SUPERDELUXE GAMESならびにエインシャントは、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Nintendo Switch/Steam用シューティングゲーム「アーシオン」のメディア試遊会を開催した。

 コンポーザー/ゲームクリエイターとして活躍する古代祐三氏が率いるエインシャントが、かつて開発を手がけた16bitゲーム機「MD」をベースに開発を進め、それを現行のプラットフォームでもプレイできるようにしたものだ。MD/MD互換機用カートリッジは2026年に発売が予定されているが、それに先駆けて各プラットフォーム版がSUPERDELUXE GAMESとLimited Run Gamesより発売されることが決定している。

 今回の試遊会では、本作の主要開発陣の古代祐三氏と和田誠氏による解説のもと、Switch版によるゲームプレイと、お二人へのミニインタビューの機会が設けられた。本稿ではその模様をレポートしていこう。

【『アーシオン』ダウンロード版アナウンストレーラー/Earthion Digital Announce Trailer】

残機+シールドのシステムを導入した遊びやすさと、破壊の爽快感を追求した、幅広いユーザーが楽しめる2Dシューティング

 「アーシオン」は、主人公の「小鳥遊アズサ(たかなし あずさ)」が、地球に襲来する侵略者に対抗するための宇宙戦闘機「YK-IIA」に搭乗し、戦いを繰り広げる横スクロールスタイルのシューティングゲームだ。ゲームは全てメガドライブ準拠の2Dグラフィックスで表現されていて、当時のゲーム画面を現在のディスプレイで表現するためのスキャンライン設定がかなり詳細まで用意されているのが印象的だ。

 オープニングではプリレンダCGをドット絵に落とし込んだ自機の出撃アニメーションで魅せ、ステージ序盤で味方の宇宙船が中ボスに破壊されるといった物語性のある演出がゲーム中に挿入されていく。プラットフォーム版はエミュレーションによる移植とのことで、これが実際にメガドライブの実機で動く事実もかなり熱いものがあった。

 ゲームは残機+シールド制で、メインウェポンとサブウェポンをボタンで使い分けるスタイル。メインウェポンは倒した敵から出現する緑のクリスタルを取ると画面左上の「SHOT LV(ショットレベル)」がアップして威力が上がっていく。サブウェポンはアイテムを取ることで通常は2種まで装備可能で、任意にボタンで切り替えが可能だ。なお自機のスピードを変更することはできない。

 本作は敵を撃って破壊する気持ちよさも重視しているそうで、2種の武器によるオート連射で敵を倒している爽快感はかなりのもの。その一方で大きめの敵は硬いものが多く、火力のあるサブウェポンの選び方は重要となるはず。その種類は複数の方向にショットを撃つ広範囲のものと、火炎放射器やレーザーなど強力な攻撃を放つ火力重視のものを確認できた。

 ここでポイントなのは、敵の攻撃が自機に当たってダメージを受けると、ゲージが減ってメインウェポンはパワーダウンし、サブウェポンは外れてしまう。シールドは時間で回復していくが、その安心感で回避をせずに被弾していると、こちらの攻撃が弱まり、結果的に大きなダメージを被ってしまうこともある。シューティングとしての回避は可能な限り行ったほうがいいのはもちろん、敵を積極的に倒してクリスタルを取っていくことが定石となるだろう。

 本作ならではのゲームシステムとして用意されているのが「アダプテーションポッド」だ。これはサブウェポンと同様のアイテムとして出現し、取ってもその場では効果を現さないが、ステージクリア時にこれを持っていると、残機の追加やシールド&ショットレベル上限の増加など、プレイヤーに有利なシークレットボーナスが付与される。これを意識してステージをクリアしていくことで、自機の強さが底上げされ、その先のステージの攻略が楽になるというわけである。

 アダプテーションポッドで得たボーナスは、ゲーム終了時に表示される「パスワード」をリプレイ時に入力すると、それを継承した状態でゲームを始められるので、初心者の救済やよりゲームを爽快に楽しむための要素として重宝するだろう。

 難易度は4段階、コンティニューは3回まで可能だが、コンティニューをした場合はステージの最初からとなる。シューティングも嫌いではないが、最近はあまり積極的に遊ばない筆者はデフォルト設定の難易度「ノーマル」でプレイしたが、それなりに歯ごたえがあり、初見はステージ2の途中で、2回目はステージ3の途中で終わり、プレイ時間が終了した。もう少し先に進みたかった気持ちも強く、そこは製品版で楽しむことにしたい。

