NetEase Gamesは、マルチプレイオープンワールドサバイバルゲーム『Once Human』のスマートフォン版(iOS/Android)を4月24日に配信開始した。

 これに先駆けて、スマートフォン版のメディア向け先行体験会が開催された。また当日は6月ごろに実装予定の新シナリオ「永遠の長夢(仮称)」の試遊もできたため、そちらの模様も合わせてお届けしよう。

 『Once Human』は、同社独自のNeoxエンジンを用いて開発されたTPSスタイルのオープンワールドゲーム。いわゆるゾンビゲームをアレンジ&発展させた「スーパーナチュラル(怪異現象)」をテーマとし、魅力的な世界観とアートワークのなかに、PvPやPvE、サバイバルや建築・クラフト要素などさまざまな楽しみが用意されている。

 そんな本作の目玉のひとつである広大なマップは、スマホ版においても制限なく探索可能。実寸換算で16km×16kmにも及ぶオープンワールドを、手のひらサイズの端末で駆け回ることができる。

 PC版とのクロスプレイに対応するほか、現在開発中の各種コンソール版とのクロスプレイにも対応予定。従来のPC版ユーザーにとっても、出先からちょっとした作業をしたいときなどにスマホ版の存在はありがたいはずだ。

 また本作では複数のシナリオが用意されており、選択したシナリオによってルール(PvP/PvE)、マップ、目標、出現するモンスター、素材、利用できるコンテンツなどが大きく変化することも魅力のひとつ。各シナリオではサーバー開放から一定日数が経過するごとにステージ(段階)が進行し、それに伴いアクセス可能なコンテンツも増えていく。

 そしてシナリオ終了を迎えた時点で、一部の引き継ぎ要素とともに新たなシナリオ(が開始される新サーバー)へと移行し、任意のシナリオをイチから探索&冒険することが可能。つまりシーズン制が採用されており、これによってプレイヤー間の公平性をある程度担保したうえでさまざまなシナリオを楽しめるようになっている。

 また、今年3月13日に「永続サーバー」機能の実装により、プレイヤーはオリジナルのサーバーに留まるか、新たなシナリオに移行するかを任意に選択できるようになった。 

 30日以上ログインしていないプレイヤーは「エターナルランド」へ自動移動されるが、新たなシナリオがスタートするタイミングで復帰できる仕組みが導入されたとのこと。

 今回の体験会では、まず2025年内にリリース予定の「コードネーム:デビエーション」に関する情報が公開された。こちらは本作のペット要素にして収集要素である「デビエーション」にフォーカスした内容になっており、彼らを育成したり、家具などと融合することで強力な「デビエーション」を生み出せるようになるうえ、育てた「デビエーション」を率いて他のプレイヤーと戦わせることも可能となるようだ。

 続いて、「コードネーム:カタルシス」こと「永遠の長夢」(仮称)の紹介および先行体験も実施に。こちらは「夢核(ドリームコア)」を世界観のコンセプトとしており、白昼夢あるいは悪夢のような光景がワールドを侵食。プレイヤーたちがそれに対抗していくストーリーになっているという。

 マップ上には「ドリームエリア」が出現し、プレイヤーにも「異化ステータス」という新たなパラメーターが登場。ワールドそのものへの侵食と各個人の侵食の両面に気を配る必要があるほか、最終的なワールドの侵食状況に応じて異なる結末を迎えるという、本作初のマルチエンディングシナリオになっていることも明かされた。

 ここからは、スマホ版と新シナリオ「永遠の長夢」の実機によるプレイフィールを紹介していきたい。まずはスマホ版に関して、今回はPvPシナリオ「分かれ道」を用いて少人数の対人戦をプレイすることができた。

 移動操作はバーチャルパッドで、射撃やジャンプなどの操作は画面右側に配置されたボタンをタップするオーソドックスな形式。スマホ向けのシューターをプレイしたことがある人なら何ら違和感なく操作できるだろう。リロードや武器の切り換えといった、戦闘中に必要となる操作も直感的にアクセスできるようになっていた印象だ。

 スマホでの動作については各自が使用する端末次第なところもあるかもしれないが、少なくとも貸与された端末においては快適そのもの。本作では「ワンダラー」という、バスに手足が生えたような姿の異形がマップ内を徘徊しているのだが、そうした巨大かつ動く物体に接近しても動作が不安定になったりはしなかった。「ワンダラー」の内部に乗り込んで移動している最中も同様で、このあたりの最適化はバッチリと言えそうだ。

