Acerは、5月20日から台湾・台北市で開催されたCOMPUTEX 2025に参加し、展示会場などにブースを出し、報道関係者向けの展示を行なうなどして新製品を展示した。

 それに並行して、同社は同社本社(台湾新北市汐止区)にあるPC設計スタジオとなる「Acer Design Studio」を公開し、ノートPCのデザインプロセスなどについて説明を行なった。

Acer Predator 21XなどのゲーミングノートPCが開発されたAcer Design Studio

 Acerは1976年にスタン・シー氏により台湾で創業された。コンピューターボードなどを設計して販売するメーカーとしてスタートし、当初は日米ブランドのODM生産を行なうメーカーとして力をつけた(後にODM部門はWhistronとして2001年に独立している)。

 現在のAcerは、ノートPCやゲーミングPC、モニターなどを販売する総合PCメーカーで、Windows PCの市場シェアではトップ5の一画を占める存在だ。近年のAcerは、PCメーカー一本足打法からの脱却を図っており、ドライヤーや空気清浄機、自転車などのIoTに進出し事業の内数十パーセントを占めるなど成長事業になっている。

 だが、依然としてAcerにとってPC事業が重要なのは言うまでもない。近年のAcerはプレミアムモバイルPC(Swiftシリーズ)、ゲーミングPC(Predatorシリーズなど)に注力しており、特にゲーミングPCはユニークな製品に力を入れている。そうしたゲーミングPCの開発に、Acer Design Studioは活用されているという。

 たとえば、世界初の湾曲液晶搭載ゲーミングノートPCとして話題を呼んだ「Acer Predator 21X」(2016年のIFAで発表され、300台限定で販売された21型歪曲ディスプレイを搭載したゲーミングノートPC)の開発も、Acer Design Studioで行なわれたと説明された。

 Acer Design Studioには、ユーザーを招待してインタビューを行なう機能などが用意されており、色やデザイン(ケースの形)などユーザーの好みが反映される箇所に関して聞き取り調査が行なわれる。また、競合他社の製品の分析や、ユーザーへの聞き取り調査なども行なわれ、それがPredatorシリーズへのフィードバックにつなげられている。

冷却ファンの羽として採用されているAeroBlade、世代ごとに2桁の風量アップを実現

 Acer Design Studioは、AcerのノートPCを開発するエンジニアが、ノートPCの素材やデザインを決めたりする時にも活用される。エンジニアがこのAcer Design Studioに集まって、デザイン案からよいものを決めたり、複数の素材の中からノートPCに適したものを選んだりする。

 近年のAcerのゲーミングノートPCに採用されている、冷却ファン(AeroBlade)の設計についてもこのAcer Design Studioが利用され、より冷えるファンブレード(羽のこと)の形状や素材などが検討されている。

 現在の製品に利用されているAeroBladeは、各世代につき2桁の風量向上が実現されている。現在の第6世代では素材が金属になり、より薄型化が実現されている。Acerのエンジニアによれば0.05mmの薄さが実現されており、同じ強度を実現しながら薄型になることで、フィンの数を増やしたりなどが可能になっている。ただし、その分重量が増えることになるので、モバイル製品には採用せず、重量がそれほど問題にならないゲーミングノートPCに採用しているということだった。

AcerのWi-Fiルーターは日本でも販売される可能性。NanoSIM/eSIM/vSIMの3つに対応

 このほか、AcerのPC事業や通信機器事業の事業部長、Acer Gadget(指輪デバイスなどの新しい形状の製品を開発する子会社)社長といった、Acer製品部門のトップが集まった質疑応答などが行なわれた。

 この中でAcer 通信事業部 事業部長 エリック・イェル氏は、先日発表したモバイルWi-Fiルーターを紹介した。「Acer Connect M4 5G」と呼ばれるこのモバイルWi-Fiルーターは、5G/LTE/3Gに対応し、Wi-FiはWi-Fi 6に対応。NanoSIM、eSIM、そして仮想SIM(仮想SIM事業者SIMOによるサービス)の3つを利用可能で、顧客のニーズによって好きなSIMを利用することができる。

 さらに、MediaTekのSoCに3GBメモリ、2GBストレージという、モバイルWi-Fiルーターとしては豪華なファームウェアになっており、OSはAndroid 12ベースになっていて将来の拡張が可能になっている。

 サイズは140×86×10.05mm、300g以下とやや重量は気になるところだが、日本でも販売することが検討されているという。最近日本の通信事業者からWi-Fiルーターが発売されることが減っており、eSIMに対応したWi-Fiルーターの選択肢はとても少ないため、こうした製品が販売される可能性があることはWi-Fiルーターを必要とするモバイルノートPCユーザーにとっては朗報と言える。

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