6月5日のNintendo Switch 2発売と同時に、『ニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classics』の配信が始まった。

 『ニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classics』は、「Nintendo Switch Online + 追加パック」加入者のNintendo Switch 2専用サービスで、2001年に任天堂が発売した据え置き型ゲーム機ニンテンドー ゲームキューブ(以下、ゲームキューブ)のゲームソフトが遊べるコレクションタイトルである。

ニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classics [Nintendo Direct | Nintendo Switch 2]

 ゲームキューブソフトのダウンロード配信による復刻は、かねてより直撃世代を中心に熱望されていた。これまでにファミリーコンピュータ(ファミコン)、スーパーファミコン、NINTENDO 64の復刻が続いて、次はゲームキューブの番となっていたためである。しかし、互換性を有していたWiiはまだしも、続くWii U、Nintendo Switchで復刻が実現することはなかった。

 逆に発売時期が同じ携帯ゲーム機のゲームボーイアドバンス、その次のニンテンドーDSに先を越された格好である。やや特殊なパターンだが、復刻という点で見れば、Wiiにも先を越されている(※Wii UでWiiソフトダウンロード版なるものが展開されたため)。

 気がつけば本体の発売から実に24年近く。本当に“満を持して”である。そして、どのようなソフトが復刻されていくのか、今後の展開に注目していたり、「このゲームが来てほしい」との期待を寄せている人も少なくないと思われる。

 筆者もそんな思いを抱く人間のひとりだが……一方で気がかりなこともふたつある。

アップグレード版が存在する名作は、どこまで出すのか?

 ひとつに「アップグレード版の存在するタイトルをどこまで復刻するのか」である。

 実はゲームキューブの名作と言われるタイトルには、後年になってアップグレード版を展開したタイトルが複数存在する。すでに配信が開始されている『ゼルダの伝説 風のタクト』(以下、風のタクト)は、まさにその一例。

『ゼルダの伝説 風のタクトHD』(Wii U)

 2013年、Wii U向けにグラフィック全般の強化に留まらず、オリジナル版で批判のあった部分の改善と遊びやすさの向上を図った『ゼルダの伝説 風のタクトHD』が発売されているのだ。ただし、Wii U以外のゲーム機には発売されておらず、2023年3月をもってダウンロード版の販売も終了したため、2025年現在は新規にプレイするハードルが高まったタイトルとなっている。

 本記事執筆時点では未配信だが、『メトロイドプライム』もそのひとつである。

『メトロイドプライム リマスタード』(Nintendo Switch)『メトロイドプライム リマスタード』(Nintendo Switch)

 グラフィックの強化に加え、操作スタイルの拡充、難易度選択機能の強化などを図った『メトロイドプライム リマスタード』が2023年に発売されている。しかもこちらはNintendo Switch向けのタイトルゆえ、Nintendo Switch 2でもプレイ可能である。

 ほかにも『スーパーマリオサンシャイン』『ピクミン』『ピクミン2』『ペーパーマリオRPG』『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』といったアップグレード版が展開されたタイトルが存在。一部は前述の『メトロイドプライム リマスタード』と同じく、Nintendo Switch 2でもプレイできる。

『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リマスター』ファイナルトレーラー

 また、任天堂以外のメーカーから発売されたタイトルでも『バイオハザード』『バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海』『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』などの例がある。いずれも遊びやすさの向上が図られていたりと、これから初めて遊ぶプレイヤーに最適な作りを特色としている。

 このようなアップグレード版が存在するタイトルは、『ニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classics』でどこまで復刻する見込みなのか? そもそも、この種のタイトルは逆に復刻自体が歓迎されない結果を生んでしまうのでは、と思うのである。

 実際『風のタクト』に関しては、アップグレード版の改善点が著しく多いのもあってか、発表当時には歓迎しない声も見られた。一例として海外メディア「GamesRadar+」は、アップグレード版がWii U以外に展開されていないことへの不満と、オリジナル版復刻への複雑な思いを伝えている。(※1)

 筆者個人もこれから初めて『風のタクト』を遊ぶというなら、アップグレード版を強く推薦するクチである。特に本編後半の構成は一目瞭然なレベルで違うと同時に、遊びやすさの差が大きすぎるためだ。

