Blender Studioは5月20日、ゲーム制作プロジェクトの第2弾である『DogWalk』のアーリーアクセス版をサイト上で公開した。Blender自体がゲームを作る取組において、Godot Engineが採用されている。

『DogWalk』は飼い犬「チョコメル」を操作して飼い主の子供「ピンダ」と一緒に雪だるまを作るために冬の森を冒険する小規模なアドベンチャーゲームだ。キャラクターやオブジェクトはペーパークラフトをベースにデザインされ、フィールドの特定のポイントでアニメーションイベントがシームレスに発生するのが特徴になっている。

このゲームの大部分は、Blender上で制作されたという。Blenderはオープンソースな統合的映像制作ソフトウェアで、3DCG動画や手書きアニメーションの制作、3DCGモデリング、VFX向けのデジタル合成などのさまざまな機能を有している。無償であることからアマチュア層に広く使われており、近年では「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」の制作など商業アニメの制作スタジオでの利用も行われてきている。

『DogWalk』を開発したBlender Studioは、Blenderの発展に貢献することを目的としたBlender公式の映像制作スタジオ。これまでにいくつもの映像作品で実績を残してきた。2008年には初のゲーム作品として『Yo Frankie』を公開している。この作品は当時Blenderに内蔵されていたBlender Game Engineを使って制作され、同エンジンの開発やテストに大きく貢献した。しかし現在のBlenderからはBlender Game Engineは削除されている。

今回、同スタジオゲーム第2弾である『DogWalk』の制作にあたっては、オープソースのゲームエンジンであるGodot Engineが使用された。Godot Engineは、PC/モバイル/Web向けゲームおよびアプリを制作できる2D/3Dゲームエンジンだ。現在はオープンソースとして提供。ユーザーは完全無料で利用できる。同ゲームエンジンの開発はコミュニティ主導でおこなわれ、かかるコストは寄付によって賄われている。

『DogWalk』においてBlender StudioがGodot Engine を採用したのは同スタジオがオープンソースのツールとソフトウェアのみを利用するという理念からだ。本作ではBlender StudioとGodot Engine プロジェクトが協力して制作を行った。

もともとGodot EngineはBlenderで作られた.Blendファイルの読み込み機能が標準で搭載されている。しかし多くの場合データが3Dモデルの共通フォーマットの一つであるglTF(GL Transmission Format)という形式に一度変換する必要があり、その際に不要なデータが生成されてデータの更新プロセスが煩雑になる等の問題があった。またGodotの利用者のほとんどが、Blenderやその他のソフトウェアで作成した3DモデルをGodotエディタ内で組み立ててレベルデザインを行っているという。そこでBlender Studioは『DogWalk』の制作において可能な限りBlender内でゲーム制作を行うことを目指し、それに必要なカスタムツールが制作され使用された。

Blender Studioは、2025年に多くのプロジェクトの公開を控えており、『DogWalk』は小規模なゲームとして企画されていた。結果的にはゲーム制作としては非常に短い4か月という開発期間で公開されることになった。

現在『DogWalk』はBlender Studioの公式サイトにおいてサブスクリプション会員限定で入手可能だ。今後数ヶ月かけてさまざまなバグやパフォーマンスの様々な問題の解決を目指しており、十分な完成度に達し次第、正式リリースを行って公式サイトやSteamでの無料公開を予定しているという。

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