ソニーは、同社のゲーミングギアブランド「INZONE」の新製品として、ゲーミングヘッドセット「INZONE H9 II」、ゲーミングイヤホン「INZONE E9」、ゲーミングキーボード「INZONE KBD-H75」、ゲーミングマウス「INZONE Mouse-A」、ゲーミングマウスパッド「INZONE Mat-F」および「INZONE Mat-D」の6製品を9月5日より発売する。

 これまで「INZONE」は、ゲーミングヘッドセットや完全ワイヤレスイヤホン、ゲーミングモニターを中心に展開していたが、今回は製品ラインナップを拡充し、キーボードやマウス、マウスパッド、有線ゲーミングイヤホンといった新製品が登場。これでキーボード、マウス、マウスパッド、モニター、ヘッドセットの主要なゲーミングデバイスを網羅し、デスク周りを「INZONE」で統一できるようになった。

 また、今回登場する製品はいずれもプロ寄りのFPSコアゲーマーをターゲットとしており、製品開発はプロeスポーツチームのFnaticと共同で実施。開発初期の段階から製品を試用してもらい、密な意見交換によって製品の完成度を高めている。今回は短い時間ではあるが実機に触れる機会をいただいたので、各製品の詳細や使用感をレポートしていく。

プロ仕様の高感度・低遅延。ゲーミングマウス「INZONE Mouse-A」

 まずは新規参入となるカテゴリの商品を見ていこう。「INZONE Mouse-A」はワイヤレス接続対応のゲーミングマウスで、市場想定価格は22,000円前後となっている。

 今回登場するマウスやキーボードといったゲーミングデバイスは、プロeスポーツチーム「Fnatic」が展開するゲーミングデバイスブランド「Fnatic Gear」からソニーへ技術資産移転を行ない、開発された。開発過程では「Fnatic」所属選手のフィードバックに基づき、形状や重量を最適化し、プロ仕様の高感度・低遅延を謳うゲーミングマウスとなっている。

「INZONE Mouse-A」はメインスイッチの他、左側面に2つのボタンを備える底面部。センサーは超低遅延の「PAW3950」を採用レシーバー部。有線マウスはコードがプレイの妨げになることも多く、プロ選手たちの間でもマウスは無線が主流だ

【「INZONE Mouse-A」のスペック】

接続:2.4GHz無線接続、有線接続最大感度:30,000DPI最大ポーリングレート:8,000Hz(無線時)、1,000Hz(有線時)重量:48.4g付属品:USBケーブル(USB-A – USB-C)、交換用マウスソール、ワイヤレスドングル、保証書、INZONEステッカー

 マウスボタンは、赤外線を利用した光学式スイッチを採用しており、従来の機械式と比べて最大80%の高速化を実現。センサーにはハイエンドゲーミングマウス製品で広く採用されるPixArt社の「PAW3950」を搭載し、最大感度30,000DPI、最大加速70G、750IPSの速度を実現している。バッテリー駆動時間はポーリングレート1,000Hz時で、最大90時間となっている。

 本体重量は48.4gで、さらなる軽量化も可能だったが、プロ選手たちからの「軽すぎると扱いにくくなる」というフィードバックを受けて最適な重量に設計されている。形状についてもプロ選手たちのフィードバックに基づいて最適化し、持ちやすさ、安定感、エイムの合わせやすさを追求している。

 実際に触れてみた感触は、やはり48.4gという軽さが際立つ印象だ。今回は短時間の試用だったため、やや軽すぎるようにも感じられたが、この軽さに慣れた時にこそ「INZONE Mouse-A」の真価が発揮されるのだろう。

Mouse-Aの実機画像底面部。軽量化のために一部が中抜きされている無線レシーバーには「INZONE」のロゴをプリント。無線時の最大ポーリングレートは8,000Hzとなっている滑りやすさと止めやすさで2種類用意! ゲーミングマウスパッド「INZONE Mat-F/D」

 ゲーミングマウス「INZONE Mouse-A」に合わせて、ゲーミングマウスパッド「INZONE Mat-F」と「INZONE Mat-D」も登場する。こちらもINZONEの新カテゴリで、市場想定価格はMat-Fが8,000円前後、Mat-Dが5,000円前後だ。

 同社開発者は「マウス(INZONE Mouse-A)にこだわったのなら、マウスパッドもこだわらないと意味がない」と、マウスパッドの重要性を語る。今回2種類用意した理由は、ゲームによってマウス操作で重要になるポイントが異なるためだ。今回は「VALORANT」などのタクティカルFPSと「Apex Legends」などのバトロワ系FPSの2ジャンルでの動作を基準に2種類のマウスパッドを開発したという。

