※本レビューではレーティング「CERO Z(18歳以上のみ対象)」の作品を取り上げています。未成年の方は閲覧にご注意ください。
PS4とPS5の過渡期となる2019年4月26日に発売された、オープンワールドのサバイバルアクション『Days Gone』。その約6年後となる2025年4月25日に、同作のリマスター版『Days Gone Remastered』のリリースを迎えました。

オリジナル版は海外レビュー収集サイトmetacriticでメタスコア71点を獲得し、PC(Steam)版では“非常に好評”のタイトルですが、筆者は名前こそ知っていたものの機会を逃し続けて未プレイ。しかし今回、発売元のSIEから本リマスター版のゲームコード提供を受けたため、本記事では難易度「Normal」でストーリーをクリアまでプレイし、本編外モードを含めた上でのレビューをお届けします。

なお、レビューは筆者がオリジナル版未プレイの都合で“今から遊ぶ新規プレイヤーとしての視点”であり、“リマスター前からあった要素も含めて”評価する方針です。ストーリー核心に迫る部分は詳述していないものの、スクリーンショットにはゲーム後半以降のものも含まれているため、ネタバレを避けたい方はご注意ください。

「それでも、生きろ。」オープンワールドサバイバル・アクション『Days Gone』
まず『Days Gone』の概要ですが、舞台は生物を凶暴な「フリーカー」に変貌させる感染パンデミックの発生から2年後、各地で依頼を受け生計を立てているバイカーの「ディーコン・セントジョン(ディーコン)」を主人公に物語が展開。ゲームはミッション形式で進行し、三人称視点のシューター(TPS)を基礎にバイクでの移動やクラフトにステルスなどの要素で構成されたオープンワールドとなっています。

ミッションには様々な種類が用意されており、ストーリー外でも「フリーカー」の巣や大群の排除、野党の拠点制圧などが存在。武器の付け替えに、主人公のスキルやバイクのカスタマイズといった強化要素もあります。

そしてリマスター版となる本作ではオリジナル版の無料DLCはもちろん、ビジュアル面の改善や「大群アサルト」をはじめとする複数の新モードが収録されており、PS4・PC版を購入済みでも有料アップグレードやDLCを通して新要素をプレイ可能です。

派手さはないが手堅い仕上がりのゲームシステム、無難かつ丁寧なストーリー
話題はレビューに移りますが、先にゲーム全体の感想から述べると“整っているが尖ってはいない”。ストーリーからシステムに至るまで、総合的なクオリティは一定の水準を保っており、グラフィックも2025年の新作タイトルにも引けを取らない一方、”このゲームでしか味わえない要素“に欠ける印象です。

ゲームプレイを例に挙げると、公称ジャンル名に「サバイバル」が含まれているものの、空腹度や疲労といった生理的欲求に関するパラメーターも無ければ、回復・攻撃アイテムを作成できる“クラフト”はマップ中に素材が落ちているため、緊張感にはそこまで貢献せず、アイテム所持数制限の延長線上にある程度の役割です。

“ステルス”部分は遮蔽物や茂みに隠れたり、音で敵を誘導したりといった要素があり、他システムも最低限体裁を保つレベルには機能していますが、オリジナル版が2019年発売ということを加味しても、各要素それぞれ特化した既存作品(『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』など)と比べると奥深さで劣るのは否めません。

また、ストーリー面は「フリーカー」の生態設定に個性が見られるものの、主人公「ディーコン」は身近な人々を動機に行動するゆえ、基本的にはヒューマンドラマが中心。キャラクター描写は一貫性がありますが、伏線の貼り方が丁寧すぎるので、予想しやすい展開も所々見られます。

しかし、“駄作か”と問われると間違いなく違うのも本作。システムの個性を追求し過ぎた結果、プレイヤー側にシステムの活用するよう強制するゲームも世の中にはあり、ストーリーに関しても無理やりインパクトを残そうとしない分、説得力があり、登場人物に感情移入しやすくなっています。

個人の好みもありますが、プレイは“当時は斬新だったが今では当たり前になったシステムを搭載した往年の名作”を遊んでいる感覚に近く、目新しさは無くとも手堅い作りと丁寧な演出で余計な事はせず、加点方式でトップにはならずとも、減点方式でも上位に残るような作品であると感じました。

