Redditのゲーム開発系コミュニティr/gamedevにて、あるベテラン業界人が唱える「ゲーム開発における42の鉄則」が紹介され、話題を博している。共感を呼ぶ鉄則もあれば反論が投じられるものもあり、議論が賑わっているようだ。
今回投じられた「ゲーム開発における42の鉄則(The 42 Immutable Laws of Gamedev)」は、Paul Kilduff-Taylor氏が今年1月にブログ記事にて公開したもの。同氏はパブリッシャーのMode 7にて20年以上CEOを務めてきた業界のベテランだ。そんなPaul氏は42の鉄則について、4月4日に出演したポッドキャスト番組でも語っていた。
今回はこの番組を聞いたというユーザーのseyedhn氏が、r/gamedevにて42の鉄則を引用して紹介。興味深いトピックとしてそれぞれの鉄則に対して賛成か反対かといったユーザーの意見を訊いている。
なおPaul氏の提唱する42の鉄則を日本語にするならば、以下のようになるだろう:
ソース管理を用いるか、少なくとも定期的にバックアップをとる
自分のゲームは退屈すぎるし、浅すぎる(と思われるリスクを常に考慮する)
企画提案の際には予算も含めておくべき
その予算は、極端な事例ではない現実的な比較対象を用いて正当化できるようにしておく
友人に笑われそうなくだらないアイデアこそ、往々にして素晴らしいコンセプトとなる
嫌いなゲームへの批判は、「改善版」を作ってみせることでおこなうこと
コアとなるゲームメカニクスを変える際には、たいていの場合新たにゲームデザインから作り直しが必要になる
悪い設計書ができるのは、たいていの場合は書き方が悪いからだ
各開発サイクル(iteration)のなかで、まずは必要最小限のプロトタイプを作る
たとえゲーム中に寄り道したいプレイヤーであっても、目的そのものは必要としている
枯渇あるいは飽和したジャンルなどない
競争の激しいジャンルのゲームは、本当に飛び抜けた特徴が求められる
ゲームの歴史を学べ
ゲームの歴史なんて忘れろ!毎年常識を覆すような新作が生まれているんだから
偉大なゲームは、素晴らしいコード開発者とひどいコード開発者の両方によって作られてきた
ゲームデザインを固めてしまいたいと思うかもしれないが、混沌も受け入れよう
その混沌とした状態から、可読性、パフォーマンス、拡張性、モジュール化、移植性などについて考えていこう
自動生成とはコスト削減の方法ではなく、ゲームのスタイルに関する選択だ
たいていの場合、UX(ユーザー体験)よりもゲームの奥深さが重要となる
たとえやめるつもりがなくとも、いつでもやめられる準備をしておく
あなたのDLCについての考えは、データの裏付けに欠けてはいないだろうか
IPを使わず、ライセンスもせず、会社を売却もしないのなら、IPを保有する意味はない
PRは常に重要だが、多くの開発者はPRの本質を理解していない
開発中の些細な話でも、ファンは聞きたがっている
賞をとったときは感謝を、とれなかったときは謙虚に振る舞う(あるいは黙っておこう)
ゲームを発表するなら、Steamストアページも同時に公開しよう
Steamのタグは正確につけよう
発表用トレイラーは、狙ったユーザーの心を撃ち抜く出来にすべし
可能性にワクワクし、惹きつけられ、インスパイアされる気持ちを大切にしよう
ゲームに関する発表は、ユーザーをその作品のコミュニティへ誘う招待状でもある
「互いにリスペクトすること」をコミュニティのルールとし、厳格に守らせる
素晴らしいコミュニティメンバーは称えてあげる
月に最低1回は新しい情報を発信する
「言ったことをちゃんと実現する」ことで、コミュニティの信頼は築かれる
ゲーム業界に詳しい会計士を見つけよう
給与、配当、年金の仕組みをきちんと理解しよう
何でも任せられる信頼できる弁護士を見つけよう
契約書は、たとえ相手を知っていても「知らない相手である」と思ってチェックすること
明確な強みのないパブリッシャーとの連携は、単なる浪費となる
ひどいパブリッシャーに遭遇した経験があっても、すべてのパブリッシャーが悪いとは限らない
「パブリッシャーから資金を得る」ことに望みをかけるのではなく、「利益の出るゲームを作る」ことを目標にするべき
挑戦し続けよう。具体的に、前向きに、そして気楽に
開発とマーケティング、経営などゲームビジネスのさまざまな側面におけるアドバイスとなっており、長くゲーム業界に携わってきたPaul氏の知見が反映されていることもうかがえる。中でもSteamストアページを発表と同時に公開すべきという鉄則には、支持も集まっている。
とはいえ質問によっては、ユーザー間で賛否も分かれている様子。たとえば「自動生成」に関する鉄則については、自動生成を用いても手作業と同等か、それ以上の手間がかかりがちとしてPaul氏の「コスト削減手段ではない」という考えを支持する意見もみられる。一方で別のユーザーは、特徴の異なる1844京個以上の惑星が登場するとされる『No Man‘s Sky』を例に挙げ、そうしたゲームは自動生成によるコスト削減なしでは実現しえなかったと反論。そもそもコスト削減か、ゲームのスタイル決定か、といった二者択一で考えるような技術ではないとする意見もあるようだ。
『No Man‘s Sky』
このほか、「UXよりもゲームの奥深さが重要となる」という鉄則も賛否を分けている様子。UXが悪いとそもそもプレイヤーはゲームの奥深さまでたどり着けないという反論もある一方で、反例として人気作ながらもUIをはじめ無骨なところも多い『Dwarf Fortress』(関連記事)を挙げるユーザーなども見られ、人によって意見が分かれている様子だ。
とはいえ、先述したPaul氏のブログを見るに、同氏は42の鉄則がこうした議論を呼ぶことも織り込み済みだったようだ。Paul氏は鉄則において、同氏が信じてやまない格言や持論などを集めたと説明。ただ読者に対しては、鵜呑みにするのではなく自分にとって何が本当に正しいのかを模索することを後押しする狙いがあると述べている。そして、それぞれの鉄則について、読者が望むように取捨選択あるいは非難してほしいとも伝えていた。
つまり「42の鉄則」はあくまでPaul氏自身の経験に基づく教訓であり、それぞれの鉄則が妥当と感じられるかどうかは、経験に応じて変わってくるだろう。ただ、ゲーム開発や事業にまつわる多種多様なトピックに関する鉄則が揃っているのは確かだ。鉄則が“正しい”かどうかはともかく、同氏が狙いとするように、読んだ人それぞれが自分の状況を見直すきっかけとなるかもしれない。

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