ゲーミングマウスパッド「INZONE Mat-F」。カラーはブラックゲーミングマウスパッド「INZONE Mat-D」。カラーは紫のグラデーション「INZONE」ロゴは控えめ

 「INZONE Mat-F」は「VALORANT」のように狙ったところでマウスが止められるような、フリックエイムの安定性向上を目指している。パッド上のマウスの初動が速く、ストッピング性能に優れており、スムーズで正確なエイムを目指した。表面上の摩擦力は55gfで高い防水性も備える。

 「INZONE Mat-D」については「Apex Legends」のようにスムーズにマウスを動かせるスピーディーな挙動の実現を目指しており、表面の滑りやすさと止めやすい摩擦のバランスに注力している。表面上の摩擦力は42.5gfとMat-Fより低くなっているが、摩擦力を落とすことでよりスピーディーな操作に向いている。また、高い防油性も備えており、手をスムーズに動かす事ができる作りになっている。

 厚みとカラーリングはそれぞれ異なり、Mat-Fは厚さ6mmでブラックに統一、Mat-Dは厚みが4mmでブラックとパープルのグラデーションカラーを採用する。共通点として、2種類とも手の動きを妨げないステッチ加工で耐久性が高く、マウスに干渉しにくい作りとなっているほか、サイズは共通で480×400mm(横×縦)となっている。

 今回は「INZONE Mouse-A」と一緒に使ってみたが、かなり思った通りの動きができそうな感触だ。今回は試用時間が短かったこともあり、2製品の動きの変化までチェックはできなかったが、プレーヤーの思うようにエイムやゲーム内のムーブが楽しめるゲーミングマウスパッドに仕上がっていそうだ。

体験会で使用したMat-F(手前)とMat-D(奥)。それぞれに独特の特色が感じられるユニークなマウスパッドとなっているラピッドトリガーにガスケットマウント! ハイエンドゲーミングキーボード「INZONE KBD-H75」

 続いても新規参入カテゴリの商品だ。「INZONE KBD-H75」はUSB接続の有線ゲーミングキーボードで、市場想定価格は40,000円前後となっている。発売当初のレイアウトは英語配列(US)のみで、2026年春頃に日本語配列(JIS)が発売予定だ。

 本製品はプロeスポーツチーム「Fnatic」と共同開発。最上段にF1~F12までのファンクションキーを搭載するほか、右端にDEL/INS/PageUp/PageDownキーを縦並びで配置しており、ゲームと普段使いの両立を目指した“75%サイズ”のキーレイアウトを採用した。もちろん、ゲーマーに欠かせないカーソルキーもしっかり搭載されている。

 アナログ磁気式キースイッチでフルキーストロークは4mm。ラピッドトリガーにも対応しており、センサー有効範囲は0.1~3.4mmで、アクチュエーションポイントは0.1mm単位で調整可能となっている。PCアプリ「INZONE Hub」から各種設定ができるほか、ブラウザ経由のWeb版「INZONE Hub」を利用可能で、アプリをインストールしなくてもブラウザで設定が変更できる。

「INZONE」初の有線ゲーミングキーボード「KBD-H75」横から見たところ。スタンドを使わない状態でもキーの高さを変えている

【「INZONE KBD-H75」のスペック】

サイズ:75%テンキーレス接続:USB有線接続キースイッチ:アナログ磁気スイッチポーリングレート:最大8,000Hz付属品:USBケーブル(USB-A – USB-C)、保証書、INZONEステッカー

 実際に触れてみると、キーのぐらつきはほとんど感じられず、安定した入力が可能な印象だ。また、打鍵時の衝撃を吸収するガスケットマウントを採用しており、ゲーミングキーボードにありがちな“カチャカチャ”とした感触はなく、やわらかい打鍵感を味わえる。

 本体はCNC加工のメタルフレームが採用されており、ずっしりとした安定感が感じられる。加えて、右上部にはボリュームダイヤルが搭載されており、小気味よく回転させることでボリュームなどが簡単に調整できるのも、ソニー製品らしいこだわりポイントだ。

実機の画像。コンパクトな本体ながらずっしりとした重量感が心地いい右上部にはボリュームダイヤルを備える底面にはスタンドを備えるほか、中央には「SONY」ロゴがあるのもうれしい遮音性を高めた有線ゲーミングイヤホン「INZONE E9」

