任天堂の家庭用ゲーム機「スイッチ2」が、きょう発売する。実に約8年ぶりとなる新型機に世界中のゲーマーが色めき立ち、家電量販店やゲームショップでは、すでに争奪戦の様相を呈している。スイッチ狂騒曲はしばらく収まりそうにない。
スイッチ2では、内臓マイクや別売りカメラで音声・ビデオチャットが可能になったほか、新設計のコントローラーはマウスのような使い方もできる。ディスプレーの解像度を上げ、家庭用テレビでも高精細な映像が楽しめる。

体験会でスイッチ2を楽しむ参加者(4月、東京都)
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ZEN大学産業史研究センターゲーム担当の浜村弘一副所長は、「今までと違った客層が集まる可能性がある」と指摘する。パソコン(PC)のハイエンドゲームを展開しやすいスペックになるなど自社タイトル重視からサードパーティーに門戸を開いた印象があり、「任天堂が静観してきた領域へのアプローチをしてきた」と話す。
家庭用ゲーム機メーカーは、PCやスマートフォンなど異なるプラットフォーム間でもオンライン対戦ができるクロスプレイ対応を進めてきた。ゲーム人口の拡大や収益性の向上につながるメリットがある。米マイクロソフトやソニーグループが先行しているが、スイッチ2ではスペックが上がることでクロスプレイ対応が進みそうだ。
任天堂はスイッチ2の今期ハード販売について、初代スイッチの約10カ月間の販売台数と同水準となる1500万台を計画する。17年3月の発売以来1億5200万台以上を売り上げた初代スイッチの勢いに続きたい考えだ。
買い替え需要だけでなく、新たなファンを獲得するために、まずはハードの普及が欠かせない。ただ3日に実施された任天堂公式オンラインストアの3回目の抽選でも、SNS上には落選したという書き込みが相次ぐ。品薄解消には一定の時間を要しそうだ。
米国では抽選会も
スイッチ2は国内専用モデルが税込み4万9980円で販売される一方、米国向けは449.99ドルと円換算で1万5000円近く高く設定された。
先代機と比べた価格の引き上げに米国のファンからは不満も漏れるが、いまのところ需要は堅調だ。全米のゲームストップの店舗では4月、ゲーマーらが予約注文のために列をなした。ベストバイなどでは発売前、供給台数に限りあるものの各店舗でスイッチ2を販売すると顧客に通知した。
任天堂はニューヨークとサンフランシスコの直営店舗で抽選会を行った。購入者1人につき1台までだが、当選した顧客は6月16日までの受け取りが可能だ。このほかディスカウント百貨店などを展開するターゲットは、オンライン販売を6日まで行わないため、店舗に直接足を運んだ顧客は運が良ければ購入できるかもしれない。
一般的に電子機器はほかの製品より利益率が低い。それでも小売業者がスイッチ2を販売するのは、顧客が利益率の高いゲームソフトや周辺機器を購入することに期待するためだ。
ブルームバーグ・インテリジェンスの小売りアナリスト、リンジー・ダッチ氏は、電子機器の需要喚起に必要なのはこうした新製品の登場だと述べる。普段ならアマゾンでしか買い物しないような客でも、深夜開店のお祭りのようなイベントでしか買えないとなれば、足を運ばざるを得ないからだ。
米関税政策に注視
米関税政策の影響に対する警戒感もある。ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、ネイサン・ナイドゥ氏は、米国の関税政策次第では販売価格が約590ドルになる可能性を指摘しており、価格上昇が需要を冷え込ませる恐れもある。
ゲームコンサルタント、カンタンゲームスのセルカン・トト代表は、「スイッチ2は任天堂のすべてであり失敗という選択肢はない」と語る。新型機は同社のプラットフォームとしての勢いと将来への自信を生み出すためにも強力なデビューを果たす必要があるという。
国内の販売では転売防止の工夫も話題になった。フリーマーケットサイトなどに不正出品される問題に対処するため、メルカリやLINEヤフー、楽天グループらは任天堂に協力し、違反した出品の削除を行うなど厳しい対応をとる。