 一方、「永遠の長夢」の試遊はPC版にて実施された。マップ画面を開くとすでに各所に汚染が進んでいる地点がそこかしこに存在し、サーバー内のプレイヤーは協力して汚染を浄化していくことが求められるという。

 汚染された地点の中心部では怪異が次々と出現するゲートのようなものがあり、すべての敵を倒すことでその地点が浄化完了となる。今回の試遊では複数人で火力を集中させることによりあっさりクリアできたが、なかにはドリームエリア内でのみ手に入る植物素材を使って敵を可視化させねばならないといったギミックも存在するようなので、本番環境ではしっかりと準備を整えたうえで挑む必要があるだろう。

 この浄化プロセスが協力要素であることは間違いないのだが、協力要素としては比較的カジュアルな設計となっていた印象。テキスト・ボイスチャットによる情報伝達が求められたり、プレイヤーごとの役割分担が厳密に求められたりすることはなさそうだったので、突発的に始まった異形との戦闘に助太刀する/されるといった遊びや、それによる「ありがとう、助かったよ!」的な一期一会のコミュニケーションも楽しめそうな予感がした。

 悪夢の侵食を遠ざけて世界に平和を取り戻すことができるのか、それとも侵食され尽くして覚めない悪夢のなかをさまようことになるのかはプレイヤーたちの団結力次第。正式リリースの際には、ぜひ最後までシナリオをプレイしてその結末を確かめてみてほしい。

 最後に、『Once Human』のプロデューサーを務める呉迪氏と、「バイオハザード」「デビルメイクライ」「ドラゴンズドグマ」シリーズなどを手掛けたゲームクリエイター・小林裕幸氏(現・GPTRACK50代表)による対談の模様を一部抜粋して紹介し、本稿の結びとしたい。

 『Once Human』のスマホ版リリースを記念して実現した本対談。呉迪氏と小林氏それぞれのゲームデザインや「恐怖体験」に対する考えかたといった、気になる話題についても語られているので、ぜひチェックしてほしい。

『Once Human』プロデューサー・呉迪氏

呉迪(以下、呉):伝説的なゲームプロデューサーである小林さんと対談できることを大変光栄に思います。私自身も『バイオハザード』や『ドラゴンズドグマ』などの名作の強烈なファンです。本日の対談でゲームデザインや開発経験に関する知識や考えを多くシェアできればと思います。

小林裕幸(以下、小林):こちらこそ、ありがとうございます。呉さんと楽しく対談できたらと思っていますので、よろしくお願いします。

呉:まずは「バイオハザード」シリーズについてお話を伺いたいと思います。私は大学生のころに初めて『バイオハザード4』を遊びました。そのなかでスペインの村の雰囲気や、恐怖体験などが非常に印象に残りました。小林さんはゲームデザイナーとして、どのようにしてプレイヤーに究極な恐怖体験と雰囲気を提供していたのでしょうか。

小林:やはりシリーズを長くやってきて、ユーザーのみなさんの“ゾンビへの慣れ”がありました。そこで「ガナード」という、見た目は人だけれどもゾンビではない新たな敵を出したことで、新たな恐怖体験をユーザーのみなさんに提供できたと思っています。

呉:『Once Human』の開発のなかでも、「新鮮な恐怖体験」を提供する必要性を強く感じていました。そこで『Once Human』では、「日常の中の異常」を用いて恐怖感を作ることに取り組んでいます。

 私たちが目指しているのは、プレイヤーの日常生活で見慣れた要素が突然変異を起こしている、そんな感覚です。しかしそれらは依然として、もともとの生活習慣やルールに従って動いている──というような。

 こうした私たちの取り組みについて、ぜひ小林さんからご意見を伺いたいです。

小林:映像でアートデザインやモンスターのデザインを拝見しましたが、個性的なものが多くあり、僕自身もワクワクしましたし、ユーザーのみなさんもワクワクするだろうなと感じました。

 いったい、どのようなプロセスでこれらのデザインを生み出したかというのを、逆に教えていただきたいです。

呉:私たちのデザインにおいて非常に重要なポイントのひとつは、日常の要素とモンスターの行動を組み合わせたときに、それらに関連する「印象」をどう拡張・強調していくか、ということです。

