【写真】盛り上がりを見せた『EVO Japan 2025』の様子

 Evolution Championship Series(略称:EVO)は例年アメリカで開催されている最も長い歴史を持つ格闘ゲーム大会だ。そしてその理念を受け継ぎ日本で開催されている『EVO Japan』は、2018年から6回目の開催を数え、2025年の今年は国内史上最大規模ともいえる格闘ゲーム大会となった。

 本記事では『EVO Japan 2025』の現地の様子や競技結果、そしてさらなる成長を遂げたEVO Japanの姿をお伝えしたい。

■3日間で3万人以上が来場、1万人弱の選手が参加、同接視聴者数10万人超

 『EVO Japan 2025』では以下の7つの格闘ゲームをメイントーナメントとした大会が開催され、出場選手は延べエントリー数で9,875 人と過去最多となった。

【メイントーナメント種目】

1 on 1(個人戦)
『グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-』
『GUILTY GEAR -STRIVE-』
『THE KING OF FIGHTERS XV』
『STREET FIGHTER 6』
『TEKKEN 8』

5 on 5(チーム戦)
『STREET FIGHTER III 3rd STRIKE: Fight for the Future』
『Virtua Fighter 5 R.E.V.O. 』

※EVO Japan公式サイト掲載順

 上記以外に70以上のコミュニティ主催によるサイドイベントやゲームメーカーによる大会も開催され、観客を含む来場者は3日間で過去最多の3万人超えとなった。

 昨年開催の有明GYM-EXから2倍近い広さの会場となったにもかかわらず、1~2日目の対戦スペースや3日目の観客スペースは立すいの余地がないほどの来場者であふれていた。

 また筆者調べだが、3日目の『STREET FIGHTER 6』決勝の時点で大会配信におけるおおよその最大同時接続数は以下のとおりで、合わせて10万人以上の視聴者が観戦していた。

【YouTube】
メインチャンネル:4.5万人
公式ウォッチパーティ:2.7万人
英語チャンネル:1万人

【Twitch】
メインチャンネル:5000人
公式ウォッチパーティ:2000人
英語チャンネル:2.5万人
※fps_shaka(ストリーマー 釈迦氏によるウォッチパーティ):5万人

■世界の競技シーンにつながる『EVO Japan 2025』

 EVO Japanは数多くの格闘ゲーム大会が集結した総合イベントであり、ゲームメーカー主催による単独大会ではない。しかし、メイントーナメントに並ぶ多くのゲームタイトルの競技シーンが、このEVO Japanで開催される大会を世界決勝大会への出場権やランキングポイント獲得対象となるツアーイベントとして位置付けている。

 そして、EVO Japanが世界につながる大会として位置づけられるもう一つの大きな価値は、「The Esports World Cup(EWC)」出場権の獲得にある。

 EWCは2025年7~8月にサウジアラビアで開催される高額賞金大会で、イベント全体の賞金総額は7000万ドル以上だ。格闘ゲームでは『STREET FIGHTER 6』『TEKKEN 8』『FATAL FURY: City of the Wolves』が競技種目となっており、それぞれ賞金総額100万ドルとなっている。

 このようにeスポーツシーンでもEVO Japanは重要視されており、今年は約65カ国から1176人の海外選手がエントリーした。そして格闘ゲームの国際コミュニティイベントとしても認知は広がっており、会場内では多くの外国人の参加者が見受けられた。

■海外選手が席巻する中、日本人選手も活躍

 主要トーナメントでは『STREET FIGHTER 6』では MenaRD選手がEVO Japan2連覇、『TEKKEN 8』ではベテランのKnee選手がEVO通算4度目の優勝など海外選手の活躍が目立った。

 『STREET FIGHTER 6』部門を制したMenaRD選手は、勝利後のインタビューで「何よりも自分自身を信じ続けることが、勝ちへ導いてくれることだと確信しました」と語り、最後には格闘ゲーム界のレジェンドであるウメハラ選手との対戦を熱望した。

 『TEKKEN 8』部門を制したKnee選手は今年で40歳となるベテラン選手でありTEKKEN競技シーンのレジェンドだ。大会後の自身のXで、昨年の不振に苦しみながらも「just keep going(ただ続けること)」が答えだったと語った。

 海外選手の活躍はまさにEVO Japanが世界規模のイベントであることの証明でもあるが、そのなかでも奮闘した日本人選手を紹介したい。

 『グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-(GBVSR)』では傘兎選手が優勝、自身初の大規模大会優勝を遂げた。格闘ゲーム歴は20年以上と長く、前作の『グランブルーファンタジーヴァーサス』リリース当初からキャラクター「フェリ」を使い続けついに初優勝を果たした。

