「伊達鍵は眠らない – From AI:ソムニウムファイル」

 スパイク・チュンソフトは、7月25日にNintendo Switch 2/Nintendo Switch/PC用アドベンチャー「伊達鍵は眠らない – From AI:ソムニウムファイル」を発売する。価格は5,478円。

 本作は2019年から続く「AI:ソムニウムファイル」、および「AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ」に続く3作目のシリーズ作品。1作目の「AI:ソムニウムファイル」の主人公「伊達鍵」が本作でも主人公となっている。

本作の主人公「伊達鍵」伊達の義眼で相棒の「アイボゥ」

 本作は前作同様、警視庁特殊捜査班「先進式人脳捜査部隊(通称:ABIS)」に所属する警察官の伊達鍵が、左目に義眼として装着されている眼球型AI「アイボゥ」とともに発生した事件を解決まで導いていくというものだ。その中でも人の夢の中に入り込みアイボゥとともに対象の記憶を探り事件の手がかりを見つけていく。

 一方で今回は殺人事件ではなく、行方不明事件が序盤に発生する。脱出ゲームに行ったはずの左岸イリスを探して、伊達鍵とアイボゥがその足取りを追っていくという物語となっている。しかし、ただの行方不明事件ではなく、いなくなったイリスからの連絡があったり、UFOや宇宙人といった不可思議なものの登場でより物語は複雑になっていく。

本作で行方不明になる左岸イリス本作ではUFOも登場する

 今回はそんな「伊達鍵は眠らない – From AI:ソムニウムファイル」の序盤の魅力をお伝えしたい。

【Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/Steam『伊達鍵は眠らない – From AI:ソムニウムファイル』イントロダクショントレーラー】

脱出パートが新たに加わり物語がより複雑に交錯していく

 本作では事件を解決するために「捜査パート」、「ソムニウムパート」、「脱出パート」をクリアしていく。それぞれのパートに難易度を設定することができ、「捜査パート」と「ソムニウムパート」ではストーリーを楽しみたいストーリーモード、比較的簡単に攻略できるイージー、推奨難易度であり緊張感を楽しめるスタンダード、「脱出パート」ではこの3つに加えて謎解き上級者向けのハードという難易度を選ぶことができる。難易度はプレイの途中でも変更することができるので気軽に選択できる。

 捜査パートでは聞き込みや事件現場での捜査など足で稼ぐ捜査がメインとなっており、対象者の足取りを追い、事件の手がかりを探す。聞き込みではどういったことを聞くのかを選択肢から選ぶことができ、必要な情報が集まると聞き込みが終了する。しかし選択肢の中には雑談も含まれており、話が脱線してしまうこともしばしばある。

聞き込みではさまざま選択肢が出てくる話の流れを読んでアイボゥが不穏な流れを察知するなどアイボゥの伊達に対する理解もおもしろい

 初代「AI:ソムニウムファイル」同様、アイボゥの能力であるX線、サーモグラフィー、情報収集ができるほか、2作目から登場した「WinkPsync(ウィンクシンク)機能」を使って聞き込み、相手の夢を簡易的に読み取れることができるようになっている。

アイボゥの能力でサーモグラフィーを行うことも可能新機能「WinkPsync機能」は聞き込み相手の直前の記憶を読むことができる

 ソムニウムパートではABISにある「Psync(シンク)装置」をつかって対象者の夢の中に入り込んで事件の中に隠された真実を探すことができる。対象者の夢の中では伊達ではなくアイボゥが人型になり捜査を担当する。夢の中ということもあり通常ではありえない空間が登場したり、移動した先が全く別の場所だったりと想像を超えてくる世界で捜査を行なう。

ABISにある「Psync装置」で対象者の夢の中に入ることができる夢の世界ではアイボゥが捜査を進めて行く

 また、ソムニウムパートでは対象者の調べられたくないところにメンタルロックがかかっており、別の謎を解くたびに他のところを調べられるようになったり、ロックを解除できるようになる。ロックを解除していくと対象者の記憶の深層に潜ることができ、隠された真実にたどり着くことができる。

