2010年代(現役)MLBクローザー(SEA.マリナーズetc) 2016年57セーブ プエルトリコ代表
速度を変えて4回繰り返し

フォームの特徴:
概要;
・MLB投手に多い、やや腰高な投球の部類に入るが、前足に強い捻りを加えながら着地した後、
 常に腰が前足に乗っかり、強い下半身の力を維持することで、鋭く横回転している。
・斜めに傾く上体が起き上がる瞬間、肩を後方に残し、力の入っていない前腕が、前へ
 進む肩に引っ張られた後、リリースで肩、前腕を柔らかく前へ押し込んでいる。

始動;
・1イニング限定のクローザーなため、両腕を上体に付けた、セットの形から投球が始動して、
 前足の膝を高く上げるのに伴い、徐々に両腕を胸の位置まで上げている。
・前足の太腿を地面より45度弱の高さまで上げると、両脇を締めた両腕で、前足と上体との間の
 隙間を埋めて、首をやや曲げて猫背になることで、上体とこの太腿との密着を強めて、下腹部
 に多少力を溜めている。

前足の下降;
・上体をやや屈め、両肘を曲げて、高く上げた前足の太腿の上に、両腕を置くと、ゆっくりと
 上がった前足の膝を明確に曲げて、その脛と太腿とをきつく密着させることで、一本足で立つ
 後ろ足の上に腰が乗っかり、コンパクトに前足、両腕が折り畳まれて、一瞬キュッと力が入った
 後に、前足を下降させている。
・序盤から、多少首を曲げて、猫背になり、グローブ側の肩を高い位置に留め、その背後に顎を
 置くことで、体の開きを抑える傾向が見られ、やや肩を入れる形になることで、上体の軸に
 後方への僅かな捻りが作られ、背中が打者に見える角度を取っている。

腕の位置;
・両腕で前足の太腿を覆い、後ろ足が若干前へ倒れて、腰が前に出るのに合わせて、前足の膝を
 一瞬きつく曲げると、次に、なるべく両足を近づけたまま、前足を真下へ下降させていき、
 ゆっくりと、その膝を伸ばしている。
・真下へ下降する前足が体を下へ引っ張り、さらに上体が屈んでいるが、グローブ肩は常に高い
 位置を保ち続け、もう一方の投げる側の腕は下がりながらも、真下までは下がらずに、ある程度
 の位置で動作を止めている。

体の開きの抑制;
・肘を支点に曲線形状に変えたグローブ腕を、地面と平行の高さに留めることで、体の開きを抑え
 込みながら、両太腿を近付ける形で、前足の膝にある程度力を入れ続けたまま、足下まで徐々に
 下降させている。
・前足に力を入れて、ゆっくり下降させ、上体が前屈みになりながら、グローブ腕を高く上げ
 続けることで、上体と前足の太腿とで「く」の字に折れ曲がった下腹部に力が溜まり、同時に、
 高い位置を取る、グローブ腕の肩により、体の開きを抑えている。
・前足が足下付近まで届く頃には、未だ後ろ足の膝の曲がりは僅かであり、腰高であるが、力を
 入れながら下降する前足により、腰が下へ引っ張られる分、後ろ足の膝に自重が掛かり、膝に
 踏み込みに必要となる力が蓄えられている。

体の軸の捻り;
・序盤から、グローブ腕を曲線形に変え、その肩の高さで、3塁方向へ伸ばす形を作ると、完全
 には膝を曲げずに力を入れ続けていた前足の膝を、明確にきつく曲げ、さらに、両腕とも高く
 上げて、空間を掻き分ける様に、背中側へ回すことで、本格的に前へ踏み込む準備を整えている。
・上体が屈み、斜めに傾く形を維持したまま、両腕の肩、肘が高く上がり、前腕は下を向くことで、
 上体に力が入りながら、背中方向である後方側へ体の軸を軽く捻る形が強まっている。

前足の捻り~踏み込み;
・打者に背中を見せて、上体の傾き具合を強め、両肩を一気に高い位置まで上げる間、力を入れ
 続けていた前足の膝を最大に曲げて、その脛を地面と平行になるまで寝かせ、膝の高さを若干
 上げて、太腿の高さも上げることで、全身の動作を固めて、力の入る体勢を作っている。
・膝自体はそれ程曲がっていない後ろ足が前に傾き、腰が少しずつ前へ押し出されているものの、
 上記の前足の膝が深く曲がる形が整ったところで、前足を捻って回転方向に回すことで、これ
 までのゆっくりとした動作から一転して、速度を緩めずに一気に前へ本格的に踏み込んでいる。
・前足の膝を捻り、両肩、両肘を引き上げて背中方向へ腕を回すことで、回転しながら、後ろ足
 の膝に溜めた力により、腰が入る形で一気に前へ踏み込んでいるが、さらに、広島池谷の様に、
 グローブを上へ向けて返すことで、体の開きをぎりぎりまで抑え込んでいる。

前足への腰の圧し付け;
・両肩、両肘を上げて、掻き分けることで、体の軸が回るのを強めながら、屈む姿勢により、
 下腹部に力を溜めたまま、一気にスピードを上げて、後方から体の軸を回しながら踏み込んで
 いる。
・寝かせていた前足の脛を立てて、着地体勢に入る頃、グローブ腕の曲線形状を強めて、回転
 方向へ引きながら畳むことで、回転運動を誘導しながら、もう一方の投げる腕は、早くから
 肘をきつく曲げ、絞りを効かせて、体の内側からスクラッチ型で担ぎ上げを始めている。
・前足の膝に強い捻りを効かせてから、その脛を立てて着地に入るのに合わせて、屈んでいた
 上体が起き上がっているが、未だ上体は斜めの傾きが残っているため、膝を徐々に伸ばして、
 地面に突き刺さる様に着地した前足の付け根に、上体が斜めに覆い被さる体勢を作っている。
・3塁側斜めに傾く上体と、完全でなくても膝が多少伸びて1塁側斜めに傾く前足とが、「く」の
 字の形を作り、腰を前足の付け根に圧し付けることで、下半身に力を生み出し、瞬時に重心
 移動しながら、踏み込み時からの回転動作の誘導より、一気に横回転が進行している。
・前足の膝は未だある程度曲がっているものの、地面に突き刺さった後、前足の付け根に腰が
 乗っかり、回転運動が進行する間も、この膝が伸び続けていくことで、リリースへ向けて、
 腰~前足の下半身に常に力が入り続けている。