 『TEKKEN 8』では、強豪パキスタンの選手たちが国際事情で来日できずTOP8のほとんどが韓国人選手で占められた中、PINYA選手が4位入賞。日本人最高順位と共にEWC出場権も獲得した。

 『STREET FIGHTER 6』ではTOP8に5人の日本人選手が残り、優勝したドミニカ共和国のMenaRD選手に続いたのが、日本のりゅうきち選手、こばやん選手だった。

 りゅうきち選手は昨年の『EVO Japan 2024』でもMenaRD選手に善戦の上で4位に入賞。今年も敗れた相手はMenaRD選手のみで、実力とEVO Japanに対する相性の良さを示して見せた。MenaRD選手も優勝者インタビューで「りゅうきち選手との初戦が一番苦しかった」と語っており、今後のCapcom Pro TourやEWC、STREET FIGHTER LEAGUE JPでの活躍が期待される。

 こばやん選手はキャラクター「ザンギエフ」をゲームリリース当初から使用しており、「第5期 TOPANGAチャンピオンシップ(2024年)」で多くの強豪選手を相手に優勝を飾った若手選手だ。その巨漢とベンチプレス125kgを持ち上げるという筋肉は使用キャラクターを彷彿させ、格闘ゲームファンの人気も上昇しSTREET FIGHTER LEAGUE JPへの参加も決定している。

『STREET FIGHTER 6』部門で3位のこばやん選手。試合中の鬼気迫る表情や試合後の喜怒哀楽など多くのファンを魅了した(写真はこばやん選手所属のA.M.G_Answer.M.Gaming [公式]Xより引用)

 そしてもう一人、惜しくも9位でTOP8進出とならなかった、にゃんぴ選手にも注目したい。女性プレイヤーで唯一の『STREET FIGHTER 6』部門JeSU公認プロライセンス保有者であり、「Red Bull Kumite 2025」にも招待されMenaRD選手との初戦で3-5と敗れるも健闘したのが記憶に新しい。今回も強豪ネモ選手やナウマン選手も破っての勝ち上がりで、今後のさらなる活躍が期待される。

■EVOラインナップ史上初の「5 on 5」形式が登場

 今回のEVO Japanでもう一つ注目すべき点として、新たに登場した『STREET FIGHTER III 3rd STRIKE』『Virtua Fighter 5 R.E.V.O.』の5 on 5によるチーム戦が挙げられる。

 これまでEVOやEVO Japanではサブイベント的な企画を除いて大会は個人戦で開催されてきた。そこに日本で長年開催されてきたコミュニティ大会「Cooperation Cup」「VFR BEAT-TRIBE CUP」がメイントーナメントとして組み込まれた形になる。

 チーム戦では各チームが5名で編成され、各選手の役割やキャラクター相性も考慮した対戦順が試合の展開に大きな影響を与える。

 これは団体戦が盛んに行われてきた日本ならではのルールであり、先鋒・次鋒・中堅・副将・大将の5名が1先(1試合先取=BO1)による勝ち抜き戦で戦う舞台は多くのドラマを生み出した。

■『EVO Japan 2025』を盛り上げたイベントやブースの数々

 会場内では格闘ゲームに関するデバイスやアパレルの販売、各ゲームメーカーの試遊台やイベントブース、コスプレイベントなど、大会以外でも『EVO Japan 2025』を楽しめる催しがあふれていた。

昨今人気のレバーレスコントローラなど格闘ゲーマーを魅了するデバイスやグッズが販売された

バーチャシリーズが『Virtua Fighter 5 R.E.V.O.』としてメイントーナメントに復活。メーカーもブース出展し「New VIRTUA FIGHTER Project」のプロモーションも行われた

コスプレパレードとコスプレコンテストを開催。格闘ゲームキャラクターに扮したコスプレイヤーたちが会場を華やかに彩った

■主要トーナメント競技結果

FATAL FURY: City of the Wolves
(SNK主催の「餓狼伝説 City of the Wolves SNK公式トーナメント in EVO Japan 2025」)

Winner: KSG | Xiaohai(中国)
2位 : CAG | フェンリっち(日本)
3位 : SS熊本 | ネモ(日本)
4位 : RC | スコア(日本)
5位 : T1 | ZJZ(台湾)
5位 : YG | kubo(日本)
7位 : GG | Xian(シンガポール)
7位 : 金デヴ(日本)

※Xiaohai選手・フェンリっち選手がEWC出場権、Xiaohai選手がSNKWC出場権を獲得。

THE KING OF FIGHTERS XV

Winner: Falcons | ET(台湾)
2位 : Falcons | mok(日本)
3位 : Lacid(日本)
4位 : SANWA NIP | M’(日本)
5位 : もりもっち(日本)
5位 : 少年(日本)
7位 : yg | madamuda2th(韓国)
7位 : RC | SCORE(日本)

