任天堂とソニーグループの家庭用ゲーム機が苦難に直面している。トランプ米大統領が進める関税政策の影響で、米国での販売価格を最大3割値上げせざるを得ない可能性が、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の調査で明らかになった。
BIの基本シナリオによると、「プレイステーション(PS)5」とソフトウェア「アストロボット」のパッケージ版、「スイッチ2」の価格はそれぞれ約590ドル(8万5000円)近くに上がる。
両製品とも中国で生産されるが、任天堂はベトナムにも生産拠点を広げている。BIのアナリスト、ネイサン・ナイドゥ氏は、物理的に生産・出荷が必要なハードメーカーはソフトメーカーに比べて関税の影響を受けやすいと指摘する。
関税とコストの関係を表すBIの予想
ナイドゥ氏によると、トランプ関税が80-90%となった場合、スイッチ2の販売価格は3割上昇するという。ただ上乗せ関税が90日停止される間に米国内の在庫を積み増せば、回避される可能性もあるとする。
任天堂のパートナー企業であるホシデンを例に見ると、同社は今年初めからベトナムでの生産のほぼ全てを米国向けに切り替えた。スイッチ2の在庫確保に向けた動きが進んでいることを示す。
任天堂は6月5日のスイッチ2の発売日を変更していない。ただ当初予定していた米国での4月9日の予約開始は先送りした。ナイドゥ氏によると、米国でPS5やスイッチ2が大幅な値上げを余儀なくされれば、価格引き上げ圧力はそれ以外の国にも波及が予想される。
前機種の発売から8年を経て登場するスイッチ2は、任天堂の業績を左右する存在で値付けが重要だ。一方、発売から4年以上経過したPS5にとって、販売価格の引き上げは売り上げ減少に直結するリスクもある。
11日の東京株式市場では、任天堂株もソニーG株も共に大きく値を崩した。週を通してトランプ大統領による関税政策の方針に振り回されたが、米政権との交渉で一連の関税措置を各国が回避できるかどうかは極めて不透明なままだ。
両社にコメントを求めたところ、ソニーGからは返答がなく、任天堂からは特にコメントすることはないとの回答だった。
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