現役引退後も野球に関わる職業に就く人が多い中、全くの異業種に飛び込んだ男性がいます。水揚げされたマグロが並ぶ宮城県塩釜市の魚市場。そこにかつてプロ野球の世界に飛び込んだ男性の姿がありました。元東北楽天ゴールデンイーグルスの投手、森雄大(もり・ゆうだい)さん(30)です。森雄大さん
「目利きです。もうどれに目星をつけて8時からのセリでどれを買おうかなというところ」塩釜市にある「廻鮮寿司(かいせんずし)塩釜港(しおがまこう)」には、地元で水揚げされた新鮮で大きなネタが人気を集め連日、多くの客が訪れます。森さんは、2023年からすし店の魚の仕入れなどを担当していて、仕事は朝早くから始まります。森さん
「だいたい午前2時50分くらい。こっちに午前3時50分くらいに。こっちから市場に行ってみたいな。そんな生活ですよ。さすがにファームでもそんなに早くない」福岡県出身の森さんは、小学3年の時から野球に打ち込むと東福岡高校時代に頭角を現し、2012年のドラフト会議で楽天と広島から1巡目で指名を受けました。当時の森さん
「日本を代表できるような左投手になってファンから森が投げるのであれば球場に見に行きたいと言ってもらえるようなピッチャーに成長したい」楽天に入団するとプロ2年目の2014年には、初勝利をあげるなど次期エース候補として華々しくスポットライトを浴びていた森さん。しかし、左ひじのけがなどがあり1軍では3勝と、思い描いていたようにはいかず2022年にユニホームを脱ぎました。森さん
「自分ではユニホーム着たくなるのかなとか、野球したくなるのかなとか思ってたが、そんなこと思う暇もないくらい毎日仕事あるし、すっぱり辞めたのであんまりないかな」NPBが公表している現役を引退した人などの進路によると、約8割が野球関係の仕事に就いていて、一般企業などへの就職は1割足らずとなっています。森さんにも引退後、球団職員としてのオファーがあったものの選んだのは野球以外の道でした。新たな挑戦をしてみたいという思いが湧き出てきました。森さん
「不安という不安はなかった。ワクワク度で飛び込んだ話なのでもちろん、自分に何ができるか分からなかったですけど自分の気持ちに素直にというか」森さんが勤務する塩釜港は2022年から楽天の元球団社長、立花陽三さんが運営しています。立花さんにとって森さんは球団社長時代にドラフトで獲得した最初の選手です。塩釜港・ヤママサ 立花陽三 社長(元・楽天球団社長)
「僕の予想ちょっと遅刻したり辞めると言い出したりするかなと半信半疑だった。彼は一年間、全うして一回も遅刻せずにやってくれて魚の知識もすごくついて元野球選手がこういうことにチャレンジしているというのは今後のプロスポーツ選手の第二の人生においてもいい道しるべになる」働き始めて3年目、「野球」を職業にしてきた森さんにとっては毎日が勉強の日々です。森さん
「好きで始めた野球でしたけど10年やって手術も2回しましたし、そういう意味では好きなだけではやってられない。仕事になってきつかったし、今は好きでというよりは自分で選んだ道なのでそこは正解にしていきたい」塩釜港の創業者、鎌田秀也会長と一緒に毎朝、市場に足を運ぶ森さんは、魚の目利きにも慣れてきました。森さん「これいいですね。高そう!」塩釜港 鎌田秀也会長
「雄大は最近ずっと見ているからかなり上達していますよ。2年で6割くらいは覚えている。あと2、3割やれば。パーフェクトはないから」森さん
「尻尾は脂乗りです。腹は深いか浅いか。エラは鮮度を見たり、目が白いやつはは古い、できるだけ目はきれいなやつを選んで目利きのポイント」午前8時から行われるマグロの競りで、森さんらが目利きをしたマグロを鎌田会長がセリ落としました。当初は魚の知識などほとんどなかったといいますが、今では、魚を締める作業も任されるようになりました。鎌田秀也会長
「締めるのすごいうまい。俺よりうまい。プロだもん2年もやってるとプロ」だからね」ジャケット姿の森さんが仙台市中央卸売市場を訪れました。2025年3月からは、塩釜港の関連会社「ヤママサ」の広報部長も兼務しているのです。ヤママサは輸入品のタラなどを加工し総菜品として販売する会社でこの日は、魚の仕入れなどについて打ち合わせをしました。森さん
「同じ魚なんですけど種類も違えば仕入れ方も仕入れ価格も違う。海外の影響もあるので勉強しなければ」「仕事は好きなだけでは続けられない」とプロ野球生活の10年で学んだという森さん。第二の故郷、宮城でのイチからの挑戦。新たな人生は始まったばかりです。
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