もし気になった点があるとすれば、ゲームテンポの遅さと移動周りの不便さ、そして一部操作性の悪さが挙げられます。例えば筆者のクリア時間は33時間、プレイヤー平均とされる35時間(HowLongToBeatを参照)より少し早めですが、それでも一通りのチュートリアルが終わり遊びの幅が広がったのがプレイ開始から約4時間目、ストーリーが本格的に動き始めるゲーム中盤で14時間目。筆者個人の場合、前者の段階でようやく本作の楽しさが見えてきましたが、短編ゲームであればクリアできるレベルの時間であり、気軽に“とりあえず遊んでみて!”と誰かにオススメするには難しいペースです。

また、ゲームシステムは基本的にカジュアルな作りですが、移動に関してはシビアな調整が見受けられます。本作の移動手段には歩行とバイクが存在するものの、プレイヤーが足で走る際はスタミナを消費。そしてその回復速度は戦闘/非戦闘を問わず非常に遅く、本編内で取得できるスキルでは大きく改善されないため、ゲーム中盤以降では拠点内ですらバイクで移動しないと不便な場面が見られました。

さらに、本作のバイクは単なる乗り物として使えるだけでなく、ファストトラベルや屋外でのセーブ機能も内包していますが、これらはプレイヤーがバイクから少しでも離れると使用不可能になってしまいます。例えば野党の拠点を制圧する際、相手に気づかれないようバイクを外に止めて、拠点に侵入。攻略後にファストトラベルで移動しようとすると、外に止めたバイクの傍まで走っていく手間が発生します。このバイクとプレイヤー間の距離によるファストトラベル使用可否のシビアさは戦闘の発生しない拠点でも同様であり、プレイヤー自身のスタミナの貧弱さも相まって筆者がプレイした中では最もストレスを感じた部分です。

本作は多くのゲームに見られるような、スキルや装備・バイクの強化を通じて“最初不便だった要素がアップグレードを重ねて便利になっていくカタルシス”を味わえますが、移動周りだけはシステムレベルで変わらないため、悪目立ちしたように感じます。

最後に操作性ですが、本作は装備切り替えやクラフトにホイール式のUIを採用しており、武器や回復アイテムを選択する際は円形のメニューを展開。カーソルを使いたい・作りたい装備に合わせて選択できますが、アイテムが増えるにつれホイール式メニューからホイール式メニューをさらに展開する必要が出てきます。普段はそこまで気になりませんが、戦闘時など即座の判断を要する場面ではこの二段式のホイールメニューが誤選択を招きやすく、あまり使い勝手は良くなかった印象です。

メニュー展開中はゲーム時間が遅くなる措置がとられているものの、回復アイテムは使用から回復までにタイムラグがあったり、銃器や投擲武器を使う際は敵を狙う手間があったりと、緊急時は1秒も無駄にしたくない本作でこの仕様は困惑を招きやすいように思いました。

フリーカー集団を相手に無双もできる!?「大群アサルト」―オリジナル版DLCと対極のハードル低めな新モード
今回のリマスター版では、ストーリー本編のクリアタイムを測る「スピードラン」、死亡した際に特定の段階まで進捗が巻き戻る「パーマデス」モードに加え、独立したアーケード風の新モード「大群アサルト」が実装されています。

こちらは「フリーカー」の大群を相手に戦い続けるモードであり、初期装備は常に固定で死んだらやり直し。マップ上からはクラフト素材や武器を見つけることができ、ローグライク風味な仕様となっています。

オリジナル版には無料DLCとして高難度な「チャレンジ」モードが実装されており、そちらにも“「フリーカー」の大群との戦闘”をテーマにしたものが用意されていますが、プレイ感で大きく異なるのが特徴です。

例えば「チャレンジ」はプレイヤー側の初期装備やステータスが絞られており、クリアまでのタイムの短さや「サブチャレンジ」という形で様々な条件を達成してスコアを稼ぐ、競技的な側面があります。

一方、「大群アサルト」は逆にプレイヤーのステータスは強めでクリアの概念が無く、死亡するまでのタイムの長さでスコアが加算され、特定のプレイを要求する「サイドジョブ」はあるものの、無視しても次から次へと発生するため強制感が少なく、カジュアルでも楽しめる仕様です。