 そのような実態を踏まえると、アップグレード版の存在するタイトルの復刻は絞り込む必要があるのでは、と思うのだ。特に『風のタクト』や『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』のように、アップグレード版での改善がオリジナル版を上回るほど著しく、Nintendo Switch 2だと遊べない実態があると、歓迎されないことになり得る。

『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセスHD』(Wii U)『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセスHD』(Wii U)

 Nintendo Switch 2で遊べるタイトルにしても、これから初めて遊ぶという新規プレイヤーの視点から見れば、アップグレード版が勝るのはどうしても否定できない。

 なので、ある程度独自の特徴を持ったタイトルに絞っていくのがいいのではと思う。ただ、オリジナルとアップグレード版のふたつを気軽に比較する新しい楽しみ方ができるというメリットもあることから、絶対にしない方がいいとまでは言えないが。

 いずれにしても、すでに『風のタクト』が先行し、次に『スーパーマリオサンシャイン』が控えた状況があるわけだが、ここからどうアップグレード版の存在するタイトルを展開していくのかは純粋に気になるところである。

 なお、『スーパーマリオサンシャイン』はアップグレード版の販売が終了していること、オリジナル版との差異が『風のタクト』ほどでない実態があることからも、復刻はむしろ歓迎される方と言えるだろう。このようなタイトルなら復刻を進めていく意義はあると思うが、そもそも数が少なそうなところが気がかりではある。

復刻が熱望される名作が抱えたテーマソングの版権という壁

 もうひとつは「いまなお復刻されていない名作をどこまで出せるのか」である。

 正直なところ、筆者は一部の名作は『ニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classics』での復刻が望めないと見ている。特に相当厳しそうと見ているのが、カプコンから発売された対戦アクションゲーム『ガチャフォース』。

『ガチャフォース』(ニンテンドーゲームキューブ)『ガチャフォース』(ニンテンドーゲームキューブ)

 200体を超える操作可能なロボット(ガチャボーグ)とぶっ飛んだ個性付け、「スピーディ」のひと言すら生ぬるい激しいバトルシーンで話題を呼んだタイトルである。

 ゲームキューブが現役を終えた後にも何度か再版が行われたほか、『星のカービィ』『大乱闘スマッシュブラザーズ』で知られる桜井政博氏が当時、週刊ファミ通で連載していたコラム(※2)で取り上げて絶賛したなどの逸話を残していることでも知られる。

 筆者個人も当時、どハマりしたほど思い出深い傑作で、復刻を懇願しているのだが……正直、厳しいと見ている。

 なぜなら本編にテーマソングが流れるミッション(演出)がある。しかも、それを作曲したのはアニメ・特撮音楽の巨匠である故・渡辺宙明氏。歌はアニメ、特撮作品の主題歌などを多数歌われてきたシンガーソングライターの高取ヒデアキ氏である。そう、楽曲全般にまつわる権利問題のクリアが復刻上の課題としてのしかかってくるのだ。

『ガチャフォース』(ニンテンドーゲームキューブ)『ガチャフォース』(ニンテンドーゲームキューブ)

 2025年現在、他のファミコン、スーパーファミコン、NINTENDO64の「Nintendo Classics」シリーズでは、同様の演出を採用したタイトルの復刻例が確認されていない。数としては少ないのだが、スーパーファミコンでは『ダウン・ザ・ワールド』『テイルズ オブ ファンタジア』、NINTENDO64では『がんばれゴエモン ネオ桃山幕府の踊り』『がんばれゴエモンでろでろ道中 オバケてんこ盛り』が演出採用の例に該当し、いずれも前身のバーチャルコンソールも復刻されないままとなっている。

 この実態から見ても『ガチャフォース』はおろか、同様に外部の作曲家、歌手を起用した主題歌、テーマソングが流れる演出を持ったタイトルの復刻は厳しい可能性が考えられる。同じカプコンから出たタイトルだと『ロックマンエグゼ トランスミッション』、『ロックマンX コマンドミッション』辺りも厳しいだろう。

 そして意外なことに、任天堂から出たタイトルにもその課題を抱えたタイトルが存在する。『NINTENDO64 Nintendo Classics』でも配信中のロボットアクションゲーム『カスタムロボ』のシリーズ作のひとつ、『カスタムロボ バトルレボリューション』だ。

