その一言を境に、WBCを取り巻く空気は明らかに変質した。
勝利への自信ではない。
言葉が先行し、沈黙が広がり、代表チームの内部に見えない亀裂が走った――。

名前が挙がったのは、支配的な左腕。
数字も実績も、もはや「評価」の段階を超えていた。
だが彼が本当に直面したのは、相手打線ではなく、
スターの言葉によって歪められた“空気”そのものだった。

興奮と挑発。
そして、比較という名の火種。
「支配している」という断定的な表現が、
いつの間にか個人の優位性を誇示するための道具へと姿を変えていく。
その瞬間、WBCは国家のための舞台から、
“誰が象徴なのか”を巡る危うい争いへと引き寄せられた。

だが、最も静かに怒っていたのは当事者だった。
敬意はある。だが利用される気はない。
彼はただ、祖国のユニフォームを着て、
勝利のために腕を振るいたかっただけだった。
そこに、比較も、挑発も、物語化も必要はなかった。

事態が決定的に動いたのは、指揮官の判断だった。
問題は言葉ではない。
チームの重心が、どこに置かれているか――。
そう見抜いた瞬間、前例のない“遮断”が実行される。
スターであっても例外ではないという、無言の宣告。

怒り、沈黙、欠場の気配。
ロッカールームを包んだ緊張は、
強豪国が抱える最大のリスクを浮き彫りにした。
個の存在が大きいほど、感情の揺れはチーム全体を飲み込む。

それでも結論は、冷酷なほど現実的だった。
代表チームは、個人の舞台ではない。
名を失っても、構造が残る限り、勝機は消えない。
そして静かに浮かび上がる、もう一つの真実――
本当に恐れられるべきなのは、騒動の中心にいる誰かではなく、
混乱の外側で完成へ近づいていく“チームの形”そのものだった。

これはスキャンダルの物語ではない。
WBCという短期決戦で、
「勝つ構造」を持つ国だけが生き残るという、
あまりにも冷静で、残酷な現実の物語である。

1 Comment

  1. 何故 ただのアベレージヒッターのソトを過大評価するのか分からない 悪いけど大谷選手に比べて あまりにも劣っているよね? あらゆる面で

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