また、「チャレンジ」はスコアや「サブチャレンジ」の達成状況に応じて、プレイヤー側に最初からバフを付与できる「パッチ」や「リング」を解禁できますが、逆に言えば達成できなければバフは一切利用不可能。“バフで「チャレンジ」の難度を下げるには、「チャレンジ」をクリアしなければいけない”という状況で、一定以下の技量のプレイヤーには厳しめの仕様でした。

対する「大群アサルト」ではレベル制が採用されており、多少でもスコアを獲得できていればモード終了時に経験値として加算。レベルがアップすれば最終スコア量と引き換えにバフを獲得、またはデバフを課す代わりにスコアを上昇させる「モディファイア」などを解禁できるため、遊び続けていればいくらかは難度を緩和させられます。「大群アサルト」でも“一定以上のスコアを獲得しなければ遊べるマップを解禁できない”仕様はありますが、前述のシステムも相まってライト層でも達成のハードルは低めと言えるでしょう。

しかしどちらが上かという話では無く、バイクでのタイムアタックや、ご機嫌な洋楽をバックに生存者をカートで目的地に送るクレイジーなタクシー風味のミッションなど、「チャレンジ」には戦闘以外のものも存在。上を目指していくコア向けの「チャレンジ」、幅広い層が楽しめる「大群アサルト」で両者とも別方向から本編とは違った遊び方を提供してくれるモードとなっています。

おわりに
これで『Days Gone Remastered』のレビューは以上となります。改めて2025年に新規ユーザーである筆者が本作を遊んだ感想を述べると、序盤は各要素の既視感やスローな展開に戸惑いましたが、システムを理解し、自身の中でゲームプレイのルーティーンを確立した後は、ミッションの消化や散策も楽しくなっていきました。

オリジナル版の発売当初はバグもあったようですが、筆者は本リマスター版を最終的に40時間以上プレイしたものの、致命的な不具合はエラーによる強制終了1回と、何故か画面が暗くなったまま戻らなくなるバグが1回と、総合時間を考えると少なめです。

思いのほかクオリティが高く、充実した時間を送れましたが、当時遊んだ人の多くが絶賛するのもわかる一方、PVや公式ページの情報だけでは本作のセールスポイントや楽しさがわかりにくく、2025年のいま、他タイトルを押しのけてまで積極的に手に取る人がどれだけいるのだろうか…と思ってしまう気持ちも存在。

仮に本作をオススメとするなら、 “ゾンビ”、“ポストアポカリプス”、“オープンワールド”といったジャンルそれ自体に強い興味があり、堅実なクオリティを求める方に遊んでみて欲しい一作です。

{“@context”:”https://schema.org”,”@type”:”Review”,”@id”:”#review”,”itemReviewed”:{“@type”:”VideoGame”,”name”:”Days Gone Remastered”,”gamePlatform”:”PS5″},”datePublished”:”2025-05-09″,”author”:{“@type”:”Person”,”name”:”ケシノ”},”reviewRating”:{“@type”:”Rating”,”ratingValue”:”8″,”bestRating”:”10″,”worstRating”:”1″},”reviewBody”:”『Days Gone Remastered』は、手堅くまとまっているものの、突出した個性には欠ける作品です。ストーリーは丁寧だが予想しやすい展開で、システムも及第点ながら特化型ゲームには劣ります。しかし、ゲームとしての完成度は高く、ヒューマンドラマに感情移入しやすい点が魅力です。長所は、安定したクオリティと丁寧な演出で、加点方式で評価されるような作り。短所は、ゲームテンポの遅さ、移動の不便さ、一部操作性の悪さです。新規モード「大群アサルト」はカジュアルに楽しめます。\n”}

「Game*Sparkレビュー」ではハードコアゲーマーなライターから読者に向けて、オリジナルレビューをお届けします。対象となるタイトルはAAAからインディーまで、ジャンルやプラットフォームを問わず「ハードコアゲーマーのアンテナが反応するゲーム」です。

このレビューでは、10段階評価をベースに「良い点」「悪い点」を挙げながら総評を下します。0点から3点は「難アリ/オススメできない」、4点から6点は「ふつう/そこそこオススメ」、7点から10点は「とても面白い/とてもオススメできる」に当ります。「プレイレポート」として公開している記事では、本企画と同様の評価を付けません。また、記事の性質上、ストーリーなどの「ネタバレ」を含む場合がありますので、閲覧の際はご留意ください。

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