視点かつ、従来のTPSと同じ感覚でプレイすることができるというもので、原作未プレイの人でも違和感なくプレイすることを可能にしている。
なお、本作には原作と類似の操作方法・俯瞰視点である「LEGACY STYLE(レガシースタイル)」も実装されており、筆者はどちらも試してみたが、原作を何週もプレイしているのにも関わらず、「NEW STYLE」の方がしっくりきた。やはり、現代的な操作方法・視点である点が大きいのだろう。また、「NEW STYLE」でプレイすれば、より本作の進化したグラフィックスを間近に感じることができ、密林が行く手を阻む感覚もダイレクトに伝わってくるように思える。
とはいえ、「LEGACY STYLE」にも、視界が比較的広く、敵兵の位置を把握しやすかったりといったメリットがある。操作方法の変更はいつでも可能(変更時にチェックポイントに戻るが)なので、場面に応じてプレイ中に切り替えるのもアリかもしれない。
なお、本作は原作から木々の生え方やオブジェクトの位置、敵兵の巡回ルートにいたるまで、変更は一切なかったと思われる。にもかかわらず、懐かしさと新鮮さを同時に味わえたのは、グラフィックの進化と、それをより感じさせてくれる「NEW STYLE」の賜物ではないだろうか。
NEW STYLEでは、潜入時の臨場感が確実に向上。息をのむステルスプレイが味わえる
同じマップでのLEGACY STYLE。敵兵の位置はこちらの方が把握しやすいオンラインモードへの期待
本作には本編以外のスペシャルゲームとして「サルゲッチュ」とコラボした「猿蛇合戦」(PS5、PC版専用)と、「ボンバーマン」とコラボした「ボム蛇合戦」(Xbox Series X|S専用)が追加されている。これ加えて2025年秋には新たなオンライン対戦モード「FOX HUNT」が配信される。
スペシャルゲームは本編の合間に息抜きとして遊べるものに仕上がっており、コミカルに逃げ回る「ピポサル」や「ボンバーマン」の姿や、大真面目に彼らと対峙するスネークのギャップはどこかシュールで癒される。
また、原作をプレイしたことのある人ならわかる“あるミニゲーム”も実装されており、解禁すればトップメニューから遊べるようになる。こちらもグラフィックスの進化により原作とは全く異なる雰囲気のゲームとなっているので、是非探して見つけて欲しい(原作未プレイの人向けにヒントをだしておくと、ある場面でセーブするとパラメディックが意味深な発言をするので、セーブ後にゲームを再起動してみるといい)。
今回はPS5でのプレイだったため、「猿蛇合戦」をプレイ。「ボム蛇」合戦については、冒頭の体験会レビューで触れているので参考にしてほしい
ピポサルを射撃で気絶させ
「ゲッチュ」していくスペシャルゲームだ
「アストロ」がピポサルに絡まれていることも……
個人的に最も気になっているのが、今回のレビューでは体験できなかった新モード「FOX HUNT」だ。このゲームモードは2025年秋にリリース予定のオンライン対戦モード。ゲームプレイの詳細についてもあまり明かされていない状態ではあるが、カムフラージュやサバイバルといった本作ならではの要素を軸としたチーム戦が楽しめるという。
「MGS4」、「MGSV」などの過去作でもオンライン対戦モード(通称「MGO」)は実装されており、ステルスなどの独自要素によって一部で根強い人気を得ていた。本作でも、“かくれんぼ”を拡張した「メタルギア」らしい対戦ゲームが楽しめるという。「MGO」がそれ単体で独立した価値を築いていただけに、「FOX HUNT」のクオリティには注目だ。
オンライン対戦モード
「FOX HUNT」2025年秋配信決定!「カムフラージュ」や「サバイバル」といったゲーム本編の要素を軸に、新しい「かくれんぼの駆け引き」を楽しもう。
続報をお楽しみに!
FOX HUNTについてはこちらhttps://t.co/s8jGspLjcO#MGSDelta#MetalGearSolid#メタルギアソリッドpic.twitter.com/Q0RD4LPcV2
— メタルギア公式 (METAL GEAR) (@metalgear_jp)August 8, 2025
基本的には原作に忠実である、それによる良し悪し
正直に言えば、筆者は「MGS3」のリメイクには、オープンワールド化を期待していた。しかし、実際に「MGSΔ」をクリアしてみると、いかに原作が現代でも色褪せない魅力をもったゲームかが再確認でき、同時に本作が掲げた「忠実な再現」という方向性の意義が伝わってきた。
ジャングルで敵兵の視界を欺くために茂みの中に潜み続ける緊張感や、待てば待つほどスタミナは減っていくジレンマ。敵兵から逃れるために潜り込んだダクトの中にいるネズミを見つけ、食糧にできたときの安心感など、原作のプレイフィールが当時のまま蘇ってくる。
さらに、ストーリーは20年が経過した今読み返しても「戦争SF」ものとしての出来はかなり高く、ムービーシーンを現代のグラフィックスで描き直しているだけでも価値を感じられる。
また、随所に散りばめられたユーモアがいいアクセントになっている。少佐の熱がこもった映画「007」トークや、ワニキャップを被って敵兵を欺けることなど、忘れていた小ネタを再発見した際にはちょっとした嬉しさがあった。
ワニキャップを被って水面から顔を出すと敵を欺ける。ジョークのような攻略法だが、潜入捜査の緊張感をいい具合に緩和してくれる
お馴染みの収集要素「ケロタン」も
今回からの新たな収集要素「ガーコ」
「MGSΔ」は、こうした原作の魅力を、グラフィックスの進化による没入感の向上や、「NEW STYLE」操作等でプレイをしやすくしたことにより底上げし、現代のゲーマーに伝える役割を果たせるタイトルであることは間違いないだろう。
既に原作をプレイしたことのある人は、「MGSΔ」を通して原作となる「MGS3」の持つ面白さを再確認できるだろう。一方、原作未プレイの人は、色々な事を試しながら、自分なりの突破方法を見つける。そんな本作の醍醐味を是非味わって欲しいと思う。
もちろん、オープンワールドで「MGS3」をプレイしてみたいという未練は残る。本作においてもマップを移動する度にロードを挟んでしまうことで生じるテンポの悪さや、アイテムを拾う際に特にモーションがないのも原作のままであることなど、忠実に再現するために、いくつかの現代的では当たり前の要素を損なっているなど、気になる点がない訳ではない。
それでも、原作をプレイしていない人には是非プレイして欲しいタイトルであることは間違いなく、既にプレイしている人にとっても、物語やキャラクターの魅力を改めて味わい直せる作品に仕上がっている。
長くなってしまったが、本作の目指した「忠実な原作再現」は見事なもので、多くの人にプレイして欲しいクオリティに仕上がっている。特に「MGSア3」未プレイの人には、是非現代に蘇った「ネイキッド・スネーク」の活躍を手に取って感じて欲しい。
【METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER – OPENING MOVIE Δ Version (ノンクレジット版:4K) | KONAMI】
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