発売以来、SNSなどでは「当たった!」「外れた…」というユーザーの悲喜こもごもが投稿されている「Nintendo Switch 2」。日本だけで220万人の応募が殺到し、争奪戦は過熱気味だ。編集担当者が粛々と抽選に応募し続ける一方で、早々に当選し、発売日に手に入れたゲームジャーナリストの野安ゆきお氏が実機を体験。さらに、今回の人気過熱の理由を分析する。

到着したNintendo  Switchの箱の外観。思ったよりもコンパクトだった

到着したNintendo Switchの箱の外観。思ったよりもコンパクトだった

到着したNintendo Switchの第一印象

 2025年6月5日に発売された任天堂の新ゲーム機「Nintendo Swicth 2」(以下Switch 2)。自宅に届いたときは、「ついに来た」という感覚だったが、実際に自宅リビングのテレビの前にセッティングし終えてみると、「新しいゲーム機を買った」という感覚は薄れ、代わりに「SwitchからSwitch 2への機種変更が無事に完了したぞ」という感覚に包まれた。

 ゲーム機としての性能は大幅に上がった。プレーできるソフトも抜群に面白い。従来のSwitch向けタイトルも、読み込み速度などが向上して、プレー感は快適になっている。

 その一方で、本体は一回り大きくなったものの、形状は全く同じ。これまでSwitchを設置していた場所にSwitch 2を置き換えるように設置しても、リビングの光景はほとんど変わらず、すぐになじんでしまったからだ。

全体的に大きくなっているが、外観はSwitchとほぼ同じ

全体的に大きくなっているが、外観はSwitchとほぼ同じ

 電源を入れたときに表示されるホーム画面も、Switchを踏襲。初期セッティングで「まるごと転送」を選べば、これまで使っていたSwitchからすべてのデータがSwitch 2に移行する。これまで遊んでいたゲームは、引き続きプレーできる(注:まるごと転送を選んでも、データ移行後すぐにプレーできないソフトもある。詳しくは任天堂の公式サイトを確認のこと)。

上の「Nintendo Switch」(初期モデル)と比較すると、「Nintendo Swicth 2」は一回り大きい。だが、ホーム画面は、Switchのものが踏襲されている

上の「Nintendo Switch」(初期モデル)と比較すると、「Nintendo Swicth 2」は一回り大きい。だが、ホーム画面は、Switchのものが踏襲されている

 コントローラー(Joy-Con2)も一回り大きくなったが、握った感触はSwitchのJoy-Conとほぼ同じ。あまりにすんなりと指になじむため、どちらのコントローラーを握っていたのか忘れそうになるほどだ。

 こうして書き出してみると、あらゆる面がSwitchに似ていると実感する。これなら「2」というネーミングも納得だ。これは斬新な新ゲーム機というより、これまでSwitchがあったリビングの雰囲気をそのまま引き継いでくれるゲーム機なのだ。

 実感する唯一の違いといえば、Joy-Con2にマウス機能がついたことくらいか。ゲーム機にパスワードの入力する際の操作などが格段に楽になった。今後、マウス操作を駆使する斬新なゲームが登場したとき、「今までにない新しいゲーム機を手にしている」という感覚が強まっていくのかもしれない。

Joy-Con2はマウス機能を持っている。文字入力が格段に楽になった

Joy-Con2はマウス機能を持っている。文字入力が格段に楽になった

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店頭は穏やか、ネット上は空前の過熱ぶり

 今回、Switch 2の初日分は、任天堂の公式オンラインショップ「My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)」のほか、家電量販店などの店舗大手ショップで販売された。ただし、いずれも事前申し込みが必須の抽選販売。店頭での販売はほぼ行われず、ショップに行列ができることもない。店頭は、極めて落ち着いた初日となった。