 たとえば、伝統的な意味でのエリートサラリーマンや企業経営者といった存在が変異したら、どんな姿になるのか?という発想を出発点にした場合、彼らの「サラリーマン的な見た目」や「ブリーフケース」といったアイコンを、変異したブリーフケースと融合させることで、攻撃時に書類や紙幣が噴き出すような演出を加えています。

 ところで小林さんがプロデューサーを務めた『ドラゴンズドグマ』は、オープンワールド系のゲームですよね。どのようにプレイヤーにオープンワールドの没入感を提供したのか、アート面だけでなくゲームプレイ面についてもお伺いしたいです。

小林:オープンワールドは動ける・遊べるエリアが広まりますが、 “ただ移動しているだけ”ではおもしろくないので、そこで何をさせるかということを入念に考えて設計をしました。

呉:オープンワールドゲームでは、プレイヤー自身が探索し、目標を見つけていくことが大きな要素になると思います。小林さんは、オープンワールドゲームにおいて、プレイヤーが「自発的な探索目標」をうまく築いていけるようにするためには、どのように導いていくのが良いとお考えでしょうか。

 いわゆる「ゲームデザイナーに操縦されているような感覚」にならずに、自然と動きたくなるような体験を作るためには、どういった工夫が必要だと思われますか?

小林:やはり、ゲームというものは“やらされて”いるように感じるとおもしろくないですよね。『ドラゴンズドグマ』の場合は、当然ながらストーリーの軸がありながらも、“クエスト”という概念を別軸として用意し、その枠組みのなかを自由に遊んでもらうようにしました。

  逆に『Once Human』では、どのようにオープンワールドを設計しているのでしょうか?

呉:私たちが目指しているのは、より広大な世界の中で、プレイヤーに自由度の高い体験を提供することです。『ドラゴンズドグマ』がプレイヤーに壮大な物語性を持った叙事的なストーリーを届けているのとは少し違って、『Once Human』はあくまで“サバイバルゲーム”として、プレイヤーに多様な生存環境と、それぞれ異なるサバイバルの課題を提示しています。

 つまり、私たちがプレイヤーを動機づける方法は、この世界が直面している数々の問題や困難に対して、それぞれのサバイバル戦略で挑んでいくことを“プレイヤー自身に委ねる”という点にあります。

 最後に、「バイオハザード」というIPがこれだけ長く愛され続けている秘訣について、ぜひ小林さんにお伺いしたいです。まさに私の人生の歩みは、「バイオハザード」とともにあったと言っても過言ではありません。

小林:「バイオハザード」はオンラインゲームでもなければ、運営型タイトルでもありません。 次回作が出るまでにはユーザーのみなさんを年単位でお待たせすることになります。

 「バイオハザード」の場合は、そうした開発期間に漫画や小説、グッズなどを楽しんでもらったり、運良くハリウッド映画にしていただいたりと、さまざまなエンタメで遊んでもらうことによって、結果的に29年も続く作品になったのではないかと思っています。

 『Once Human』としては、IPの長期運営を見据えて計画していることはあるのでしょうか。ぜひ教えてもらえたらうれしいです。

呉:私たちが長期的な運営を目指すうえでまず大切にしているのが「コミュニティ運営」です。『Once Human』はサバイバルゲームという特性上、プレイヤーの自由度が非常に高いため、プレイヤー自身が「この世界の一員であり、仲間である」と感じられるような、活発で自律的なコミュニティを築くことを目指しています。

 そして、私たちのアップデートやイベントの多くは、まさにプレイヤーの声やニーズに基づいて企画・実施しているものです。プレイヤーがどんな物語を体験したいのか、どんなコンテンツを求めているのか──そういった対話と共有こそが、『Once Human』の核にある姿勢だと考えています。

 また、今後は『Once Human』をより多くのプラットフォームで展開していく予定です。4月24日にはモバイル版が全世界に向けてリリースされますし、その後はコンシューマ版の開発・配信も計画しています。

 小林さんはコンシューマゲームのご経験が非常に豊富なプロデューサーでもいらっしゃるので、ぜひ今後、機会があればコンシューマ向けの開発・設計についても、さらに深く意見交換をさせていただけると幸いです。

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山本雄太郎

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フリーライター。スマホ・PC・コンシューマーゲームやeスポーツ関連の記事制作を中心に、プロゲーマー・プロアスリートへのインタビュー、エンタメイベント取材、コーポレートサイトのコンテンツライティングなどを多く手掛ける。宝物はラスベガスで買ったアーケードコントローラー。

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