 ゲーム中に流れる楽曲は“古代節”が冴え、全8ステージで30曲以上が用意され、ボスは中ボスまで全てが違う曲になっているそうだ。ゲームにはサウンドモードも用意されている。こちらも音響の環境を整えてしっかり聴きながらプレイをしたいと思った。

 ここからは「アーシオン」の開発を手がけたエインシャントの古代祐三氏と和田誠氏へのミニインタビューをお届けする。令和の最新技術で開発された本作の開発秘話に注目だ。

左から和田誠氏、古代祐三氏古代氏がずっと作りたかったSTG。ユーザーの期待に応えるために作り込むことを決意

――最初に「アーシオン」を企画した経緯からお聞かせください。

和田氏:古代が以前からずっと「シューティングをやりたい」と話していて、あるとき私に何か作らないかと相談されたんです。私が趣味でファミコンのゲームを作っていたこともあって、最初はファミコンで軽めに作ることを考えていたんですが、同時にメガドライブも研究していたこともあって、“古代祐三=メガドライブ”の印象が強いので、その組み合わせならお客さんも喜んでくれるだろうということで、一緒に作ることにしたんです。

 イメージとしては1980年代後半から1990年代前半のアーケードテイストのシューティングをメガドライブでガッツリ作り込んでいきましょうということで開発が始まりました。

古代氏:私はこれまでアーケードゲームもシューティングも開発には直接携わったことがないので、当時のタイトルの感覚で遊べるものを作りたいと思ったことがきっかけでしたね。

――メガドライブで発売することも想定されていたんですか?

古代氏:はい、企画の段階ではカートリッジだけを出す予定でした。2022年の秋にタイトルを開発していることをXにポストしたら、ユーザーの反応が非常によくて、その反応を見られたSUPERDELUXE GAMESさんとLimited Run Gamesさんに、一緒にやりませんかと声をかけていただいたんです。

 弊社単独であればインディーズタイトルとして、メガドライブのカートリッジを出すだけのプランになったと思うんですが、せっかく2社さんから声をかけていただいたので、現行のプラットフォームに移植をして、もっといろんな人に遊んでもらったほうがいいだろうということになりました。

和田氏:最初は半年ぐらいで作ろうって言ってたんですけどね。SNSの反応を見たら、半年で作る内容じゃ怒られそうということで、しっかり時間をかけて作ろうということになったんです。

古代氏:2023年1月に正式に発表をして、翌2024年に発売することも発表していましたからね。実際、その頃にはメインの部分はほぼできていたんですが、現行機で遊べるものにするとなると、グラフィックをさらに凝ったものとしたり、ステージやサウンドを増やしたりして、そういうところに時間がかかってしまいましたね。

――本作の見どころや注目点がありましたら教えてください。

和田氏:当時のメガドライブのROMって容量がそれほど大きくなくて、それがある程度自由に使えるようになって、メガドライブってここまで凄い表現ができるんだっていう夢のような部分と、シューティングゲームの「撃って壊す」というところにおける爽快感は特に大事に作ってきたので、そのあたりは楽しんでいただきたいところです。

 あとはシューティングゲームって上手い人と苦手な人の差が大きいジャンルだと思うので、そこをできるだけ吸収できるシステムを入れることは、自分としてはかなり気を使って作ってきたつもりです。

――ということは難易度の幅は広めに取ってあるということですか?

和田氏:幅は広いと思います。最高の難易度の「シューター」は開発中の本作のアーケード版の最も難しい内容に匹敵する歯ごたえがありますし、逆に「イージー」はシューティングが苦手な人でも進められる難しさに設定しつつ、シールドを時間で回復するシステムを採用することで、ダメージは受けるけどミスにならないというバランスで、退屈せずに楽しんでいただけると思います。

――今の時代に2Dのシューティングゲームを作るうえで、こだわったところや気を付けたところはどこでしょう。

和田氏:古代からは「ストーリー性を感じる内容にしたい」という提案があったんですが、それを表現するために、プレイ中に文字がたくさん出てくるとテンポが悪くなって冷めてしまうのではないかという懸念があったので、シューティングシーンには文字は出さないようにして、演出だけでストーリー性を感じられるようにしました。

 ゲームデザイン的な部分で言うと、「アダプテーションポッド」が本作を象徴する要素かもしれません。本作はシューティングゲームとしては特徴的なものをあえて入れず、割とオーソドックスに“好みのアイテムを選んで戦う”というわかりやすいものにしているんです。アダプテーションポッドって、ボスの前に出現して失わないようにクリアすることで自機をパワーアップできるんですが、ゲームに慣れるほど確実に持っていくことができるようになります。そうすると必然的に難易度も下がっていくので、例えば後半のステージなどは初見ではかなり難しく感じたとしても、プレイを重ねてアダプテーションポッドを持ち越すことで自機が強くなって、相対的に難易度が下がってクリアしやすくなるんです。ここに関してはあまりアーケードゲーム的ではないんですが、本作ならではのポイントと言えます。

――4段階の難易度はどのように調整されているんですか?