 次は有線ゲーミングイヤホン「INZONE E9」を見ていこう。「INZONE」のゲーミングイヤホンといえば、完全ワイヤレス型の「INZONE Buds」が思い浮かぶが、こちらは完全ワイヤレスとは真逆の有線タイプだ。カラーはブラックとホワイトの2色で、市場想定価格は18,000円前後となっている。

 本製品は、オフラインの競技大会などでプロ選手に使ってもらう事を想定した設計となっている。オフライン大会ではワイヤレス接続の弱点である混線を可能な限り避けつつ、歓声の中でもゲーム音声がきちんと聴こえるように、遮音性の高い有線接続のヘッドセットやイヤホンを使用するのが一般的だ。

 ところが、現在のゲーミングデバイス市場では、ゲーミングヘッドセットは多くラインナップされている一方で、ゲーミングイヤホンがあまり多くないことから、イヤホンタイプを好むプロ選手たちの多くは音楽用のイヤホンを使用している。これに一石を投じるのが「INZONE E9」というわけだ。

有線ゲーミングイヤホン「INZONE E9」。カラーはブラックとホワイトの2色を用意

【「INZONE E9」のスペック】

ドライバーユニット:5mm(完全密閉構造)プラグ:L型ステレオミニプラグ(機器側)、INZONE専用プラグ(ヘッドホン側)接続:3.5mm有線接続、USB Type-C有線接続(オーディオボックス使用時)ケーブル長:約180cm重量:約4.7g(ケーブル含まず)付属品:USB Type-Cオーディオボックス、ノイズアイソレーションイヤーピース、ハイブリッドイヤーピース、キャリングケース、ケーブルバンド、保証書、INZONEステッカー

 ドライバーユニットは、5mm径の密閉ダイナミック形式を搭載。ソニーのイヤホンとしては初めて「完全密閉構造」を採用しており、外気に繋がる経路がなく、遮音性を高めている。イヤーピースは独自のポリウレタンフォーム素材を使用し、遮音性に特化した「ノイズアイソレーションイヤーピース(XS/S/M/L)」のほか、日常使いに最適な「ハイブリッドイヤーピース(XS/S/M/L)」も付属する。

 筐体は「エルゴノミックサーフェスデザイン」を採用し、耳への圧迫を軽減することで、長時間装着していても快適に使用可能。耳への装着にはイヤーハンガーを用いることで、安定感と快適性を両立している。本体重量はケーブル込みで20g以下、ハウジング部だけなら4.7gと軽量設計のため、耳への負担がかなり少ない。

 ケーブル長はPCとの接続を考慮し、1.8mのロングケーブルを採用。接続端子は3.5mmステレオミニプラグに加えて、付属の「オーディオボックス」によるUSB Type-C接続も可能となっている。オーディオボックス接続時はPCアプリ「INZONE Hub」を利用可能で、Fnaticと共同開発したFPS向けイコライザープリセットのほか、立体音響バーチャライザー「360 Spatial Sound for Gaming」も利用できる。

3.5mmステレオミニプラグのほか、USB Type-CでPCと接続できる「オーディオBOX」も付属するハウジング部とコードは専用プラグで接続されているロゴ入りのハードケースも付属する

 実際に試用した感触としては、とにかく遮音性の高さが際立った。今回試用した環境は、多くの人たちが新製品を体験しながら盛り上がっていたが、本製品を装着するとそれらの音がほぼ聞こえなくなるため、呼びかけられても気づかないという場面もあった。ノイズキャンセリングなしでこの遮音性というのはかなり印象的だ。

 音質についても、今回は「Apex Legends」での音質を試したが、銃弾が的に当たる時の着弾音やキャラクターの動く音などが特に強調されており、相手の位置をいち早く察知することができそうだ。残念ながら長時間利用時のフィット感は確認できなかったが、この辺りは製品発売後にでも実際に試してみたい。

こちらが「INZONE E9」の実機と付属品手で持ってみるとかなり軽い実際に装着したところ。イヤーハンガーを耳の裏から回して固定し、外耳道にイヤーピースが収まる形で装着する。遮音性はかなり高いハイエンドゲーミングヘッドセットがリニューアル! H9の不満点を解消した「INZONE H9 II」

 最後にゲーミングヘッドセット「INZONE H9 II」を見ていこう。こちらは「INZONE」ブランドの立ち上げ時にラインナップされた製品の一つ「INZONE H9」の後継モデルで、カラーはブラックとホワイトの2色展開。市場想定価格は40,000円前後となっている。

 本製品では「INZONE H9」で評価された要素を引き継ぎつつ、先代ユーザーからの不満点を徹底的に改善。プロeスポーツチーム「Fnatic」に所属するプロ選手の協力のもと、より完成度の高いゲーミングヘッドセットに仕上がっている。