肩の残し;
・やや腰高ながらも、膝を伸ばし気味で前足が力強く着地して、腰をその付け根に圧し付けた時、
 上体は多少傾いたままで、スクラッチ型で前腕を担ぎ上げるコッキングが作られているが、 
 着地と共に、直ぐに回転動作に入るため、肩も直ぐに前方へ引っ張られて、移動している。
・その一方、序盤からやや後方側へ体の軸を捻ってから前方へ回り、腕が担ぎ上がってからも
 傾いていた上体が起き上がり続けているため、腕を内側から回すスクラッチ型の効果も含めて、
 直ぐには肩が前へは進まずに、ある程度後方で肩が回ってから前へ移動する時間が取れている。
・回転動作が早く進行しても、上体が徐々に起き上がる分、肩が後方で回り、一瞬取り残されて
 から前方へ移動することになるため、鋭い横回転に引っ張られながら、肩を後方で滑らかに
 大きく回すことが可能となっている。

肩に引っ張られる肘~前腕;
・前足の着地~重心移動にかけて、両肩の背中側への引きをさらに強めて、上体を曲線形に保ち
 ながら、鋭く横回転する間に、上体が完全に起き上がり、肩の関節を広げながら、後方から
 大きく回している。
・肩が前へ引っ張られるにつれて、肩には大きな力が蓄えられているが、肘から先の前腕の力は
 抜けているため、上体~肩の前への回転移動に引っ張られて、肘~前腕が柔らかく前へ移動
 している。

リリース;
・グローブ腕を回転方向へ引いて、脇を締めて畳み、高い位置に留めておくことで力を加えて
 いるが、リリース後は、この腕を引き上げずに、動作を止めてしまう傾向が見られる。
・少しずつ前足の膝が伸びて、腰が徐々に下がって、さらにその付け根に乗り、下半身に力が
 入りながら、上体が横回転して、肩を前へ運んでから、リリース体勢に入っている。
・一瞬だけ肩が後方に取り残されて、横回転に引っ張られる形で肩が回ることで、力の抜けて
 いる前腕が後方に残り易くなり、打者側を向いた上体の後方から僅かに間を置いて、肩が前へ
 突き出てから、さらに僅かな時間の後、肘~前腕が柔らかく前へ出てからリリースに至っている。
・関節の広がった肩に引っ張られて、力の抜けている肘~前腕が前へ突き出ることで、腕の振り
 がスムーズになり、しなりが生じているが、リリースの瞬間に合わせて、肩~肘~前腕を前へ
 鋭く押し込むことが、打者の状況に応じて、腕の振りのギアを上げることを可能としている。

フォロースルー;
・前足の膝は僅かずつしか伸びていないが、リリース後の腕を前方へ大きく突き出すフォローの際
 に、一気に膝を伸ばし切りながら、前足で立ち上がることで、直前のリリースにおいて、間接的
 に下半身の力を集約させ、なおかつ、フォローにおいても、常に下半身に力を入れ続けている。
・腕を前に大きく伸ばし、次に横方向へ振り切る間、前足の膝を伸ばして立ち上がることで、腰を
 押し上げながら、さらに、後ろ足の膝を曲げて、なるべく両足を密着させる形で、振り上げて
 空間を蹴って回転方向に回すことで、フォローにおいても腰に力を長時間維持し続けている。
・リリース後も、斜めの回転軸で腰を捻る力を入れ続けることで、直前のリリースで、肩に力を
 入れながら滑らかに回し易くなり、その分、肩に引っ張られる前腕も、滑らかに鋭く振ることを
 可能としていると思われる。

投球スタイル;
・腕は、サイド~スリークォーターの範囲で、状況により使い分けているが、サイドからシュート
 回転を強めた時が、最も球に伸びが生まれて、スピード感が増している様に見える。
・横手から投げるものの、縦に割れるカーブや、縦に沈む球を投げる場合は、やや肘を高く設定
 して、スリークォーターの腕の振りを活用している。
・基本は、空振りを取れる、伸びのあるストレートを見せて、打者にスピード感を味合わせてから
 鋭く曲がる変化球を織り交ぜるスタイルを取っている。

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サイド系の柔らかい腕の振りから、伸びのある球を投げるのが特徴で、肩が前に出てから、後方
から柔らかく前腕が前へ出ることから、ペドロマルティネス、尾崎に近い腕の振りに見えます。
前足を軸として、下半身に力を入れ続けながら、鋭く回る力を活用して、全身から搾り出す様に
ストレートを投げ込んでいますが、体には負担の掛かる投げ方に見えるため、先発よりは抑えに
向いた投手と思われます。

体の力を一気に出して、腕をしならせる投げ方は、球に伸びを生み出し易いと見られますが、
この様な独特の球の伸びは肉体が若い頃しか現れないと推定されるため、長く安定した結果を
残し続けるには、球の配球を工夫した、投球術を早い内から予め準備しておく必要があるのでは
ないかと思われます。

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