任天堂の新型家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ2」は、これ以上にない好スタートを切った。写真は同ゲーム機を購入する男性ら。6月5日、東京で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
[香港 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 任天堂(7974.T), opens new tabの新型家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ2」は、これ以上にない好スタートを切った。ジェフリーズによると、大ヒット作ニンテンドースイッチの後継機であるスイッチ2の販売台数は今年度第1・四半期に580万台に達し、ゲーム業界の最高記録を更新した。
任天堂が1日発表した決算報告によれば、本体と同時に発売されたソフト「マリオカートワールド」も560万本を売り上げた。1本80ドルという異例の高価格設定への懸念があったにもかかわらず、本体1台につきほぼ1本のソフトが販売された計算になる。
過去最高価格となる450ドルのゲーム機本体とソフトをセットにして、割安な価格で購入できる選択肢を提供したことによって販売比率が押し上げられた面もある。しかし、ファンが本体とソフトの両方に対しより多くのお金を支払う意欲があることが示された。
米国市場向けのスイッチ2はベトナムから出荷されている。米トランプ政権はベトナム製品に対する関税を20%に設定したが、JPモルガンのアナリストは任天堂の業績には来年までほとんど影響が出ないとみている。こうした状況を踏まえると、4日に任天堂の株価が一時6%近く上昇したのも不思議ではない。
Line chart of change in Nintendo share price year to date 2025
しかし、時価総額1100億ドルに上る任天堂は最新の業績見通しで米関税の「大きな影響はない」としながらも、今年度のスイッチ2の販売台数予測を1500万台に据え置くなど、いつもの慎重な姿勢を崩さなかった。より注目すべきは、初代スイッチの価格を平均14%引き上げると発表したことだ。関税について言及はなかったが、後継機についても価格調整が「将来的に必要になる可能性がある」と警告した。
スイッチ2の価格が14%上昇すれば、消費者は本体1台あたり510ドル以上を負担することになる。ライバルであるソニーのより高性能な「プレイステーション5(PS5)」のディスクドライブ非搭載モデルの価格450ドルを大幅に上回る。
ただ、「スーパーマリオ」や「ゼルダの伝説」「ポケットモンスター」といった、任天堂のゲーム機販売を長年にわたって牽引してきた人気シリーズがソニーにはない。また、スイッチ2専用ソフトの「ドンキーコングバナンザ」が高い評価を得ていることも、下半期の販売に良い影響を与える見込みだ。
さらにソニーは今年、PS5の販売をけん引すると期待されていたアクションゲーム「グランド・セフト・オートVI」の発売が延期されたため、年末商戦の目玉を欠くことになる。これは任天堂にとって利益を伸ばす好機となるが、価格を急激に引き上げ過ぎると裏目に出るリスクもある。
任天堂の純売上高の40%を占める米国がリセッション(景気後退)に陥れば収益が圧迫される可能性もある。とはいえ、これまでの好調な販売実績は値上げすることを正当化する強力な理由となっており、早期に実施すべき十分な根拠を示していると言えるだろう。
●背景となるニュース *任天堂、4─6月期は4.4%の営業増益 「スイッチ2」販売好調 もっと見る (筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。