※少年選手がSNKWC出場権を獲得。

グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-

Winner: 傘兎 (日本)
2位 : Zangief_Dream (日本)
3位 : しお (日本)
4位 : ひのきの棒 (日本)
5位 : a1r0ke (中国)
5位 : debagame (日本)
7位 : IBUSHIGIN | とろろ (日本)
7位 : OGA | 小雨 (日本)

※傘兎選手がAWT2025-2026 FINALS出場権を獲得。

GUILTY GEAR -STRIVE-

Winner: PAR | Daru_I-No(韓国)
2位 : Ditto | RedDitto(アメリカ)
3位 : IMM Summit (日本)
4位 : ONi | Tiger_Pop (イギリス)
5位 : DRX | poka (日本)
5位 : ZETA | Tyurara (日本)
7位 : EGO | sanakan(韓国)
7位 : TSM | Leffen(スウェーデン)

※Daru_I-No選手がAWT2025-2026 FINALS出場権を獲得。

STREET FIGHTER III 3rd STRIKE -Fight for the Future- EVO Japan 2025 Special Tournament with The 19th Cooperation Cup (5on5)

Winner: 3rd Monster
2位 : ヌキチルドレン
3位 : 破壊神
3位 : オバドラファミリー
5位 : ゲームランドグリーン
5位 : legacy arts
5位 : NEW SUKIYA Club
5位 : ELO JAPAN

Virtua Fighter 5 R.E.V.O. EVO Japan 2025 Special Tournament with The 19th VFR BEAT-TRIBE CUP (5on5)

Winner: 米国病院
2位 : 暴れ馬牧場
3位 : まりも精神後継者
3位 : ヴィラン連合
5位 : さんりお
5位 : 真夜中のサーカス
5位 : 鬼仙
5位 : パイブラプロデュース
9位 : クレイジーやんちゃんず。
9位 : 逃げ切れはせんぞ
9位 : 太鼓茶会
9位 : ビンビン軍団
9位 : モンテ五車星
9位 : オレンジライン
9位 : ファミリー餃子
9位 : ゲームスポットアテナ町田&下北沢

TEKKEN 8

Winner:DRX | Knee(韓国)
2位 : DNF | Mulgold(韓国)
3位 : Mangja(韓国)
4位 : VARREL | PINYA(日本)
5位 : DNF | ULSAN(韓国)
5位 : DNF | Meo-IL(韓国)
7位 : Liquid | Shadow 20z(アメリカ)
7位 : VARREL | Rangchu(韓国)

※Knee選手・Mulgold選手・Mangja選手・PINYA選手がEWC出場権を獲得。

STREET FIGHTER 6

Winner:WBG RB | MenaRD(ドミニカ共和国)
2位 : FAV | Ryukichi(日本)
3位 : SS熊本/A.M.G | kobayan(日本)
4位 : ZETA | Momochi(日本)
5位 : DRX | Leshar(韓国)
5位 : REJECT | Akira(日本)
7位 : Falcons | NL(韓国)
7位 : ZETA | Higuchi(日本)

※MenaRD選手・Ryukichi選手がEWC出場権、MenaRD選手がCapcom Cup 12出場権を獲得。

■EVO Japanの歩んできた道とこれから

 EVO Japanは前回の『EVO Japan 2024』から入場料やトーナメントエントリーを有料にした。そして今年の『EVO Japan 2025』では、ステージに近い着席スペースが確保された有料の「プレミアムエリア」が新たに設けられた。

 EVOはFGC(格闘ゲームコミュニティ)によるFGCのためのイベントといえる。そういったイベントの有料化に不安を感じる声もあったが、蓋を開ければ昨年今年とEVO Japanは多くの参加選手や観客を集め成長を遂げた。もちろんこれには日本を中心とした『STREET FIGHTER 6』の人気が貢献していることは間違いない。

 だがそれ以上に、大規模オフライン大会を円滑に進めるために必要なこととして、有料化などEVO Japanの方針がFGCに受け入れられたという点も大きな要因だろう。今年は運営ボランティアに150名以上の応募があり、運営で300名、技術系も含めると500名近いスタッフがEVO Japanの開催に携わった。

 FPSやMOBAのジャンルにおいて「eスポーツ」はゲーム大会の興行化やビジネス化を指すことが多く、必ずしもそれは間違っていない。だが格闘ゲームにはFGCが培ってきた独自の精神があり、選手、ゲームメーカー、パートナー企業、運営、観客が互いに助け合い作り上げていく文化を持っている。

 そういったeスポーツシーンとFGCは今まさに友好的な関係を築き上げようとしている途上にあり、その一つの象徴としてEVO Japanが挙げられるだろう。

 今後もFGCが支える格闘ゲーム大会として、そして世界的なesportsイベントとしてEVO Japanが成長していくことに期待していきたい。

じく

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