『カスタムロボ バトルレボリューション』(ニンテンドーゲームキューブ)『カスタムロボ バトルレボリューション』(ニンテンドーゲームキューブ)

 実はこの作品、ボーカルグループ・Dreamが歌う「Identity -prologue-」(avex trax)を主題歌として収録。タイトル画面でほんの少し待機した後に流れるオープニングムービーにおいて使われているのである(さりげなく、任天堂のゲームとしては初の外部アーティスト・レーベルの主題歌を採用した作品でもある)。

 そのため、このゲームも復刻が実現するかは怪しい。しかしながら、他の起用例と異なり、オープニングムービーに主題歌がカットされた別バージョンも収録しているため、そちらに絞り込んだ修正を図ることで復刻できる可能性が残されている。もし、その手が使えるのなら、(異例の形とはいえ)希望はあるかもしれない。

『ドンキーコンガ』(ニンテンドーゲームキューブ)『ドンキーコンガ』(ニンテンドーゲームキューブ)

 ほかにも楽曲の権利絡みでは、ドンキーコングのリズムアクションゲーム『ドンキーコンガ』シリーズ3作も厳しいものになるだろう。逆に『メイド イン ワリオ』シリーズのように、内製のボーカル曲を収録しているタイトルは復刻できるかもしれない。事実、同様の手法で作られたテーマソングを収録した『ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡』が今後のラインナップに入っていることがそれを物語っている。

【テイルズ オブ シンフォニア リマスター】ローンチトレーラー

 逆に外部が絡むタイトルの場合は、すでにリマスター版が発売中の『テイルズ オブ シンフォニア』のように違う方向で出るのが望ましい形になるのだろう。それを踏まえると、特に『ガチャフォース』に関しては希望が持ちにくい。

 任天堂のタイトルにも一部に該当例が存在するとなると、その種のタイトルは除外される可能性は覚悟した方がいいだろう。むしろ、これを機に『ニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classics』以外での復活を望む(声をあげる)のが賢明かもしれない。

復刻するタイトルはどうしても絞り込まれそうだが……希望も多い

 ほかに個別ケースになるが、『ゼルダの伝説 4つの剣+』『NINTENDOパズルコレクション』辺りも、『ニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classics』で出せるか怪しい印象がある。

 前者はゲームボーイアドバンス本体をコントローラ代わりに見立てた操作系の影響で売りであるマルチプレイがほぼプレイ困難となり、ゲームモードのひとつ「ハイラルアドベンチャー」のシングルプレイしか遊べない形になってしまう問題がある。

『NINTENDOパズルコレクション』収録の『ヨッシーのクッキー』(ニンテンドーゲームキューブ)『NINTENDOパズルコレクション』収録の『ヨッシーのクッキー』(ニンテンドーゲームキューブ)

 『NINTENDOパズルコレクション』も、収録タイトルのひとつ『ヨッシーのクッキー』に複雑な版権問題(※3)が存在することから、配信するかは見通せない。実際に2025年のいまも『ヨッシーのクッキー』はファミコン、ゲームボーイ、スーパーファミコンにおいて配信が版権絡みで実現していないことからも、『NINTENDOパズルコレクション』も同様の扱いになる可能性は高いだろう。

 こうして考えてみると、ゲームキューブはほかのファミコン、スーパーファミコン、NINTENDO64などに比べて、タイトルそれぞれに復刻にまつわるジレンマと課題を抱えた状態になっているのが分かる。特に『ガチャフォース』のように、根強い人気を誇る名作が復刻しにくい実態があるのには、復刻を望む側としてはもどかしさを覚えるところだ。

 ただ、ゲームキューブの名作はここまで言及してきたもの以外にもたくさんある。なかでも新作の発売が報じられているアクションレースゲーム『カービィのエアライド』は、これといって版権などの問題を抱えてはいないため、十分に復刻の見込みがあると言える。

カービィのエアライダー [Nintendo Direct | Nintendo Switch 2]

 新作『カービィのエアライダー』の発売に合わせる形で復刻できれば、これ以上ない話題を呼ぶのは間違いないだろう。

 復刻によって再評価のチャンスを得られそうなタイトルもある。『スターフォックスアサルト』は、まさにその一例である。

『スターフォックス アサルト』(ニンテンドーゲームキューブ)『スターフォックス アサルト』(ニンテンドーゲームキューブ)