 先代モデルの具体的な不満点として挙げられたのは、マイクの音声品質と製品の重さ。「INZONE H9 II」ではスーパーワイドバンド対応の単一指向性マイクを採用し、AIを活用したノイズリダクション機能によって発話者の声を拾いながら周囲のノイズを最小限に抑制することで、高精細で自然な音声を相手に届ける「ストレスフリーなマイク品質」を実現している。また、本体重量は260g(マイク含まず)で、H9から70g(約20%)の軽量化を実現した。

 音質面では、同社のフラッグシップワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM6」と同じドライバーユニット(30mm径)を採用しており、音質を改善。ノイズキャンセリングモードや外音取り込みモードを備えるほか、立体音響バーチャライザー「360 Spatial Sound for Gaming」にも対応している。

 加えて「INZONE E9」と同様に、PCアプリ「INZONE Hub」では、Fnaticの「VALORANT」チームや「Apex Legends」チームと共同開発したFPSタイトルに最適なイコライザープリセットを3種類用意。足音や銃声、効果音といった音を強調しつつ、長時間でも快適に使用できる音づくりとなっている。

 接続は、付属のUSB Type-Cトランシーバーによる2.4GHz無線接続のほか、Bluetoothによる無線接続、3.5mm有線接続に対応。連続使用時間はノイズキャンセリング機能をオフにした状態で約30時間となっている。

「INZONE H9 II」。ブラックとホワイトの2モデルを用意大幅に改良されたマイク。先端部には赤色LEDを備え、ミュート時に点灯して知らせるUSB Type-Cトランシーバーが付属

【「INZONE H9 II」のスペック】

ドライバーユニット:30mm(WH-1000XM6と同一)マイク:単一指向性接続:2.4GHzワイヤレス、Bluetooth(SBC、AAC、LC3)、3.5mm有線接続連続使用時間:約30時間(NCオフ時)重量:260g付属品:ヘッドホンケーブル、USBケーブル(USB-A – USB-C)、USB Type-C トランシーバー、ソフトポーチ、着脱式ブームマイク、保証書、INZONEステッカー

 実際に試用してみたが、ハイエンドゲーミングヘッドセットらしい良好な音質というだけでなく、マイク音質や使い勝手が向上しており、これまで以上に配信や大会などで使いやすい製品に仕上がっている印象を受けた。

 たとえば、ボイスチャット(今回はDiscord)利用時は、近い位置にいる他人の声がマイクには一切入らないため、近距離にいる人がいるような環境でも違和感なくボイスチャットを利用できる。これは、大会などでプロ選手がそれぞれヘッドセット越しに会話をしながら、ゲームの戦略を決めたり、声を掛け合ったりすることを想定しているためだ。また、マイクの先端にはミュート状態を知らせるLEDが付いているのだが、装着時に絶妙に視界の片隅に入ってくるような作りになっており、細やかな配慮が感じられた。

 さらに、H9のヘッドバンドとスライダーは位置を調整しても着脱時や持ち運び時などにズレやすく、装着時に毎回調整が必要だった。これがH9 IIでは改良され、位置を調整するとその位置で固定され、着脱時に簡単にズレないような作りになっており、この点についてもFnatic所属選手からのアドバイスをもとに改良が行なわれたという。短時間の試用ということもあり、詳しい検証はできなかったが、マイク音質や装着感などスペックからは見えにくい機能や配慮が各所で見られた。

「INZONE H9 II」の実機。INZONEらしいホワイトモデルに加えて、シックなブラックモデルも用意された実際に装着したところマイクは着脱可能な作りになっている新旧H9(左:H9 II、右:H9)を並べたところ。H9 IIは小型化され、マイクが取り外し可能になったほか、ヘッドバンドの厚みが変わっているプロ仕様のゲーミングデバイスが集結! デスク周りを「INZONE」で統一できるようになる

 ここまで9月に発売される「INZONE」の新たなゲーミングデバイス6製品を紹介してきた。ブランドの立ち上げから約3年間、ゲーミングヘッドセットとゲーミングモニターに注力してきた「INZONE」だが、ついにゲーミングマウスやゲーミングキーボードの投入を果たした。

 今回の新製品は全てFnaticと共同開発しており、いずれも高価なハイエンド帯ではあるが、プロ仕様の高品質なゲーミングデバイスに仕上がっている。またデスク周りを「INZONE」で統一できるようになったことで、全てのデバイスを同じアプリで管理できるというメリットも生まれる。FPSゲーマーはぜひ「INZONE」の新たなゲーミングデバイスを試してみてほしい。

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