和田氏:具体的には敵の配置も違いますし、弾の速さなども調整しています。あとはシールドの回復速度とか、ボスの攻撃が変わるとか、かなり細かく手を入れていますね。

――開発で苦労されたところはどこですか?

和田氏:やはり開発がメガドライブベースというところでしょうか。現行機と違ってかけ算割り算が苦手なので、全て足し算引き算と、あとはテーブルというやり方で敵の動きやバランスを作らなくてはならず、システムが組めない部分を手作業で組んでいくところは、楽しくもあり大変なところでした。

 でもそこまでしないと、お客さんを驚かせるようなことができないというのは自分でも分かっていたので、ステージごとに毎回趣向を凝らして、その都度SNSに投稿してお客さんの反応を見ながら作り込んでいましたね。

――SNSの反応が、開発のカギにもなっていたんですね。

和田氏:そうですね、多分ここまで開発中のものをお客さんに見せながら作っていく例はあまりないんじゃないでしょうか。

古代氏:メガドライブを作っていた頃は、そういうことができませんでしたからね。反応がよければこちらも嬉しいですし、同時に期待に応えなければならないという緊張感も出てきますから。

和田氏:SNSは映像先行で出していたけど、その後に出したサウンドを入れた映像に対する反応は、祐三さん的にはどうだったんです?

古代氏:最初に出したのはプロトタイプだけど、その頃から評価はよかったけど、自分では全然納得してなかったね。実は音楽の作り方も、開発の途中でドライバーごと変えているんです。最初のやり方だとメモリをたくさん食ってしまって、和田が考えていた容量の限界を超えてしまったので、どうしたものかと考えていたときに、ちょうどいいツールが見つかって、それを使ってやり直したことによって、内容がガラッと変わって「これだ!」と手応えのあるものができたんですよね。

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――本作の音楽を作るうえでこだわったところはどこですか?

古代氏:こだわりはたくさんあるんですけど、一つ挙げるとすれば効果音が凝っているところでしょうか。メガドライブのFM音源の効果音って結構特徴的で、「メガドラってこういう音だよね」というテンプレみたいな音があるんですよ。今回はそういう音にはしたくなくて、当時先進的だったアーケードゲームのような説得力のある音を目指したんです。メガドライブでそれを再現するのは難しいんですけど、今の進化したツールと潤沢な容量があれば、当時の先進的な音に近い、あるいはそれ以上のものが作れるんですよね。

和田氏:本作はサウンドだけで512KByteのバンクを2つ使っています。512KByteというとMDの4Mビット相当のROMと同じ容量なんです。(笑)

古代氏:今回PCMを使ったボイスでしゃべるところが結構多いんですけど、それでメモリがどんどん減っちゃうので、FMとPSGをいかに上手く効果音に絡められるかが開発の肝でしたね。それにより効果音を鳴らすと曲のチャンネルが欠けてしまうんですが、それが極力分かりにくいよう、作曲の段階から計算して作り込んでいるので、効果音を含めて聴いていただきたいですね。

 最近のゲームミュージックは効果音がちょっと軽視されていることもあるんですが、自分の記憶をたどってみると、ゲームセンターって効果音の塊だったじゃないですか。そういう部分は本作でもきっちり作っていくことは常に考えていましたので、「これぞゲームミュージック」というものに仕上がっていると自負しています。

――最後に本作を楽しみにしているユーザーにメッセージをお願いします。

古代氏:ユーザーの反応を見ると、こういうシューティング待ってたっていう方がかなりいることが分かったんです。シューティングって、撃って避けることに特化したものに集約されている印象があって、かつての「グラディウス」のような遊ぶだけでストーリーを感じさせる作品がほとんどなくなってしまっていて、なんでああいう作品が出てこないんだろうという私の思いをこの「アーシオン」に込めましたので、そこを求めていた人には絶対に遊んでいただきたいですね。

和田氏:先ほどお話しした、シューティングには上手い人と苦手な人の差があるという点について、自分自身もかなり苦手なほうで、そういう自分でも楽しめるゲームを作りたいというのが開発のテーマでもありました。そこに関してはかなり満足いくものができたので、普段シューティングを遊ばない人や、しばらく遊んでない人にもチャレンジしてみてください。

――ありがとうございました。

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