 オリジナル版当時、プレイヤーからの評価は高い反面、ハードルの高さもあって広まりにくかったマルチプレイが、オンライン対応により多少遊びやすくなる可能性があるのだ。同じようにマルチプレイのハードルが高かったが、オンライン対応で遊びやすくなったゲームボーイアドバンスの『ゼルダの伝説 神々のトライフォース&4つの剣』の例があるだけに、『スターフォックスアサルト』の復刻は非常に注目されるところである。

 すでに今後の配信が確定しているが、『ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡』のようにいまだ復刻の例がなく、中古価格も高騰しているタイトルの復活にも期待がかかるところである。

フロム・ソフトウェア×任天堂がタッグ 『The Duskbloods』発表で思い返すカードアクションRPG『RUNE』の記憶

フロム・ソフトウェアと任天堂との共同販売による完全新作『The Duskbloods』が発表されたが、両者がタッグを組むことはじ…

リアルサウンド テック部

 筆者個人としては、以前のコラムで取り上げたフロム・ソフトウェア開発のカードアクションRPG『RUNE(ルーン)』2作が新作『The Duskbloods』の発売タイミングに合わせて復刻してくれることを強く願っている。

 また、チュンソフト(現スパイク・チュンソフト)が発売したRPG『HOME LAND(ホームランド)』のような知る人ぞ知る作品も可能な限り揃えて、再注目のチャンスが与えられていってくれればと思う(いつか機会があれば、このゲームについても語りたいところ)。

実はゲームキューブオリジナルのMMORPGで、『MOTHER2 ギーグの逆襲』のスタッフも制作に参加した作品でもある『HOME LAND』実はゲームキューブオリジナルのMMORPGで、『MOTHER2 ギーグの逆襲』のスタッフも制作に参加した作品でもある『HOME LAND』

 ともあれ、まだ『ニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classics』は出て間もない。これからどんな風に展開されていくかは未知数だが、なるべく遊べる手段の限られたタイトルを中心に増えていくことを願うばかりである。そして『風のタクト』のように2025年現在、アップグレード版が遊べない状況にあるタイトルにも何らかの救済が取られていくことを。

 ……本音を言えば『ガチャフォース』を本当にどうにかしてほしいのだが。リマスター版を出すといった別の道は切り開けないものなのだろうか。

※1 I played The Legend of Zelda: The Wind Waker on Nintendo Switch 2, but it’s a bittersweet reminder that we’re not getting the game at its best(GamesRadar+)
https://www.gamesradar.com/games/the-legend-of-zelda/i-played-the-legend-of-zelda-the-wind-waker-on-nintendo-switch-2-but-its-a-bittersweet-reminder-that-were-not-getting-the-game-at-its-best/

※2 週刊ファミ通2004年1月23日号掲載「『ガチャフォース』に見る商品像」のこと。後に発売された単行本『桜井政博のゲームについて思うこと』(1巻)の114ページに掲載されている。

※3 『ヨッシーのクッキー』のゲームシステムは正式リリースに至らなかったアーケード向けパズルゲーム『ヘルメティカ』のゲームシステムがベースになっており、その原案を手がけたのがBPS(Blue Planet Software)とホームデータ(現:魔法株式会社)であったことに起因する。

 なお、2003年8月1日にはJ-スカイ(後のボーダフォンライブ、Yahoo!ケータイ)向けのゲーム配信サイト「ゲームマーケット」でジー・モードが『ヘルメティカ』のゲームシステムを採用したパズルゲーム『INARO』を配信。クレジットには前述のホームデータの社名が記されている。

・当時のニュース(ジー・モード、J-スカイ向けゲーム配信サイトにチェスゲームなど:ケータイWatch)
https://k-tai.watch.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/14978.html

・以降、2008年にWiiのバーチャルコンソール向けに配信された(2013年配信終了)『ヨッシーのクッキー』の公式サイトには「INARO Game Concept」のクレジットが記されている。
https://www.nintendo.co.jp/wii/vc/vc_ysc/index.html

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新旧構わず、色んなゲームに手を伸ばしては積みゲーを増やし続ける人。コソコソとゲームライターとしても活動し始めた。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションが大好物。最近、『スプラトゥーン』のジャッジくんが気になって仕方がない。

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