対象者が調べられたくないものにはロックがかかっている謎を解き明かしてロックを解除していくとどんどん深層に迫っていける

 この夢の世界では制限時間が設けられており、選択肢を選んで行動するたびに時間が減っていく。そのため、特定の選択肢や行動をとると手に入るアイテム「Timie」が重要となってくる。「Timie」は選択肢による行動での時間の減少を抑えることができるので、アイテムを駆使して深層に隠された真実までの道のりを駆け抜けていく。

夢の世界では選択肢を選んで行動すると時間を消費する

 本作から登場する脱出パートではさながら脱出ゲームのような形で密室の中から様々なギミックを解除しながら、その密室からの脱出を目指す。ギミックを解除していくためには部屋の中にある様々なものを確認して、行動を起こしたりアイテムを選択して使用していくことで先に進むことができる。

脱出パートでは様々なギミックを解いていく

 このパートではサーチ機能を使うことができ、今調べるべき場所を特定することができるため、次の行動がわからない場合などはヒントを得ることができる。

 また、こちらでは手に入れたアイテム同士を組み合わせて使うといった要素も存在し、発想や観察眼がこのパートでは重要になってくると感じた。

サーチ機能を使うと調べる必要のある場所がわかるアイテムによっては組み合わせて使うことでギミックが解けることもある

 感覚として新たに追加された脱出パートはソムニウムパートに似ているが、ソムニウムパートと明確に違うのは、夢の世界ではなく現実の世界が舞台となっているところだ。ここでは生身の人間が謎を解いて脱出するため、できることとできないことが明確に分かれている。そのため、道筋は建てやすい分、考え方や調べ方を柔軟にする必要があると感じた。

 今までの捜査パートとソムニウムパートに加えて脱出パートが追加されたことで、作中における現実と夢の世界が筆者の中では少し曖昧になったような感覚を受けた。もちろん、捜査パートとソムニウムパートは前作から存在するためそれらの世界をわかったつもりではいるが、そこに脱出パートが登場したことで、今見ているのは夢なのか現実なのかどっちなのだろうかと感じた。

 これまで捜査パートは“現実”、ソムニウムパートは“夢の世界”とゲームプレイが二分化されていたが、ここに現実だが現実離れしている脱出パートが加わったことにより、2つのパートの間を埋めているかのようで、それぞれのパートが地続きであることを感じられた。

より不可解な事件といつも通りの伊達が織りなすストーリー

 今回のストーリーは序盤からかなり謎が多い。殺人事件のような凄惨な事件ではないが、知っている人物の行方がわからなくなるだけでなく、UFOといった摩訶不思議なものの登場や「グレートリセット」といったオカルトのようなものなど、ソムニウムの世界とも違う不思議な感覚を味わうことができる。行方不明になったイリスも物語序盤でUFOにさらわれたと言っており、その真偽やさらった犯人などが不明確で、事件により不可解さを加えていると感じた。

物語の中にはオカルトのような不可解なものがたくさん登場する

 また、本作ではイリスが伊達と通話しながら脱出を試みるなど、イリスを操作する場面もあり、本作ではいつも以上に主人公の伊達以外のキャラクターを操作する機会が多い印象を受けた。

本作では伊達やアイボゥのほかイリスも操作する

 時系列としては初代「AI:ソムニウムファイル」の後になっており、そこから少し時間が経過していることを登場人物の会話から読み取ることができた。登場キャラクターの中には事件から前に進もうとしているキャラクターもおり、キャラクターの精神的な成長を感じることもできた。

 ちなみに「AI:ソムニウムファイル」でも度々出てきていた伊達の下心のあるブラックなギャグやトークなどは本作でも健在で、突然発せられると少し気まずくもあり、いつもの伊達だなという感覚も思い出す。

 今回の体験してみて、本作はシリーズ従来のプレイ感覚に新要素が加わったことで、新しい感覚を体験できると感じた。本シリーズが好きな方はもちろんだが、本シリーズが気になっていた方にもぜひプレイしてみてほしい作品になっている。

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