多彩なゲーミングノートPCを展開するMSIから、高性能を凝縮しつつも価格とのバランスも重視したハイエンド「Vector」シリーズの最新モデルのレビューをお届けする。
Core Ultra 9 275HX、GeForce RTX 5070 Ti Laptop GPUに16型の大画面を組み合わせ、重量級ゲームが快適にプレイできるのはもちろん、AIやクリエイティブワークにも強いオールラウンダーノートとして仕上がっている。
マルチフレーム生成で超重力級ゲームも最高画質で快適プレイ
ここからはベンチマークテストに移ろう。MSI Centerアプリに複数の動作モードが用意されているが、ここではもっとも性能を引き出せる「エクストリーム」に設定してテストを行った。
動作モードはMSI CenterアプリでUser Scenarioをエクストリームに設定してベンチマークを実行した
まずは、CGレンダリングでCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」、PCの基本性能を測る「PCMark 10」、定番3Dベンチマークの「3DMark」を実行する。
Cinebench 2024の計測結果
PCMark 10 Standardの計測結果
3DMark Steel Nomadの計測結果
3DMark Fire Strikeの計測結果
3DMark Speed Wayの計測結果
24コア24スレッドというメニーコア仕様だけあり、Cinebench 2024のMulti Coreはスコアが1,959オーバーとデスクトップ向けCPUを含めても上位と言える結果だ。CPUパワーを求めるクリエイティブワークもラクラクこなせる。3DMarkもRTX 5070 Tiのアベレージスコアを超えており、性能をしっかり引き出せているのが確認できた。
実ゲームに移ろう。今回はディスプレイが画面比率16:10の2,560×1,600ドットなので、2,560×1,600ドット、1,920×1,200ドットの2パターンで測定している。アッパーミドルGPUということもあり、重量級の「Clair Obscur: Expedition 33」、「モンスターハンターワイルズ」、「サイバーパンク2077」を用意した。いずれもDLSS 4のマルチフレーム生成に対応したタイトルだ。
Clair Obscur: Expedition 33は春の牧草地の一定コースを移動した際のフレームレート、モンスターハンターワイルズはベースキャンプの一定コースを移動した際のフレームレート、サイバーパンク2077はベンチマーク機能を実行した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定している。
Clair Obscur: Expedition 33のベンチマーク結果
モンスターハンターワイルズのベンチマーク結果
サイバーパンク2077のベンチマーク結果
Clair Obscur: Expedition 33は発売当初はフレーム生成に対応していなかったが、2025年7月30日のアップデートでマルチフレーム生成をサポート。そのため、最高画質かつ2,560×1,600ドットでも平均198.9fpsと高いフレームレートを達成。モンスターハンターワイルズも最高画質設定は大容量のビデオメモリを求めるが、2,560×1,600ドットで平均195.1fpsと快適なプレイが可能だ。
サイバーパンク2077はすべての光源の経路(パス)を再現するパストレーシングを有効にする強烈な描画負荷の設定だが、それでも2,560×1,600ドットで平均135.1fpsと高いフレームレートを出せている。超重量級ゲームも快適に遊べるパワーがあると言ってよいだろう。
実用/クリエイティブ用途向けの性能チェックの一環として、AI処理のテストも見てみよう。テストには、LLM(大規模言語モデル)の処理性能を見るProcyon AI Text Generation Benchmark、画像生成を行うProcyon AI Image Generation Benchmarkを使用した。
Procyon AI Text Generation Benchmarkの計測結果
Procyon AI Image Generation BenchmarkのStable Diffusion XL(FP16)設定での計測結果
AI処理は12GBのビデオメモリが活きやすい。Procyon AI Text Generation Benchmarkはパラメーターが多く、ビデオメモリ8GBの環境では動作しないLLAMA 2のテストを完了できている。Procyon AI Image Generation Benchmarkでもビデオメモリ10GB以上を求めるStable Diffusion XLによる画像生成も問題なく完了。本機の仕様であれば、AI目的でも活躍が可能だ。
24コアCPUと上位GPUでもしっかり冷える冷却システム
冷却力と動作音をチェックしよう。今回は、サイバーパンク2077を10分間動作させたときの動作音を正面、右側面、背面のそれぞれ10cmの位置に騒音計を置いて測定、サーモグラフィーカメラでキーボード全体の温度をチェックしてみた。動作モードはベンチマークと同じくエクストリーム設定だ。
サイバーパンク2077連続実行時の動作音
キーボードの上部と中央部は温度が高くなっているが、ゲームプレイで使用率の高いWASDキー周辺の温度は比較的低く保たれている。長時間手の平を置くことが多いパームレスト部分はさらに温度が低い
動作音についてはそれなりに大きいが、ハイエンドのゲーミングノートPCとしては標準的と言ってよい印象だ。メインの排気口となる背面の動作音はどうしても大きくなるが、ユーザーの使用する位置である正面ではかなり抑えられている。
最後にゲームプレイ中の温度をチェックしておこう。同じくサイバーパンク2077を10分間プレイしたときのCPUとGPUの温度推移を「HWiNFO Pro」で測定している。CPUが「CPU Package」、GPUが「GPU Temperature」の値だ。
サイバーパンク2077連続実行時のCPU/GPU温度推移
CPUはゲームの状況によって動作クロックが大きく変動するため温度は激しく乱高下しているが、最高でも90℃に達することはなく、平均温度はCPUが79.7℃、GPUが76.7℃としっかりと冷却できている。特に24コアCPUで90℃を超えるシーンがないのは、かなり強力な冷却システムと言ってよいだろう。長時間のゲームプレイも安心だ。
幅広い処理を快適にこなせるハイエンドゲーミングノートPC
ベンチマークテストのスコアと温度推移から評価すると、24コアの強力なCPUにNVIDIAのアッパーミドルGPUを組み合わせ、重量級ゲームを快適に遊べるのはもちろん、AIやクリエイティブワークもこなせるパワーを持つオールラウンダーに仕上がっていると言える。
HDRとVRRには非対応、Wi-Fiが7対応ではなく6Eなど、コストを意識してオミットしている部分もあるが、SSDが追加できたり※Thunderbolt 5端子を2基備えていたりするなど、インターフェース類も充実しており、実用性は非常に高い。30万円台で高スペックゲーミングノートを探しているなら、強力な候補となる一台だ。
※SSD、メモリの増設/交換の際は次の条件にご注意ください:
1) ユーザーによる増設/交換はPC本体の保証対象外となります
2) MSI公認サポート店であれば保証を維持したまま増設/交換が可能です