 その裏で、オンライン販売は、いずれの店舗も予想を超える申し込みが殺到。Switch 2発表直後の2025年4月4日、任天堂の古川俊太郎社長は「需要を満たせるだけの製品を用意する」と語っていたが、ニンテンドーストアでは厳しい参加条件が付けられたにもかかわらず、日本だけで220万人の応募があり(任天堂公式Xアカウントの投稿より)、高倍率の争奪戦となった。

 2024年4月23日には、任天堂の公式Xアカウントが古川社長のコメントとして「4月24日の当選発表においては、相当数のお客さまが当選しないことが想定されます。(中略)事前に準備をしていたにもかかわらず、みなさまのご期待にお応えできないことを深くお詫びいたします」と発信している。

 2006年の「ニンテンドーDS Lite」の品薄時や、2017年の「Nintendo Switch」の品薄時など、これまでも任天堂はおわびコメントを度々発信しているが、今回のようにゲーム機発売前に出すのは、極めて異例のこと。Switch 2の人気の過熱ぶりは、任天堂の想定を大きく超えたようだ。

 発売日が過ぎても「抽選に外れた」という嘆きの声がネット上では目立っている。任天堂は、当期のSwitch 2の予想販売台数を1500万台としているが、これだけの数量が市場に投入されても、しばらくは品薄状態が続きそうだ。

マニア層以外も争奪戦に参加したワケ

 最後に、この人気の過熱ぶりについて、現時点時点での簡単な分析をしておこう。

 「ゲーム機は勢いのビジネス」という金言がある。これは任天堂の岩田聡元社長(故人)の2015年の株主総会でのコメント「プラットフォームのビジネスには勢いのビジネスという側面があり~」をベースにしたもの。ゲームビジネスで成功するには、なにより「勢い」が大事だという本質を突く言葉として語り継がれている。

 とすれば、今回のSwitch 2の人気の過熱ぶりは、まさしく「勢い」としか表現できないものであり、Switch 2は、成功への道を順調に歩み出したと分析してよさそうだ。

 Switch 2と同時発売の新規タイトルは『マリオカート ワールド』くらいのもの。今すぐSwitch 2を買わなければプレーできないというゲームはほぼないという状況だ。『マリオカート ワールド』はシリーズ前作が6820万本売れた人気シリーズの最新作であり、熱心なファンがそれを求めたという側面はあるだろうが、この過熱ぶりを説明するにはこれだけでは不十分だろう。

コントローラーの形のSwitchのまま。握ってみると、手にしっくりなじむ

コントローラーの形のSwitchのまま。握ってみると、手にしっくりなじむ

 筆者の周囲に話を聞いても、「このソフトが遊びたいから応募した!」という声はさほど多くなかった。みんな「なんとなく欲しい」「せっかくの機会だから」といった気軽な動機で抽選に応募していた。

 つまり、それらの人は、「スマートフォンの新機種が出るなら機種変更してみようか」くらいの気分で、リビングにあるSwitchをSwitch 2に切り替えようと考え、抽選へ応募していたということだ。

 スマホは毎年のように新機種が出るため機種変更のタイミングは分散されるが、Switch 2は8年ぶりの新機種だ。そのため膨大な数の人が一斉に抽選に参加し、当選倍率が上昇した。

 このような気軽な機種変更気分がゲームのマニア層以外にも広まって発売前に「勢い」がついた事例は、ゲームの歴史上、初かもしれない。Switch 2は、かつてないパターンで幅広く人気を加速させてロケットスタートを遂げる、初めてのゲーム機になりそうな気配である。

背面にあるスタンドを立てると自立する。持ち運んで、外出先でもプレーできる携帯ゲームでもあることも、幅広い層からの人気の理由でもある

背面にあるスタンドを立てると自立する。持ち運んで、外出先でもプレーできる携帯ゲームでもあることも、幅広い層からの人気の理由でもある

(写真/ヒロタコウキ、編集/平野亜矢)

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店頭は穏やか、ネット上は空前の過熱ぶり

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